ヌュアンスのワンマンライブ@Zepp Yokohamaのこと

日曜はできたばかりのKT Zepp Tokohamaまでヌュアンスのワンマンへ。
もう彼女たちのワンマンは観なければいけないのです。過去2回観たそれは、バンドとか演出とか、もっと言えば感じられる熱量や気合いの総量が、どう考えてもこの規模のアイドルグループのそれではないものでありまして、それがZeppという過去最大の箱で行われるのですから、確実に万難を排する必要があるのです。

Zepp Yokohama、入ってみたら非常にZeppっぽいというか、ドリンクバー周りの意匠がほぼDiverCityで、これがZepp標準かと感心したのですが、横浜駅から歩くと途中で日産自動車のショールームを通る形になり、これはZepp Tokyoっぽい。何かこれって狙っているのか。日産には頑張っていただきたいですが、車は買わないです。

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それはどうでもいいのですが、ヌュアンスですよ。
正味やっぱり素晴らしかった。9人編成のバンド、案内人兼セット係のアクター2名、そしてヌュアンスの4人。単なるアイドルのライブと呼べるレベルの場ではなく、でも圧倒的にアイドルのライブであるというこの存在感。

前々から言っている通り、「『アイドル』とは女の子そのものを指すのではなく、女の子がそうあろうとする意志のことを指すのだ」というのが持論ですが、そういう意味で圧倒的に「アイドル」である彼女たちと、彼女たちをそうさせようとする周囲の圧倒的な意志による総力戦がヌュアンスのライブなんです。最高じゃないですか。
Zeppの構造と高さを利用したり、4人それぞれのパーソナルを押し出したり、これまでも使ってはいたのですが過去最大に椅子をいろいろ使いまくったり、観ていて楽しく、そしてここぞという時には圧倒する演出。

流れの中での最後のピーク、自分が彼女達の曲で最も好きな「雨粒」の、ツインドラムでのmのすごい演奏と彼女たちの歌。アイドルとしても音楽としても心から信頼できる瞬間。やっぱり俺金払ってここに来てこれ聴いて観て本当によかった。そういうヌュアンスのそういうライブでした。

ちなみにこのライブ、私の一番の推しメンはドラムのUさんです。割とガチで。

amiinAのラストライブのこと

本日はamiinAのラストライブ。残念ながら配信。
sora tob sakanaのラストライブでは極上席をゲットできたのですが、やはり運はそうそう続きません。世の中それなりに公平にできています。

amiinAに初めて気が付いたのは2015年「canvas」リリースの数か月後。この曲はヤバいと思っているうちに活動休止し、こりゃどうしたものかと思っているうちにmiyuが加入して活動を再開し、そこから先はだいぶエゲツないことになっていく様を可能な限り見届けてきたのですが。
少なくとも1stアルバム「Avalon」は今まで聴いてきたアイドルのアルバムでは3本の指に入りますし、WWW Xでの1stワンマンも観たことのあるアイドルのライブでは3本の指に入ります。
自分にとってはそういう位置付けのグループ。

だいたいアイドルだろうと何だろうと楽曲で語りたい派ですが、ことamiinAに関しては楽曲も抜群なうえにそれ以外もいろいろ思うところがあり。
曲によってはそれ振り付けじゃなくて全身運動だろうが、と思うような、でも観ていて闇雲に気持ちいい「大きい」パフォーマンスと、もし「アメトーーク」で「相方大好きアイドル」回があったとしたら真っ先にオファーが来るレベルの2人の相思相愛っぷりとか。
仲良しなのはただ「気が合った」とかいうレベルではなく、前メンバー脱退後のオーディションの選抜に残されたamiが参加したこともあり、miyuにとっては「選んでくれた人」であり、amiにとっては「入ってくれた人」であるという、そもそもの相互リスペクトから始まっていまして、その時点でアイドルのストーリーとしては相当に持っていかれるものがあります。

というわけでラストライブですが、そもそも元々主催ライブが主戦場で、ワンマンという形は非常に少ない彼女たち、このラストライブで3回目。
その分異様に作り込んでくるわけですが、果たしてワンマン恒例のプロジェクションマッピング用の変形オブジェが鎮座していて安心する。
例によって全身運動度が高いので、6曲も7曲も連続ではしんどいため、3曲くらいことにMCを入れ、それが仲良し女子のわちゃわちゃしたトークになるのもいつも通り。
が、パフォーマンスについては観たことがある中では最高のキレと気合いを感じて、やはりそれは最後ということなのでしょうが、でももしこれ生で観ていたら「Jubilee圧縮」も「canvasシンガロング」もできないのは本気でちょっとキツいと思いました。現場の皆様はよく我慢して最後までライブを通してくれたと、感謝の気持ちでいっぱいです。

正直「Atlas」始まりは予想していました。始まりの歌詞が「この瞬間をずっと待ってた」だから。
ただラストはどうせ「canvas」だろうと思っていたら「signal」だったのは、やはり歌詞のラストが「誰も知らない未来がそこに さあ行こう」だから、ということでしょうか。

で、彼女たちの未来ですが、amiちゃんの方はまだ具体的な発表はありません。25日の特典会の後くらいでしょうか。
ただ、MCで言っていたように、これで完全に終わりではないようです。元々5月3日だった予定が延期に延期を重ね、それでもこの先ミチミチになってのライブができる予定が見通せない状況、一旦区切りを付けて次の活動に進むための今日であり、もしこれまで通りのライブを行えるようになったらその時点で、少なくとも圧縮もシンガロングもやりたい放題の「真のラストライブ」が行われるものと思っています。
待っているから。

筒美京平氏のこと

筒美京平氏が亡くなられたということで、1997年に腹を括って大2枚出して買って、結果大満足した作家生活30周年記念の4枚組×2セットを久々に引っ張り出してきたわけです。

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これずっと聴いているとわけわかんなくなってくるんですよ。これ全部同じ人が書いた曲ってありえない。手癖のなさというか、引き出しの多さというか、天才作曲家と呼ばれる方何人かはいらっしゃいますが、その中でも何か他のそういう人には持ち得ないものを持っているというか。
手癖のなさというのはインプットの多さ故だとは思いますが、初期の頃には「パクりだろこれ」と言えてしまいそうなものも正直あります。が、初期を過ぎるともう「たぶん何か海外のもの食ってるっぽいんだけど、完全に消化して出してきてるからよくわかんねえ」みたいな感じになっていて。その「消化」の能力というのは、凄まじいものがあったのだと思います。

自分が彼を強烈に意識したのは高校2年生の時。
日曜日の晩、便所に行ってふと居間を覗くと家族が「サザエさん」を見ていて。その時初めて気付いたんです。
「この主題歌、モータウンやんけ」。
数年間多少なりとも洋楽を聴きかじってようやくその時気付いたのですが、同時に目に飛び込んでくる「作曲:筒美京平」のクレジット。
当然その当時の彼はバリバリ全盛期でいろんな方に書いていた時期でしたので、それらの楽曲と「サザエさん」が結びつかず、ちょっとフリーズしたり。

この時の衝撃というか気づきが、自分の音楽の聴き方の方向性を決定づけたのではないかと、後になって思います。
何を聴くにしてもクレジットを気にするようになったり、楽曲を聴いて「何に影響を受けているか」を考えてみたり。
日本で音楽を聴く人にとっては、どういう形であれ何らかの影響を与えている人だとは思うのですが、自分はそんな感じです。

「サザエさん」以外で聴いた当時一番衝撃受けたのはNOKKOの「人魚」でしょうか。
下がっていくサビメロとか、ミニマムな楽曲構造とか、J-POP的展開に歯向かっているような感じがして。
とはいうものの、どの曲も聴き込んだら発見はあるはずなので、改めて聴き始めたら長くなりそうです。

「人魚」の真っ当なYouTubeなかったので、各自適当に。

東京都心のTSUTAYAが一気に閉店すること

レコファンの新店舗とほぼ同時に入ってきたのが、新宿TSUTAYA 歌舞伎町レンタル館の11月15日での閉店の報。

さらに北千住店、中目黒店も同日に閉店という情報も入ってきています。

TSUTAYAの閉店は日本全国で着々と続き、徐々に間引かれているわけですが、それは地方都市や郊外だけでなく、都心部も然りということで。
ここ数年のTSUTAYAの東京都心部の閉店としては、

2018/02/28:TSUTAYA 六本木店
2018/02/28:TSUTAYA 恵比寿ガーデンプレイス店
2018/07/31:TSUTAYA IKEBUKURO AKビル店
2019/03/31:TSUTAYA Tokyo Midtown
2019/05/06:蔦屋書店 上野店
2019/06/30:TSUTAYA 東池袋店

こういう感じで、既に上野周辺にはTSUTAYAはじめCDを購入・レンタルできる店はありませんし、六本木・赤坂周辺では、六本木 蔦屋書店で購入は可能ですが、レンタルはもうありません。
今回閉店する中目黒店なんかは、徒歩数分の駅の高架下に「中目黒 蔦屋書店」という例の「かっこいい」タイプの店舗が2016年にオープンしていますので、いつこっちが閉店するんだろうという感じではあったのですが。

そして今回、新宿地域からレンタルが完全になくなります。
東京都心の繁華街と呼べる地域でCD/DVDレンタル可能なのは、これ以降SHIBUYA TSUTAYAと池袋のロサ店のみ、ということになります。茗荷谷とか大塚とか赤羽とか、住宅地と言えるような場所にはまだ残りますが、郊外からの通勤客を全てのみ込めるような大きな店ではありません。

少し前に大阪市で、梅田堂山店・日本橋店が閉店して戎橋の店舗もレンタルを取りやめた結果、大阪市内都心部のレンタルはなんば店とあべの橋店に集約されたように、歌舞伎町の店舗が持っていたレアなVHSを渋谷に移行するのを何かいい感じにニュースにしたり、という動きもあったり。

音楽を「聴く」という行為はサブスクに移行する一方、米津玄師のアルバムがミリオンを達成したり、ジャニ系のCDはまだまだいい数字を出していたり、まだ販売の方には「所有欲」を満たす場所として、今の日本にはギリギリではありますがまだ居場所も残っています。
ということで、その狭間の「レンタル」については、正直もういつなくなってもおかしくない、くらいの気持ちで。

とはいえ、あれだけの状況になっているアメリカでも、600店舗レベルのチェーンFamily Videoや、全米で2万を越す自販機で売れ線を貸し出すRED BOXはまだ生き残っていますし、正直これからの日本、どういう形でどうなっていくか、さっぱりわからんのです。

それでも、TSUTAYAやGEOの流れは母数がでかい分、その閉店の状況や「BOOKSTORE」や「セカンドストリート」等別業態の開店で何となくわかりますし、中堅チェーンあたりでは、ポパイが死んだり、ビデオインアメリカやUSVが死にかかっているのはわかるのですが、新潟・東海・近畿で22店舗展開しているビデオ1が、ここ数年ほとんど店舗閉店することなく営業を続けていられる理由がわからない。
ていうか最近攻めてるよね。何なの。

レコファンの店舗が増えること

渋谷BEAM店の閉店決定で、一時は全店舗閉鎖かと思ったレコファン。
しかし、2019年に期間限定で運営していた秋葉原の店舗がまさかのパーマネントな店舗への格上げが発表され、全滅を免れたと思ったら何とここに来て新店舗オープン。武蔵小金井に10月予定。

今の世の中、CD/レコード店が新規でオープンする数というのはさして多くありません。
大手チェーンの新譜CDを扱う店舗としては、

新星堂:2020年2月、イオンモール高の原店
山野楽器:2019年11月、南町田店
タワレコ:2019年3月、錦糸町パルコ店
HMV:2017年3月、HMV record shop コピス吉祥寺

ここらへんが純粋な移転を除けば「最新」の新店舗。正直年に1店舗あればいい方、というのがここ数年。
一方、中古レコードをメインに扱う店舗は、アナログ需要の堅調さもあって、個人経営の店舗も含めてここ3年間で東京都内だけで10店舗以上が新規でオープンしています。

ただ、小金井という立地は何なのか。
想像の限りでは、やはり渋谷の店舗の最大のネックは賃料で、ある程度の面積と賃料の手頃さとを両立した場所、それでも人が呼べる場所、ということで、吉祥寺からほど近い小金井市のドンキホーテの建物内、ということになったのではないかと思います。

それでも、吉祥寺のレコード店の数は全盛期から半減以下。
東京で増えた10店舗以上のレコード屋も、そのほとんどが渋谷か新宿か下北沢。
正味、小金井の新店舗には相当にバクチ的なところもあるのではないかと思います。でも、ここでダメならもうどこでもダメ、くらいの状況での出店のような気もしていて。
というか、渋谷店先週行ったのですが、相当に閉店セールを継続しているにも関わらず、全くもって店内の在庫が痩せている様子がない。相変わらずの狂ったような在庫っぷり。

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これつまり、通販だけで捌くには無茶な量のものすごい在庫は保持していて、その在庫を保管するためには当然倉庫代はかかります。
その倉庫代と店舗のテナント料とを天秤にかけた結果、小金井だったら店舗で出しても大丈夫、くらいの計算とか。

とりあえずできるだけ行く。小金井は正直ランチとかほとんど行ったことがないので、そういうのと一緒に開拓します。吉祥寺のココナッツ、三鷹のパレード、国分寺・立川の珍屋あたりと併せて中央線都下ツアーとか。割と本気でいい感じではないかと思った。

フィロソフィーのダンスがメジャーデビューしたこと

当ブログで彼女たちに初めて触れたのは2016年6月

遂に2020年9月、シングル「ドント・ストップ・ザ・ダンス」でメジャーデビューに至ったわけです。

ここまで何度となくライブも観てきたのですが、彼女たちくらいすくすくと成長してきた感のあるグループも珍しい。
元々ハルちゃんの歌は馬鹿みたいにうまいし、マリリの安定した歌唱も素晴らしかったのですが、この4年でおとはす、あんぬちゃんの歌唱の伸びが著しく。
初期の楽曲には元々歌うまの二人がほぼ全てのヴォーカルパートを歌う曲もあったのが、今や4人が4人なりの歌唱ができるようになっていて、正味隙がない。

インディーズの頃の楽曲を一手に引き受けていたヤマモトショウ×宮野弦士は既に今後の彼女たちのプロダクションから離れることを公言していますが、メジャーでどうなるかと思ったら一発目で作詞を担当したのはヒャダイン。
彼がアイドル楽曲を手掛ける際にありがちな「自己紹介」系の歌詞と言えばそんな感じもしなくはないですが、過去の彼のアイドル楽曲にはない、相当に「詰めた」出来の、ある意味新機軸と言えるレベルの詞になっています。
作曲のmrmrって誰だと調べてみたらこんなの出てきた。コンペかな。ただ、こういう若手を発掘することも、アイドル楽曲を世に出す意味のひとつでもあると思うので。
曲含めて過去からのコアな楽曲ファンには違和感を訴える方も一部いらっしゃいますが、自分はそこまでもなく自然に受け入れられました。

そしてさすがメジャー、と思ったのはMVの出来。これまでとは比べもんにならんレベルだし、きちんと4人が4人のいいところを押さえている。個人的なツボはおとはすがDVIケーブルを接続するところ(彼女はPCを自作するレベルのオタク)。

で、周辺の状況を観察していると、女子ファンの増加が著しいことと、徐々にジャーナリストや音楽関係者を巻き込んでいっている点については、過去のPerfume、ももクロ、BABYMETALらと同様の流れに乗っている感があります。
もちろんそれらのグループがドカンといった頃とはそもそもメディア系の情報の流通が相当に異なってきていますので、これで安泰ということはないですし、週間CDチャートでは初登場2位まで行ったものの、合算チャートでは17位。要するにサブスクで聴かれる既発表曲が相当に鉄壁であるということです。

それでも、現在のアイドルシーンで現状彼女たちくらいメジャー感をまとっているグループは他にいないわけで、今後それらの既存曲を掻き分けていくことを期待するしかないのです。
ただ、ライブのチケット取れなくなったら辛い。観たい。でも彼女たちの真骨頂はライブだから。観て。
そして「わしゃ昔、鶯谷でSCOOBIE DOとの対バンを観たんじゃ」とことあるたびに自慢しては鬱陶しがられるくらいに。

最近の渋谷のCD/レコ屋のこと

昨日、久々に「行こう」と思って渋谷に行ったんですよ。
そんなに遠くはないのですが、正直3年前くらいの段階で、インバウンド含めた観光客が増えすぎて街ごとオーバーフローしているような状況になって、そこにいるのがキツくなってしまったこともありまして、定期的に遊んでいた店が再開発で移転してからは、通りかかったついでにタワレコとレコファンだけ覗いて、道玄坂の方の兆楽でBセット(豚チリと生ビール)か、鳥竹でぼんぼちとチキンライス食って帰るくらいだったのですが。

とりあえず、6月にオープンしたMIYASHITA PARKを見に行ったのですが、これ正直この場所にこういう施設があるというのがまず落ち着きません。

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で、レコ屋巡り属性としてはシスコ坂に店を構えるFACE RECORDSが支店を出したというのが最大のポイントなのですが、だからといって何か凝ったことをするでもなく、普通にレコ屋していて安心しました。

ただ、そこから線路くぐって公園通りの方に出て思ったのは、明らかに渋谷駅から北に向かう人通りがMIYASHITA PARKに持っていかれているんじゃないか、ということ。公園通りはインバウンドがいないことをさっ引いても微妙に人が減っている。
そしてその弊害をモロに被っているのが、HMVも入居している渋谷modi。
というか、これ建物全体本当に人がいない。正直modiまずいです。
何がまずいって、2階の店舗全部取っ払ってこんな期間限定企画していること。

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渋谷のど真ん中の商業施設の2階でやることじゃありません。普通は。
でも正直、現状のmodiはそもそも普通ではない状況で1階から人もまばらで、これどうしたものかと思いながらHMVのフロアに行くと人はいるのですが、そのほとんどがインストアの後に並んでいる人で。
タワレコが女子アイドル推し気味なのに対抗してか、HMVは男子アイドル系を推しているのですが、この日もそんな感じの女性の行列ができていました。
ただ、HMVの致命的なポイントは、さして床面積が大きなわけではないので、そういう行列ができるとそれがあからさまに他の客の導線を邪魔するんですよ。今はソーシャル・ディスタンスな感じになっているので、その合間を縫って移動できるのですが、以前は本当に酷かった。
とはいえ、もはやmodiに足を踏み入れる人の数が圧倒的に減っているので、もうそういう状況のせいでとか言ってる場合じゃない。

最後に渋谷パルコ。
センター街から移転したテクニークがどうなってるかを覗きにいったのですが、びっくりするくらい普通でした。
テクニークとユニオンはB1にあるのですが、そのフロアは他はだいたい飲食店が多いのですが、それがもう大変なことになっていて。
1店舗、ハンバーグ屋だけはものすごい長蛇の行列なのですが、それ以外はだいたい昼時でも普通に入れる。その入れる中でも「うどん」とか「天ぷら」とか「寿司」みたいなわかりやすい店は多少人の入りはいいのですが、それ以外は正直誰もいなかったりとか。

modiもパルコB1の一部を除いた店舗も、まさかこの渋谷のど真ん中で「過疎」感を感じるとは思っていなかったのですが。
要するに、ここ数年の渋谷の商業施設はインバウンド込みで作り込まれてきたのが、こういう状況になった結果もう全くもってキャパシティに足りていない状況が続いている、という感じでしょうか。
テクニークの元店舗の場所も結局「テナント募集中」だし。これ家主さん的にはどういう気持ちなのか気になります。

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というか、渋谷の中だけでなく、今後東京のどこがどうなっていくのか。バンバン新しい再開発はされているし、今後の「日本一の高層ビルを建てる」とかの計画も発表されているのですが、実際オフィスの需要は今後どこまで増えるのか。地下鉄の延長の構想とかもあるけど、それは今後どうなっていくのか。
レコ屋についてレコードの需要以外に、「今後どこまで都心に人が集まるのか」というところもまた重要なファクターなわけで、かつ不確定要素ですので、正味ここまで先の読めない状況もないです。わからん。

「銀河鉄道の夜2020」のさねよしいさ子のこと

21日は横浜の神奈川芸術劇場に「銀河鉄道の夜2020」観に行ってきました。

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演劇もオンラインでいくつかやっていたわけですが、やっぱ音楽以上に観ていてしんどい部分がありまして。
やっぱり場の空気感とかを共有しないとなかなかきれいに成立しにくいです。

ただ、この演目を選択したのは演劇どうこう以前に、さねよしいさ子が出演しているからで。
自分が彼女を最後に観たのは調べてみたら1992年の1月、大阪の近鉄小劇場。彼女のステージは今も非常に印象に残っています。
端的に言ってしまえば「あからさまに演者と観客の間に壁がある」コンサート。よくないというのではないのです。むしろ音楽としてはとてつもなく素晴らしいのですが、ステージ上で行われていることをただ我々は眺めるしかない、完璧に作り上げられた世界でありまして。今考えても類するものは他にあんまりない、そういうライブでした。

フォーライフからミディに移籍して自主制作へ、ライブもあまり行わず、行っても非常に小さな箱で、正直何かそれは違うと思ったりしているうちに、28年経ちました。
この演劇「「銀河鉄道の夜」の初演は1995年で、その時にも彼女は出演していたのですが、その頃は私が完全に「演劇断ち」をしている時期でしたので、観ておりません。
「演劇断ち」をしていた理由は単純な話、会社に就職して間もない時期で、下手に演劇観たらせっかく諦めたのに「やっぱ俺はこっちで生きていくんだ!」みたいなことになるからですよ。
断ってたんですよ。割と深刻な気持ちで。

その後気持ちに余裕をもって芝居を観られるようになり、そして2020年、神奈川芸術劇場というサイズの会場で彼女の歌が聴ける。そりゃ行くでしょうよ。行きますよ。

正直、演劇ですから彼女の歌が全体の中でどのくらいのウェイトを占めるのか、よくわからないまま、それでも生歌を聴ければいいくらいの気持ちだったのですが、蓋を開けてみたら、感覚としては「ほぼさねよしいさ子のコンサート」と言ってよいレベル。そういう満足度。
というか、この演劇以前から存在していた楽曲が、ここまで演劇としての流れにハマっているのは何なの。いやもう満足度高いですよ。

中島みゆきが演劇を行いながら曲を挟んでいくスタイルで進める「夜会」という公演があるのですが、「さねよしいさ子にとっての『夜会』」と言えば、そこそこ具合がいい感じの。
そしてやっぱりブレなく「ステージ上で行われていることをただ我々は眺めるしかない、完璧に作り上げられた世界」でありました。
それはまさに1990年代的な、そしてとても演出の白井晃氏的な、演劇としての世界観も込みでそうなってはいるのですが。

主演の男子2人がテニミュの出演者だったり劇団EXILEだったりしますので、観客はどちらかといえば女性多めで、私のような気持ちで観に行った方々がどの程度いたのかと考えると、甚だ微妙な気持ちにはなりますが、もし観ていない方でそういう感じの方がいらっしゃったら、10月4日まで公演は続くしまだチケットもあるようですし、千秋楽はライブ配信もあります。観ろ。

さねよしいさ子さんについては、もしもっと売れていたら、フォーライフ後期、シングルのカップリングの「風の輪くぐり」や8cmシングルのみリリースの「えみちゃんの脱出」で行われていた、「声をいかにインストゥルメントとして機能させるかの実験」が更に深化したはずで、その先を聴くことができなかったことは、割と大きな損失だと思っているのですよ、けっこう本気で。

マハラージャンがCDを出したこと

4月、勝手に身内の中で盛り上がっていた謎のミュージシャン、マハラージャンを紹介しました

今週は夏季休暇なので、朝っぱらから新宿行って、ヨドバシで電動歯ブラシの替えを買ったり、ユニクロでパンツ買ったり、メトロ食堂街でパーコーカレー食ったりしたのですが、当然ですがタワレコには出向いて、そしたら2枚のEPを2 in 1にした音源がCDで出ていたんですよ、マハラージャンが。謎に平台での大型展開で。店舗は新宿店と町田店のみ。あとオンラインで購入可能

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これくらい購買意欲そそらないジャケットも他になかなかないわけで、これこういう展開してどこまで伸びるのだろうかと不安になりますが、そこはこういうジャケットにした本人の自己責任で。
中身は保証します。最高にいかしてて最高に馬鹿です。

これからガンガン上の方に行ってくれるのではないか、と先日紹介した際には考えていたのですが、それ以降いろいろ状況は変わってきておりまして。
というか、「ブラックミュージックを下敷きにした、変態味溢れつつ、でもきっちりJ-POPとして成立する音楽」の新人枠は、今の日本では既に藤井風が総取りしている感がありまして、あそこに割って入っていくのは正直無理筋だと思います。

ですので、マハラージャンは「オルタナティブ」として生きていくしかない、ということになるのですが、YouTube含めた活動や発言を見ている限り、限りなく王道ではない感じの方ですので、これでいいのかもしれません。
とりあえず続けて。待っているから。CD出たら買うから。ライブやったら行くから。やるかどうか知らんけど。

で、こういうサブスクな世の中でのタワレコをはじめとした小売店の役割は、こういう己のセンスを賭けた「発信」をどこまでできるのか、というところになってくるのかな、と思います。
それ単発でどれくらいの売上になるのかはわかりませんが、様々な発信をしていかない限り、今の「店舗」というスタイルの意義は薄れていくわけで。

だから「街のレコード屋」好きの自分がこれを言うのは大変にアレですが、まだ生き残っている「発信できない」個人経営の店舗は、正直早晩滅亡します。今店主やってるおじいちゃんの足腰がしんどくなったら終わります。
逆に本当に一部ではありますが、発信し続けている個人経営店舗には、すごく頑張ってほしいのです。

頑張れタワーレコード。頑張れ他のCD店。頑張れマハラージャン。

フタバ図書と今井書店が厳しいこと

TSUTAYAやGEOがいよいよ厳しいのに、地方の小規模チェーンが左団扇なはずもなく、各地いろいろ大変そうです。
最近特に厳しいチェーン2選。

広島を拠点としているフタバ図書は、去年の段階でこういうネタをかましておりますが、状況が状況なだけに今年に入ってより一層大変な状況になっております。

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01/06:フタバ図書 MEGA岡山青江店
01/13:フタバ図書 ジ アウトレット広島店
01/14:フタバ図書 ゆめタウン黒瀬店
01/19:フタバ 新所沢店
02/11:フタバ図書GIGA 上里店
07/31:フタバ 大南店
08/16:フタバ 東大和店
08/30:フタバ図書 ソフトピア呉店
09/21:フタバ図書 GIGA高陽店

数年前に首都圏でのより強固な足掛かりのために、ドラマから引き継いだ店舗はこれで全滅。
で、CD/DVDの販売・レンタルのみならずネットカフェ業態にも閉店が出現しておりまして、もう聖域なしな感じで。

今年3月には中古CDの買取終了を宣言。これは「この先どうなるかわからんもんの在庫はもう持ちたくないねん」という、フタバ図書の心の声です。

一方、島根県を拠点に山陰に店舗を展開している今井書店。TSUTAYAと提携してCD/DVDレンタルも行っておりますが、正味人口としてはあまり大きくない地方で、同じ領域を商圏にしている中堅レンタルチェーン「アリオン」との競合もありまして、なかなか渋い状況が続いています。

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そんな中、「スタジオワンダー」名義で行ってきたCD/DVD販売業をここんとこ縮小を進めております。

02/29:今井書店スタジオワンダー イオン松江店
05/31:今井書店 湖山メディア館(CD取扱終了)
08/23:今井書店AREA
09/22:今井書店スタジオワンダー イオンモール日吉津店

4店舗程度ではありますが、これ以降今井書店グループでCD/DVD販売を取り扱うのは残り3店舗ということになりますので、正味けっこうヤバい。

ただそれでもこうやって「少しずつ縮小」という方針でやっていることが企業としての良心ではないか、とも思ったりもしていまして。
欧米の企業はいきなり「全店舗閉鎖」とか、そうでなくても「全店舗で取扱終了」とかやらかしがちなわけで、こういう状況が「日本ではまだCDが売れ続けている」要因か、それとも良心とかでなく「CDがまだそこそこ売れるから全店閉鎖の判断ができない」のか、卵が先かニワトリが先か。