「銀河鉄道の夜2020」のさねよしいさ子のこと

21日は横浜の神奈川芸術劇場に「銀河鉄道の夜2020」観に行ってきました。

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演劇もオンラインでいくつかやっていたわけですが、やっぱ音楽以上に観ていてしんどい部分がありまして。
やっぱり場の空気感とかを共有しないとなかなかきれいに成立しにくいです。

ただ、この演目を選択したのは演劇どうこう以前に、さねよしいさ子が出演しているからで。
自分が彼女を最後に観たのは調べてみたら1992年の1月、大阪の近鉄小劇場。彼女のステージは今も非常に印象に残っています。
端的に言ってしまえば「あからさまに演者と観客の間に壁がある」コンサート。よくないというのではないのです。むしろ音楽としてはとてつもなく素晴らしいのですが、ステージ上で行われていることをただ我々は眺めるしかない、完璧に作り上げられた世界でありまして。今考えても類するものは他にあんまりない、そういうライブでした。

フォーライフからミディに移籍して自主制作へ、ライブもあまり行わず、行っても非常に小さな箱で、正直何かそれは違うと思ったりしているうちに、28年経ちました。
この演劇「「銀河鉄道の夜」の初演は1995年で、その時にも彼女は出演していたのですが、その頃は私が完全に「演劇断ち」をしている時期でしたので、観ておりません。
「演劇断ち」をしていた理由は単純な話、会社に就職して間もない時期で、下手に演劇観たらせっかく諦めたのに「やっぱ俺はこっちで生きていくんだ!」みたいなことになるからですよ。
断ってたんですよ。割と深刻な気持ちで。

その後気持ちに余裕をもって芝居を観られるようになり、そして2020年、神奈川芸術劇場というサイズの会場で彼女の歌が聴ける。そりゃ行くでしょうよ。行きますよ。

正直、演劇ですから彼女の歌が全体の中でどのくらいのウェイトを占めるのか、よくわからないまま、それでも生歌を聴ければいいくらいの気持ちだったのですが、蓋を開けてみたら、感覚としては「ほぼさねよしいさ子のコンサート」と言ってよいレベル。そういう満足度。
というか、この演劇以前から存在していた楽曲が、ここまで演劇としての流れにハマっているのは何なの。いやもう満足度高いですよ。

中島みゆきが演劇を行いながら曲を挟んでいくスタイルで進める「夜会」という公演があるのですが、「さねよしいさ子にとっての『夜会』」と言えば、そこそこ具合がいい感じの。
そしてやっぱりブレなく「ステージ上で行われていることをただ我々は眺めるしかない、完璧に作り上げられた世界」でありました。
それはまさに1990年代的な、そしてとても演出の白井晃氏的な、演劇としての世界観も込みでそうなってはいるのですが。

主演の男子2人がテニミュの出演者だったり劇団EXILEだったりしますので、観客はどちらかといえば女性多めで、私のような気持ちで観に行った方々がどの程度いたのかと考えると、甚だ微妙な気持ちにはなりますが、もし観ていない方でそういう感じの方がいらっしゃったら、10月4日まで公演は続くしまだチケットもあるようですし、千秋楽はライブ配信もあります。観ろ。

さねよしいさ子さんについては、もしもっと売れていたら、フォーライフ後期、シングルのカップリングの「風の輪くぐり」や8cmシングルのみリリースの「えみちゃんの脱出」で行われていた、「声をいかにインストゥルメントとして機能させるかの実験」が更に深化したはずで、その先を聴くことができなかったことは、割と大きな損失だと思っているのですよ、けっこう本気で。