最近の渋谷のCD/レコ屋のこと

昨日、久々に「行こう」と思って渋谷に行ったんですよ。
そんなに遠くはないのですが、正直3年前くらいの段階で、インバウンド含めた観光客が増えすぎて街ごとオーバーフローしているような状況になって、そこにいるのがキツくなってしまったこともありまして、定期的に遊んでいた店が再開発で移転してからは、通りかかったついでにタワレコとレコファンだけ覗いて、道玄坂の方の兆楽でBセット(豚チリと生ビール)か、鳥竹でぼんぼちとチキンライス食って帰るくらいだったのですが。

とりあえず、6月にオープンしたMIYASHITA PARKを見に行ったのですが、これ正直この場所にこういう施設があるというのがまず落ち着きません。

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で、レコ屋巡り属性としてはシスコ坂に店を構えるFACE RECORDSが支店を出したというのが最大のポイントなのですが、だからといって何か凝ったことをするでもなく、普通にレコ屋していて安心しました。

ただ、そこから線路くぐって公園通りの方に出て思ったのは、明らかに渋谷駅から北に向かう人通りがMIYASHITA PARKに持っていかれているんじゃないか、ということ。公園通りはインバウンドがいないことをさっ引いても微妙に人が減っている。
そしてその弊害をモロに被っているのが、HMVも入居している渋谷modi。
というか、これ建物全体本当に人がいない。正直modiまずいです。
何がまずいって、2階の店舗全部取っ払ってこんな期間限定企画していること。

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渋谷のど真ん中の商業施設の2階でやることじゃありません。普通は。
でも正直、現状のmodiはそもそも普通ではない状況で1階から人もまばらで、これどうしたものかと思いながらHMVのフロアに行くと人はいるのですが、そのほとんどがインストアの後に並んでいる人で。
タワレコが女子アイドル推し気味なのに対抗してか、HMVは男子アイドル系を推しているのですが、この日もそんな感じの女性の行列ができていました。
ただ、HMVの致命的なポイントは、さして床面積が大きなわけではないので、そういう行列ができるとそれがあからさまに他の客の導線を邪魔するんですよ。今はソーシャル・ディスタンスな感じになっているので、その合間を縫って移動できるのですが、以前は本当に酷かった。
とはいえ、もはやmodiに足を踏み入れる人の数が圧倒的に減っているので、もうそういう状況のせいでとか言ってる場合じゃない。

最後に渋谷パルコ。
センター街から移転したテクニークがどうなってるかを覗きにいったのですが、びっくりするくらい普通でした。
テクニークとユニオンはB1にあるのですが、そのフロアは他はだいたい飲食店が多いのですが、それがもう大変なことになっていて。
1店舗、ハンバーグ屋だけはものすごい長蛇の行列なのですが、それ以外はだいたい昼時でも普通に入れる。その入れる中でも「うどん」とか「天ぷら」とか「寿司」みたいなわかりやすい店は多少人の入りはいいのですが、それ以外は正直誰もいなかったりとか。

modiもパルコB1の一部を除いた店舗も、まさかこの渋谷のど真ん中で「過疎」感を感じるとは思っていなかったのですが。
要するに、ここ数年の渋谷の商業施設はインバウンド込みで作り込まれてきたのが、こういう状況になった結果もう全くもってキャパシティに足りていない状況が続いている、という感じでしょうか。
テクニークの元店舗の場所も結局「テナント募集中」だし。これ家主さん的にはどういう気持ちなのか気になります。

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というか、渋谷の中だけでなく、今後東京のどこがどうなっていくのか。バンバン新しい再開発はされているし、今後の「日本一の高層ビルを建てる」とかの計画も発表されているのですが、実際オフィスの需要は今後どこまで増えるのか。地下鉄の延長の構想とかもあるけど、それは今後どうなっていくのか。
レコ屋についてレコードの需要以外に、「今後どこまで都心に人が集まるのか」というところもまた重要なファクターなわけで、かつ不確定要素ですので、正味ここまで先の読めない状況もないです。わからん。

「銀河鉄道の夜2020」のさねよしいさ子のこと

21日は横浜の神奈川芸術劇場に「銀河鉄道の夜2020」観に行ってきました。

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演劇もオンラインでいくつかやっていたわけですが、やっぱ音楽以上に観ていてしんどい部分がありまして。
やっぱり場の空気感とかを共有しないとなかなかきれいに成立しにくいです。

ただ、この演目を選択したのは演劇どうこう以前に、さねよしいさ子が出演しているからで。
自分が彼女を最後に観たのは調べてみたら1992年の1月、大阪の近鉄小劇場。彼女のステージは今も非常に印象に残っています。
端的に言ってしまえば「あからさまに演者と観客の間に壁がある」コンサート。よくないというのではないのです。むしろ音楽としてはとてつもなく素晴らしいのですが、ステージ上で行われていることをただ我々は眺めるしかない、完璧に作り上げられた世界でありまして。今考えても類するものは他にあんまりない、そういうライブでした。

フォーライフからミディに移籍して自主制作へ、ライブもあまり行わず、行っても非常に小さな箱で、正直何かそれは違うと思ったりしているうちに、28年経ちました。
この演劇「「銀河鉄道の夜」の初演は1995年で、その時にも彼女は出演していたのですが、その頃は私が完全に「演劇断ち」をしている時期でしたので、観ておりません。
「演劇断ち」をしていた理由は単純な話、会社に就職して間もない時期で、下手に演劇観たらせっかく諦めたのに「やっぱ俺はこっちで生きていくんだ!」みたいなことになるからですよ。
断ってたんですよ。割と深刻な気持ちで。

その後気持ちに余裕をもって芝居を観られるようになり、そして2020年、神奈川芸術劇場というサイズの会場で彼女の歌が聴ける。そりゃ行くでしょうよ。行きますよ。

正直、演劇ですから彼女の歌が全体の中でどのくらいのウェイトを占めるのか、よくわからないまま、それでも生歌を聴ければいいくらいの気持ちだったのですが、蓋を開けてみたら、感覚としては「ほぼさねよしいさ子のコンサート」と言ってよいレベル。そういう満足度。
というか、この演劇以前から存在していた楽曲が、ここまで演劇としての流れにハマっているのは何なの。いやもう満足度高いですよ。

中島みゆきが演劇を行いながら曲を挟んでいくスタイルで進める「夜会」という公演があるのですが、「さねよしいさ子にとっての『夜会』」と言えば、そこそこ具合がいい感じの。
そしてやっぱりブレなく「ステージ上で行われていることをただ我々は眺めるしかない、完璧に作り上げられた世界」でありました。
それはまさに1990年代的な、そしてとても演出の白井晃氏的な、演劇としての世界観も込みでそうなってはいるのですが。

主演の男子2人がテニミュの出演者だったり劇団EXILEだったりしますので、観客はどちらかといえば女性多めで、私のような気持ちで観に行った方々がどの程度いたのかと考えると、甚だ微妙な気持ちにはなりますが、もし観ていない方でそういう感じの方がいらっしゃったら、10月4日まで公演は続くしまだチケットもあるようですし、千秋楽はライブ配信もあります。観ろ。

さねよしいさ子さんについては、もしもっと売れていたら、フォーライフ後期、シングルのカップリングの「風の輪くぐり」や8cmシングルのみリリースの「えみちゃんの脱出」で行われていた、「声をいかにインストゥルメントとして機能させるかの実験」が更に深化したはずで、その先を聴くことができなかったことは、割と大きな損失だと思っているのですよ、けっこう本気で。

マハラージャンがCDを出したこと

4月、勝手に身内の中で盛り上がっていた謎のミュージシャン、マハラージャンを紹介しました

今週は夏季休暇なので、朝っぱらから新宿行って、ヨドバシで電動歯ブラシの替えを買ったり、ユニクロでパンツ買ったり、メトロ食堂街でパーコーカレー食ったりしたのですが、当然ですがタワレコには出向いて、そしたら2枚のEPを2 in 1にした音源がCDで出ていたんですよ、マハラージャンが。謎に平台での大型展開で。店舗は新宿店と町田店のみ。あとオンラインで購入可能

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これくらい購買意欲そそらないジャケットも他になかなかないわけで、これこういう展開してどこまで伸びるのだろうかと不安になりますが、そこはこういうジャケットにした本人の自己責任で。
中身は保証します。最高にいかしてて最高に馬鹿です。

これからガンガン上の方に行ってくれるのではないか、と先日紹介した際には考えていたのですが、それ以降いろいろ状況は変わってきておりまして。
というか、「ブラックミュージックを下敷きにした、変態味溢れつつ、でもきっちりJ-POPとして成立する音楽」の新人枠は、今の日本では既に藤井風が総取りしている感がありまして、あそこに割って入っていくのは正直無理筋だと思います。

ですので、マハラージャンは「オルタナティブ」として生きていくしかない、ということになるのですが、YouTube含めた活動や発言を見ている限り、限りなく王道ではない感じの方ですので、これでいいのかもしれません。
とりあえず続けて。待っているから。CD出たら買うから。ライブやったら行くから。やるかどうか知らんけど。

で、こういうサブスクな世の中でのタワレコをはじめとした小売店の役割は、こういう己のセンスを賭けた「発信」をどこまでできるのか、というところになってくるのかな、と思います。
それ単発でどれくらいの売上になるのかはわかりませんが、様々な発信をしていかない限り、今の「店舗」というスタイルの意義は薄れていくわけで。

だから「街のレコード屋」好きの自分がこれを言うのは大変にアレですが、まだ生き残っている「発信できない」個人経営の店舗は、正直早晩滅亡します。今店主やってるおじいちゃんの足腰がしんどくなったら終わります。
逆に本当に一部ではありますが、発信し続けている個人経営店舗には、すごく頑張ってほしいのです。

頑張れタワーレコード。頑張れ他のCD店。頑張れマハラージャン。

フタバ図書と今井書店が厳しいこと

TSUTAYAやGEOがいよいよ厳しいのに、地方の小規模チェーンが左団扇なはずもなく、各地いろいろ大変そうです。
最近特に厳しいチェーン2選。

広島を拠点としているフタバ図書は、去年の段階でこういうネタをかましておりますが、状況が状況なだけに今年に入ってより一層大変な状況になっております。

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01/06:フタバ図書 MEGA岡山青江店
01/13:フタバ図書 ジ アウトレット広島店
01/14:フタバ図書 ゆめタウン黒瀬店
01/19:フタバ 新所沢店
02/11:フタバ図書GIGA 上里店
07/31:フタバ 大南店
08/16:フタバ 東大和店
08/30:フタバ図書 ソフトピア呉店
09/21:フタバ図書 GIGA高陽店

数年前に首都圏でのより強固な足掛かりのために、ドラマから引き継いだ店舗はこれで全滅。
で、CD/DVDの販売・レンタルのみならずネットカフェ業態にも閉店が出現しておりまして、もう聖域なしな感じで。

今年3月には中古CDの買取終了を宣言。これは「この先どうなるかわからんもんの在庫はもう持ちたくないねん」という、フタバ図書の心の声です。

一方、島根県を拠点に山陰に店舗を展開している今井書店。TSUTAYAと提携してCD/DVDレンタルも行っておりますが、正味人口としてはあまり大きくない地方で、同じ領域を商圏にしている中堅レンタルチェーン「アリオン」との競合もありまして、なかなか渋い状況が続いています。

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そんな中、「スタジオワンダー」名義で行ってきたCD/DVD販売業をここんとこ縮小を進めております。

02/29:今井書店スタジオワンダー イオン松江店
05/31:今井書店 湖山メディア館(CD取扱終了)
08/23:今井書店AREA
09/22:今井書店スタジオワンダー イオンモール日吉津店

4店舗程度ではありますが、これ以降今井書店グループでCD/DVD販売を取り扱うのは残り3店舗ということになりますので、正味けっこうヤバい。

ただそれでもこうやって「少しずつ縮小」という方針でやっていることが企業としての良心ではないか、とも思ったりもしていまして。
欧米の企業はいきなり「全店舗閉鎖」とか、そうでなくても「全店舗で取扱終了」とかやらかしがちなわけで、こういう状況が「日本ではまだCDが売れ続けている」要因か、それとも良心とかでなく「CDがまだそこそこ売れるから全店閉鎖の判断ができない」のか、卵が先かニワトリが先か。

sora tob sakanaラストライブ@日本青年館のこと

昨日、日本青年館ホールに行ってまいりました。
sora tob sakanaのラストライブ、例のエグい価格のヤツです。A席15,800円。当選しました。そして発券してみたら2A列。2階の最前列です。正味バンドやステージ演出まで観たい楽曲派糞親父にとってはS席以上のベストポジションです。ありがとうございます。

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正味入場はいろいろ大変。
身分証明→検温→チケットを自分でもぎって箱へ→入場、と進むのですが、まあこれが面白いくらい回らない。2階席の入場は16:30からだと言われていたのですが、ようやく呼ばれたのが16:45過ぎ。
それでもそこから随分マクったようで、開演10分押し程度で済んだのはえらい。頑張った。

座席は1席ずつ空けて1列目が1,3,5だとしたら2列目は2,4,6になる市松模様状態での着席。当然ですが、声をあげることはNGですし、席を立つこともアウト。
元々17時スタートで公演時間は約4時間という報は受けていたし、入場したら「アンコールはありません」のアナウンス。
いろいろとただごとではない空気の中で開演。

とはいえ、4時間言うてもアイドルグループの解散を含んだ重要なワンマンライブの場合、メンバーごとの非常に長いMCがあるのが常でして、さすがに途中で休憩も入るだろうから、そこまで全部込みで約4時間くらいかかる、ということだろうと思い込んでいたのですが、蓋を開けたらぜんぜんそんなことなかった。
MCは本当にあっさり、最後の方に少し時間をかけたと思ったら、活動を支えたスタッフさんへの謝辞のみで。休憩は15分あったけど、終演後時間を見たら21:40になりそうな時刻でしたので。

ライブ途中、シングルのカップリング曲まで拾っていく選曲でようやく気付く。「全曲やるんだ」と。
デビュー以来、sora tob sakana名義でリリースされた楽曲48曲と各オリジナルアルバムに収録されたプロローグ的インスト2曲の計50曲。4時間というのは全曲やったらそれだけかかるという、非常にシンプルな理由。

果たして、MC含めてまったく感傷的なところのない、ただ7人編成のバキバキの演奏にまったくもってバキバキじゃない歌とダンスで、むしろふんわりと乗っかり続けるいつも通りの3人をただただ拝み続けるわけです。
というか生演奏で初めて聴いた中でも演奏のバキバキ度高めの「Summer Plan」だったかの途中で、ふと我に返ったんです。そもそもこれってすごく不思議な状況じゃなかったか。

テクノ系にしろラウド系にしろ、オケの音が大きめの「楽曲重視」のアイドルグループにはだいたい一人は「でかい声を出す金髪」がいがちで、そういう子はそれで非常に愛おしい存在ではあるのですが、彼女たちはデビュー時点の位置付けの時点でそれらとは一線を画していて。
残響レーベル直系の変拍子上等の爆音ポストロックサウンドに、ジュブナイル感溢れる歌詞を乗せて無垢な少女達に歌わせる、というのが、デビュー直後に多少の修正が入ったとはいえ初期からのコンセプトだったことは、デビュー後しばらくは公式サイトに「平均年齢13.8歳」とかコンマ以下まで刻んで表記していたことからもわかるわけですが、そもそもその組み合わせ自体、冷静に考えれば本当はすごくシュールなものであったなあ、と。
それでも6年間基本線ブレずに来た間に何となく、この稀有で奇妙な表現を「当たり前」として捉えてしまっていたのだと、思ったのです。

自分が初めて彼女たちを観たのは2015年10月のo-nestでのイベント。そこから5年、当初は正直とても奇妙なものを見たという気持ちになったものの、それ以降面白半分で観ていた自分を魅了し、そんなコンセプトを我が物にしてそれを当たり前と思わせてしまうほどに彼女たちは成長しました。
解散の理由はいろいろ現実的なこともあるのでしょうけれど、そういうことにしておきます。彼女たち自身が成長した結果、そろそろジュブナイルから卒業する時期が来たのだと。

最終曲「Untie」が終了し、スモークが一面を覆う中消えるように去って行った彼女たち。それもこの6年を「物語」として捉えれば当然の演出だったのだろうと思います。
2階席からは、急いではけていく彼女たち、見えたけどな。

というわけで、楽曲派なのでこれを買います。最期までお金落とします。

Taylor SwiftとErasureとXの新譜のこと

最近聴いた音源のことをざっくり。

Taylor Swift / Folklore

彼女の音源は「とりあえず押さえておく」程度でしか聴いてなかったんだけど、このニューアルバムを聴いた時「こういうの好きなんだろ」と言われているような気がしました。
実際好きなのだからもう仕方がないのだけど、でも、これまでの顧客層以外のところを取りに行こうとした戦略的な結果としてのこれだとしたらすごい。でもそういう意志が全面にあるとしたら実際こういう音にはならんはずなので、本当はこれどういうつもりなのでしょうか。
凄まじく地味だけど、でもだからこそ彼女の歌い手としての「華」はとてもわかりやすいアルバムではあります。


Erasure / The Neon

2017年の前作は微妙に曲がメロウ気味に寄っていたり、2014年の前々作はいつもよりリズムに気を遣った曲が多かったり、多少の振れ幅は感じられるものでした。そして今作。戻った。何にも振れてない。まごうことなきErasure。1980年代から知っているあの通りのErasureです。
当時からどんだけ技術が変わり、機材が変わったかということを考えると、そして当然人ですからいろいろ考えもするでしょう。この30年以上にわたって「全然変わらない」ことを維持することがどれだけ奇跡的なことなのか、ということなんですよ。歴史をどれだけ重ねても何の重みも蓄積も感じさせない、相変わらずの「ただのポップス」。だからこそ凄い。


X / Alphabet Land

X JAPANが海外進出するにあたって「JAPAN」を付けなくてはいけなくなった原因になったバンドというか、そもそもある程度インディーズ聴いている人間であれば当時からそこそこ知られたバンドだったので、YOSHIKIは仕方がない。
で、これ27年ぶりのアルバム、かつオリジナルメンバーによるアルバムとしては35年ぶりという、もうどうしていいのかわからないレベルのタイムライン。

1980年代から、50-60年代の古い「ロックンロール」を下敷きにしつつも、少なくとも音源からは何か微妙な「ほの暗さ」が漏れ出てくる不思議なバンドでしたが、これだけ時間がたっても全く変わっていない。
そして今作は最新作にして、過去のどの作品よりもわかりやすく「50-60年代の古い「ロックンロール」を下敷きにし」ていることがわかるというか、意図的にそうしている。でもやっぱり彼らのフィルターを通すと彼らでしかないから、やっぱりバンドって面白い。

あと、男女ツインヴォーカルのバンドの話をした時にこのバンドをすっかり忘れていたことに気付きました。

レコード屋が移転すること

大都市には所謂「レコード屋地帯」というのがあります。

名古屋は過去から今に至るまで大須2-3丁目か栄3丁目あたりの界隈がまさにそれですが、ここ数年で新栄町や池下にも新しい店舗ができたり、栄にあったStiff Slackが名鉄瀬戸線清水駅近くの高架下のライブスペースを併設した店舗に移転したり、名古屋全体としては中心軸が少し東にずれた感はあります。

大阪は西心斎橋1丁目が圧倒的に中心でしたが少しずつ店が減っていき、逆に四ツ橋筋を挟んで西、堀江のあたりは店舗が少しずつ増えていき、西に中心軸がずれつつあります。昨年12月、心斎橋の老舗TIME BOMBが南堀江に移転したことが非常に象徴的でした。
でも徒歩で行き来できる範囲ではありますし、「徒歩で1時間で何軒のレコ屋を回れるか」のレースを開催した場合は東京以上にここらあたりが日本で一番有利なはずです。

東京の「レコード屋地帯」は、新宿区西新宿7丁目の小滝橋通り界隈と渋谷区宇田川町の通称「シスコ坂」界隈が代表的ですが、ここらへんは新宿レコードが下北沢に移転したり、渋谷のレコファンも閉店を決定したりと、双方全盛期に比べると相当に厳しい状況です。
先日、アーバンライフメトロに書かせていただいたように、今、東京で一番熱い「レコード屋地帯」は下北沢というのが最近の傾向。

ただ、何か東京もここんとこレコ屋移転のニュースがいくつか入ってきています。
まず吉祥寺。

ディスクユニオン吉祥寺、10/2に吉祥寺PARCOに移転オープン

吉祥寺も全席期に比べるとレコード屋の数は減りました。そんな中ユニオンが長年居を構えていた元町通り沿いの2階から移転してパルコのB1階へ。
「パルコのB1階」と言えば、昨年11月に復活オープンした渋谷パルコのB1階に入ったユニオンレコード渋谷店。その縁でしょうか、こういうことになっております。
そしてその渋谷パルコのB1階には更にこの20日、センター街からダンス系専門のレコード店Techniqueが移転してオープンいたしました。

テクニークが渋谷PARCOに1年間限定で移転

1年限定というのは何でだろうと思ったのですが、これパルコによる救済策ではないかとも思いまして。
渋谷パルコが復活した時に一緒にWAVEも復活するよ、という話も聞いて随分テンション上がったのですが、蓋を開けてみたら駅の売店のような極小店でがっかりしまして。

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でもパルコの店内を歩いてみると、BGMがそのWAVEに置いてあった電子音楽のレコードの曲だったりとか、要するにあのWAVEはそこ単体で売り上げを最大化するというのではなく、このパルコのコンセプトを象徴した場所なのだということで、何となく理解したのですが。

で、こういう最近の状況下で店舗の売上も低下して、奥の方の2階とはいえ渋谷センター街の立地でしんどい状況になっていたTechniqueに対して、音楽コンセプト的にも遠くはないパルコが手を差し伸べたのではないかと。

上記、完全に「そんな話だったらいいな」という私の想像です。
殺伐とした渋谷の街にもそんなあたたかい話があると、素敵じゃないですか。

何で日本以外ではCD売れなくなったのか考えたこと(続き)

前回、米津玄師のニューアルバムのCD売上がミリオン入ったこときっかけでこういうことを書いたのですが、やっぱ続きを考えるわけですよ。

2年ほど前に書いた記事。
アメリカと日本の閉店のこと

現在、アメリカ国内にあるCD販売ショップチェーンはFYEのみ。それもアパレルやら雑貨やらとの兼売。そして2年前は250弱と書いていますが、今数えたら200切っていましたので、まあそういうことで。
全米を網羅する家電量販店チェーンBest Buyは2018年にCD販売から撤収しましたが、WalmartとTargetあたりの巨大ショッピングセンターはまだ売っています。
ただ、ここらへんは最初からきめ細やかな品揃えとかはしていなくて、売れ線の数百タイトルをすごい勢いで並べるだけですので、現状で大規模チェーンのCD販売が素晴らしく機能しているとは思えません。

UKにはまだHMVが健在ですが、2年前に経営破綻してカナダ最大の小売チェーンSunrise Recordsが買収した際に、ロンドンはOxford St.の旗艦店を含む27店舗を閉鎖して、現在国内100弱の店舗網となっています。

ということで、たとえばWalmartのCD販売ページはこんな感じ。
日本や韓国と同様に特殊パッケージを限定販売する手法を世界中で行っているBTSの他は、往年のスターバンドのベスト盤かアナログ盤ばかりが目につきます。

一方ミュージシャン側にも、特にヒップホップ系の若手はアプリのGarageBandで全部音を作って、リリック乗せて完成、それをSNSに流して注目されて一気に若手注目株になって、それからエージェントに所属してツアーを組んで、という流れで売れる人が非常に多くなっています。
そこにはもう物理的な流通というものは一切存在しておらず、当然CDショップが介在する余地などありません。
そりゃWalmartが売るのもそういう感じのブツになるよな、とも思います。

あと、こういう記事。
全世界の音楽産業が、5年連続プラス成長。200億ドルを久々突破、日本市場の成長は?

新興国の伸びがすごいということなんですけど、これ要するにストリーミングサービスが「オフィシャルで、かつ安価に音楽に触れる手段」として受け入れられたから、ということが推測されます。
ストリーミングの登場によって「初めてお金を出してオフィシャルな音源に触れる」ことになったという人が、恐らく日本よりも多かったということです。

日本もすごい勢いでストリーミングに流れてはいるものの、売上としては相変わらず減少しています。でもこれは「非公式に聴いていた人」の相対的な少なさもありますが、「再販制」の存在がとてつもなく大きいです。

世界中CDは自由に価格が付けられていた商品で、アメリカで言えばアルバムCDを戦略的に10ドルを切る価格で販売されていたりもしたもの。しかし日本だけはCD価格が再販制によって高いところで固定された価格で販売されていました。それが一気に数年で世界レベルと同一レベルのサブスクリプションの価格に一気に移行してしまったのですから、以前を上回りようがありません。

もちろんBAD HOP等の台頭など大きな動きはありますが、日本では海外ほどヒップホップが大きなうねりになってはいません。
また、諭吉佳作/menのようにGarageBandを駆使するミュージシャンも登場してはいますが、こちらもそれで爆発的に売れるというような事象は今のところ起きてはいません。
これは単に日本人の性格や嗜好性によるものなのか、レーベルと音楽出版社たるテレビ局との関係性もあって、既存メディアからの盛んな発信がなされた結果、「既存の音楽」的なものがまだ受けがちなのか。

とりあえず、日本と欧米にはCDが売れるとかヒップホップが流行るとか結果の差異以外にもいろんな差異があって、どこかには「意図」もあって、総合的な理由でもってこういうことになってるんだよね、という箸にも棒にもかからないまとめしか今はできない。
というか、業界の中から眺めればもう少し見通しも変わってくるのかと思いながら、でも外から適当に想像して面白がっている方がきっと楽しい。

何で日本以外ではCD売れなくなったのか考えたこと

米津玄師の「STRAY SHEEP」がアホみたいに売れています。
このアルバムのリリースと同時にこの最新アルバムや「ハチ」名義の頃の音源もストリーミングサービスに解禁されているのですが、それでも売れるCD。ミリオンは確実ということで。
デイリーの売上を見ていくと、約2週間たってもさして売り上げが下がらないまま推移しているのがわかります。

8/04(火):375,300
8/05(水):142,800
8/06(木):137,200
8/07(金):75,300
8/08(土):70,600
8/09(日):75,600
8/10(月):42,600
8/11(火):34,500
8/12(水):38,500
8/13(木):27,100
8/14(金):30,200
8/15(土):35,000
8/16(日):43,600
8/17(月):23,400

別の例だと一回り売上枚数は劣りますが、Official髭男dismの「Traveller」、ストリーミングでも聴けるし、CDもリリースから10か月以上たっているのですが、売上40万枚を越えていまだCDアルバムチャートの20位以下に落ちることなく順位をキープしています。今週14位。
これってどういう動きなのかと考えていまして。

サブスクのストリーミングの音楽配信サービスって、自分のようにあっちゃこっちゃ適当に聴く人間としては非常に有用なサービスなんですが、たとえばあるミュージシャンの大ファンだけど他の人の音楽はさして聴かんよ、という人の場合、月に980円×12か月って高いと思うのです。
たとえば米津玄師の大ファンが、この1年間でリリースした音源を購入した場合、リリースされたフィジカルはシングル「馬と鹿」とアルバム「STRAY SHEEP」、あと先行でダウンロード販売された1曲を加えても、それだけ。すごく熱心なファンでシングル、アルバムの限定盤2種を両方購入していたとしても15,000円程度で、でも限定盤のDVDも見られるし、アートブックも手に入るわけです。
どう考えてもストリーミングに入るより、CDの方がお得です。
CD購入者の結構な割合がそういうタイプの人であり、というか「音楽を聴く」人のそれなりの割合がそういう、誰かの熱心なファンとしてその音楽を聴くというタイプの人だと思います。

ヒゲダンや今回の米津玄師のCD売上の動きも、様々なメディア露出やプロモーションの結果、これまでライトユーザーであった層を「ファン」として取り込むことに成功したと考えるのが妥当と思いますし、、そういうファンが「CDの売上」を支え続けていると捉えるのが普通です。

だとするとだ。
そういう「ファン」の動きは日本に限らず洋の東西問わずあると思うのですが、じゃあ何で日本以外のだいたいの国でCDの売上があそこまで先細っているのか。という疑問が。
「なぜ日本だけがCD売れ続けているのか」ではなく、「なぜ日本以外の国でそこまでCD売れなくなっちゃったのか」の方が、日本人という立場ではむしろ疑問の方向としてはふさわしいのではないかと思ったのです。

欧米では既にCDはリリースなし、フィジカルはアナログだけというパターンも増え、アナログ盤が日本にとってのファンアイテム=初回限定盤的な位置付けにもなっていますし、ミュージシャンによってはCDを出すのは初回限定盤だけ、それも凝った仕様のためすげえ高価だけど通常盤CDはなしという事例もあったりするのですが、正直自分としては何でCD出さないんだろうという気持ちも。
だって過去からずっとCD買っているミュージシャンならそのまま新譜もCD棚に並べたいじゃん。
どうやら少しだけCDもリリースされているみたいなんだけど、もうタワレコにも入荷されなかったりとか。

てめえの頭で考えた限りでその答えの候補を挙げてみると。

  • 現在の欧米では2007年にMaddonaがワーナーとの契約終了後組んだのがLive Nationであったという点に象徴されるように、既に興行中心のビジネスが主流になっていて、レーベル側の利益最大化を考慮する必要がない
  • Chance The Rapperのようなレーベル契約を伴わないままスターになる存在が現われ、熱心なファンであってもフィジカルの購入を行うことのないタイプのミュージシャンが増加している。
  • Lil系のヒップホップ勢など、YoutTubeやSNSを主戦場にするミュージシャンが増加し、そもそもそのその活動の多くをネット上に収斂させている事例も増えている。

要するに、「レーベルの力が相対的に弱くなったから」というあたりに収斂されてしまいますが、果たして本当にそれだけでしょうか。
確かに日本はまだ全然海外と比較して「レーベルが強い」というのは間違いないですし、若いミュージシャンの多くもメジャーとの契約を夢見て活動しているような節もあるわけですが。
でも本当にそれだけか。

たとえば「レンタルCD」という業態が存在するのは日本だけなのですが、それによって確かにCDの売上は減ったかもしれませんが、でもユーザーにとって「CDへの親和性」はむしろ上がっているのではないかとか、大都市圏の「鉄道中心文化」、つまり拠点となる都市に存在する店舗へのアクセス性にも要因があるのではないかとか、いろいろ考えるのですが、でも結論なんぞ出ねえわ。

でも何となく心のここらへんに、そういう疑問は置いておきます。
もしかしたらすごい気付きが今後あるかもしれない。決して誰も得しない、俺がちょっと嬉しいだけの気付きですが。

GEOがいよいよ大変になってきたこと

先日もGEOが何かおかしいということを申し上げたのですが、この8月はやっぱり異常です。
TSUTAYAはずっと何らかの意図があって集中的に閉店しているような素振りもあるのですが、GEOはここまでずっと月に2-3店舗程度閉店し、でも下手したらその数以上に「総合リサイクル」業態に舵を切った「セカンドストリート」をオープンさせていたりしたのですが、この8/16、23、30のGEOの閉店数が過去に見たことがないペースになっていて。

8/16:GEO 大子町店(茨城県)
8/16:GEO 習志野台店(千葉県)
8/16:GEO 流山店(千葉県)
8/16:GEO 鴨川横渚店(千葉県)

8/23:GEO 太田店(群馬県)
8/23:GEO 北赤羽駅前店(東京都)
8/23:GEO 下石神井店(東京都)
8/23:GEO 福岡日佐店(福岡県)

8/30:GEO 鯵ヶ沢店(青森県)
8/30:GEO 豊田東山店(愛知県)

いや、おかしいのよ。これまでのGEOではありえない、同時多発的閉店が起きているのです。
もちろん2020年は通常ではありえない年ではありますので、これ一番状況的に酷い時を踏まえたうえで損得勘定した結果、ということなんだとは思うのですが。

そして、今のGEOの店内に入って思うのは、これ相当ヤバいぞということ。
これまで「GEO」業態を「セカンドストリート」業態に変更しつつこれからの生き残りを模索していたわけですが、もう業態変更を待っていられない状況が生じています。
つまり、「GEO」業態のまま「家電買い取ります!」とかの「総合リサイクル」的な方針を打ち出している店が増加しているということ。
そしてレンタルとか物販のスペースを削って家電を陳列している。

で、これどういうことかというと、「GEO」や「セカンドストリート」とBOOKOFFの「BOOKOFF SUPER BAZAAR」の業態がほぼイコールになったということ。もっと言えば「HARDOFF」とか各地方の「お宝倉庫」的な店とのも競合。これまでは住み分けができていましたが、本やCD/DVDが厳しくなった今となっては、衣服とか家電とか諸々の、今後もなくなりそうにないものに突っ込んでいくしかないですから。
「GEO」とか「BOOKOFF」とかのブランドがそういうところにどれくらい効くのかはわかりませんが、とりあえず殴り合い的な状況になっていることは間違いなく、でもそういうことであれば、徐々に「縄張り争い」的な、別の戦いが始まるわけです。
それはそれで大変ではありますが、それでも、本やCD/DVDあたりに限定された領域よりはマシ、ということで。