小田和正@有明アリーナのライブのこと

6月3日は小田和正@有明アリーナ。

最近、ベテランミュージシャンはいつ引退しちゃうかわからないのでできるだけ観るようにしています。
引退宣言した吉田拓郎も、なし崩しに隠居状態に突入した井上陽水もその方針のおかげで観ることができたのですが、小田和正については、ある朝起きて声が出ないと思ったら即やめそうな気がするので、是非とも早いところ観たいと思っていてようやく。

これが、他のミュージシャンとは全く違う、少なくともアリーナクラスでは経験したことがないタイプのコンサートでした。

ライブに行くときは多少なりとも「何これ!?」的なものを期待していくことが、自分にとっては普通になっています。
衝撃とか、圧倒とか、混沌とか、そういうタイプのヤツ。
たとえば同じ「歌うまい」カテゴリに入れられがちな玉置浩二とかは、ライブで観たらもう殴りかかってくるような圧倒的な「歌」だったんですが。

でも小田和正ライブは、それが一切ありませんでした。
当然歌は抜群にうまい。バンドの演奏も抜群。でもそれが何の引っかかりもなくすっと入ってくる。
圧倒的に曲はいいわけですが、それはもう音源で知ってるからライブ時の驚きにはならない。

場も自分が知っているよくあるライブのそれではない。盛り上がっていないわけではない。みんな楽しそうだし。
でも、自分が他のライブでよく知っている会場を飲み込む熱狂的な空気は皆無。すごくふわっとした空気感が会場全体を包んでいる。

だからそういうことなんだと、はたと気が付きます。
自分の方がここでは異端なのだと。
ここに集っている人たちは、音楽コンサートに、衝撃とか、圧倒とか、混沌とか、そういうものを期待して来ているわけではないのだと。
普段の生活と地続きの、でも少し違う彩りの体験としてのコンサート。

そういう体験として、彼の書く美しいメロディと、最近の割と抽象的な歌詞は凄まじくマッチします。
アホみたいにいろんな音楽にガツガツしている自分のような人間ではない人たちにとってこれはベストマッチなのかもしれない、実際アリーナクラスがすごい勢いでソールドアウトするわけですから、そういう需要はとてつもなくあるのだと。

彼の楽曲で最もレンジの広い「YES-YES-YES」は、もしかしたらもう「連れてゆくよ」のハイトーンの極みはもう出ないのかもしれない、実際今回の彼自身、低い方の音をなぞって、主旋律はオーディエンスに任せていたし。
でも、そういう「すごい」ではなくとも、場として「こういうのが聴きたい」は完璧に全うするというスタイル。

これはこれで「アリ」なのだと、理解した次第。
だから、生で観なきゃわかんないことがまだいっぱいあるんですよ。いや本当に観てよかった。


あとは、さだまさしと浜田省吾。チケット取れる気がしない。

Michael Head@下北沢シャングリラのライブのこと

5/30はMichael Head & The Red Elastic Bandのライブ@下北沢シャングリラ。

The Pale Fountainsは完全に後追いで聴きました。
初めて知ったのは、1980年代後半に東海地区の深夜に流れていたバナナレコードのTVCM。画面に映っているのはマーク・ボランなのに、流れてくるのは「Palm Of My Hand」のイントロという謎のCMでした。
二番目はその後関西に引っ越した後、よみうりテレビの土曜の深夜にテーマを決めて割とレアな作品も込みで映画を放映することがあったのですが、そのオープニングテーマが「Bruised Aracade」でして。

その頃には既にThe Pale Fountainsは解散し、Michael HeadはShackでの活動に移行、そっちはほぼリアルタイムで追っていたのですが、でもやっぱりThe Pale Fountainsの方が好きだなと思いながら。
1992年のShack来日時は貧乏学生のため行くこともなく、結局今回それ以来の来日。昨年のアルバムが大変によかったのもありますが、そりゃThe Pale FountainsやShackの音源もやることを期待しながら。

頭3曲、最新作からぎっちりやって、まあアルバムのリリースツアーだよねと思ったら直後に「Reach」。サビの「あ・あ・あ・あーい」を本人歌唱でシンガロングできる日が来るなんて思ってもいなかったよ。もう泣けてきそうだよ。
The Pale Fountains楽曲はもう1曲「Jean's Not Happening」も、印象的すぎるギターソロも含めて堪能。
Shackは「HMS Fable」からやたらやったような気がしますが良いアルバムなのでOKだし、大好きな「Undecided」もやってくれたのも素晴らしい。

40年以上活動し続けてチャート的にも昨年がキャリアハイという異常なレベルの現役感と、でも思春期の己のハートをえぐってくる異様な懐かし感が交互に訪れる謎のライブ。

Michaelは本当に楽しそうで、「Beautiful!」「Fantastic?」と盛んに言っていましたが、今もってこんなパキパキの音楽をかましてくるあなたが一番BeautifulでFantasticですよ。

また来てほしい。毎年来て新作ツアーと「From Across The Kitchen Table」完全再現と「Zilch」完全再現とかを順繰りにやってくれたら永遠に課金し続けます。

ドレスコーズ×小西康陽のライブ@渋谷クアトロのこと

5月10日は渋谷クラブクアトロでドレスコーズ×小西康陽のツーマン。

ドレスコーズのライブがあるとだいたい声をかけてくれる先輩からまた声がかかったのですが、スマホ見て「何これ」と声が出た組み合わせのツーマン。
いや、わかってはいるんですよ。毛皮のマリーズの「弦楽四重奏曲第9番ホ長調『東京』」やドレスコーズの「スーパー、スーパーサッド」のタイトルはどうしたってピチカート・ファイヴの楽曲タイトルに引っ張られているわけですし。でもこうやって本当に並ぶとやっぱり違和感がある。

しかも、ここ数年の小西氏はDJと弾き語りはコンスタントに行っているものの、バンド編成でのライブは数えるほどしかないはずで、しかも今回は8人編成バンドQ.A.S.B.を従えてのライブという、なかなか観られないはずのヤツ。

先攻、小西氏。
楽器を一切持たず、ヴォーカルに専念する彼というだけでもう面白い。
「知ってるような曲はやりません」て言ったし、一発目はソロになってからの「東京上空3000フィート」だったので、まあそういう感じだなと思ったら次は「サンキュー」だし、その次は「初めて歌います」と言って田島貴男期の「これは恋ではない」やるし、何かすごい。
ラスト3発は「陽の当たる大通り」→「かなしいうわさ(スクーターズへの提供曲)」→「マジック・カーペット・ライド」という、どメジャーではなくてもいい感じの曲ばっかりをいい感じの演奏に乗せていい感じに歌う。
これ、すごくよくないか?と思いながらの1時間弱でした。

後攻、ドレスコーズ・
ここまでの異常な音楽性の変遷によって、もはやどんな音を鳴らしてもOK状態になっている志磨くんが、これを受けてどう並べてくるのかと思ったら、所謂エイトビートな曲ではない、あからさまに「非ロック」的な下敷きのある曲を並べてくるという、なるほど感溢れる選曲。
まあ、3曲目の「聖者」はモータウンではあるけれどそれ直接というよりはThe Smithsの「This Charming Man」経由でしょみたいなのも挟まるけど、でもいい。
そういう感じの楽曲を並べて、これはこれでいいなと思っていたところに、原曲よりも圧倒的にスピードアップした「ビューティフル」を投下してフロア爆裂。
その後、恐らく小西氏へのリスペクトも込めたであろう「弦楽四重奏曲第9番ホ長調『東京』」で本編終了。

アンコールは80年代歌謡曲テイストの新曲とやっぱり「愛に気をつけてね」で終了。
小西氏を呼び込んで何かいっしょにやったら最高だと思っていましたが、残念ながらそれはなし。

それでも「いいもの観た」感満載の気持ちで終了。
というか新曲がもう前のアルバムの音世界を更新しにかかっているので、やっぱり志磨くん頭おかしい。

橋幸夫と夢グループのこと

橋幸夫が5月1日にラストコンサートを開催し、明日3日の80歳の誕生日をもって歌手活動を引退します。

デビュー曲「潮来笠」こそ演歌っぽいというか、今に至る演歌の「股旅もの」と呼ばれるジャンルの代表曲ですが、吉永小百合とのデュエット曲「いつでも夢を」やヴェンチャーズ+サーフ的な「恋をするなら」等のヒットを持つ、当時の「歌謡曲」のど真ん中にいた人です。

1980年代末頃「J-POP」の概念が生まれ、フォーク・ニューミュージック的な音楽まではその範疇に何となく含まれるようになっていった中で、明確にその範疇に入れてもらえなかった「歌謡曲」的な存在がその後何となく大雑把に「演歌」的なところにまとめられてしまいました。
その「演歌」には狭義の演歌だけではなく、唱歌的なものであったり、ムード歌謡的なものも含まれることになってしまい、そういう意味で橋幸夫は大変に「演歌」ということになってしまい、アウトオブデートな感じの扱いになってしまったわけですが。

彼のここ何年かの所属事務所は夢グループ。
夢グループ、現在一般的に最も知られているのはフジテレビの夕方のニュースを見ていると流れる、ジャパネットやタレントが出演しては褒めちぎるタイプのテンション高めのテレビ通販に慣れてしまった身には異様としか思えない、独特過ぎる空気感を放つ謎の通販企業としての姿だと思います。

一方芸能系の活動としては、兄弟デュオ狩人のマネージメントをするために「有限会社あずさ2号」といういかす名前の会社を立ち上げ、でも狩人以外のマネージメントもすることになって「夢グループ」に改称して今に至るわけですが、興行としては「同窓会コンサート」がテレビ通販と並ぶ事業になっています。たぶん。

「同窓会コンサート」は、かつて名を馳せた歌謡曲の歌手の方を多数集めてひとつの公演を行う、お年寄り向けフェスのような形態のコンサートですが、お客さんにとってはいろいろ観られてお得感ありますし、一方演者の皆さんにとっては、歌い続けたいがお年を召して一人で長丁場のコンサートはもう無理という立場からすると非常にありがたい存在のようで、まさにWin-Winの企画。
割とビジネス的にも正解ですし、あのテレビ通販の空気もそれくらいのお年寄り以外相手にしていないからああなると考えると割と合点が行きます。

そしてこれ。
“二代目”橋幸夫がファンに初お披露目 ユニット名は「yH2」に

元々2021年10月の段階で引退を発表、その後「二代目橋幸夫オーディション」の開催を発表、その二代目には「はしゆきお」と読める別の漢字を当てる芸名にすることを発表等、ごく一部にですが割と刺さる感じの告知を出し続け、そしてこの5月1日の最終公演日。
4人組「yH2」が二代目としてデビューすることを発表するに至りました。何で二代目で人数増えるねんと、ちょっと思いましたが、でもこれアリだなと思い直しました。「はしゆきお」の別漢字を当てる案は撤回されましたが、そんな撤回も何となく今っぽい。

橋幸夫の後を継ぐのも大変だとは思いますが、J-POPの範疇外に置かれた「歌謡曲」がこの後生き残っていくのは正直それ以上に難しいと思います。
それを実現するためには、恐らく現在最も「大衆的な歌謡曲」をキープして発信し続けている純烈がロールモデルになることは間違いないわけで、こういうグループの形になることも必然じゃないかと思うのです。
1960年代の全盛期、橋幸夫は間違いなく「アイドル」でもあったわけで、それも含めて引き継ぐのだということで。

だから夢グループの石田社長、割と経営理念はすごくシャープじゃないかと思いました。
通販のCM見てて「何だこいつ」と一瞬思っていました。ごめんなさい。

NUANCE@神奈川県民ホールのライブのこと

4/22はNUANCEのワンマン@神奈川県民ホール。

横浜を本拠地とするアイドルグループだけに「HOME」と名付けられた公演ですが、ここまでZEPP KT YOKOHAMAサイズの公演はあったものの、コロナ禍のため半分以下の定員でもって開催していたため、2500人近い座席のホールでの公演という、どうにもごまかしの効かないという意味ではグループ史上最大級のキャパ。
蓋を開けてみれば、結果として2階に客は入れず、全体見渡して1000人くらいかなあという程度の客入り。非常に忸怩たる思いはありますが、でもこういう場での公演ということで万端整えた結果として、彼女たち史上最強の公演でありました。

彼女たちのワンマンはできるだけ欠かさず観に行くようにしているのですが、楽曲がいちいちいいのに加え、ワンマンでは確実に大人数の生バンド、それも凄まじく高性能な生演奏によって、音楽体験として間違いないものが提供されるという信頼があるからで。
ただ、それに乗っかる当のNUANCEメンバーのパフォーマンスが当然こういう場合キモになるわけですが、これが今回あからさまに過去最高でした。

元々4人編成。それが1人減りもう1人減り、そこで新メンバー3人を加えたもののオリメンがもう一人減り、現状はオリメン1人と新メン3人という構成。
前回観たのは昨年10月のクラブチッタ(その当時は5人)で、まだその時にはオリメン2名とそれに付いていく3名という空気感がバンバンにあったわけで、そこから半年経ってどうなっているかと思っていたのですが。

唯一のオリメンにして、今思い返せば確かに残るとしたら彼女しかいないであろう、人間力も非常に高そうなわかさん。
新メンバーの中で唯一過去にアイドル経験あり、即戦力的な立ち位置で「あざと可愛い」を全面にかましてくる恭美さん。
最も「真面目」な空気を出しつつ、でも過去メンにそういう人間がいなかったので、グループに新たな空気を生み出す初音さん。
一番身長大きい割に一番ふんわりした空気を醸しつつ、でも出てくる時にはかなりグイグイ出てくる妃菜さん。

もう新メンとか関係なく、四者四様でかつグループとして相当いい感じのパフォーマンス。
過去のNUANCEに「チーム感」など求めたことはなかったのですが、でも今回観て思ったのは、今は間違いなく「チーム感」が存在し、それが間違いなくパフォーマンスに反映されているということ。

坂道、AKB系、ハロプロ、スタダ、WACK。現在のメジャーアイドルはそこらへんですが、それ以外にもいろいろいます。
徹底的にわかりやすい「アイドル」色を出してくるグループ。
ひとつの音楽ジャンルに絞ってその音楽性を前面に出すグループ。
キャラを全面的に押し出すことでファンを獲得しようというグループ。

いろいろあるのですが、NUANCEはこれはこれで、他にはないひとつの「極」と言える存在だと思うのです。
そして音楽性とアイドル性とキャラクターと、割と自分にとっていい塩梅のその「極」を、これからも愛したいと思うのです。

素晴らしいライブだったのですが、一点問題点を挙げるとすれば、「4人の声が聞き取りにくかった」こと。
バンドを聴かせたい気持ちはわかりますが、バンドの音の方がややでかすぎて曲の合間にメンバーが言ってることがほぼ聞き取れない。
というか、ホールはホールの音響特性があるわけですが、PAのセッティングとして中高域のあたりのそれが上手くいってなくて渋滞していた感じがします。

これから、ホールのライブとか当たり前になって、そこらへんも難なくクリアできるようになってほしい。
期待しています。マジで頑張ってほしい。

RIDE@リキッドルームのライブ(2DAYS)のこと

4/19と20はRIDEを観にリキッドルームに通いました。

19日は1st「Nowhere」再現ライブ。20日は2nd「Going Blank Again」再現ライブ。これはどうしても行かなくては行けないヤツ。学生時代をエグってくるヤツ。

「Nowhere」は今思い返すに「今に至る音楽ジャンルとしての」シューゲイザーのパイオニアなわけです。
もちろんその前にはMy Bloody Valentineの「Isn't Anything」もありましたし、その前のThe Jesus And Mary Chainがそもそもの始祖でしょ、いやその前に云々と様々説はあるわけですが、「Psyco Candy」にしろ「Isn't Anything」にしろ、あれは常人が常人の感覚では作りようのない異形のブツであり。

「Nowhere」はそんな異形の音楽を常人でもフォロー可能なレベルに翻訳したという意味での先駆者的な音だと思っています。そういう意味、「ジャンル」としてのパイオニア。

アルバム以前に当時UKのインディーズをリアルタイムで追っていた方々であれば「赤RIDE完売」「黄RIDE完売」という輸入盤屋の状況を覚えておられるかと思います。
あの当時のRIDEは何か神がかっていました。Creationといういわば「直系」であること、赤→黄→ペンギン→波というリリースの流れの完璧さ、そして「波」の、フィードバックに頼り切ることのない音楽的な多彩さ。

そしてそんな完璧な1stの後どうするかと思ったら、「Leave Them All Behind」という長尺の超ヘビーサウンドでまたたまげるわけです。そのカップリングには更に長尺でヘビーな「Grasshopper」。
こう来るのかと思わせておいてからの2ndアルバムは、蓋を開けてみれば1st以上に多彩な音楽性を持つ、大変に「豊かな」アルバムで。
ただその分「シューゲイザー」分は著しく後退したわけですが。

その後は正直「この音は別にRIDEじゃなくてもいいんじゃないの」的な方向に進んでいったため、2ndまでの記憶が宝物のように残っていて。
そういうリアルタイムの彼らを経験したおっさんにとって、この「アルバム再現ライブ」はもう避けては通れないのです。

19日「Nowhere」。
「Seagull」のイントロの時点でもう泣きそうになる。「Dreams Burn Down」のイントロの太鼓でゾクゾクする。「Vapor Trail」で感無量。という概ねベタな感想。
ただ、「Nowhere」は元々8曲のアルバムで、CDボーナストラックとして「Fall EP(通称ペンギンRIDE)」の「Dreams Burn Down」以外のカップリング3曲が収録されているという形なのですが、そこはきちんとCD準拠で11曲きちんとやる律義さ。

で、アンコールに翌日やるはずの「OX4」出てきておおうと思っていたら、いきなり「新曲やるよ」と言って新曲、そしてオーラスは翌日1曲目で聴く予定の「Leave Them All Behind」。
次に繋ぐという意味ではあんまり直接的過ぎるのですが、でもやっぱりいい曲なのでOK。

20日「Going Blank Again」。
何となく前日より場のテンション高め。わかる。敢えてこっちだけ来る人とはむしろ友達になりたい。というか古い友達がそれだった。
正直なところ、音楽としてはこっちのほうが楽しい。1stが音楽史上に残る名盤であることは承知の上で。
本編「OX4」の後、「ボーナストラックやるよ」というMCの後に「Grasshopper」。それ大正解。ゴリゴリに弾き倒し叩き倒す10分強。最高じゃないですか。
アンコールでは昨日と同じ新曲やりつつ、「Taste」「Vapor Trail」も。ああ、これで終わるのもいいなと思っていたらオーラスで赤ライドの「Chelsea Girl」。最後の最後に鷲掴みに来た。

それでも、新曲やるし「来年また来るよ」と言ってるし、再結成後の「現役バンド」感もふつふつと感じさせる、大変によい2日間でした。

問題点があるとすれば、当時は圧倒的美少年だったマークが、元々髪は細そうだったので現在スキンヘッドなのはやむを得ないとして、あと体型も当時の細身ではないのもやむを得ないとして、でも何か弾いたり歌ったり動いたりの所作までが「おっさん」になっていたことでしょうか。
でもそれもやむを得ない。だって実際おっさんだから。
そして自分も当然おっさんになりました。RIDE、大好きです。

クマリデパート@日本武道館のライブのこと

3/30はクマリデパート@日本武道館。

昨今、一時期より随分と勢いが弱っている女子アイドルグループ界隈。コロナ禍も相まって「ライブアイドル」と呼ばれるグループの活動もかなり制限されたこともあり、なかなかしんどい状況が続いています。

東京都で「声出しなしであれば定員の100%収容してもいいよ」令が施行されたのが2022年の4月下旬、それ以降「初めての武道館公演」を開催したアイドルグループは、2022年9月14日開催の「26時のマスカレイド」と2023年3月15日開催の「ぜんぶ君のせいだ。」の2組ですが、その双方ともが解散ライブ。
ということで、「順調に知名度を上げて動員を上げて辿り着きました!」という健全なタイプの初武道館は、コロナ禍の制限以降では彼女たちが女性アイドルグループとしては初めてということで。

ただ、直前まで各メンバーが「来てね!」というツイートをガンガンに行っている状況を見るにつけ、やっぱりしんどいのかと思いつつ、九段下駅の2番出口から外に出ると、山盛りの人だかり。
「やったじゃん!」と思ったのも束の間、そこにいた人の大半は千鳥ヶ淵の桜を見物に来ていた人たちで、田安門をくぐると割といつも以下。
私は1階スタンド席だったんですけど、1つ席を空けてオーディエンスを配置する、コロナ期によく見た光景。もうそれしなくていいんですけどそうしてるということは、まあそういうことです。
そしてアリーナにはセンターステージ。武道館のアリーナの客席に充てるべき面積を相当に潰してそれを設置するということは、まあそういうことです。
正直なところ、4000人いるかいないかというところ。相当に厳しい。

でも、ライブはすごくよかった。本当によかった。

ここまで「埋まってない日本武道館でのライブ」を割と観てきている方だと思っていますが、だいたいそういう時はみんなMCで「力及ばず」とか「悔しいけど」って言うんですよ。で、それが確実に会場全体の空気感にも影響を与えてしまっている訳ですが。
でも彼女たちは違いました。ネガなフレーズ一切なし。「うれしい!」「楽しい!」「こんな広いところでできるなんて!」「チケットが今までで一番売れた!」という超ポジティブ発言の連発。

実際、彼女たちにも悔しさはあると思うんです。でも我々が彼女たちに期待しているのはそんなMCではなく、いつも無闇にポジティブでハッピーな空気であり、彼女たちも当然それをわかっているからこそのそういう言葉なんだろうと思います。
そういうアイドルとしての矜持が生み出すステージが悪かろうはずもなく、発するそれはもう「多幸感」と呼んでいいほどのそれになり、何回か観たことのある彼女たちのステージの中でも圧倒的なパフォーマンス。

で、観察していて思ったのは、当然6人とも素晴らしいのですが、特にオリジナルメンバーの早桜ニコ&優雨ナコ2名のプレゼンスがこういう場だからこそ強力に見えて。
私は時折言うように「アイドルとは女の子本体を指すのではなく、女の子のそうあろうとする意志を指す言葉である」と本気で思っていますが、オリメン2名のその意志の強さは過去から見てきてわかっているつもりです。
そして後から加入したフウカ&アヤネ、マナ&メイにその意志は確実に引き継がれ、今6人でこんな驚くほどの空気を日本武道館に充満させている。本当にプロの仕事ですよこれ。

病んでる感じとか、サブカル的に少し斜に構えた感じとか、アイドルグループにもいろいろあります。
クマリもサクライケンタ氏のサウンドプロデュースですから、元々王道ではないところからのスタートだったはずですが、今や王道中の王道を突っ走っていて、だからこそこの動員は、今のこの界隈の限界がこれなのかと残念ではあるのですが、でも結構たくさん観ていたはずの他のアイドルグループのメンバーにも何がしかの印象は与えているはずで、それがこれからのアイドル界隈にとっていい影響になればいいなと、本気で思いました。

残念なところを敢えて挙げるとすれば、「幸せハッシン!フロムキッチン 」の際、もしかしたらこういう場だし平野レミ氏生登場もあるかと思っていたところ、スクリーン映像にものすごく雑な画像を重ねた処理で終わったことぐらいです。

あと思ったのは、公式のライブ後のツイートで披露された写真における、空席の存在をここまでうまく処理するカメラマンさんの腕の確かさに感動しました。これも間違いなくプロの仕事です。

もう一点、武道館ライブの応援コメント特設ページに掲載された吉田豪氏のコメントと、これの掲載をOKした運営の両方ともすげえと思いました。

bjork@東京ガーデンシアターのライブのこと

28日はbjorkの来日公演を観に東京ガーデンシアター。

今回の来日は「orchestral」と「cornucopia」という2つの異なったスタイルの公演を行う形で、できれば両方観たかったのですが、チケットが鼻が出るくらい高かったため、やむなく片方ということで「cornucopia」の方を選択、25,000円也。
これで屁みたいな公演だったら暴れてやるくらいの意気込みで臨んだのですが、これがとんでもねえことになっておりまして。

開演いきなりどう見ても日本人ぽい女性12人男性8人の合唱団が登場し、かなりアグレッシブにアレンジされた「さくらさくら」を歌い出す。
その後何曲か披露してスッと去って行って何だったんだと思ったのですが、結果としてその後の本公演のコーラスというかクワイアとして組み込まれて大活躍する方々で、恐らく各国各国での公演はこうやってローカライズされているのでしょう。かっちょいい。

トラックの音を出しているのは、PCいじってる人とドラマーの人、あと時々登場するパーカッションの人とハープの人。そしてフルート7人組、以上。というかなり滅茶苦茶な編成。
フルート7人組はほぼダンサーというか、概ね常にbjorkの周りを妖精のように囲んで常に動き回っていたので、これ実際には音出していないんじゃないかとも思っていたのですが、以下の公式ツイートの2枚目、右手手前の方が持っているUというかJ字型のがバスフルートですが、実際間違いなくバスフルート的な音は出ていたし、きっちり口元にマイクはあるので、ガチで音出しているんじゃないかと後から思い直したり。

全体としてはこれを「音楽ライブ」と呼んでいいのかどうか迷うレベルの独特過ぎる感触。かつて全く観たことのない、他に類するものが何もない、むしろbjorkを頂点とした国家による儀式を拝観しているような気持ち。

少なくとも「Hyperballad」やってくれねえかなあ、みたいな気持ちが入る余地の一切ない、トータルとして完成されまくったパフォーマンス。
アンコールでは「それ金属タワシかよ」的な謎の衣装も披露し、でもそれも照明当たると何だかとてもきれいで、もうとにかく「俺はbjork観たよ!」という気持ちでいっぱいになる。

本当、彼女の「おのれ自身をコンテンツとする」覚悟はハンパないですし、それでも「消費されて終わりにはしない」という矜持も強烈で、今そういうバランスでやれているミュージシャン、多分世界で彼女だけだと思います。

いや、これが25,000円なら妥当ですよ。文句ないですよ。本当に観てよかった。

Sigur Rosもとんでもなかったし、アイスランド勢はやっぱすげえ。あとは2020年1月に来日公演予定だったのがキャンセルされて、そのまま何のアナウンスもないOf Monsters And Menの来日公演が観たい。普通の音楽ライブで構わないから来て。

最近行った地方のCD/レコード屋のこと

相変わらずあちこちうろうろしています。
ここんとこ行った地方のレコ屋の話をします。

■TSUTAYA 四日市店

割と淡々とCD店閉店の記録を続けていますが、さすがに自分が小学生の時から通ってきた店が閉店すると聞いた時には動揺しました。
元々、四日市に本店があった書店&レコ屋&文具店の「白揚」というチェーンがあり、本店は近鉄四日市駅近くのアーケード街にありまして、こっちはその支店「シェトワ白揚 四日市店」として1978年にオープンしたものです。

店の少し北に市立図書館があって、受験生のときには毎週末自転車こいで通っていて、自習室に籠って帰宅する前の10分だけ寄って、立ち読みしたりレコード眺めたりするのが唯一の息抜きだった時期もあり。
その後、2005年には市街地の本店が潰れてお姉さんのいるお店になり、2011年には愛知県の「いまじん」と合併して「いまじん白揚」になり、2015年には完全にTSUTAYAの傘下に入って「TSUTAYA 四日市店」になり。
そしてこの3/31に閉店。別に思い出がない店でも割と行っちゃう人間が行かないはずもなく、日帰りで行って拝んでまいりました。


■マツダ電機商会(四日市市)

で、TSUTAYA四日市店拝んだついでに市内のレコ屋を回ったわけです。
新譜屋は自分が住んでいた時分から白揚と近鉄百貨店のレコード売場以外にはほとんどなかったのですが、中古屋はできたり閉店したりしています。

今回はまだあると思って向かった「RED HOUSE」というお店が閉店していてちょっとビビったのですが、その店の跡の真向いの、すごく普通っぽく見える電気店に「レコードあります」の張り紙。
誘われるまま入ってみたら、電化製品のみならず部品とかまで売っている中に、確かにレコード棚。
品揃えとしてはそんな尖ったところはないのだけど、もうこういう環境でレコードを掘っているだけで楽しい。話好きなお父さんとコブクロ好きなお母さんとの会話も楽しい。
これからもっと本気出すと仰っていたので、また行く。みんなも行こう。


■BOOKOFF 函館本通店(函館市)

代休取って2泊3日で函館とか弘前とかうろうろしていました。
函館は駅近くはもう繁華街としては相当しんどい状況で、今はどこが商業の中心かとえば恐らく美原地区の市役所亀田支所周辺だろうなあと思ってそこらを攻め、函館の中古レコード屋老舗のドリカムや、駅近からドンキの中に移転した玉光堂に行ったりしたのですが、流れで覗いたBOOKOFF函館本通店が一番ヤバかった。
アナログ盤の量的に。

BOOKOFFの基準では「中型店舗」の規模の店ですが、並みの「大型店舗」を軽くぶっちぎる凄まじい在庫。
しかし残念なことに分類が酷く雑で、7インチに至ってはほとんど分類札も刺さっておらず、かつレコードの向きすらバラバラで掘るのがとにかくしんどい。しんどいが楽しい。楽しいが時間がかかる。困る店です。


■JOY-POPS(弘前市)

2007年に閉店した新譜CD店が、2021年に中古レコ屋として同じ屋号で復活したというなかなか稀有な事例のお店。
店の位置もあまり変わっていないのですが、ライブハウスが入っている建物の3階という「なるほど」感溢れる立地。四日市市にかつてあったHollywood Recordsと同じ感じです。
2階から3階に向かうところに引き戸があって多少ドキドキしますが、開けてしまえば問題なし。

割とゆったりした店内でゆっくり掘れます。
品揃えは洋楽は1970年代のバンド勢厚め、邦楽は70-80年代の尖った感じのフォーク・ロック系厚めという、こちらも「なるほど」感のある品揃えですが、そこらのジャンル以外でもひょいっと他ではなかなか見ないブツも出てきたりします。

で、弘前ではほとんどCDは置いてないTSUTAYA BOOKSTOREも念のため覗いてみたのですが、「りんご娘」のメンバーのうち1名が来ていて、割と人だかりができていました。さすが老舗ローカルアイドル。
ただ、店内には「3/26に王林来たる」という告知のポスターが貼ってあって、やっぱ元メンの彼女は今も別格であることもわかりました。

蔦屋書店のトップカルチャー、レンタル撤退の進捗のこと

TSUTAYAの最大手フランチャイジーのひとつ、トップカルチャー。
新潟県を本拠地に北は岩手県、西というか南は静岡県までの店舗網を持っていますが、そのトップカルチャーが「2023年12月までにレンタル業態から撤退します」という宣言をしたのが2021年の7月。

蔦屋書店・TSUTAYA 74店展開のトップカルチャー、レンタル事業撤退へ

発表した期日まで残り10か月を切った現在、進捗としてはどんなもんかいなということを調べるのが今回の目的です。

まずは全店の状態をざっくりまとめ。
最初の○×が「CD/DVD販売の有無」で、2番目の○×がレンタルの有無。△は映像レンタルのみ有りでCDレンタルは無し。

レンタル撤退宣言は2021年7月15日ですが、閉店した店舗については2021年の分から記載しています。
2022年9月には、蔦屋書店佐久小諸店(レンタルあり)が移転して蔦屋書店佐久平店(レンタルなし)として再オープン、というパターンもありましたが、以下は佐久平店のみ反映しています。
あと、ここ最近でレンタルをやめてもサイトに反映されていないという事例も見られましたので、実際とのズレはあるかもしれません。


とりあえずの感想は「思ったよりまだレンタル残ってるなあ」ということと、「レンタル撤退だけかと思っていたら、割と店ごと潰す判断が多いなあ」というあたりでしょうか。

前者については、新潟県はそこそこ撤退していますが、長野県・群馬県あたりの残りっぷりがしぶとい感じで。
新潟県内ではひらせいというホームセンターがTSUTAYAのフランチャイジーでもあり、かなりの地域で「TSUTAYA同士でライバル争い」している状態ですので、レンタルはひらせいに丸投げしちゃうという判断も割とできそうですが、他の地域は簡単にそうもいかず、というところがあるのかもしれません。

後者については東京が半減以下というのが強烈ですが、東京都下の「TSUTAYA」名義の店舗は元々他のフランチャイジーがオープンさせたものを譲渡された形で運営している店がほとんどです。
それらの店舗はトップカルチャー自社物件の標準業態である「郊外を中心とした割と床面積が広い店舗で、書籍・文具・CD/DVD販売・レンタルをまとめて取り扱う」にはもとよりマッチしていないため、今後の標準を考える際にその「標準」が展開できない規模の店舗はこれからを考えたら切るしかない、という判断は割と理解できます。

で、これから10か月で全店のレンタル撤退完了できるかということを考えると。
もちろん全社的な指令が出れば物理的には可能なんでしょうけど、さすがに現状でこれだけ残っているともう少しの間残るような気もしなくはないし、絶対的な方針は変わらずとも、少なくとも2023年内なのが「年度内」になるとか、一部2024年までとかくらいは。

ボーイズグループの展開拡大によって「CD/DVD販売」がもう少し延命しそうな状況なのと比較して、「レンタル」という業態が既に収束に向けての最終段階に入っていることは間違いないと思っています。

が、CD/DVDではないのですが、トップカルチャーの店舗でも本社は「レンタル業態から撤退する」言うてるのに、この3月に「コミックレンタル開始します!」とか言ってる店舗もありますし。既刊本を閉店した店舗から持ってきたとしても、何で今それなのか、全くもって謎です。

トップカルチャーのみではなく、TSUTAYA全体でも割と店舗網は順調にシュリンクしていますが、一方でGEOはこの3月にもレンタルも行う店舗を2店舗オープンさせますし、正味よくわからなくなってきた。