THE STALIN「trash」のこと

買うわけですよ、おっさんだから。ディスクユニオンで。

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THE STALINの再発アルバム「trash」が7月5日(日)付のオリコンCDアルバムチャートの1位になったのを見て笑った。
1981年、まだ日本では「インディーズ」という言葉も使われていなかった頃の「自主制作」盤。これの再発盤がデイリーとはいえ1位になった理由にはいくつかあるわけです。

  • 遠藤ミチロウの活動での初のオリジナル・アルバムにして、1981年のオリジナル・リリースとその直後の追加プレスの約3,000枚以外今に至るまで正規の再リリースがなかったこと
  • 歌詞等の内容が内容なので、ストリーミングには解禁されず、CDのみでのリリースであったこと
  • 再リリース日は7月1日ですが、そもそもCD販売に力を入れるミュージシャンももう多くなく、現状でCDでアルバムを買う層はそのミュージシャンの熱烈なファンが多くその販売数がフラゲ日に偏る一方、THE STALINを買う人は年寄りが多いので、フラゲ日に頑張る人もさほど多くなく、結果として日曜日に買った人が多かったこと

それでも、確かオリコンチャートに入った初めてのインディーズのレコードが1985年リリースの有頂天の「心の旅」。ネットのあちこちで「100位以内」って書いてありますが、確か300位まで算出していたフルチャートの200位台だったような記憶。それでも当時は「すごいすごい」という感じになっていて。そりゃNHKもインディーズの特集番組を組みます。

それが今やもはやCDチャートの意味が失われつつある時代、そしてSONYから離れた奥田民生が普通にインディーズチャートに入っていたり、「インディーズ」の枠組も当時とは随分変わりました。
そういう時期を経て、年寄り待望の、コテコテの「自主制作」時代の再発アルバムがインディーズでないCDチャートの1位になる時代。

これも「CD時代の終わり」を告げる象徴的な出来事のひとつ、ということになるのでしょうか。

横にそれると、有頂天はじめとするナゴム勢って、結果として他のインディーズとは異なる異質なムーブメントになっていて、私も大好きでしたが、今振り返ると、遠藤ミチロウとかハナタラシなんか話を聞くだけで恐ろしすぎて近づけないし、パンク勢でもまだまだ怖い、でも世の中の売れ線ではなく何か「尖った音楽」を好きでいたい、という当時の自分のような人間にとってとても都合のよい存在だったのだなあ、と今客観的に思います。
そういう存在だからこそ「ナゴムギャル」的なのが出てくるわけですよ。自分は納得している。

レコファンが全滅しないこと

前言撤回!

渋谷レコファンの閉店が決まったことでこういうことを書きました。

しかし現在のところ、渋谷店の他に秋葉原の高架下に店舗を出していまして、この件については何人かの方から指摘もいただいたのですが、もとより「期間限定」と銘打っていたため正式な店舗とはカウントせず、渋谷店の閉店によってレコファンの実店舗全滅という判断をして、そういうふうに書いたのですが。

それがここに来て、その秋葉原の店舗が本日まさかの正式な店舗への昇格宣言。昇格は2020年10月1日。

ということで、嘘をつきました。ごめんなさい。
しかし、あの渋谷店の在庫がここに収まろうはずもなく、というか秋葉原の比較的小奇麗な、HMV record shop的な佇まいは、渋谷店の魔境っぷりとは比較しようもないですし、在庫を保持するための大きな場所を新たに借りるという想像もしにくいため、渋谷店の処分セールは徹底的に行われるものと思われます。

みんな、渋谷BEAM店の閉店セールへ行こう。それはレコファンのためになります。

Dream Wife「So When You Gonna...」のこと

Dream Wife、2年半ぶりの2ndアルバム
1stアルバムは2018年の洋楽の中でも屈指の出来だと思っていたのですが、オルタナなサウンドの中にもどこかUKっぽさというか、もっと言ってしまえばニューウェイヴっぽさを感じていて、その感触はサマソニでライブを観て決定的になります。

観た時に「どう絞り込んでいくのだろうか」という感想を持ったのですが、果たして2ndアルバムは圧倒的にニューウェイヴの方に舵を切ってきました。
1stアルバムのメイン楽曲のように叫び、ギターを歪ませているのはアルバムタイトル曲の1曲のみ。あとは様々なエフェクトと様々なリズム、恐らくオルタナなところから出発した彼女たちが自分なりの様々な「実験」を行った結果のアルバムになっています。

正味、今の世の中どんな音を出したところでそうそう「実験」にはなりえなくなっているのですが、それでも彼女たちの中では間違いなく「実験」なのであろうことはわかります。1970年代末にWireが様々な無茶をやっているのを40年後に自分たちなりのフィールドで行っている感じで、「無垢な実験」という言葉で形容したくなります。

自分は断然こっちの方向性を応援したいです。正味Wire繋がりで言えば、Elasticaのアルバムよりはこっちの方がずっといいです。

自分が一番好きな曲はM-7「Rh Rn」。

リードトラック。1stの空気感を保ってはいる方だけど、この「ギター歪まない」感。

「“東京”の歌」のこと

音楽ナタリーに「“東京”はどのように歌われてきたのか 」というのを書きました。

(前編)現在のJ-POPに至る“ネガな東京”はこのとき誕生した
(後編)東京出身ミュージシャンにとっての東京と、地方出身ミュージシャンにとっての東京

いや、今回は本当にしんどかった。過去と比較にならないくらい。
それは明確に理由があって、「TSUTAYA」にしろ「桜」にしろ、過去に媒体に書いた文章はおよそこのサイト等で触れていたものだったのですが、今回は一切それがないところから着手したので。

過去からの流れをきちんと流れとして捉えるためには、どうしてもある程度まとまった数の「点」を収集してマッピングしていく必要がありますが、そのマッピングまではだいたい完成しているところから文章書くのと、1から点を打ち始めるのと、そりゃ違います。
一応、「東京節」の存在とか、ムード歌謡による「ご当地」化くらいは把握していたのですが、今回調査して自分でもようやく点と点が線で繋がった気がする、というレベルで。

ので、相当な時間をいただいて臨みましたが、それでもキツい。「東京」「TOKYO」がタイトルに付いた曲だけでなく、はっぴいえんど等から連なる、空気感としての「都市」感を持つシティポップ系の系譜も触れるべきとは思ったのですが、前半の全体の流れを作った時点でそこらへんの代表曲ざっと確認して大勢に影響なしと判断してカットしました。

で、多分、前編と後編の感触が随分違うことに気付かれた方も多いと思います。
本当は全編を前編のような時系列に沿った形で進めるつもりで調査を始めたのですが、調査の結果として時系列に沿おうとすれば「J-POP以降は多少ネガが増えてその後減ったこと以外、『多様化』しっぱなし」ということくらいしか言えないことに気付いて頭を抱えた結果、前半は時系列で、後半はもう完全に構成を変えることにした次第です。

後編の選曲については、前編リリースの時点で一部で当てっこみたいな状況が勃発していて、非常にドキドキしたのですが、こういう感じになりました。
特に後半のっけからの5発については、相当に熟慮を重ねた結果ですが、選抜基準は「後の楽曲のひな型として挙げられるか」のみなので、いろいろ自分が好きな楽曲もバサバサ切りました。

椎名林檎の「歌舞伎町の女王」は独特のフィクションとして完成されすぎていて、またチャットモンチーの「東京ハチミツオーケストラ」は、上京の時点で「覚醒」というか「覚悟」というか、後続の楽曲には全くない特異な視点があり、他と比較のしようのない異質な曲だったため、好きですが入れられませんでした。

でもしんどかった分、今まで自分が気付いてなかった視点とかも新たに手に入れられましたので、やってよかったと思っております。
正味、いただける原稿料とかけた時間を考えると全く割に合わないのですが、そこは逆にサラリーマン兼業だからこそできることであり、でも自分みたいのがいるから価格的に専業ライターさんが困るということもあるのかなと思うと、ごめんなさい。
できるだけこういう感じのニッチなところにしか出張らないようにしますので、許してください。

Nizi Projectのこと

現在も週3日は在宅勤務という日々でございます。
在宅勤務が始まってから、比較的朝の時間に余裕が生まれたこともあり、起きたら何となくテレビを付けるようになりまして。
で、いろいろ観ていると自分の中のバランスとしては日テレの「スッキリ!」が一番具合がよく、勤務開始時刻まで何となく眺めているのですが、そこでやっていたのが「Nizi Project」

元々は「hulu」のオリジナルコンテンツとして、TWICEのプロデューサーJ.Y. Park氏が全員日本人のガールズグループを立ち上げるにあたってのオーディションを放映しているものですが、「スッキリ!」でも番組の中で枠を取ってそのダイジェストを放送していまして。

正直、誰が頑張って誰が勝ち上がってみたいなのには全く興味はないのですが、これ、しつらえとしてはいろいろ面白いなあと思いまして。

まず、これはこの「Nizi Project」に限ったことではないのですが、だんだんと日本の既存のテレビ局が動画配信サービス企業の番組の宣伝装置になりつつあることが非常にわかりやすく可視化されているということ。

そしてそれを放送しているのが「スッキリ!」であること。huluの視聴者は老若男女いろいろいらっしゃって、「Nizi Project」の新エピソード公開は金曜日の22時ですから、所謂ゴールデンタイムと言える時間帯にぶつけてきている、かなり広く「推している」番組です。
が、それを地上波では「スッキリ!」で流すということは、そこがメインターゲットであるということです。つまり主婦層。

K-POPのグループの場合、女子グループでも日本のアイドルグループと比較すると圧倒的に女子ファンの割合が高いというのは以前から継続している傾向ですが、今回は敢えて地上波では特に30-40代にぶつけてきたのではないかと思うのです。CD購入が普通である世代であり、かつ地上波テレビ局で「オリコンで〇位に入らなかったら即解散」みたいな企画をリアルタイムで体験している世代に。
10代20代だけではサブスクで終わりますが、30-40代までを巻き込めれば、CD等フィジカルの売上が変わってくるし、物販の投下額も変わってくる。

だから、今の展開、メンバーが決まってNiziUとしてデビューも決まった、その後のマネタイズ効率までを見越してのプランとしての「スッキリ!」での展開ではないかと思うのです。
実際、出社日に30代の同僚女子同士が「マコちゃんが」「リマちゃんが」と、嬉々として話しているのを横目で見つつ、間違ってないのだろうなと思うのです。

ただ、「Niji」じゃなくて「Nizi」なところにはずっと違和感を感じている。

サザンとブクガの配信ライブのこと

立て続けに観た配信ライブがとても心に来たので並べてみます。

6月25日、サザンオールスターズ。
私、初めて自分のお小遣いで購入したLPが「人気者で行こう」なんです。割とガチです。21世紀からこっちの活動については「桑田佳祐の唄」を作って世に問いたいような気持ちもあったりもするのですが、それは別の話。

ただ、もう長年に渡ってエンターテインメントの化け物として君臨しているわけで、そんな彼らがガチで配信ライブをやったらどんなことになるのだろうと、結構本気でワクワクしていたのですよ。
果たしてそれは予想の上を行くものでした。

横浜アリーナを完全なライブモードの形で使用し、かつアリーナ部分にまで椅子を全部並べる。そしてステージも照明のやぐらも全部組み、クレーンカメラも空中ワイヤーカメラも装備。要するに「客がいない」以外は一切マイナスなしの完全なフルライブ。
さらに、出した座席全席に照明を設置したり、全部CGなのか炎だけなのかちょっとわかんなかったですけど、「東京VICTORY」の際にはアリーナのど真ん中に聖火台が登場したり、「勝手にシンドバット」では通常ステージ上にダンサーでわちゃわちゃするところを「密」を避けてアリーナ中でわちゃわちゃしたり、無観客であるのをいいことに追加した演出も大量。

歓声をSEで被せるところとか、タイトルや歌詞表示、それも歌詞を変えて歌ったところまでちゃんとそれで表示するなどは、これまで観てきた無観客配信ライブと比較すると、圧倒的にテレビ的なホスピタリティ。チケット購入18万枚、視聴者50万人という規模であればそれくらい行う必要があったということでしょうが、心底文句のつけようのないすごいライブでした。

かといって、ただのベストヒット曲を並べただけではなく、ライブとしての緩急も意識されたものであり、というか今回のこのセットリストは歌詞を変えたところのメッセージ含めて、いろいろ深読みしたくて仕方がない。
そんな、微に入り細に入り「エンターテインメントの化け物」っぷりを堪能したライブでした。


一方、Maison book girl。
現在活動中のアイドルグループの中では群を抜いてシアトリカルな表現を行っているグループで、生配信を行ったのはサザンの前日24日。私うっかり忘れていたのですが、Twitterのタイムライン上で3名ほど「やべえ」「やべえ」と呻いているのを見まして忘れていたのに気付き、慌てて滑り込みでアーカイブ配信を購入してついさっき観た次第。

感想。「やべえ」。
元々のライブでも透過スクリーンに様々なモチーフを映し出したり、音楽以外のSEを使用したり、様々な試みを行っているのですが、もう今回の配信ライブでは透過スクリーンどころではなくライブ映像に過去のライブ映像と切り替えながら進めたり、水中の映像とVJ的にミックスしたり、ステージサイドに置かれていたカメラが実はスマホで、途中でメンバーがそれを持って歌いながらそれを次々にトスして各メンバーを映しながら進めたり。
挙句の果てには、同一曲を4回連続、でも全く違う演出で歌ってみたり、途中でワザと映像を荒らしてみたり、一瞬通信が止まるようなフェイクを入れてみたり。
もうやりたい放題というか、むしろこれは「ライブの生配信」ではなく「リアルタイムで映像作品を制作するプロセスを見学する会」としか思えない状況で。

たぶんちゃんとしたカメラは3台。あとスマホと各種映像素材、画像素材、音素材を組み合わせての約1時間。限られた予算と制作時間と人員と。
でも結果として、全くベクトルは異なるものの、サザンと同じレベルの満足度でした。

サザンがコストと人員をふんだんにかけた米軍本隊の総攻撃だとすれば、ブクガは言ってみればランボーがちまちまと様々なトラップを作って仕込んで、でも正確な腕で矢を飛ばして起爆させて、みたいなものだと言えるのではないでしょうか。規模も何もかんも違いますが、でも2組とも勝負という意味では、勝ちました。

ブクガは当然サザンのような配信ライブはできないけど、サザンもブクガのようなライブはできない。「一瞬通信が止まるようなフェイク」なんざ入れた時点で5000人くらいからクレーム入って窓口がパンクします。
ファン層の量と質、それぞれがそれぞれをきちんと理解して、きちんと納得できる質のものを届けた、という意味では双方本当にプロの仕事ではあります。

私は両方とても楽しかったです。そして近々で、生で観たいと思いました。サザンはチケット取れればだけどな。

観客を入れたライブが再開していること

2月下旬からバタバタとライブが中止になり始め、一時はバンド・グループ形式だと配信ライブすらままならないような状況にもなりましたが、いろいろ仕組み上の問題はあったりしつつも徐々に配信無観客ライブは有料も含めて増え始め、AKBグループも専用アプリによる「オンライン握手会」という言語的には意味不明ですがやらんとすることはわからんでもない形でもって現状打破を模索。
そして6月19日以降、ガイドラインに沿う形で観客を入れてのライブが再開されています。

金沢では5月24日にアイドルグループ西金沢少女団が180人の箱に10人の観客を入れてライブを開始したり、地方ではいち早く動いている事例もありますが、今回は一旦6月19日の緊急事態宣言の全国解除後の流れで。

口火を切ったのは、こういう時には必ず出張ってくる我らが四谷OUTBREAK!。通常日曜に開催されるこの箱特有の風習「早朝GIG」を、平日の朝から開催。一番乗りを果たします。
ただ、従来通りに詰め込んだら200人以上入る箱に8人。これは再開の口火を切ると共に「困難は続く」ことをつまびらかにするものでもありました。

その日の晩に代官山SPACE ODDでワンマンライブを開催したのはV系兼お笑い系バンドjealkb。
同日、新横浜NEW SIDE BEACH!!ではZIGGYもワンマンライブを行っています。
翌20日には東高円寺U.F.O. CLUB(300)に25人入れたどついたるねんがライブを実施しています。

また、20日21日にはC&Kが会場は参加者のみに通知という形で、ファンクラブ限定野外ドライブインライブという形で開催。こういう形にすると280人まで呼べます。
彼らのライブはコール&レスポンスがキモですので、無観客配信は厳しいということでこの形にしたようです。

これ以降もライブの予定は続きます。他にもあると思いますが、とりあえず気付いたヤツだけ。

06/27:Earthists.(GARRET udagawa)
07/04:四星球(アスティとくしま)
07/04:predia(WILD MAGIC・野外)
07/05:勝井祐二 × U-zhaan(下北沢440)
07/11:HAN-KUN(EX THEATER ROPPONGI)
07/11:真っ白なキャンバス(TSUTAYA O-EAST)
07/12:モーモールルギャバン(京都磔磔)
08/15・16:lynch.(名古屋・日本特殊陶業市民会館フォレストホール)

また、Angeloは7月から8月にかけて東名阪のツアーを行います。
当然、方針に沿う形になりますから、動員数は非常に限られます。したがってチケットは結構な価格になっています。
が、ここにオリジナルデザインのマスク&手袋を配布という、ここでないと入手できないノベルティとセットにすることである程度でも納得度の上がる形になっています。

敢えてその不自由さまで含めて発信した四谷OUTBREAK!から始まり、野外ドライブイン型で開催したC&K、都市野外型で計画しているpredia、地元の大型会場でルールの中での「最大」を模索する四星球やlynch.、そしてノベルティ&有料配信と組み合わせることで「普通」に近づけようというAngeloの試み。

ミュージシャン・運営・ライブハウスが汁が出るほど脳を絞り、自分たちの力でできる範囲で様々なアイデアのライブが再開されています。

明日はサザンオールスターズが自粛以降始まった配信ライブとしては最強のエンターテインメント性を伴ったものを出してくるはずです。
そして生ライブについても、いずれ有名どころが何かすごいアイデアを伴ったえげつないのを発表するのではないでしょうか。

正直いろいろキツいですけど、こうやって各ミュージシャンが出してくる諸々は、「今しか体験できないもの」としてできるだけ面白がることにしようと思います。
厳しいね、辛いね、頑張ろうね、心寄せようね、だけではもうやっていけないのですから。

配信ライブについては各バンド・グループが様々なサービスを使っているせいで、もう自分がどこのサービスに登録してどうなってるのか全然わかんなくなっているのが、自分としては現状最大の問題です。

サブスクのメリットとデメリットのこと

昨日、とある複合書店の閉店セールを覗いてみたんですよ。
壁一面にびっしり詰まったAKBグループ系のCDにいろんな意味でひとつの時代の区切りを感じたり、中島みゆきとB'zのCDは速攻でごっそりやられていることを確認して、やっぱりそういうことになるんだろうなと思ったりしたわけです。
写真、下の段ボール以外全部AKBと坂道。

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だから、関ジャムでいくら鬼龍院翔が中島みゆきの楽曲について力説したところで、視聴者はその後できることは特にありませんから、その場でおよそ終わってしまいます。
一方、この間の金曜、ミュージックステーションで「サブスクで聴くミュージシャン」として、King Gnuが折坂悠太を、加藤ミリヤとLiSAが藤井風に言及した途端、各ストリーミングのリアルタイムチャートで2人が爆上がりしたのですが、こういうの含め様々なきっかけで時には意外な曲が聴かれたりする。これがストリーミングの一番いいところだと思います。

自分が好きなミュージシャンからの繋がりで、その場で新しいミュージシャンを開拓することができる。というか、ダウンロード時代からそうでしたが、データで音楽を購入できるという状態は、要するに自分の手元に24時間営業のショップがあるようなもんですから、本来もっとたくさん聴かれるはずなんです。
日本ではまだ売上ではCD全盛時代を越えられてはいませんが、比較のしようはないもののきっと「聴かれている実数」ではもう今が最高値を更新し続けているのではないかと思うのです。

純粋に「音楽を聴く」という意味では、今はかなり最高の時代になってきたと思うのですが、でも楽曲を提供する側にとってはいろいろとデメリットもありまして。
当然、CDと比べて単価が著しく低いというのがその最たるものです。
で、その目減り分をライブとそれに伴う物販という「興行」の方に振って利益を確保していたら、こんな世の中になっちゃって今やライブもまともな形で開催できない時代になってしまい、一体ポップミュージックの未来はどっちだとも思ったりもします。

しかしそれ以外で、ミュージシャンにとってストリーミングになったことでデメリットになり得るとさっき思ったのが、ミュージシャンごとの「トップソング」「人気曲」表示です。
そのミュージシャンの楽曲の中で、どれがより聴かれているのかがわかる仕組みで、初見のミュージシャンを聴くときなんかは割とそこを見がちなわけですが、時々切なくなるような事例に出くわします。

それをすごく感じたのが、Apple Musicでモーモールルギャバンを検索してみた時。
Apple Musicでは「サイケな恋人」「ユキちゃん」「POP!烏龍ハイ」が上位3曲。つまりメジャーデビュー前のインディーズのアルバムの楽曲で占められています。
彼ら自身どう思っているかはわかりませんが、これってミュージシャンによっては相当キツいと思うのですよ。メジャーに上がってそれなりの予算でもってガッツリ気合いを入れて制作したのに、でもそれがそれ以前の曲より評価されないという状況。
もちろん、ライブでの反響とかでおよその理解はできるのでしょうが、ここではこれ以上ないくらいに可視化されてしまう。順位が付いちゃう。厳しい。

正直な話、モーモールルギャバンについて個人的にはインディーズの「野口、久津川で爆死」のさらに前、ストリーミングには乗ってない、CD-Rでリリースされていた「サイケな恋人」収録の「裸族」のオリジナルヴァージョンが最強だと思っているので、もう救いがない。俺にとって。いや、ライブ観たらいつだって最高なんですけど。でもこればっかりは。
というか、そういう所謂「初期音源」は、ストリーミング弱いのは如何ともし難い。
言うてもそれは「古い」ミュージシャンだけで、若いミュージシャンはハナからストリーミング始まりなので、困るのはおっさんだけ。

YouTubeにそのヴァージョンのMVが残っているので助かる。

レコファンの店舗が全滅すること

レコファン渋谷BEAM店が閉店セールを開始しました。

閉店日はまだ具体的に発表されてはいませんが、恐らく閉店セールの売上と在庫の状況を見ながら判断することになるのでしょう。

ここんところの自粛等による影響で、実際の閉店も多少早まったとは思うのですが、レコファンは2014年に一部の期間限定店舗を除いて横浜西口ダイエー店とのメガショップ2店舗体制にまで縮小していて、その横浜の店舗も2019年1月に閉店、その時点で相当にキツい状況であっただろうと思います。
1981年に下北沢に最初の店舗をオープンしたレコファン。1983年に渋谷進出、以降首都圏に店舗網を拡大していったのですが、2006年以降縮小傾向に転じました。
とりあえず拾える限りの閉店の状況は以下の通り。

2006/04/02 渋谷センター街店 閉店
2006/04/30 橋本サティ店 閉店
2006/06/25 渋谷店 閉店
2007/11/26 三軒茶屋店 閉店
2008/03/30 経堂店 閉店
2009/03/29 秋葉原店 閉店
2009/06/30 高田馬場店 閉店
2009/07/26 吉祥寺店 閉店
2010/11/16 西武新宿ペペ店 閉店
2011/03/21 秦野ジャスコ店 閉店
2011/03/27 川崎ルフロン店 閉店
2012/05/13 LIVIN田無店(期間限定営業)閉店
2012/05/20 大泉LIVIN OZ店(期間限定営業)閉店
2012/06/24 下北沢店 閉店
2012/10/08 池袋店 閉店
2013/02/24 町田東急ツインズ店 閉店
2014/03/31 大森店 閉店
2019/01/31 横浜西口ダイエー店 閉店

中には、2010年5月にオープンして翌年3月に閉店した川崎ルフロン店のような悲惨な事例もあるのですが、流れを追っていくと、2006年に渋谷の店舗を1994年オープンの渋谷BEAM店に集約したところまではまだ理解できるものの、それ以降着実に店の数を減らしていくプロセスで、閉店する店舗について意図的なところが見えず、苦しくなったところから順番に閉じているだけのようにも見えます。

ディスクユニオンが一時期事業を多少整理した際、まず稲田堤と淵野辺のロードサイド型店舗を閉め、完全に都市型のみにした点や、店舗をジャンルごとに細分化したり、店舗まで分けなくても店内のジャンル分けをできるだけ細かくわかりやすくすることで、そのジャンルの固定客を掴んで現状の店舗規模を維持し、大阪にまで出張ることになったのと、レコファン。随分違います。
いや、レコファンのわちゃわちゃした店内好きなんですけど、少なくとも好きなジャンルの定まっている若い層にとってそれはキツいだろうと思います。

というか、1994年か1995年に初めてレコファンに行ってビビったのは輸入盤新譜CDの安さでした。
渋谷のHMVで2,080円、タワレコで1,980円で売ってるCDが、レコファンに行ったらだいたい1,780円で買えました。下手したら1,580円の盤まであったりして、ボランティアか馬鹿かどっちかじゃないだろうかと思ったものです。
それがだんだん価格差が詰まってきて、新譜の価格という点ではレコファンのアドバンテージはなくなっていきます。

恐らくタワーレコードやHMVが国内の店舗数を爆増させたことで販売点数も爆増、仕入れ単価を下げることに成功したからだと思うのですが、それ以降レコファンは中古屋として愛用はしていて、安いものは圧倒的に安いしそれなりに掘り出し物を見つけることはあったものの、「この人のこの盤がほしい」という狙いを付ける場合には、ユニオンやそのジャンルに強い個人店に行く方が確実で。
レコファンは「物」はあってもレコメンド等の店舗としての発信機能は他に比べて弱く、それはぶっきらぼうだった店員がある日突然「いらっしゃいませ!」と挨拶し出した程度で代替できるものでは無かったのだと思います。

店舗はなくなっても通販は続けるようではありますが、現状で自前の販売サイトはただのメールオーダーのカタログで、とても枚数を捌けるようなブツではなく、その他Amazonも使用して販売を行っていますが、渋谷の店舗なくなったら「レコファン」としての実態は限りなく見えにくくなってしまいそうで、これ正直厳しいっす。

今とこれからのジャニーズのこと

King & Princeの新曲「Mazy Night」が6月10日にリリースされました。
元々は4月29日リリース予定だったのが5月27日に変更され、更に再延期されてようやくのリリース。
売上数は2日間で43万を超えるというさすがっぷり。当然のようにサブスクなどなく、CDのみでこれだけ積み上げました。

スペシャ見てたらMVが放映されたんですけど、他のほとんどのジャニーズ勢同様、当然「Short Version」です。YouTubeにも上がっていますが当然それ。
盤を買った人間以外には絶対全部見せたくない、という頑なな意志を感じます。
というか、こんな時代にわざわざ盤を買ってくれる「お客様」に対しての、最低限のホスピタリティとしての線引きをそういうところに置いている、ということかもしれません。

嵐が作年11月にシングル曲、今年2月にアルバム曲をストリーミング解禁した時、さすがにこれからジャニーズもそうなっていくのだろうなと思ったのですが、それ以降続くグループはありません。既に解散したグループの音源を解禁するということもなく。

嵐の「盤」としての商いは、もちろん今後行われるであろうラストコンサートの映像は将来あるでしょうが、音源としてはベストアルバム「5×20 All the BEST!! 1999-2019」の売上が落ち着いた段階でおよそ終わりました。
それを踏まえての解禁と、シングル曲解禁時に同時に配信のみリリースされた「Turning Up」の曲調等を含めて考えると、これ要するに「日本以外でのニーズ」を期待していて、それを最大化するためにはストリーミングに出すしかない、という判断をしたのだと思います。

だから「他のグループが続かない」のではなく「嵐だけが特別」だということで、でもそれはたぶん「今のところ」で、たとえば今後キンプリの誰かがアジアでめっちゃ人気が出たとか、Snow ManかSixTonesのとある楽曲がTikTokで世界的にめっちゃバズった、みたいなことがあれば、またいろいろ世界戦略は変わっていくのだろうと思います。

それでも国内では、現状でSMAPを失い、嵐ももうすぐ失う、ジャニーズのグループも出ているミュージックステーションにDISH//の北村匠海くんが出演できてしまう、相対的にはジャニーズのパワーは正直低下しているわけですが、日本での「CD」優先のビジネスは、「もう若者誰もCDプレーヤー持ってへんよ」「もうどこのメーカーもCDプレーヤー作るのやめたよ」みたいな事態にならない限り続くのではないかと思います。

いや、もし世の中のCDプレーヤーの供給がヤバくなったとしたら、「ジャニーズショップ オンラインストア」でジャニーズ謹製のCDプレーヤーを売り出してしまうのではないかと、半ば本気で想像します。
一時、一部のミュージシャンが「CDで買ってほしい」と訴えたように、やっぱりCDの利益率は他の比ではありません。
ひたすら「盤」を売り、わざわざ盤を買ってくれる「お客様」をひたすら大切にする、利益率の高いビジネスモデル。

世界中が音源の販売から興行に、その売り上げの主軸を移してしまった状況下で発生したコロナ禍。コンサートも以前のようには開催できなくなってしまった今の世の中、実はジャニーズが頑なに守ったこのスタイルこそが、結果として2020年のビジネスとしての最適解になってしまったのではないか、と思うのです。

完全に結果オーライだけど、でも正しい。何かすげえジャニーズ。