映画「アザー・ミュージック」のこと

休みに映画でも観るかと思い、特急ゆかりとか、のんちゃんとかも考えたのですが、結局渋谷のシアター・イメージフォーラムに「アザー・ミュージック」を観に行くという選択。

我ながら地味な選択だと思いながら観たら、思った以上に地味でした。すごく地味でした。

ただそれでも、敢えてイーストヴィレッジのタワーレコードの向かいに店を出すにあたって「Other Music」という店名を付けたのも素敵だと思ったし、割とすごいメンツがちょっとずつ出てきて、ミュージシャンも含めて広く愛されていた店だということはすごく伝わってくる、何かいい映画でした。

閉店への物理的なプロセスは割と尺を取っていたのですが、「閉店を判断する」に至る心理的、環境的なプロセスについてはさして尺を取ってなかったのが不満と言えば不満か。

ただ普段からレコ屋のことをぼんやり考えている身にはまさに燃料みたいな題材であり、結果猛烈にいろいろ思うわけです。その「『閉店を判断する』に至るプロセス」について日本と比較して。

今やアナログ専門に近い中古店は、新規オープンの方が多いくらいになっていますけど、Other Musicのような、ジャンルもあまり問わず新譜も中古もないまぜにして、とにかく「今のお勧め」をレコメンドしていくタイプの店舗って、日本でもあんまり多くありません。

中古全般をメインにしつつ新譜も多少という店は割とありますが、現状で「まさにそういうタイプ」と言えそうなのは、自分が行ったことあってそう感じたのに限れば、下北沢と京都三条のJet Set、埼玉大宮のMore Records、大阪堀江のFlake Records、名古屋のStiff Slack。
それくらいじゃないかと思うんですよ。

で、そういうお店って考えてみると今の世の中かなりしんどいと思うのです。

そもそもミュージシャンが己の存在を世に問おうとする場合、過去であれば少なくともフィジカルな盤を何らかの形でリリースすることになりますし、物理的に存在していればどこかの店舗のアンテナに引っかかってレコメンドされることもありえるわけです。

が、現状で新しいミュージシャンが音源を録音したとして「じゃあ盤作るか」の前に恐らくBandcamp等のサービスにアップするでしょうし、そこで人気が出たとすると、インディーズを経由する前にメジャーから声がかかることもあるでしょうし、「もうフィジカルは出さなくていい」という判断のもと、配信とライブと物販で食っていくという判断もできるわけです。
過去と比べて選択肢が増えた結果、そういう店舗の役割の重要度も相対的に減少していきます。

また、日本のタワーレコード等かつては輸入盤を廉価に販売することを特長としていたチェーンの洋楽の品揃えが最近悪くなっている理由を以前にまとめましたが、米国の店舗の立場でも同様の状況はあり得ると思います。
非米国のミュージシャンがフィジカルをリリースしたとしても、取り寄せようにも国内流通ですら限定的でとてもまとまった数を輸入して店に並べることができない状況。

またこれは映画内でも触れられていましたが、向かいのタワーレコ―ドの閉店(2006年)も大きかったようです。
他店と差別化ができるのであればひとつの地域に複数店舗があることで「こっちにないならあっちに行こう」「ついでにあっちの店も見に行こう」という買い回りも盛んになりますし、実際Other Musicも道を挟んで向かいにあったタワーレコードに対してのオルタナティブな品揃えであったことがその大きな存在意義でもあったわけで。

タワーレコード撤収の理由は、ウォルマートやベストバイが売れ筋の超メジャー作品を廉価で売りまくったせいですが、その結果そういう量販店では絶対に扱わない作品しか置いていないOther Musicにも影響を与えたということです。

CD/レコード店の縮小は「配信、ストリーミングサービスの伸長によってフィジカルが売れなくなったから」が最大の理由であることは間違いないにしても、単純にそれだけには収斂しきれない、様々な変化の結果が今ということなのか、と。

私はニューヨークに行ったのは1993年きりですので、まだOther Musicはありませんでした。タワーレコードには行きました。
思ってたより小さくて割とガチャガチャした店だったという記憶。

だから正味、1995年に移転オープンした時から現在に至るまで、タワーレコード渋谷店は世界最大であり続けているのではないかと思うのです。
つうか2022年にあれ維持してるの、何かの間違いとしか思えない。

!!!(CHK CHK CHK)@渋谷O-EASTのこと

月曜日は!!!(CHK CHK CHK)の来日公演@渋谷O-EAST。

3年前にも行ったんだけど、来るたび観たいバンドですので。
そういうのって時々あります。他の何にも代え難いヤツ。他にはHot ChipとかThe NationalとかAlt-JとかBeirutとかも、来日したらするたびに万難を排したい。
The Nationalについては、コロナで中止になった分を近々でどうにかしてほしい気持ちでいっぱいです。

で、CHK CHK CHKですが、やっぱりすげえ。
べらぼうに上手いとか、べらぼうに尖っているとか、壮大なサウンドスケープとか、ギリギリの緊張感とか、そういうのでは全くありません。
どちらかといえばいなたい感じの演奏なのですが、それでも明らかに最初からオーディエンスをぶん殴りに来るような気迫でカチ込んでくるため、こっちだって迎え撃たなければなりません。
というかそんなんもう勝手にアガりますよ。ステージ上で披露されるのがたとえヒゲダンスっぽいアクションであったとしても。
メンバーが代わる代わるヴォーカルを取ったかと思えば、ほぼ全員が何か叩いていたりする。
アガる瞬間のために全ての音が奉仕している。

で、前回と違うと思ったのがグルーヴ感。
前回までは割と90年代のMadchesterを継承したようなルーズなグルーヴ感という印象だったのですが、今回はいなたいなりにかなりタイトなグルーヴという印象。
それでどうなったかというと、即効性が増した。これはあかん。もう楽しい。

というわけで、今回も楽しい!楽しい!と思っている間に終わりました。
それでいい。それがいい。

これで7月中旬からの、フェス2つを含むライブ集中期間一旦終了。
もう少し他のネタもやります。頑張ります。

おとぼけビ~バ~@恵比寿リキッドルームのこと

金曜の晩は恵比寿リキッドルームでおとぼけビ~バ~。

2018年のアメリカのフェスCoachellaに招聘された日本人ミュージシャンはX JAPANとおとぼけビ~バ~だけだったわけで、そんなのを日本人が観ていないのはあんまりよくないことなのではとずっと思っていたところに招集がかかったので渡りに船。

結論。最高じゃないか。
そもそも彼女たちをパンクと呼んでいいのかどうかということは、音源の時点でいろいろ考えるわけです。
1曲1-2分で終わっちゃうところはパンクっぽくもあるのだけど、だいたいの曲でその尺の中にプログレもよもやの転調/変拍子をぶっ込んでくる。

案の定現場もそれなりに沸くのだけど、踊れそうで踊れない、少なくとも踊り続けようとすると「おっと」というタイミングが割と頻繁にやってくる面白現場。
これ何て呼べばいいのだろう。「痛快ミニマムプログレパンク」。何か違う気もしますが、要するにあんまり他に類を見ないタイプの音楽。もう何かすげえ楽しい。

そして馬鹿テク。「あんな無茶なリズムをあんな高速でキープする」だけでもリズム隊すごいのに、いやもう何この盤石感。
これが基礎にあるから、上に面白いモノを何でも乗っけていける。よしえさんのギターの位置は、他に見たことないレベルの高い位置ですが、あれは見た目以前に一番気持ちよく弾くためだと思うと合点もいくレベルの気持ちいい弾きっぷり。
「OK We are おとぼけビ~バ~どんどん行くぜ!」とよしえさんが頻繁に口にする通りどんどん行って、時々すげえと思って、時々笑って、だいたい痛快な気持ちになりっぱなしのライブ。

あと、開演前の我々の話題は「何曲やってどれくらいで終わるのだろう」という点でしたが、19時ほぼオンタイムで開始して最初の10分でたぶん7曲くらいやって、その後よしえさんの「安心してください。37曲やりますよ」という素敵なMC。
もう少しやってからVo.のあっこりんが「37曲やって、20時頃には帰っていただく…」と面白を被せてくる。

結果、本編は1時間強程度、ただしその後アンコールに次ぐアンコール。出てきて演奏時間11秒の「DM送ってやろうか」を一発やって去り、また出てきて再度「DM送ってやろうか」をやって今度は更に12秒の「DM送ってやろうか pt.2」を続けてやって去っていく等。
6回目くらいのアンコールでようやく最後に新譜でもオーラスの「レッツショッピングアフターショー」で締め。
この曲はタイトルに全くもって違わず「ライブが終わったら物販行け」という曲なので非常に納得度高く終了。
だいたい1時間20分くらいでした。曲数はわからん。わからんけど面白かったからよし。
みんなも観よう。

Sigur Ros@東京ガーデンシアターのこと

Sigur Rosは1999年のセカンド・アルバムで初めて聴きました。
以来、アルバムが出たら買う程度には好きでしたが、わかってるのかと言えば、あんまりわかってなかったと思います。
だから、割と頻繁に来日公演してくれているのに行ってなくて。

転機は2010年のJonsiのソロアルバム「Go」。
あの作品は今のところ「Jonsiの音楽観を最もポップに表現した作品」ですので、さすがに理解してライブを観たいと思い、ソロ来日公演を恵比寿に観に行って、それこそぶん殴られたようなインパクトを受けるわけです。

これはいかんと思ってSigur Rosも聴きなおし、次のバンドの来日が2012年のSUMMER SONICだったので観て、ようやく音源を理解したというか「あの音楽が存在する意味」を知ったような気になり、これは単独も観なければと翌年の日本武道館に行って今度は専用の演出なのでまた腰を抜かすほど感動して、2017年の来日は他の予定が被って涙を飲み、そしてようやくの8月26日。

Billie Eilishの来日が発表された時、割と自分のタイムラインも沸いて、チケット取れたの取れなかったのやいのやいのやっていましたが、俺もうその日のSigur Rosのチケット取ってたから。

ということで、定時で会社を抜け出して、有明アリーナでBillie Eilishの来日公演もある中、500mほどしか離れていない東京ガーデンシアターに向かいます。
りんかい線の国際展示場駅で下車し、ガーデンシアターに向かうとすごい人の列。ガーデンシアターの入り口近くになると「こちらはビリー・アイリッシュの会場ではありません!」という親切すぎるアナウンス。
友人夫婦は割と早入りして有明ガーデンのフードコートで通りかかる人々が「ビリー・アイリッシュの方か、シガー・ロスの方かの仕訳け」をして遊んでいたということで、それ俺も参加したかった。

19時開始、途中で15分の中休憩を挟んでみっちり3時間。
もう、いいことはわかっているのですが、一発で気持ちを持っていかれてよくわからない。うわーっという感じ。
Sigur Rosは正味、ヴォーカル・バンドではなく、「ヨンシーの声」という唯一無二の楽器を持ったインスト・バンドという認識で捉えているのですが、声は大変に気持ちいいのにその他の演奏にはギリギリの緊張感が漲っていて、緩い曲でもテンションがえげつないことになっている。

そんなビリビリした空気の中、ふっと無音になる。
一瞬何かのトラブルかとも思ったのですが、明らかにメンバー4人手を止めてこちらを身じろぎもせずに見ている。
誰かが声を上げれば次のスイッチが入るのか、わからない。かくして数分間かどれくらいか、無音のままバンドとオーディエンスが全く音を立てずに対峙し、それでもビリビリしたテンションは全く下がらない、むしろ上がっているという凄まじい場に。
そしてそこからようやく音が放たれ始め、爆音に駆け上がっていくときのカタルシスといったら。

「静」から「動」どころじゃないんですよ。「無」から「爆」なんですよ。
とんでもないレンジをぶちかまして、最後には爆音×爆音で終了。こんなん他にないわ。
こんなのがソールド・アウトしなかったんですよ。是非次来てくださいよ。ものすごいから。

ということで本当に素晴らしかったのですが、当日気になったのは前の列に座っていたカップル。前半終わって席を立ったのですが、後半始まっても戻ってこず、結局最後まで戻ってこなかった。
地方在住で足の都合で一部のみで諦めて帰ったのか、休憩中に喧嘩したのか。とにかく彼と彼女が前半だけでSigur Rosを判断しないでほしいと、切に願います。

SUMMER SONIC 2022の運営等のこと

SUMMER SONIC 2022は、割とサマソニ的な本領を発揮できたラインナップだったと思います。
洋楽しか聴かない人も、J-POPしか聴かない人も、8ビート好きな人も、R&Bやソウル的なノリが好きな人も、ボーイズグループ一筋の人も女子アイドルオタクも、割と2日間居られる振れ幅。
時間が少し空いた時の思い付きでリリカルリリィ観に行ったり、Kula Shakerかきゃりーぱみゅぱみゅかで死ぬほど迷ったり、というのは他ではなかなかできない体験。
自分にとってはサマソニのこういうところがちょうどいいので、他に何もなければ夏は原則サマソニという判断をしています。
そりゃもちろん「The Stone Roses再結成、フジロックのヘッドライナー」みたいな時には、当然涙流しながら苗場行きますけど。

そういう異なるジャンルが入り乱れているサマソニでは、当然ファン層も入り乱れるため、喫煙所でものすごくR&B系好きそうなファッションの女の子2人組が笑いながらK-POPをディスっていて、それを少し離れた所に立っている、透明スマホケースにイケメンの写真を入れている女の子が黙って睨みつけているといった、一触即発っぽい状況もあったりしますが。

クリエイティブマン主催のフェスは運営も割と盤石で、過去十数回参加していて「これはちょっと」と思ったのは、SONICMANIA初開催時にドリンクチケット制を敷き、その結果公式ドリンクブースがあり得ないレベルの長蛇の列になったという事態くらい。
特に自分がだいたい毎年行っているサマソニ2日券のリストバンド交換については、本当に年を追うにつれてそのスムーズさが増しています。
が、今年はちょっと気になったことが2点ほど。


<スタジアム満杯問題>
20日のマリンスタジアム、MANESKINのステージ直前あたりから、マリンスタジアムのスタンド席の具合がおかしくなりまして。あからさまに人が多過ぎ。もうスタンド席の座席もおよそ全部埋まっているのに次から次に人が入ってくる。
スタンドへの階段登ってすぐのエリアは元々通路の確保のために「滞留禁止」になっているのですが、スタッフのひとりがマニュアル通りに「ここに立ち止まらないでください進んでください」とアナウンスしても、そこから先にもう進める場所がビタイチなかったりとか。
結果、通路や階段まで完全に人で埋まって、トイレに行くのも困難なレベルでミチミチに。

これでもし地震とかどっかで発火とか起きて「緊急に避難しましょう」みたいなことが起きたら少なくとも怪我人は続出すること間違いなし状態です。
いつもならこうなる前に入場規制を行っているはずなのですが、完全にそのタイミングを逸した模様。

元々MANESKINからKing Gnuの並びの部分は「洋楽」客のメイン層と「邦楽」客のメイン層が交わるタイミングですので、そもそも人は多くなりがちですが、私のようにMANESKIN急に見ようと思った人が多かったり、King Gnuが前のフェスをコロナでキャンセルしてからの「復帰」ライブだったこともあるためか、想定よりも総人数が多くかつMANESKIN終了後にスタジアムを去る人数が少なかったのではないか、という推測。実際MANESKIN後に席を立つ人すごく少なかったので。

また、リストバンド交換のような「想定できる状況をきっちり捌く」ことは、改善を繰り返してマニュアル化していくことで練度は上がっていきますが、想定外の事態が起きた時にいかに通常運転に近づけていくかという「その場の判断」は割とマニュアル化しにくい部分でもあり、かつ3年の間が空いたことで「その場の判断を的確にできるスタッフ」の数が減っていた可能性もあります。

危険な状況はKing Gnu終了後に改善。何か事件が起きて怪我人が出たみたいなことも知る限りはなく、結果オーライだったっぽいですが、それでも「ヒヤリハット」として今後の対応に生かしていただきたい所存。


<前方エリア待機問題>
これは21日のマウンテンステージで目撃したのですが。
マウンテンステージ前方は、昔は仕切りもなくどこからでもアクセスできたのですが、近年は前方エリアは後方とは柵で仕切られ、ひとつの入口からしか入れない仕様になっています。

が、そのために熱狂的なファンの多いボーイズグループの出番が近づくと、その入口付近が割と酷い状況になりまして。
人が入口に殺到して押されて割と危険な状態になったり、入口周辺に人が集中するせいでステージエリアから出入りするための階段への動線が塞がれて渋滞気味になったり。
前方エリア入口付近には、プレミアムエリアやファミリーエリアへの入口も近接しているため、その往来を確保するのにもスタッフ四苦八苦。

そろそろ他のフェスでは導入が進んでいる
・当日の前方エリアはミュージシャン毎に完全入れ替え制にする
・チケット購入時にフェイバリットミュージシャンの登録を実施
・その登録者内で抽選を行って前方エリアへの入場順を決定
という方式を取り入れないとあかんのではないかとは思いましたが、サマソニの特徴として「早い時間帯等にあまり有名でないミュージシャンをチャレンジ枠的に大きなステージに出す」パターンがありまして、そこまで抽選にすると「後ろの方にはそれなりに人はいるのに前方エリアにあんまり人がいない」という事態にもなりかねず、完全にそっちに舵を切るという判断もしにくそう。

「当日の前方エリアはミュージシャン毎に完全入れ替え制にする」ことまでは完全実施として、あとは抽選したりしなかったりの形で何とかならないものか。でもそれはそれで気付いてないところに穴もありそうで、難しいぞこれ。


声出し問題については、これそもそも個々人によって考え方に相当な差があることですが。
欧米のフェスは既に概ね何でもあり状態に戻っていますが、現場で見た限りで来日勢については実際その欧米ノリでそのままやる方がほとんどでした。シンガロングを求める演者も多かったし、モッシュさせようとしていろいろ指示を出したものの失敗していたバンドもいたり。

日本には日本のガイドラインがありますが、海外勢にどこまでそれを求めるかという点については、現場でも相当にグレーな感じではありました。
海外勢がそういう状態で日本のミュージシャンにどこまで厳守を求めるべきかというのも、自分は割とビビりな方なので当然厳守が理想だとは思うのですが、そもそも「個々人によって考え方に相当な差」があるものなので、なかなか難しい。

サマソニ以外の国内のワンマンライブ等でも、入場時会場には「声出し禁止」の張り紙があっても、ライブが始まるとミュージシャン自身がガンガンに声出し煽ってくる現場は既にありますし、一方で日本での今後のライブに対して強い危機感を持ちつつも、SiMのようにガイドラインに沿いながらすさまじく誠実に事を進めようとしているバンドもいるということはお伝えしたい。


ホルモンやKing Gnuのステージ上での言動の件については、King Gnuの方しか実際を見ていないのですが。
まずKing Gnuがステージで乳首シールを行う前のMANESKINのパフォーマンス中、ドラムキットのスネアの調子が悪くなったのですが、次のステージのために既に袖に準備されていたKing Gnuのスネアを急遽借りることで凌ぐことができた、というちょっとした事件がありました。
その縁もあってか2日目大阪の幕前にはこんな写真も撮っていているということはお伝えしておきます。

誰かの言葉や行動についていろいろ考えたり課題を見出すことは、時にはとても大事なことなんですけど、当事者以外の人がどこまでそれを広く共有すべき問題として提議するのか、という点は割と難しいなあと思いました。


ということで、後半は何か言っているようでほぼ何も言ってないわけですが、仕方がないじゃないか。

SUMMER SONIC 2022で観たヤツのこと

3年ぶりのサマーソニックですよ。

もうあんまり無理はできないお年頃なので、きちんと2月の時点で千葉市内に宿を取り、かつ現場でも頑張りすぎないプランを検討した結果、今回はBEACH STAGEは全無視する方針を決定。だって遠いんだもの。
1日目はメッセとスタジアム1往復で済み、2日目はおよそメッセ内で完結する形でプランニング。
初老がフェスを満喫するためにはそれなりの努力と割り切りが必要なのです。
というわけで、観たの。

<1日目>

THE LINDA LINDAS
「みんなで一斉に音を出すと楽しいね!」のまんまで、うっかりデカいステージまで来てしまった感。
その「楽しい」がまんまダイレクトにこっちにも伝わってくるもんだから、数十年汚れて生きてきたおっさんはもう泣くしかない。
「この曲を日本で演れるなんて!」と感極まった様子でのラスト曲「リンダリンダ」が、自分が彼女くらいの年齢だった時とリンクして、もうダメ。最高。

リーガルリリー
彼女たちは過去にちょいちょい観ていたのですが、考えてみたら新代田FEVER以外の箱で観たことがなかったので、サマソニのデカいステージに乗っているのはどんなもんなんだろうと思い。
正直、やや厳しい。ほのかさんの歌詞はこの年代のバンドの中では非常に難解で、このスケールの会場では刺さるところまで届かない。
とはいえ、今回もラストで演ったド名曲「リッケンバッカー」の端的な歌詞とメロの殺傷能力は健在で、あとはこの曲に並ぶ曲を何曲作れるかだなあ、と思い続けて早6年。頑張って。

Awesome City Club
5人時代に3回くらい見ていて割と好きだったのですが、現体制というかエイベックス移籍以降は初。
シティポップ的でありつつどこかに猥雑なところもあって、というところが好きだったのですが、ヒットした「勿忘」はまるで別グループのようで、でも今年になって出たアルバムは十分に猥雑さも感じさせる作品で、じゃあライブはどうなのと思い。
結果、ニューアルバムから数曲、ビクター時代数曲がミックスされているパートは何の違和感もなく非常に楽しいのですが、ラスト2曲「勿忘」とドラマ主題歌になるという新曲だけ完全に別世界という、さもありなんという状況。
すごく気持ちはわかるのだけど、どっかで擦り合わせていかないと後々大変だと思います。

The Libertines(録画)
早めにスタジアム入った方がいいのでは、という判断と、なかなかこういう事態もないので観てみようという気持ちと。
撮り下ろしではあるっぽいのだけど、結果としてはどうにもこうにも。生じゃない分「フジロックをYouTubeで観る」時の気持ち以下でした。

MANESKIN
正直彼らに対してはピンと来なかったのですよ。Moverとかもっと言えばSultans Of Ping F.C.みたいな「Rockin' On誌推し枠」だろうという先入観もあり。
ただ、徐々に回りの信頼できる友人たちがいいよいいよと言い始め、前日の豊洲PITでの単独公演の感想がタイムライン上で爆発しているのを見て、これは観なきゃいかんかと。
結論、観て本当に良かった。
「スター」というものはなろうと思ったからなれるでもなく、持って生まれたカリスマ性とか、それに相応しい楽曲とかバンドとか、いろいろ揃っていないとなれないものなわけですが、何か生まれて初めてそういうのが全部揃っている「これからスターになろうとしている」生物を見ている感覚になりました。
初来日時のQUEENやBON JOVIを観ていた方々の感覚ってこんな感じだったのでしょうか。

King Gnu
2019年のVIVA LA ROCK以来。
当時は「白日」リリース少し後というタイミングでしたが、2019年のTwitterでの感想を探すと「ライブ観てもわからず、でもそのセンスが恐ろしく地肉化されたものであることは理解した。もう置いてけぼりでいい」と書いてありました。
が、その後向こうの方から更にわかりやすかったり違う角度からの楽曲をばんばんリリースしてくれたため、何となくわかった気になって今回臨んだのですが、やっぱりそれでも底知れない。
スケール更にでかくなってるし、でもまだ全然この先行けそうな感じもするし。だから思うんだけどそろそろこっちでも「J-POP」意識するのやめてもいいんじゃないか。今度こそ置いてけぼりになってもいいから、この先が観たい。

The 1975
2019のサマソニの割と色彩豊かなステージから完全なモノクロ世界的な演出。もうかっこいい。
10月の新作リリースを発信するにあたっての様々なデザインがそういう感じだったので、いち早くそのモードを持ち込んできたということが、何かうれしい。
1時間半のロングセットになったのは、The Libertinesの分ということもあるのだけど、Rage Against The Machineが急遽キャンセルになったことに伴って来週のレディング/リーズフェスのヘッドライナーになったことで、そのリハーサル的な側面もあったんじゃないかとか邪推することもできるのですが、それでもこのレベルのものを見せてくれるのであれば何の問題もないです。

UKではThe 1975に変わったことはあんまりポジティブには捉えられていないそうですが、それは何となく理解できそうな気もします。
それらは両方とも必要だと思うんですけど、Rage Against The Machineはどちらかといえば世の中の様々に「NOと言う」バンドであり、The 1975はどちらかといえば世の中の様々に「YESと言う」バンドであって、割と真逆だと思うので。
レディングの主催は何でそういうキャスティングをしたのかとも思うのだけど、まあギリギリだししゃあない。
あとは来週、現場の空気をひっくり返すだけだと思いますし、できると思います。

<2日目>

Tani Yuuki
ストリーミングチャートでは既によく見る名前なので、どんなもんかという気持ちで。
今のところ完全な全国一般流通のCDも出してないし(タワレコ限定流通はあり)、おっさんよくわからないので本当にこういう場があるのは素敵です。
で、快活そうな青年が非常に誠実に歌うという、大変にいい感じの現場。
あとは、リーガルリリーも然り、ひとつの楽曲がバズる形で注目されたミュージシャンに総じて言えるのですが、1曲がバズった後、どれだけその跡にその楽曲に匹敵するか越えていくかという楽曲を作れるか否かにおよその未来がかかっていると思っています。
彼の場合「Myra」「W/X/Y」とバズっているので、あとはもう既存のメディアメインの方々に直結する術を持つことができれば、と思います。

羊文学
UKギターバンド好きな人間は聴かなきゃいけないバンドなわけですが、今までライブ観たことなくてすみませんでした。ライブもいい。
とにかく「ギター音が歪まないのにデカい」の最高。前面には出てこないけど曲の中で渦巻いている感のあるエモさもたまらなくいい。
古い例で言えばあれだ、電子化する前のナーヴ・カッツェ。

リリカルリリィ
前日にリーガルリリーを観たので、この2組が同じイベントに出演することなど今後絶対ないだろうという予想のもと記念のつもりで。
こと声優系のアイドルグループは、21世紀以降のアイドルの「アイドル的なもの」を抽出して濃縮してぶっ込んでくるというイメージなのですが、まさにそれ。すげえ濃い「アイドル」感。
とはいえ楽曲によってはトラックのボトムが割とぶっといのとか、「これ普通にいい曲じゃないか」と思うのとかもあって腰に来たり心に来たりする。
で、声優さんですから声の耳心地は大変によく、総合的に言えば「劇物」ですこれ。
これ以上摂取すると割と簡単に依存症になるヤツ。ヤバい。猫になる。

EASY LIFE
正直、音源はいまいちピンと来ないままだったのですが、ライブすごいなこれ。
だから、1980年代のPet Shop Boysや、1990年代のPulpがもし2020年代に音を出したらこういう感じになるんだろう、ということがすごくよくわかりました。
非常に英国的に地獄のような歌詞を、でも軽やかに歌い演奏する。ライブを観ることでようやく咀嚼できた気持ちになりました。
もう一度きちんと音源聴きます。

女王蜂
いたら観るでしょ当然。正直、女王蜂は日本の宝ではないかと思うのです。
Maneskin同様、こういう人がこういう意志を持ってこういう技術を持ってこういうバンドを持ってこういう活動をする、というのは世界規模の奇跡だと思うんです。
でも、ライブはイベントとかフェスでしか観たことないんです。濃すぎて強すぎてワンマンの尺で体が持つ気がしないんですよ。
約40分間、強烈な圧をいただきました。ワンマンも頑張って行きたいです。

milet
悪くない。素敵な声ですし、すごくきちんと作り上げた感じのステージ。
持ち曲の中からアップテンポの曲を出すだけ出して場を作りながら、ヒット曲はきちんと押さえていく感じの親切さ。
ただ、毎度思う通り、そういうJ-POP的な作りの曲よりも、UKの頭のおかしいクリエイターが作ったわけのわからないビートに奇声だけ乗せるとかの方が絶対彼女の声が映えると思うんですよ。
ステージあっち行ったりこっち行ったりしないで、わけのわからない衣装を着て超然として。そういうのを私は観たい。

Kula Shaker
いきなり「Hey Dude」。笑っちゃう。全体的に派手な部分は一切ないのだけど、ひたすら実直に紡ぐ感じのステージ。
ただ、ギターソロ以外の刻んでるところは全部ベース音の方が大きくてあんまり聴こえないのは仕様なんでしょうか。
ベース>オルガン>ドラム>ギター、みたいな音量なんですよ。でもおかしいなら途中で改善されるはずだし、やっぱ仕様なのか。
あと、ラストでmiletが呼び込まれての「Govinda」。
彼女の声がインド系メロに合わないはずがなく、これがすごくいい。milet本人のステージで思ったことが直後に多少なりとも回収されるという幸せ。いい。
あともうひとつ、曲の途中でいきなりHappy Mondays「Hallelujah」の一節をぶち込んできたのはあれ何だったんでしょうか。

Primal Scream
「Screamadelica Live」というタイトルが付けられていたわけで、ベテラン勢でよくある「過去の名作アルバム再現ライブ」のつもりで観ていたらもっと深かった。
頭3曲はアルバム通りですが、そこから「Come Together」になり「Inner Flight」になり、アルバムタイトル曲なのにアルバム未収録でその後「Dixie-Narco EP」で割とぽいっという感じでリリースされた「Screamadelica」。
要するにこれは単なるアルバム再現ではなく、「Screamadelica」という当時のコンセプトを今改めて表現し直したということではないかと。
そして本編最終曲「Shine Like Stars」の時、スクリーンに投影された人物、リアルタイムではわからなかったのですが、友人からあれはアンディ・ウェザオールの近影であるということを聞き、特に周年でもないのに今「Screamadelica Live」をやる意味までを理解した次第。

で、本編終わってメンバーはけたけど、まだ「Loaded」やってなくね?と思ったらアンコールでいきなりぶっぱなす。うわ最高だなと思ったらそこからも大変。
もう2日間いろいろ観て割とくたびれているのに、「Swastika Eyes」「Jailbird」「Country Girl」「Rocks」というプチ「Dirty Hits」状態。殺す気か。最高。

以上。運営とかで思ったことは次回。

ROTH BART BARON@日比谷野音のこと

ROTH BART BARONを初めて聴いたのは、2013年頃、きっかけは忘れましたがYouTubeで「小さな巨人」。とても「大きな音楽」だと思いました。翌日CDを買いに行きました。
初めて観たライブは2014年6月、渋谷のo-nest。素晴らしかったけど、こんな狭くて天井の低い場所で奏でられるべき音楽ではない、ホールかもっと広い場所で聴きたいと思いました。
始めて野外で観たのは2015年のVIVA LA ROCK。結局この年しか設営されなかったアリーナ入り口近くの特設ステージ。動員は数百人レベルで残念でしたが、でも演奏は本当によかった。
あとは「もっと長く聴きたい」一点のみ。

クラウドファンディングでロンドンに滞在したり、ドラマーが脱退したり。ようやっとA_o名義での活動や「関ジャム」でメディアに乗っての2022年8月7日。日比谷野音でのワンマン。


感無量。たとえ実動員が1000人程度だったとしても。僕はこの音楽をまさにここで聴きたかったんです。

ゲストは北海道羅臼出身の新進気鋭のSSW森大翔。Yogee New Wavesのフロントマン角舘健悟、そして新曲「月に吠える」を歌う中村佳穂。
ゲストパートの直前がA_o名義の「BLUE SOULS」だったので、彼女がコロナ陽性でなければこの日ROCK IN JAPANでBiSHのステージを16:30に終えたアイナ・ジ・エンドも駆けつけたのではないかという邪推もできるのですが、詮無いことですし、その分ということか、中村佳穂が「月に吠える」に入る前に「BLUE SOULS」を一節歌うという「粋」もありましたので、これはこれでOK。

というか、中村佳穂と折坂悠太が評価とともにこれだけ広く遡及できるのであれば、ROTH BART BARON=三船雅也と蓮沼執太ももっと知られていいだろうよと、常々思っている身としては、ここでの中村佳穂との接点は嬉しくもあり。

それでも、そういうゲストがあったり新曲があったりでも、やっぱり今回は聴き馴染んだ曲が計10人のバンド編成で日比谷野音という場所で鳴らされることが自分にとっては一番重要で。
アンコールの初期曲「化け物山と合唱団」から「小さな巨人」の流れでは本当に泣きそうになりました。10年近く、これを待っていたんだと思いました。
そういうライブでした。

彼ら、今年も野外フェス出ます。
8/13:RISING SUN ROCK FESTIVAL(北海道)
8/27:Millennium Deadstock Festival(福井)
8/28:SWEET LOVE SHOWER(山梨県)

行くご予定があれば是非に。
もしくはこの日比谷野音公演、8/13までアーカイブ観られます。

彼らの最近のワンマンは概ね撮影可、SNS拡散可なんですが、YouTubeに上げたのは初めて見た。
どこまでOKか正直わかんないですが、中村佳穂出演部分、また観て泣きそうになったので以下。
これ観て気になった方はもれなくアーカイブ購入して観よう。約束だ。

レコード店のショッパー袋のこと

先日、このツイートが割と読んでいただけたので、こちらでも改めてやってみます。

新譜屋・中古屋にかかわらず、割とこういう状況はありまして、たとえば昨年10月に惜しまれながらも閉店した千葉県館山市のカミヤマサウンドステーション、数年前に行った時はちゃんとロゴ入りの袋だったのが、閉店の報を聞いて伺った際には何かの包装紙を切って貼ってこさえた謎の袋に入れていただきまして。

こういう内職な袋は他になかなか見ないですが、白無地とか紺無地とか、あとはこういう謎デザインの袋も割とよく見ます。

当然ですがCD屋・レコード屋、アナログでやや景気のいい一部を除けば、そう経営も明るいわけでもなく、経費はできるだけ抑えたい。
でも過去から独自ショッパー袋を使っていたところは、それがお店のアイデンティティでもありますので、そう簡単にもやめられない。

特に印刷に1色ではなく2色以上使っているところとかは当然単価も高くなるので大変です。
店舗網がどんどん小さくなっても2色刷りが誇り高い大阪のDISC J.J.とか。

東京都内3店舗を構えるココナッツ・ディスクなんかは、デザインが2色であることに意義があるタイプ。

で、1色でもショッパーズ袋を作るのがキツくなってきた場合だけでなく、新規開店にあたってできるだけ経費を抑えたい、というパターンもあります。
その場合、多くは初手から汎用袋を使用するのですが、「それじゃあんまりかなあ」と考えるお店もそこそこあったりします。
ではどうするか、ということなのですが。

1)紙袋にハンコを押す。
画像は浜松市にあるいい感じのセレクト&中古ショップ、SONE RECORDS。でもこの時はやや薄くてよくわからないやや残念な押捺。
あと、最近は東京のRAREが独自袋をやめて紙袋+ハンコになっているかと思います。

2)無地汎用袋にシールを貼る。
画像は2017年に閉店した、下北沢の一番街商店街にあった「オトノマド」というレコ屋。
確か無地の袋を取り出し、商品を袋に入れてからこのシールを貼って渡された記憶。何かよかったです。

3)透明汎用袋に店ロゴ入りカードを入れる。
画像はこれも2020年に閉店した、名古屋・大須のAndyというレコ屋。
半透明の袋にカードを入れることで透けてロゴが見えてショッパー袋っぽくなるという算段。

ぐるぐるお店を回っていると、いろんなお店がありますが、それでもやっぱりロゴ入り袋や上記のような工夫に触れると嬉しくなります。
一部「袋入れますか」と聞いてくれる店の場合「ロゴ入りの袋ですか?」と質問し、「無地のです」と言われたら「じゃあいりません」と言ってしまう程度には鬼畜ですが、でも日帰り用のトートも1泊以上用のリュックもLPサイズが入るサイズを購入してあるのでぬかりはないのです。

あと、材質が塩ビかポリかとか、細かいことも割といけそうな気もするのですが、そろそろやめておきます。

ただ、ロゴ入りショッパー袋は嬉しいのですが、でもゲオの袋のように「これ斤量いくつなん?」と思ってしまう、舐めたら溶けるんちゃうかくらいに薄くなってしまうと「もう無理しなくていいよ…」とも思ってしまいます。本当に無理しなくていいです。

ジャニーズのCD売り上げの推移のこと

先日、ジャニーズ所属のグループのCD売上について「2020-2021年は過去最大レベルに達しています」ということを言いましたが、正直な話体感レベルで間違いないと思ったものの、具体的な数値を見ないまま言っていました。
何となく気持ち悪かったので、過去約30年についてオリコンのCD売上数値を調べてみました。

■シングル
1993:1,570,000
1994:3,600,000
1995:4,650,000
1996:5,230,000
1997:7,900,000
1998:7,540,000
1999:6,330,000
2000:7,110,000
2001:4,880,000
2002:3,080,000
2003:5,760,000
2004:3,150,000
2005:5,670,000
2006:7,620,000
2007:5,300,000
2008:6,750,000
2009:6,330,000
2010:7,820,000
2011:5,980,000
2012:6,680,000
2013:7,100,000
2014:7,360,000
2015:5,450,000
2016:5,860,000
2017:5,660,000
2018:5,840,000
2019:5,210,000
2020:9,370,000
2021:9,590,000

■アルバム
1993:540,000
1994:730,000
1995:2,130,000
1996:1,450,000
1997:3,200,000
1998:2,120,000
1999:1,260,000
2000:1,910,000
2001:3,760,000
2002:1,490,000
2003:1,580,000
2004:910,000
2005:2,060,000
2006:2,410,000
2007:2,480,000
2008:1,260,000
2009:3,860,000
2010:2,570,000
2011:2,110,000
2012:2,690,000
2013:1,270,000
2014:3,050,000
2015:2,900,000
2016:3,580,000
2017:2,500,000
2018:1,860,000
2019:3,920,000
2020:2,360,000
2021:4,100,000

結果として、やっぱり2021年がジャニーズ事務所にとって最もCDを売った年だったことがわかりました。よかった。
よかったんだけど、やっぱどうかしてる日本。

1993年の売り上げを見ていると、ようこんな数値でやってたもんだと思うくらいですが、当時は光GENJIがいよいよシオシオになり、SMAPはデビューしていたもののまだブレイクに至っていない状態だったので止むを得ない。

で、シングル・アルバムとも売上が飛び出ている1997年はKinKi Kidsのデビュー年ですが、正味単体でここまでのインパクトがあったグループは他にないんじゃないでしょうか。1stアルバム&1stシングルが同時発売で、抱き合わせセットも販売されていたが故のこういう状況でもありますが。

昔はデビューして数年すればある意味「陳腐化」してしまい、売上が相当減るのが常で、過去の事例で言えば光GENJIは1988年に3rdシングル「パラダイス銀河」で売上のピークを迎えましたが、その5年後のシングル売上はおよそ1/10になっています。
が、最近のグループは、バラエティ番組での継続的な露出もあって、デビュー以降の売上の減りもさほどではなくなっているというのもこの売上の大きさに寄与していると思います。

あと、これはこれで別途掘ってみたいと思っているのですが、ジャニーズ初の東京ドーム公演は1989年の光GENJIでしたが、それ以降は1998年1996年にSMAPが2DAYS公演するまで東京ドーム公演はありませんでした(「ジャニーズ野球大会」を除く)。
それが2019年には、嵐を筆頭にジャニーズ合計27日間の東京ドーム公演を行うに至っているわけで。いろいろ規模がデカくなっている。

興行の規模が大きくなっていくのはいろいろ理解できるのですが、この2021年にCD売上の最高値を叩き出すジャニーズ勢。
「複数枚買いしてます!」ということを競うようにSNSで発信していることが、他のファンを刺激しているという側面もありまして、結果として、なのかもしれませんが、そういう意味ではジャニーズ割とネットをうまく使ってるんじゃないかと思います。

ひたちなかの新フェスに行ったこと

23日、2日間のうち1日だけですが、ROCK IN JAPANが去ったひたちなか市で新たに立ち上がった新フェス「LuckyFM Green Festival」に行ってまいりました。
事前からいろいろ確認したりしていましたので、ある程度時系列で。

<事前>
ROCK IN JAPANが、それまでのひたちなかでの開催ではなく、千葉市の蘇我スポーツ公園で開催されることが発表されたのが2022年1月5日の正午。しかしその数時間後には具体的な内容等の発表はなかったものの、国営ひたちなか海浜公園で今夏新フェスを開催します、という声明が。
具体的な日程とフェス名、第1弾ラインナップが発表されたのは4月28日。

開催まで3か月を切った中での告知開始というのは新しいフェスとしては致命的なほど遅く、かつ発表された7/23-24という日程は、浜松市の渚園でFUNDAY PARK FESTIVAL、大阪市舞洲でOSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVALと、中堅どころのフェスの開催が既に発表されていて、正味かなりの条件の悪さに、果たしてこれどうなるものかと思っておりました。

その後ラインナップや日割りが公開されるにつれて、23日は「年寄りが好きそうなミュージシャン」密度が異常に高く、24日はJ-HIPHOP勢の密度が異常に高いという、2DAYSというよりは「違うフェス1日ずつやるんじゃね?」的に思えてしまうほど。

エリアマップについては発表されたのを見て非常に納得。
ROCK IN JAPAN最大のステージGRASS STAGEとその導線沿いの施設やステージはばっさりとカット。翼のゲートから近い3ステージのみを活用する形になっていました。

具体的な位置関係としては
・WATER STAGE(=旧LAKE STAGE)
・GREEN STAGE(=旧SOUND OF FOREST)
・LUCKY STAGE(=旧WING TENT)
という3ステージ構成。

そして1日目の「年寄りが好きそうなミュージシャン」、2日目のJ-HIPHOP勢はそれぞれおよそGREEN STAGEに集中させるという戦略。
逆に言えば他の2ステージはやや目玉的なミュージシャンには欠けるもののおよそ通常のフェスであり、ただしGREEN STAGEの存在によって他のフェスとは何か明らかに違う雰囲気もある、というそんな状況に。
そして1日目のタイムテーブルについては、発表されたときに後半だいぶWATER STAGEとGREEN STAGEのライブ時間帯が被っているのを見て、「ということは、それなりに動員の目途が付いたのかな」とは思ったのですが。

自分は6月の下旬頃に1日目だけ行ってみよう、7月22日はその前の週の日曜出社分の代休を当てて前乗りしようと思い立ち、足と宿の予約を行ったわけですが、開催1か月前を切った段階で、常磐線の特急は当然、宿も水戸駅どころか勝田駅前のホテルが余裕で予約できるという事態に、やはり不安バリバリで出かけることになるわけです。


<前日>
22日夕刻に勝田駅着。時刻表示LEDの上に「ようこそ」がかかっていたり、駅中コンビニが張り切っているのはROCK IN JAPANの時と変わらないのですが、とにかく駅前の「平常運転」感がすごい。

いや、ROCK IN JAPANで前乗りしたことがないので比較はできないのですが、駅中、駅周辺含めてフェス的雰囲気は街中にほぼ皆無、テント数張りが畳んで置かれている以外に何か準備したような様子もなく。
ここに来て不安を拭えるような状況はまだありません。


<当日>
ホテルの朝食会場も正味ガラガラ。9時前にチェックアウトして駅前に向かうと置いてあったテントがシャトルバスの切符売り場になっていましたが、ほぼ並ばず購入完了、全く並ばず乗車、席がだいたい埋まるくらいのタイミングで詰め込むことなく発車。

ここまでずっと不安は続いていたのですが、いよいよひたちなか海浜公園に近付いてきたあたりで具合が変わってきます。
勝田駅前からひたちなか海浜公園までは片側2車線の道路がずっと続いているのですが、その歩道寄りの道路に渋滞が発生。とはいえ中央寄りを走るバスはノンストップで公園の方へ向かい続けます。
要するに、駐車待ちの列が道路に長く伸びていたわけで。果たして広大な駐車用地には既に大量の車が止まっていて、そこから公園へ向かう人の長い列。ゲート前には既に長蛇の列ができていて、結局入場までに30分かかるくらいには混んでいて。

まったくもって杞憂でした。そして理解しました。
今回の主催はFM茨城。全国メディアではなく完全な地場メディアです。
このラッキーフェスはROCK IN JAPANのように全国から客をしこたま呼ぶ形と同じところを目指すのではなく、少なくともまずは地元の茨城の方々に愛されるフェスとなるべく位置付けられ、恐らくFM含めた地元メディアでは相当な告知を行った結果、「地元から自家用車で訪れる」観客の割合が圧倒的に多い形で集客にある程度成功していたと。
すごく理解しました。主催者発表では1日目は15,000人目標で13,000人まで持ってこれたとのこと。すみませんでした。


で、観たの。

■Creepy Nuts
初見。とはいえ全部聴いたことある曲しかやらない。

1.合法的トビ方ノススメ
2.よふかしのうた
3.堕天
4.2way nice guy
5.かつて天才だった俺たちへ
6.のびしろ

正味、初めて生で観た際の「感動」は薄め。生バンドではないということと、R-指定の「熱」というかそのメッセージは割とメディアを経由したとてあんまり劣化しないレベルのものであるということか、と思いました。
あのやたらポップな音作りは「届かせる」ためにそうなっているのだろうな。


■相川七瀬
初見。「シングル曲だけにしました」とMCで仰って本当にそうだったのですが、多少シーケンスは被るものの、概ねG/B/Drの音で成り立っていて普通にかっこいい。元々の曲の足腰がしっかりしてるんだなと改めて思う。

1.LIKE A HARD RAIN
2.恋心
3.Sweet Emotion
4.BREAK OUT!
5.夢見る少女じゃいられない

メンバー紹介でドラマーを「息子です!」と紹介してビビる。ここまでもイベント時に叩いたことはあったものの、1ステージ全部を担当するのはこれが初めてということで。
お母さんのバックバンドをしていること、そしてお母さんがあんな女性だということ。全くもって想像できません。
贅沢を言えば、間奏にM/A/R/R/Sの「Pump Up The Volume」のベースラインを意味もなくぶっこんでくる「Bad Girl」も生で聴きたかった。


■杏里
初見。のはず。
相川七瀬の時に気になるほど悪かったわけでは全くないのですが、それでもサウンドチェックの段階でバンドの音が滅茶苦茶きれいで笑う。やっぱ違うのよ。

1.Windy Summer
2.Remember Summer Days
3.Last Summer Whisper
4.悲しみがとまらない
5.CAT'S EYE
6.オリビアを聴きながら

頭の「夏」縛りがとにかく最高で。あと、「CAT'S EYE」も流れに合うアレンジに仕立ててあって大変に素敵。こういうのをシティポップって言うんじゃないの。
ただ、途中で他ステージでやったMagie Laneを呼び込んで一時いきなりステージからいなくなったり、大分押したり、禁止されているはずのシンガロングを割と執拗に求めてきたり、最近のフェスではなかなか見ない自由奔放さでした。


■CHAI
3回目くらい。最新アルバムがそれまでの流れと相当違う音だったので、ではライブはどうなっているのかと思いこちらへ。
ステージ開始前のサウンドチェックでラッキーフェスにかけたか、いきなり「Get Lucky」のカバー演奏を開始してもうその時点で最高。

1.END
2.クールクールビジョン
3.PING PONG!
4.N.E.O.
5.カーリー・アドベンチャー
6.まるごと
7.Donuts Mind If I Do

で、最新アルバムの音とそれまでの音の食い合わせは正味あんまりよくないままでした。
しかし全体の演奏力・パフォーマンス力がバチクソ上がっていて、多少違うくらい気にしていられないくらいの圧倒的ステージ。
やっぱ揉まれているだけある。こんなのこんな小さなステージでやって終わらせちゃダメよ、本当。


この後、RIP SLYMEを観にGREEN STAGEに戻ろうとしたのですが、あからさまに雲行きが悪くなり、雨雲レーダー観たらすごい赤いのが接近中で、こりゃあかんと思ってテントに入ってSiMを観ていたのですが、降雨開始前に「落雷警報発令のため、テントから出てください」という場内アナウンスがありライブも中断。

さてどうしようと思って見渡したところ、ROCK IN JAPANに行ったことがある方にはおなじみ、翼のゲート入って右奥、テントエリア手前の公園施設の公衆便所棟が目に入ったので、便所入口脇の屋根のあるスペースにハイボール持って飛び込む。
しばらくは便所に並んでいる方の一部に「何でお前そんなとこで何飲んでるねん」的な目を向けられましたが、10分しないくらいのうちにゲリラ来襲、俺勝利。
ただし、雨が止んだ後はご飯、飲酒&喫煙を優先してしまったためRIP SLYMEは最後の「熱帯夜」だけ。


■ゴールデンボンバー
たぶん3回目。3人化してからは初めて。
相変わらず、場の転換でドラムキットを出してはくるんだけどサウンドチェック一切やらなさ加減の時点でもう面白い。

1.#CDが売れないこんな世の中じゃ
2.抱きしめてシュヴァルツ
3.元カレ殺ス
4.首が痛い
5.女々しくて

今回喜矢武豊の「ギターソロじゃなくて」はメロン&納豆ソロでした。あとは樽美酒が尻を出すか鬼龍院が裸になるかだなあと思っていたら、案の定樽美酒が尻を出したので安心しました。
最後も安定の「女々しくて」。もうわかってるんだけどさ、でも安定して楽しいじゃないですか。これが観たかったんですよ。


一時止んだりするものの、断続的に割とガチの降雨が続き、うっかり今回の持参をコールマンのガチ雨具ではなくコンビニポンチョで済ませてしまっていたため、この雨量では何とも辛い。
そもそもこのフェスに来ようと思った動機が、自分は大変に脆弱であるため心が折れたのと、あとは落雷警報で遅延していて最後までいると帰りの特急間に合わない可能性もあって、金爆終了の時点で撤収。
石井竜也さんごめんなさい。


ということで、割と楽しく過ごしました。
少なくともこのフェスは「ROCK IN JAPAN」の穴埋めではなく、地元にとっての新しいフェスを立ち上げようという動きであることはわかりました。

23日の年寄り好きのするラインナップ、24日のJ-HIPHOPはできるだけ広く老若男女を集めようという意識。
特に23日の方は、こういう地域型新フェスには欠かせない協賛企業からの出資を募るにあたり、お金を出す判断をされる地位の方が「知っている方が出演している」と認識できることが、割と重要事項であるが故のこのメンツである必然性があるのだろう、と思ったり。

このフェス、各ステージに屋根&椅子付きの「協賛者様席」が用意されていたのですが、大きなWATER STAGEのそこは概ねスカスカだったのに対し、GREEN STAGEの相川七瀬や杏里の時はもう立ち見が出るレベルの大入りだったりとか。

もちろん、ROCK IN JAPANによる地元への経済効果は多大なものがあり、それに比べればこの新フェスはもうその何分の一かそれ以下かくらいのレベルで減少していると思います。
それでも、その経済的なところを早急に取り返そうということはメインの目的ではなく。
そしてここ数年のROCK IN JAPANはチケット発売と同時に即完してしまうが故に「地元の文化」とは言い難かったという状況もあり、それを「茨城のもの」として改めて再構築して行こうという意志も割と伝わったよいフェスでした。
来年もできるだけ行こうと思います。

あと、千葉移転と同時に勝田駅前の「ROCK」像も引っ剥がされて移転してたら最高に笑えるなと思っていたのですが、普通にありました。ロッキンオン社そこまで鬼畜ではなかった。