23日、2日間のうち1日だけですが、ROCK IN JAPANが去ったひたちなか市で新たに立ち上がった新フェス「LuckyFM Green Festival」に行ってまいりました。
事前からいろいろ確認したりしていましたので、ある程度時系列で。
<事前>
ROCK IN JAPANが、それまでのひたちなかでの開催ではなく、千葉市の蘇我スポーツ公園で開催されることが発表されたのが2022年1月5日の正午。しかしその数時間後には具体的な内容等の発表はなかったものの、国営ひたちなか海浜公園で今夏新フェスを開催します、という声明が。
具体的な日程とフェス名、第1弾ラインナップが発表されたのは4月28日。
開催まで3か月を切った中での告知開始というのは新しいフェスとしては致命的なほど遅く、かつ発表された7/23-24という日程は、浜松市の渚園でFUNDAY PARK FESTIVAL、大阪市舞洲でOSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVALと、中堅どころのフェスの開催が既に発表されていて、正味かなりの条件の悪さに、果たしてこれどうなるものかと思っておりました。
その後ラインナップや日割りが公開されるにつれて、23日は「年寄りが好きそうなミュージシャン」密度が異常に高く、24日はJ-HIPHOP勢の密度が異常に高いという、2DAYSというよりは「違うフェス1日ずつやるんじゃね?」的に思えてしまうほど。
エリアマップについては発表されたのを見て非常に納得。
ROCK IN JAPAN最大のステージGRASS STAGEとその導線沿いの施設やステージはばっさりとカット。翼のゲートから近い3ステージのみを活用する形になっていました。
具体的な位置関係としては
・WATER STAGE(=旧LAKE STAGE)
・GREEN STAGE(=旧SOUND OF FOREST)
・LUCKY STAGE(=旧WING TENT)
という3ステージ構成。
そして1日目の「年寄りが好きそうなミュージシャン」、2日目のJ-HIPHOP勢はそれぞれおよそGREEN STAGEに集中させるという戦略。
逆に言えば他の2ステージはやや目玉的なミュージシャンには欠けるもののおよそ通常のフェスであり、ただしGREEN STAGEの存在によって他のフェスとは何か明らかに違う雰囲気もある、というそんな状況に。
そして1日目のタイムテーブルについては、発表されたときに後半だいぶWATER STAGEとGREEN STAGEのライブ時間帯が被っているのを見て、「ということは、それなりに動員の目途が付いたのかな」とは思ったのですが。
自分は6月の下旬頃に1日目だけ行ってみよう、7月22日はその前の週の日曜出社分の代休を当てて前乗りしようと思い立ち、足と宿の予約を行ったわけですが、開催1か月前を切った段階で、常磐線の特急は当然、宿も水戸駅どころか勝田駅前のホテルが余裕で予約できるという事態に、やはり不安バリバリで出かけることになるわけです。
<前日>
22日夕刻に勝田駅着。時刻表示LEDの上に「ようこそ」がかかっていたり、駅中コンビニが張り切っているのはROCK IN JAPANの時と変わらないのですが、とにかく駅前の「平常運転」感がすごい。
いや、ROCK IN JAPANで前乗りしたことがないので比較はできないのですが、駅中、駅周辺含めてフェス的雰囲気は街中にほぼ皆無、テント数張りが畳んで置かれている以外に何か準備したような様子もなく。
ここに来て不安を拭えるような状況はまだありません。
<当日>
ホテルの朝食会場も正味ガラガラ。9時前にチェックアウトして駅前に向かうと置いてあったテントがシャトルバスの切符売り場になっていましたが、ほぼ並ばず購入完了、全く並ばず乗車、席がだいたい埋まるくらいのタイミングで詰め込むことなく発車。
ここまでずっと不安は続いていたのですが、いよいよひたちなか海浜公園に近付いてきたあたりで具合が変わってきます。
勝田駅前からひたちなか海浜公園までは片側2車線の道路がずっと続いているのですが、その歩道寄りの道路に渋滞が発生。とはいえ中央寄りを走るバスはノンストップで公園の方へ向かい続けます。
要するに、駐車待ちの列が道路に長く伸びていたわけで。果たして広大な駐車用地には既に大量の車が止まっていて、そこから公園へ向かう人の長い列。ゲート前には既に長蛇の列ができていて、結局入場までに30分かかるくらいには混んでいて。
まったくもって杞憂でした。そして理解しました。
今回の主催はFM茨城。全国メディアではなく完全な地場メディアです。
このラッキーフェスはROCK IN JAPANのように全国から客をしこたま呼ぶ形と同じところを目指すのではなく、少なくともまずは地元の茨城の方々に愛されるフェスとなるべく位置付けられ、恐らくFM含めた地元メディアでは相当な告知を行った結果、「地元から自家用車で訪れる」観客の割合が圧倒的に多い形で集客にある程度成功していたと。
すごく理解しました。主催者発表では1日目は15,000人目標で13,000人まで持ってこれたとのこと。すみませんでした。
で、観たの。
■Creepy Nuts
初見。とはいえ全部聴いたことある曲しかやらない。
1.合法的トビ方ノススメ
2.よふかしのうた
3.堕天
4.2way nice guy
5.かつて天才だった俺たちへ
6.のびしろ
正味、初めて生で観た際の「感動」は薄め。生バンドではないということと、R-指定の「熱」というかそのメッセージは割とメディアを経由したとてあんまり劣化しないレベルのものであるということか、と思いました。
あのやたらポップな音作りは「届かせる」ためにそうなっているのだろうな。
■相川七瀬
初見。「シングル曲だけにしました」とMCで仰って本当にそうだったのですが、多少シーケンスは被るものの、概ねG/B/Drの音で成り立っていて普通にかっこいい。元々の曲の足腰がしっかりしてるんだなと改めて思う。
1.LIKE A HARD RAIN
2.恋心
3.Sweet Emotion
4.BREAK OUT!
5.夢見る少女じゃいられない
メンバー紹介でドラマーを「息子です!」と紹介してビビる。ここまでもイベント時に叩いたことはあったものの、1ステージ全部を担当するのはこれが初めてということで。
お母さんのバックバンドをしていること、そしてお母さんがあんな女性だということ。全くもって想像できません。
贅沢を言えば、間奏にM/A/R/R/Sの「Pump Up The Volume」のベースラインを意味もなくぶっこんでくる「Bad Girl」も生で聴きたかった。
■杏里
初見。のはず。
相川七瀬の時に気になるほど悪かったわけでは全くないのですが、それでもサウンドチェックの段階でバンドの音が滅茶苦茶きれいで笑う。やっぱ違うのよ。
1.Windy Summer
2.Remember Summer Days
3.Last Summer Whisper
4.悲しみがとまらない
5.CAT'S EYE
6.オリビアを聴きながら
頭の「夏」縛りがとにかく最高で。あと、「CAT'S EYE」も流れに合うアレンジに仕立ててあって大変に素敵。こういうのをシティポップって言うんじゃないの。
ただ、途中で他ステージでやったMagie Laneを呼び込んで一時いきなりステージからいなくなったり、大分押したり、禁止されているはずのシンガロングを割と執拗に求めてきたり、最近のフェスではなかなか見ない自由奔放さでした。
■CHAI
3回目くらい。最新アルバムがそれまでの流れと相当違う音だったので、ではライブはどうなっているのかと思いこちらへ。
ステージ開始前のサウンドチェックでラッキーフェスにかけたか、いきなり「Get Lucky」のカバー演奏を開始してもうその時点で最高。
1.END
2.クールクールビジョン
3.PING PONG!
4.N.E.O.
5.カーリー・アドベンチャー
6.まるごと
7.Donuts Mind If I Do
で、最新アルバムの音とそれまでの音の食い合わせは正味あんまりよくないままでした。
しかし全体の演奏力・パフォーマンス力がバチクソ上がっていて、多少違うくらい気にしていられないくらいの圧倒的ステージ。
やっぱ揉まれているだけある。こんなのこんな小さなステージでやって終わらせちゃダメよ、本当。
この後、RIP SLYMEを観にGREEN STAGEに戻ろうとしたのですが、あからさまに雲行きが悪くなり、雨雲レーダー観たらすごい赤いのが接近中で、こりゃあかんと思ってテントに入ってSiMを観ていたのですが、降雨開始前に「落雷警報発令のため、テントから出てください」という場内アナウンスがありライブも中断。
さてどうしようと思って見渡したところ、ROCK IN JAPANに行ったことがある方にはおなじみ、翼のゲート入って右奥、テントエリア手前の公園施設の公衆便所棟が目に入ったので、便所入口脇の屋根のあるスペースにハイボール持って飛び込む。
しばらくは便所に並んでいる方の一部に「何でお前そんなとこで何飲んでるねん」的な目を向けられましたが、10分しないくらいのうちにゲリラ来襲、俺勝利。
ただし、雨が止んだ後はご飯、飲酒&喫煙を優先してしまったためRIP SLYMEは最後の「熱帯夜」だけ。
■ゴールデンボンバー
たぶん3回目。3人化してからは初めて。
相変わらず、場の転換でドラムキットを出してはくるんだけどサウンドチェック一切やらなさ加減の時点でもう面白い。
1.#CDが売れないこんな世の中じゃ
2.抱きしめてシュヴァルツ
3.元カレ殺ス
4.首が痛い
5.女々しくて
今回喜矢武豊の「ギターソロじゃなくて」はメロン&納豆ソロでした。あとは樽美酒が尻を出すか鬼龍院が裸になるかだなあと思っていたら、案の定樽美酒が尻を出したので安心しました。
最後も安定の「女々しくて」。もうわかってるんだけどさ、でも安定して楽しいじゃないですか。これが観たかったんですよ。
一時止んだりするものの、断続的に割とガチの降雨が続き、うっかり今回の持参をコールマンのガチ雨具ではなくコンビニポンチョで済ませてしまっていたため、この雨量では何とも辛い。
そもそもこのフェスに来ようと思った動機が、自分は大変に脆弱であるため心が折れたのと、あとは落雷警報で遅延していて最後までいると帰りの特急間に合わない可能性もあって、金爆終了の時点で撤収。
石井竜也さんごめんなさい。
ということで、割と楽しく過ごしました。
少なくともこのフェスは「ROCK IN JAPAN」の穴埋めではなく、地元にとっての新しいフェスを立ち上げようという動きであることはわかりました。
23日の年寄り好きのするラインナップ、24日のJ-HIPHOPはできるだけ広く老若男女を集めようという意識。
特に23日の方は、こういう地域型新フェスには欠かせない協賛企業からの出資を募るにあたり、お金を出す判断をされる地位の方が「知っている方が出演している」と認識できることが、割と重要事項であるが故のこのメンツである必然性があるのだろう、と思ったり。
このフェス、各ステージに屋根&椅子付きの「協賛者様席」が用意されていたのですが、大きなWATER STAGEのそこは概ねスカスカだったのに対し、GREEN STAGEの相川七瀬や杏里の時はもう立ち見が出るレベルの大入りだったりとか。
もちろん、ROCK IN JAPANによる地元への経済効果は多大なものがあり、それに比べればこの新フェスはもうその何分の一かそれ以下かくらいのレベルで減少していると思います。
それでも、その経済的なところを早急に取り返そうということはメインの目的ではなく。
そしてここ数年のROCK IN JAPANはチケット発売と同時に即完してしまうが故に「地元の文化」とは言い難かったという状況もあり、それを「茨城のもの」として改めて再構築して行こうという意志も割と伝わったよいフェスでした。
来年もできるだけ行こうと思います。
あと、千葉移転と同時に勝田駅前の「ROCK」像も引っ剥がされて移転してたら最高に笑えるなと思っていたのですが、普通にありました。ロッキンオン社そこまで鬼畜ではなかった。