Sigur Ros@東京ガーデンシアターのこと

Sigur Rosは1999年のセカンド・アルバムで初めて聴きました。
以来、アルバムが出たら買う程度には好きでしたが、わかってるのかと言えば、あんまりわかってなかったと思います。
だから、割と頻繁に来日公演してくれているのに行ってなくて。

転機は2010年のJonsiのソロアルバム「Go」。
あの作品は今のところ「Jonsiの音楽観を最もポップに表現した作品」ですので、さすがに理解してライブを観たいと思い、ソロ来日公演を恵比寿に観に行って、それこそぶん殴られたようなインパクトを受けるわけです。

これはいかんと思ってSigur Rosも聴きなおし、次のバンドの来日が2012年のSUMMER SONICだったので観て、ようやく音源を理解したというか「あの音楽が存在する意味」を知ったような気になり、これは単独も観なければと翌年の日本武道館に行って今度は専用の演出なのでまた腰を抜かすほど感動して、2017年の来日は他の予定が被って涙を飲み、そしてようやくの8月26日。

Billie Eilishの来日が発表された時、割と自分のタイムラインも沸いて、チケット取れたの取れなかったのやいのやいのやっていましたが、俺もうその日のSigur Rosのチケット取ってたから。

ということで、定時で会社を抜け出して、有明アリーナでBillie Eilishの来日公演もある中、500mほどしか離れていない東京ガーデンシアターに向かいます。
りんかい線の国際展示場駅で下車し、ガーデンシアターに向かうとすごい人の列。ガーデンシアターの入り口近くになると「こちらはビリー・アイリッシュの会場ではありません!」という親切すぎるアナウンス。
友人夫婦は割と早入りして有明ガーデンのフードコートで通りかかる人々が「ビリー・アイリッシュの方か、シガー・ロスの方かの仕訳け」をして遊んでいたということで、それ俺も参加したかった。

19時開始、途中で15分の中休憩を挟んでみっちり3時間。
もう、いいことはわかっているのですが、一発で気持ちを持っていかれてよくわからない。うわーっという感じ。
Sigur Rosは正味、ヴォーカル・バンドではなく、「ヨンシーの声」という唯一無二の楽器を持ったインスト・バンドという認識で捉えているのですが、声は大変に気持ちいいのにその他の演奏にはギリギリの緊張感が漲っていて、緩い曲でもテンションがえげつないことになっている。

そんなビリビリした空気の中、ふっと無音になる。
一瞬何かのトラブルかとも思ったのですが、明らかにメンバー4人手を止めてこちらを身じろぎもせずに見ている。
誰かが声を上げれば次のスイッチが入るのか、わからない。かくして数分間かどれくらいか、無音のままバンドとオーディエンスが全く音を立てずに対峙し、それでもビリビリしたテンションは全く下がらない、むしろ上がっているという凄まじい場に。
そしてそこからようやく音が放たれ始め、爆音に駆け上がっていくときのカタルシスといったら。

「静」から「動」どころじゃないんですよ。「無」から「爆」なんですよ。
とんでもないレンジをぶちかまして、最後には爆音×爆音で終了。こんなん他にないわ。
こんなのがソールド・アウトしなかったんですよ。是非次来てくださいよ。ものすごいから。

ということで本当に素晴らしかったのですが、当日気になったのは前の列に座っていたカップル。前半終わって席を立ったのですが、後半始まっても戻ってこず、結局最後まで戻ってこなかった。
地方在住で足の都合で一部のみで諦めて帰ったのか、休憩中に喧嘩したのか。とにかく彼と彼女が前半だけでSigur Rosを判断しないでほしいと、切に願います。