「輸入盤CD」がそろそろ終わりそうなこと

タワーレコードの渋谷店がイベントスペースを大幅拡張したり、新宿店の最上階をアナログ専門フロアにしたりといった動きは、「体験を売る」動きであったりとか、アナログの再評価があったりとかをキャッチアップした結果というのは、当然そうなのですが、そういう方針転換を行う上での前提として「そもそも日本に入ってくる輸入盤CDのカタログ数が減少している」という状況がありまして。

2016年頃に、タワレコに行ってもThe Divine ComedyやThe Wedding Presentの新譜が入手できなくて、ということはそもそもCDが日本に入ってくるのが相当に遅れているということじゃないか、みたいなことを言っていたのですが、結局待っても店頭には入ってきませんでした。

要するに洋楽はどんどんパッケージのリリース数が減っていて、多少作ってはいてもまとまった数が輸入盤として日本まで届くことはないという状況。タワレコの店頭を見ると、さすがに超メジャーな人は国内盤輸入盤とも並んでいるのですが、そうでない場合はもう国内盤しか並んでいない。
つまり、国内盤をリリースするという判断がされなかったミュージシャンであれば、そもそも店頭に並びません。そういう感じになっていて。
オンラインで探せば「在庫わずか」という表記になっていることもあり、入ってきていないことはないがそこに少ししかなく、店頭に並ぶことを期待することはもうできません。

以前、タワレコ渋谷店・新宿店のフロア構成の変遷というのをやったのですが、渋谷店は2011年頃は7フロアのうち3フロア以上が洋楽系で、新宿店は4フロアのうちだいたい2フロアが洋楽系でしたが、現在は渋谷店が2フロア弱、新宿店が9階の1フロア化。だいたい半減していまして、その分がイベントスペースとかアナログのフロアになっている、ということです。

で、東京の大型店舗がそういうことになっているとすれば、地方の店舗はどうなってるのということなのですが、年始くらいの水戸オーパ店は洋楽これだけ。

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先日行ったアリオ川口店はこれだけ。このほとんど全ては国内盤。

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水戸はもう売れ線J-POP以外はK-POPとジャニーズと坂道とアニメ・声優系以外あんまり売る気がない構成、川口もだいたいそんな感じですが、そんなに広い店舗ではないのにもうこんなゆとりのある状況で。

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逆によくこれで商売もっているな、と思うレベル。もってないのかもしれませんが。

HMVも大体そんな感じ、新宿のHMV&BOOKSは「洋楽」コーナーはなく、置いてある「輸入盤」はK-POPの特殊パッケージのみ。レコファンも秋葉原と武蔵小金井にしか店舗がなくなった今、1990年頃以降我々に多大なる恩恵をもたらした輸入盤CDが終わりそうになっています。

1989年、大学入試のために上京し、でも正味「記念受験」的な気持ちだったため、新幹線を降りてそのまま渋谷に直行し、宇田川町の東急ハンズのはす向かい(現在サイゼリヤが入っているビル)にあったタワーレコードで、紙の細長いケースに入ったCDをがっつんがっつん掘って、They Might Be GiantsやThat Petrol Emotionとか買ったのを覚えています。

そこから30年。CDを売る店舗の終焉の前にまず日本における「輸入盤」がもう終わり間近。でも止むを得ない。