SUMMER SONIC 2022で観たヤツのこと

3年ぶりのサマーソニックですよ。

もうあんまり無理はできないお年頃なので、きちんと2月の時点で千葉市内に宿を取り、かつ現場でも頑張りすぎないプランを検討した結果、今回はBEACH STAGEは全無視する方針を決定。だって遠いんだもの。
1日目はメッセとスタジアム1往復で済み、2日目はおよそメッセ内で完結する形でプランニング。
初老がフェスを満喫するためにはそれなりの努力と割り切りが必要なのです。
というわけで、観たの。

<1日目>

THE LINDA LINDAS
「みんなで一斉に音を出すと楽しいね!」のまんまで、うっかりデカいステージまで来てしまった感。
その「楽しい」がまんまダイレクトにこっちにも伝わってくるもんだから、数十年汚れて生きてきたおっさんはもう泣くしかない。
「この曲を日本で演れるなんて!」と感極まった様子でのラスト曲「リンダリンダ」が、自分が彼女くらいの年齢だった時とリンクして、もうダメ。最高。

リーガルリリー
彼女たちは過去にちょいちょい観ていたのですが、考えてみたら新代田FEVER以外の箱で観たことがなかったので、サマソニのデカいステージに乗っているのはどんなもんなんだろうと思い。
正直、やや厳しい。ほのかさんの歌詞はこの年代のバンドの中では非常に難解で、このスケールの会場では刺さるところまで届かない。
とはいえ、今回もラストで演ったド名曲「リッケンバッカー」の端的な歌詞とメロの殺傷能力は健在で、あとはこの曲に並ぶ曲を何曲作れるかだなあ、と思い続けて早6年。頑張って。

Awesome City Club
5人時代に3回くらい見ていて割と好きだったのですが、現体制というかエイベックス移籍以降は初。
シティポップ的でありつつどこかに猥雑なところもあって、というところが好きだったのですが、ヒットした「勿忘」はまるで別グループのようで、でも今年になって出たアルバムは十分に猥雑さも感じさせる作品で、じゃあライブはどうなのと思い。
結果、ニューアルバムから数曲、ビクター時代数曲がミックスされているパートは何の違和感もなく非常に楽しいのですが、ラスト2曲「勿忘」とドラマ主題歌になるという新曲だけ完全に別世界という、さもありなんという状況。
すごく気持ちはわかるのだけど、どっかで擦り合わせていかないと後々大変だと思います。

The Libertines(録画)
早めにスタジアム入った方がいいのでは、という判断と、なかなかこういう事態もないので観てみようという気持ちと。
撮り下ろしではあるっぽいのだけど、結果としてはどうにもこうにも。生じゃない分「フジロックをYouTubeで観る」時の気持ち以下でした。

MANESKIN
正直彼らに対してはピンと来なかったのですよ。Moverとかもっと言えばSultans Of Ping F.C.みたいな「Rockin' On誌推し枠」だろうという先入観もあり。
ただ、徐々に回りの信頼できる友人たちがいいよいいよと言い始め、前日の豊洲PITでの単独公演の感想がタイムライン上で爆発しているのを見て、これは観なきゃいかんかと。
結論、観て本当に良かった。
「スター」というものはなろうと思ったからなれるでもなく、持って生まれたカリスマ性とか、それに相応しい楽曲とかバンドとか、いろいろ揃っていないとなれないものなわけですが、何か生まれて初めてそういうのが全部揃っている「これからスターになろうとしている」生物を見ている感覚になりました。
初来日時のQUEENやBON JOVIを観ていた方々の感覚ってこんな感じだったのでしょうか。

King Gnu
2019年のVIVA LA ROCK以来。
当時は「白日」リリース少し後というタイミングでしたが、2019年のTwitterでの感想を探すと「ライブ観てもわからず、でもそのセンスが恐ろしく地肉化されたものであることは理解した。もう置いてけぼりでいい」と書いてありました。
が、その後向こうの方から更にわかりやすかったり違う角度からの楽曲をばんばんリリースしてくれたため、何となくわかった気になって今回臨んだのですが、やっぱりそれでも底知れない。
スケール更にでかくなってるし、でもまだ全然この先行けそうな感じもするし。だから思うんだけどそろそろこっちでも「J-POP」意識するのやめてもいいんじゃないか。今度こそ置いてけぼりになってもいいから、この先が観たい。

The 1975
2019のサマソニの割と色彩豊かなステージから完全なモノクロ世界的な演出。もうかっこいい。
10月の新作リリースを発信するにあたっての様々なデザインがそういう感じだったので、いち早くそのモードを持ち込んできたということが、何かうれしい。
1時間半のロングセットになったのは、The Libertinesの分ということもあるのだけど、Rage Against The Machineが急遽キャンセルになったことに伴って来週のレディング/リーズフェスのヘッドライナーになったことで、そのリハーサル的な側面もあったんじゃないかとか邪推することもできるのですが、それでもこのレベルのものを見せてくれるのであれば何の問題もないです。

UKではThe 1975に変わったことはあんまりポジティブには捉えられていないそうですが、それは何となく理解できそうな気もします。
それらは両方とも必要だと思うんですけど、Rage Against The Machineはどちらかといえば世の中の様々に「NOと言う」バンドであり、The 1975はどちらかといえば世の中の様々に「YESと言う」バンドであって、割と真逆だと思うので。
レディングの主催は何でそういうキャスティングをしたのかとも思うのだけど、まあギリギリだししゃあない。
あとは来週、現場の空気をひっくり返すだけだと思いますし、できると思います。

<2日目>

Tani Yuuki
ストリーミングチャートでは既によく見る名前なので、どんなもんかという気持ちで。
今のところ完全な全国一般流通のCDも出してないし(タワレコ限定流通はあり)、おっさんよくわからないので本当にこういう場があるのは素敵です。
で、快活そうな青年が非常に誠実に歌うという、大変にいい感じの現場。
あとは、リーガルリリーも然り、ひとつの楽曲がバズる形で注目されたミュージシャンに総じて言えるのですが、1曲がバズった後、どれだけその跡にその楽曲に匹敵するか越えていくかという楽曲を作れるか否かにおよその未来がかかっていると思っています。
彼の場合「Myra」「W/X/Y」とバズっているので、あとはもう既存のメディアメインの方々に直結する術を持つことができれば、と思います。

羊文学
UKギターバンド好きな人間は聴かなきゃいけないバンドなわけですが、今までライブ観たことなくてすみませんでした。ライブもいい。
とにかく「ギター音が歪まないのにデカい」の最高。前面には出てこないけど曲の中で渦巻いている感のあるエモさもたまらなくいい。
古い例で言えばあれだ、電子化する前のナーヴ・カッツェ。

リリカルリリィ
前日にリーガルリリーを観たので、この2組が同じイベントに出演することなど今後絶対ないだろうという予想のもと記念のつもりで。
こと声優系のアイドルグループは、21世紀以降のアイドルの「アイドル的なもの」を抽出して濃縮してぶっ込んでくるというイメージなのですが、まさにそれ。すげえ濃い「アイドル」感。
とはいえ楽曲によってはトラックのボトムが割とぶっといのとか、「これ普通にいい曲じゃないか」と思うのとかもあって腰に来たり心に来たりする。
で、声優さんですから声の耳心地は大変によく、総合的に言えば「劇物」ですこれ。
これ以上摂取すると割と簡単に依存症になるヤツ。ヤバい。猫になる。

EASY LIFE
正直、音源はいまいちピンと来ないままだったのですが、ライブすごいなこれ。
だから、1980年代のPet Shop Boysや、1990年代のPulpがもし2020年代に音を出したらこういう感じになるんだろう、ということがすごくよくわかりました。
非常に英国的に地獄のような歌詞を、でも軽やかに歌い演奏する。ライブを観ることでようやく咀嚼できた気持ちになりました。
もう一度きちんと音源聴きます。

女王蜂
いたら観るでしょ当然。正直、女王蜂は日本の宝ではないかと思うのです。
Maneskin同様、こういう人がこういう意志を持ってこういう技術を持ってこういうバンドを持ってこういう活動をする、というのは世界規模の奇跡だと思うんです。
でも、ライブはイベントとかフェスでしか観たことないんです。濃すぎて強すぎてワンマンの尺で体が持つ気がしないんですよ。
約40分間、強烈な圧をいただきました。ワンマンも頑張って行きたいです。

milet
悪くない。素敵な声ですし、すごくきちんと作り上げた感じのステージ。
持ち曲の中からアップテンポの曲を出すだけ出して場を作りながら、ヒット曲はきちんと押さえていく感じの親切さ。
ただ、毎度思う通り、そういうJ-POP的な作りの曲よりも、UKの頭のおかしいクリエイターが作ったわけのわからないビートに奇声だけ乗せるとかの方が絶対彼女の声が映えると思うんですよ。
ステージあっち行ったりこっち行ったりしないで、わけのわからない衣装を着て超然として。そういうのを私は観たい。

Kula Shaker
いきなり「Hey Dude」。笑っちゃう。全体的に派手な部分は一切ないのだけど、ひたすら実直に紡ぐ感じのステージ。
ただ、ギターソロ以外の刻んでるところは全部ベース音の方が大きくてあんまり聴こえないのは仕様なんでしょうか。
ベース>オルガン>ドラム>ギター、みたいな音量なんですよ。でもおかしいなら途中で改善されるはずだし、やっぱ仕様なのか。
あと、ラストでmiletが呼び込まれての「Govinda」。
彼女の声がインド系メロに合わないはずがなく、これがすごくいい。milet本人のステージで思ったことが直後に多少なりとも回収されるという幸せ。いい。
あともうひとつ、曲の途中でいきなりHappy Mondays「Hallelujah」の一節をぶち込んできたのはあれ何だったんでしょうか。

Primal Scream
「Screamadelica Live」というタイトルが付けられていたわけで、ベテラン勢でよくある「過去の名作アルバム再現ライブ」のつもりで観ていたらもっと深かった。
頭3曲はアルバム通りですが、そこから「Come Together」になり「Inner Flight」になり、アルバムタイトル曲なのにアルバム未収録でその後「Dixie-Narco EP」で割とぽいっという感じでリリースされた「Screamadelica」。
要するにこれは単なるアルバム再現ではなく、「Screamadelica」という当時のコンセプトを今改めて表現し直したということではないかと。
そして本編最終曲「Shine Like Stars」の時、スクリーンに投影された人物、リアルタイムではわからなかったのですが、友人からあれはアンディ・ウェザオールの近影であるということを聞き、特に周年でもないのに今「Screamadelica Live」をやる意味までを理解した次第。

で、本編終わってメンバーはけたけど、まだ「Loaded」やってなくね?と思ったらアンコールでいきなりぶっぱなす。うわ最高だなと思ったらそこからも大変。
もう2日間いろいろ観て割とくたびれているのに、「Swastika Eyes」「Jailbird」「Country Girl」「Rocks」というプチ「Dirty Hits」状態。殺す気か。最高。

以上。運営とかで思ったことは次回。