新星堂が杉並区から消滅すること

新星堂阿佐ヶ谷店がこの8月末で閉店と発表されました。
正式には「音楽のある生活 by SHINSEIDO」という名義で、CD/DVDは店舗床面積の半分以下、残りで雑貨やアクセサリー等を扱っている、正直よくわからない店だったので、正直さもありなんという気はしなくもないのですが。

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新星堂は元々高円寺で1949年にオープンした個人店舗が発祥。その後法人化された際には本社を荻窪に置く等、杉並区中央線沿線はいわば本拠地。
1970年代にダイエーやイトーヨーカ堂が大型スーパーを出店する際の専門店テナントとして入り込むことに成功したり、1987年に国鉄がJRに移管した後に立ち上げられたリテール部門にも入り込んで駅ビルや高架下の商業施設に出店することで、爆発的に店舗網を拡大していきます。

ただそれは両刃の剣でもありまして。
駅の商業施設は当然ですが、1970-80年代にできた大型スーパーも、巨大団地のそばとかを除けば割と駅近の立地が多めです。
それが大店法の緩和によってトイザらスと一緒に外資系のCD店もやってきて、都心の一部の店舗を除けば、その支店は大店法の緩和によって日本全国の郊外にぼこぼこでき始めた大型ショッピングモールに入ることになります。

かくして日本全国小売商業のシフト転換が発生し、それまでは駅近辺の商業施設等の「一等地」に出店することで圧倒的なアドバンテージを得ていた新星堂は、そのアドバンテージが故に1990年代以降ずいずいとしんどくなっていくわけです。

それでも人口が多く鉄道利用の割合も大きい大都市近郊では駅近店舗を維持していたのですが、CDが売れなくなった2000年代後半あたりからはそれも徐々に厳しくなっていき、杉並区の店舗も以下の通り閉店していきます。

新星堂 高円寺北口店(-199?)
新星堂 高円寺レコード(-2010)
新星堂 阿佐ヶ谷店(-2021)
新星堂 荻窪タウンセブン店(-?)
新星堂 荻窪店(-?)
新星堂 荻窪ルミネ店(-2012)
新星堂 荻窪天沼店(-2012)
新星堂 西荻窪店(-2010)

荻窪店は本社併設の店舗で、確か荻窪天沼店と営業期間は被っていないはずですが、それでもこれだけあったのが遂に全部消滅です。
というか、新星堂に限らずCD店が多くあったはずの杉並区、西荻窪の高架下にあったゴトウレコードも2019年に閉店、久我山のツツ井サウンドは先日見に行ったら更地になっていたりして、現在阿佐ヶ谷店以外の区内で「新譜CD」を購入できるのは浜田山のTSUTAYAに少し並んでいるのだけっぽくて、杉並中央線沿線民は新宿か吉祥寺まで行く必要があります(高円寺を中心に中古店はまだ結構ありますが)。

ただ、言うても数分おきに来る電車で10-15分行けば潤沢にまだ店舗があるというのは、今の日本では割と恵まれている方、ということになりましょうか。
今の世の中的にはもはや何が恵まれているかもよくわかんねえ、という状況だとしてもだ。

上白石萌音「あの歌」のこと

上白石萌音と佐藤栞里の2人ロケ映像は、現代のテレビ番組界において、動物の赤ちゃん映像に次ぐレベルの破壊力を持っているのではないかと思っているのですが、そんな上白石萌音のカバーアルバムがリリースされました。

70年代の楽曲を収めた盤80-90年代の楽曲を収めた盤の2枚同時発売、全21曲。
70年代の方は全曲鳥山雄司氏の編曲、80-90年代の方は大橋トリオ・清塚信也・GLIM SPANKY・n-buna(ヨルシカ)・河野伸・遠山哲朗という布陣の編曲。
この80-90年代の方のメンツが気になって聴いてみた次第です。

が、正味のところ、皆さん「仕事しました」の範疇ですね、これ。
いろいろ趣味的な音世界をちょいちょい入れ込んではいるのですが、萌音さんの声質がすさまじくフラットで癖がないのでどんな曲でも違和感はない代わりに、エゲツないアレンジを乗せるとアレンジの方が圧倒的に優勝してしまって「上白石萌音のアルバム」にならなくなってしまう、というあたりを考慮した制作者の意図を通した結果のアウトプットがこれ、ということなのでしょう。

だったらFishmansは「いかれたBABY」よりも「Orange」あたりの曲の方が合っていたのではないかとか、面倒くさいことを考えたりもしつつ、通して聴いた結果、最強だったのは80-90年代の方で唯一プロモーション用の文章に名前が載っていなかった遠山哲朗氏アレンジの「まちぶせ」。
この曲が80-90年代の方に入っていることに違和感があるっちゃあるのですが、歌詞の主人公の女性のヤバさをなんとなく感じさせる、不穏さを表現したような刻むギターとパーカッションの入り方が最高です。

で、上白石(姉)は本名名義でこのようにリリースしているのですが、上白石(妹)の方は歌手活動するときの名義は「adieu」ということになっていて、これ妹だからって何気に酷くないか、虐げられているのではないかと一瞬思ったんですけど、ライトリスナー目線で改めて考えたら、「上白石萌歌」と「上白石萌音」のCDが店頭で並んでいたら確かにちょっと困ることもあるのではないかと。
ユーザーフレンドリーな姉妹。

あゆみくりかまき@EX THEATERのライブのこと

19日土曜日、3人組アイドルグループあゆみくりかまきの解散ライブ。

正味のところ、彼女たちくらいわかりやすく大変な思いをし続けたグループもなかなかいませんでした。
ただ売れなくて終わりなのであればそれだけの話なのですが、彼女たちの場合は一度は勢いに乗り、このまま突き抜けるかと思わせただけに。

当時はラウドロック系のサウンドのアイドルがまだ珍しかったこともあって、3人組として活動を始めた2014年頃から目に見えて勢いづいて。

自分が観たことのある彼女たちのライブで最強だったのは2015年のSUMMER SONIC。
SUMMER SONICはフードコートエリアの小さなステージでアイドルのライブをずっとやっていたりもするのですが、2015年の彼女たちは全体で2番目にデカいMOUNTAIN STAGEのオープニングアクトとしての出場。
正規の一番手はGENERATIONS from EXILE TRIBEだったため、開場早々最前付近は女子ファンの場所取りで埋められ済みという、これ以上なかなか想像もできないレベルのアウェイ状態でのライブ。
それでも臆することなく挑み、会場ブチ上がりとまではいけずとも、鬼気迫るパフォーマンスできっちり場を作って去っていった彼女たちは本当にかっこよかったのです。

2016年の1stアルバムも素晴らしい出来で、この調子でいけば野望として掲げていた「武道館でのワンマンライブ」も、もう少し頑張れば行けるんじゃないかと思っていたのですが、その頃にはラウドロック系のサウンドのアイドルグループはそれこそ雨後の筍状態。
彼女たちのような「ラウドだけどアイドルソングの範疇」ではなく、より本格的なバンドサウンドを引っ提げてガチなトラックで歌うグループがボコボコと出てきて、中でもBiSHはすごい勢いで勢力を伸ばしてあっという間に追い抜いていきました。

「ラウド」推しのアドバンテージを失った彼女たちはかくして1stアルバム以降迷走を始めます。お笑いタレントに作詞を委ねたり、「ラウド」とは呼べないサウンドや、ちょっと泣ける感じのメロディに行ってみたり。
曲単体としてはよいものもあるのですが、グループとしてのアイデンティティはどんどん希薄になっていき、思うように動員も増えなくなっていきます。
2017年10月の段階でキャパ1600のEX THEATERも埋められず、結局武道館ライブも発表できず、それ以降突破口を探りながら何とか活動継続していたものの、他のアイドルグループと同様にコロナ禍でいよいよ先が見えなくなって彼女たちも、ということだと思います。

そしてラストライブ。
2017年10月に埋められなかったEX THEATERが埋まるというなかなか皮肉な状況ではあるのですが、それでも3人は湿っぽくなることなく、いつも通りの間違いなく誠実なパフォーマンス。
三者三様のアイドルとしての可愛さもあるし、歌えるし、勢いのあるステージングだし、本当に良いグループだとは思うのですが、もうそういう資質や多少のコンセプト程度では生きられなくなっているのが今のアイドルシーンなのだということもなんとなく感じてしまい。
ただ、これまでは単体としてはいい曲もあるものの、流れとしてはあんまり好きではなかった「泣け歌」系の楽曲が、こういうセンチメンタルな状況に乗っかると抜群に響いてくるのは、いいのか悪いのか。
それでもやっぱり自分は「WAR CRY」から「KILLA TUNE」の、1stアルバム収録のゴリゴリのラウド系楽曲の流れがやっぱり一番アガるわけで、正直こういうのばっかり聴いていたい気持ちにもなります。
終盤でようやくちょっとセンチになりつつも、でも彼女たちらしさは最後まで失うことなくライブを終えて去っていったわけですが、これ以降「アーティスト活動も終了する予定」ということではあるものの、あゆみはバンドのヴォーカリストになれば抜群だと思いますし、くりかはそのあざと可愛さでタレント業やっていけると思いますし、まきは正統派女優顔ですのでそっち方面で何とかならないかと思います。
ラストシングルのタイトルは「サチアレ!」ですが、それ本当にお前らがそれだよ、と思わずにはいられません。

で、アイドル界隈の大きな問題は、彼女たちのような所謂「中堅」あたりのグループが本当にいなくなっていること。
TIFや@JAM EXPOの、一番大きなステージのお昼頃とか、2番目のステージのトリまわりを担えるくらいの塩梅のグループがすごい勢いで解散しまくっています。
というか、AKB坂道・ハロプロ・スターダスト・WACKという四天王以外のグループの勢いが本当にシオシオになっていて、結局金なのかという気持ちにもなります。
どこか何とか「下剋上」的なグループが出てきてくれないかと、割と本気で思います。

映画「アメリカン・ユートピア」のこと

金曜日の晩、ようやくデヴィッド・バーンの「アメリカン・ユートピア」を観てまいりました。
珍しくムビチケですけど前売りまで買っていたのが、いろいろ予定や気分が合わずにいたところを、仲間がSNSで「観た!」「観た!」と言うのを見て自分も気合いを入れて半休取って、「AMERICAN UTOPIA」のアルバム聴きなおして「STOP MAKING SENSE」のDVDを見返して、万全の気分で乗り込んだわけですが。

正直もっと映画専用に演出されているものとばかり思っていたのですが、これ普通にコンサートフィルムじゃないですか。カメラ位置とか実際いろいろ普通ではないのですが、ぼさっと見る限りでは。
でもだからこそライブ観てる気持ちになれるというか、これ実際生で観たら割と死ねるレベルのエゲツないライブですね。映像だから何とか正気を保っていられましたが。
演者のマーチングバンド的な動き自体はよく見れば雑なところもあるわけですが、そこはそれ専門ではないのでそんなに求めちゃいけないわけで、でも照明演出でキメを作ったり、ダンサーの2名がきっちり場にハメに行ったりするおかげで全体的な印象に一切雑さがないのが素敵。すごい計算ずくなのでしょうが、でもすごい。

で、直前に「STOP MAKING SENSE」を予習だか復習だかわかんないけど見ていたこともあり、またクレジットの「Special Thanks」にJonathan Demmeの名前があったこともあり、やっぱり比べてしまうのですけど、冒頭からの人物の増えっぷりは「STOP MAKING SENSE」の流れと近しいのですが、パフォーマンスが乗る「場」の作りについてはむしろ逆のタイムラインになっているのは、これ意図的なのかどうなのか。

この「アメリカン・ユートピア」は、無線の音質や精度の向上とか、高性能なイヤモニとか、照明用のセンサーとか、そういう1980年代にはなかった技術によってはじめて成立しうる世界であり、単純にどこまで比較すべきかどうかすらわからんのですけど、まあそういう考え方で面白がるのもアリということで。言うても映画ですから。

あとは自分のSNS、ほぼリアル友人限定の方ではすごい勢いで「観た!」「2回目観た!」という報告が上がってきて、そこだけだと「鬼滅の刃」並みの大ヒット映画に見えるのはやはり何とかしたほうがいいとは思うものの、でも自分がそういうソサエティの人間であることは否定のしようもなく、甘んじて受け入れる次第。

そういう友人と飲んでる時にやるネタで「海外のミュージシャン、日本で例えると誰?」というのが割と盛り上がるのですが、この映画のデヴィッド・バーンについて友人の一人曰く「似ているかどうかはわからないけど、日本でこれに近しいことができるのは、30年後の星野源くらい」という意見には割と賛成です。

もうしばらくして、世間が落ち着いてまた大人数で酒盛りができるようになった暁には、立川かどっかで改めて「極音上映」をしていただき、それにSNSの仲間まとめて馳せ参じ、観終わった足でWINS周辺の居酒屋あたりにかち込んでそういう生産性の低い話ばかりをしたいものです。
実際本来はそういうのに最も適した映画だと思うんですよ、これ。

閉店した物件に居抜きで入店した店舗のこと

ここんとこブログの更新が滞っているのは、正直コロナ禍以降の気分の問題なのですが、他には可処分時間の相当を開店閉店メモの方に費やしているから、というのもあります。
フォーマットとしての「完成」のイメージができつつあるのですが、恐らくそれには頑張っても数年以上かかりそうで、できるだけ作業してるところで。
現在は2018年までの項目に写真かストリートビューと、地図の埋め込みがおよそ終わったところです。
そういうことで、ストリートビューを死ぬほど見ているのですが、それでいろいろ気になったことをまとめます。

国道沿いの郊外型店舗には、他のお店が閉店した建物にそのまま入る「居抜き」型の店舗が結構あります。
特に有名というか、見た目ですごくよくわかるのが「旧ハローマック」物件と「旧ユニクロ」物件と「旧アルペン」物件。
以下、ブログまとめ中に見つけたものなのでストリートビューもほとんど全部既に閉店済みの物件です。

■旧ハローマック物件:このガタガタのお城を模したヤツですね。

<BOOKOFF 仙台八本松店>


■旧ユニクロ物件:一時期までの郊外型は窓付きの三角屋根と店頭の掲揚ポールが基本。掲揚台が撤去されているパターンもあり。

<TSUTAYA 宇部厚南店>


■旧アルペン物件:とても有名なこのトンガリです。
<ビデオインアメリカ 宝塚店>


それほど有名ではないのでは、確かBOOKOFFが居抜きで入っているのがあるはずなのですが、見つけられなかったので文教堂ママなのですが、この「割れ目」が文教堂のトレードマーク。
<文教堂 鎌倉店>


数が非常に少ないので確定しきれないのですが、この真ん中で分割されたパターンは、エンターキング特有ではないかと思っているのですが、どうでしょう。
それともエンターキングが拡大している際、この形状の建物に複数入店したか。
<桃太郎王国 習志野店(現存)>

明らかにスキー用品専門店跡地なのですが、どのチェーンだかわからなかったヤツ。
<GEO 豊田東山店>

あと、このどうしようもなく看板エリアとのバランスが悪いのは、元々何だったのだろう。
<TSUTAYA 大河原バイパス店>

そしてもっと気になっているのは今は更地のBOOKOFF浜松加美店。

TSUTAYA郊外型の典型スタイルと旧ファミリーブック(現GEO)のデザインの類似点とか、TSUTAYAの旧サンホームビデオ物件の見分け方とか、もう少し普段のブログのノリに寄せようかとも思ったのですが、何かこれでいい気がしたので以上で終わります。

Billboard Japan HOT100の集計が変わったこと

Billboard Japan HOT100の集計のレギュレーションが、上半期から下半期に入るタイミングで変更になりまして。

これによって、「CDの売上数」のチャート全体にかかるウェイトが更に下がることになります。
毎週算出しているチャート、「世間でヒットしている曲を可視化する」ことを最大の目的とするのであれば、「一部固定層による多数枚購入」はその目的から考えた場合むしろ「ノイズ」である、という判断。ある意味正しいと思います。

一方、3年前にCD売上のみだったところを離れて「合算チャート」を作成し始め、徐々にそちらが優先の方向へと進んでいる感のあるオリコンですが、それでもまだ「CDチャート」は捨て切れていませんし、「合算チャート」におけるCD販売数のウェイトも大きめ。

従って、これくらいの違いが出てきております。

Billboard Japan HOT100(6/7付)
オリコン合算シングルチャート(6/7付)

オリコンはまだネットなど何もなかった時代からチャートの算出を行うことで「世間でヒットしている曲を可視化する」ということを行ってきましたが、その根本的な基礎はネットが普及するまではまさに「いかにレコードの売上(実売数)を詳細にカウントするか」ということでした。
星光堂が己のマーケティングや販促をより精緻化するために開発した、リアルタイム性高く売上を把握するシステムをチャートのカウントにも使用したり、様々な試みを行った結果、数値に基づいた一定の信頼を得られるだけのチャートを導き出すことに成功したわけです。

ただ、1980年代以降、そういう仕組みであることをレーベル側も認識して、少年隊あたりから始まる「同タイトルシングルの複数種リリース」や、おニャン子クラブやそのソロ活動で行った「帯の生番組」という当時最も速報性が高いスタイルのメディアを使用しての「リリース初週の販売数の最大化(=オリコン初登場1位化)」を狙ったプロモーションであるとか、その仕組みのある意味「裏をかく」チート的なアクションが普及し始め、その後当たり前になっていきます。

その他、CDシングル時代になって勃発した「何曲入りまでがシングルやねん」問題や「DVD入っててもシングルと呼んでいいのか」問題等、様々な問題に直面しては、恐らくレーベル側と調整を繰り返してきたオリコン、そんなレーベル側との関係もあってか、「ヒットしている曲を可視化する」=「いかに精緻にレコードの売上(実売数)をカウントするか」であるという思考から逃れられなくなってそのままレガシー化してしまっている状況が内部で発生していて、今もそこからどう変わっていけるのか試行錯誤の真っ最中、という気もします。

ただ、じゃあそういうしがらみの薄いBillboard Japanは安泰かといえば、「サブスクやYouTubeにおける一部固定層による多数回再生」を四六時中続ける行為は「一部固定層によるCD多数枚購入」とどう違うのか問題もありますし、SNSでは「中ヒット」くらいだった曲を既存メディアで大展開することで「大ヒット」っぽく見せる技とかも、最近出てきているように思えます。
ファンもレーベルもこれからもきっといろいろ編み出してくるでしょうから、レコード/CD時代と同様かそれ以上の「闘い」が、この先も続いていくのでしょう。割と地獄。

ベテラン勢の最近のアルバムリリースのこと

先日、「山下達郎は10年オリジナル・アルバムを出していない」ということを書いたのですが、その後仲間うちのLINEで「ベテランは総じてあんまり出てなくね?」的なツッコミをもらいまして。
そういえばそうかなと思って、ざっくり1970年代にデビューして今も現役の方々の状況を調べてみた次第。とりあえず「こっち最近3作のオリジナル・アルバムがいつ出ているか」。

■山下達郎
1998:COZY
2005:SONORITE
2011:Ray Of Hope

■竹内まりや
2001:Bon Appetit!
2007:Denim
2014:TRAD

■浜田省吾
2001:SAVE OUR SHIP
2005:My First Love
2015:Journey of a Songwriter ~旅するソングライター

■井上陽水
2002:カシス
2006:LOVE COMPLEX
2010:魔力

■吉田拓郎
2003:月夜のカヌー
2009:午前中に…
2012:午後の天気

■小田和正
2005:そうかな 相対性の彼方
2011:どーも
2014:小田日和

■泉谷しげる
2009:愛と憎しみのバラッド
2014:突然炎のように!
2019:スキル/栄光か破滅か!

■谷村新司
2010:音標 ~Voice to Voice~
2012:NINE
2015:NIHON ~ハレバレ~

■長渕剛
2010:TRY AGAIN
2012:Stay Alive
2017:BLACK TRAIN

■松任谷由実
2013:POP CLASSICO
2016:宇宙図書館
2020:深海の街

■松山千春
2013:生きている
2015:伝えなけりゃ
2017:愛が全て

■矢野顕子
2014:飛ばしていくよ
2015:Welcome to Jupiter
2018:ふたりぼっちで行こう

■中島みゆき
2015:組曲 (Suite)
2017:相聞
2020:CONTRALTO

■さだまさし
2017:惠百福(たくさんのしあわせ)
2018:Reborn ~生まれたてのさだまさし~
2020:存在理由 ~Raison d'etre~

皆さんおよそ60歳台後半以上。正味もう働くのやめて隠居しても全く問題のない年齢です。
でも、「ツアーをこれで最後にします」的なことを仰った方はいても、全面的に引退するとかは聞きませんし、上記は全部オリジナルアルバムで、他に過去音源を新録でやったのとかを出している方もいますし、ツアーをがっつりやられている方も多いですし、テレビで見かける方もいます。
隠居している感のある人はあまりいらっしゃいません。正味、現役でいていただけるというだけでもありがたい。今後もマイペースでいいので是非できるだけの活動継続をお願いしたい次第。

しかしその中で、この5年でオリジナルアルバム3枚リリースしているだけでも他の同年代と比較して著しく突出しているのに、他にも過去音源を新録でやったセルフカバー集3枚リリースし、ツアーをがっつりやり、テレビでもよく見かけるさだまさし。奴は化け物か。

B'zがストリーミング解禁されたこと

遂にB'zがサブスク解禁
Being所属ミュージシャンの楽曲はなかなか出てこない印象強いですが、TUBEの一部楽曲は出ていましたし、大黒摩季は2019年大晦日に所属期の音源解禁、今年3月に倉木麻衣の「コナン」関連楽曲24曲が解禁されたという動きはありましたので、決して事務所として全否定ではない、ということは解っていました。
が、それ以外は実際出てきていなかったのも事実。
それがここに来て親玉B'zが全解禁も全解禁、本体全曲、2人のソロや部外活動も全ての880曲一挙解禁という、今まで何だったんだ状態の徹底的なだだ漏れです。

恐らくこれでみんながすごい勢いで再生すると思いますので、事務所側もこれに気をよくして考えを改め、ZARDとかT-BOLANとかもぐいぐい解禁していただけることを期待しています。
ZARDなんか「CDまでは買わない」とか「聴きたいと思ったからBOOKOFFに行く」層を相当に持ってこれるのではないかと思います。
「負けないで」だけでもどんだけ再生されるんだっていう。

これで「サブスクやらない」勢の大きな山がひとつ崩れたわけで、では大きな山としてどこらへんが残っているかというと、

・ジャニーズ所属グループ(嵐以外)
・アップフロント所属グループ・ミュージシャン
・山下達郎全部&竹内まりやの大部分
・ブルーハーツ&ハイロウズ&クロマニヨンズ
・マキシマム ザ ホルモン
・中島みゆき(一部楽曲Amazonのみ解禁)
・CHAGE AND ASKA

メジャーなところではここらへんでしょうか。
ジャニーズは、嵐を全編英語詞&海外作家引っ張ってきたりしてのそこらへん周りは解禁していたりしますので、これ完全にビジネス判断であることは間違いなく、今後仕掛けたり仕掛けなかったりした結果、例えばキンプリがアジア全域で大人気になったりしたら、速攻キンプリ解禁しそうな、そういう雰囲気は感じます。

アップフロントも総じてビジネス判断だとは思うのですが、ハロプロ関連だけなら完全にそう判断できるものの、在籍時のKANの1990年以降の音源や演歌系までその相当数が対象ですので、ジャニーズよりは何らかの感情込みというか「意地」も感じられます。
ただ、森高千里は普通に解禁されていますし、今見てみたら先日まではなかったはずのスターダスト☆レビューが相当数解禁されていましたので(確認したら3月24日配信開始)、背に腹は代えられん感じで。
今後はハロプロだけに絞り込む気でしょうか。それとも全解禁に向かうのでしょうか。

ヒロト&マーシーの一連のバンドやホルモンはもう「レコードで売りたい」という意志のもとでしょう。クロマニヨンズなんかリリースの度にアナログ盤もリリースしていますし、相当なこだわりです。止むを得ない。

中島みゆきは多分、一定期間はAmazonだけ、みたいな契約があるんじゃないかと思いますが、山下達郎&竹内まりやはこれ正味の話、時間の問題ではないかと思っています。
今年に入ってこういうニュースが出てきているので。

もうこれ断る理由がないと思うのですが、いかがでしょうか。
というか、山下達郎氏、オリジナル・アルバムはもう10年出ていませんし、新曲も2019年の「RECIPE」以降リリースなし。決して多作ではないにしてもここ最近間が開きすぎ。
もちろん、セッションも簡単にできない今の世の中、録音も容易ではないでしょう。かといって、何もしてないとも思えない。
正味の話、過去音源をひたすらストリーミング用にマスタリングし直しているのだとしたら、辻褄合うのではないかと思っているのですが。
どうでしょう。どうなんでしょう。

GEOの新業態「GEO SPEED」が速攻で終わること

GEO SPEED 祖師ヶ谷大蔵店が6月30日に閉店します。

「GEO SPEED」は、GEOが2019年に立ち上げた新業態。
こういう感じで、スマホで発注してから店舗に行って指定されたロッカーを開けると発注したDVDが入っている仕組み。
2019年10月24日に調布市仙川、同年11月27日に世田谷区祖師ヶ谷大蔵に店舗を立ち上げたのですが、仙川の方は翌年3月31日に半年も持たずに閉店し、そしてそこから1年ちょっと、祖師ヶ谷大蔵店も閉店ということで。

この惨状について少し考えてみたのですが。
まず出店した立地。双方とも都市の中心ではないが郊外でもない、そこそこの住民を持つ街で、昔から住んでいる古い住民もいれば学生もいるような、老若男女入り乱れて生活している感じの街。そして駅前商店街がまだそれなりに機能している街で、GEOもその商店街に出店する形。
恐らくは非常にテストケース的にそういう似た状況の場所へ出店したのだろうと思います。
駄目なものは駄目でしたけど。

こういうコンセプトの店舗、要するに「いかに人件費を抑えるか」という課題に対しての回答であるわけで、スマホで専用WEBサイトにアクセスして発注して、店舗はそのピックアップを行うのみの場所。店舗としてはバックヤードに1-2人がいれば回る仕組みでしょう。人件費はかなりカットできます。

ただ、こういう業態の場合、店舗にかかる人件費の代わりに発注用のWEBサイトの運用維持のコストはかかってきます。で、そういうWEB系のコストはサーバ増強以外の部分はおよそ固定費ですから、ある程度以上の規模になって初めてスケールメリットが発揮されるわけです。

この新業態はある程度の規模を伴っていればいるほど利益率が上がるものの、正味1-2店舗でのみ使用するだけであれば、大したコストカットは見込めません。
きっとGEOは仙川店・祖師ヶ谷大蔵店の状況を見ながら徐々にGEO SPEED型店舗を増やしていきましょう、みたいな青地図を描いていたのではないかと思います。
なので、仙川店が半年足らずで力尽き、その後同じ業態の店舗が増えていかなかった状況、祖師ヶ谷大蔵の店舗も正味「時間の問題であった」と言わざるを得ません。

かくして仙川地域からも祖師ヶ谷大蔵地域からも「レンタル」という業態が消滅ということになります。
仙川の場合、隣駅の千歳烏山にTSUTAYA、逆の隣のつつじが丘にはGEOの通常店舗がありますが、祖師ヶ谷大蔵の場合は狛江のGEOか馬事公苑のTSUTAYA。いずれも祖師ヶ谷大蔵の店舗からは2.5km以上離れたロードサイド型店舗で、首都圏では代替店舗として使えるレベルではありません。

元々小田急沿線はGEOがさほど強くなかったところに、小田急商事が2018年にTSUTAYAのフランチャイジーから手を引いたことで一気にすっかすかになりまして、小田急沿線都内ではこれで「駅前型」のレンタル店舗自体が全滅です。
地方では「市内に1店だけだったレンタル店舗が閉店した」みたいな感じでレンタル空白地域がどんどん生じていますが、都内でもそういう地域が都内なりの規模で増加しているわけです。

ただ、ことGEO SPEEDについては、後出しで言ってしまえば「ネット活用と実店舗の悪いとこどり」だったような気もして、こうなるのも詮無いかと。
そして「省コスト型店舗」のテストケースが失敗したことで、いよいよ業態全体が待ったなし状態。
正味、粛々とウォッチし続けるのみです。

Weezer「Van Weezer」のこと

まさにそのタイトルのような、そういう作品を制作しているということは既に2年ほど前から明らかになっていたアルバム
馬鹿だなあと思いつつワクワクしながら聴いたのですが、やっぱりWeezerはWeezerでした。
ライトハンドとかそれっぽいギターエフェクト等そういう系統の「おかず」は確かにふんだんに盛り込まれているのですが、四半世紀以上一切ブレずに活動してきたバンドが、多少の脚色で「違う」音になるはずもなく。

まず全10曲31分といういつも通りの尺。HR/HM系の音であればもう少し長くなってもいいはずなのですが、そもそも各曲イントロはそういう方向性ではあるものの、ギターソロ入りの間奏がほとんどなく、曲の終わりもHR的にセッション風に長々やることなく実にスパっと終わります。長くなりようがない。ここらへんの「いつも通り」加減がやっぱりWeezer。

メタルらしい間奏って「1 More Hit」くらいでそれもスラッシュメタル系、「She Needs Me」の間奏なんてこれハードロックというよりはもっと直系の先祖であるパワーポップ系の風情。全体的にパワーポップですけど。「Hero」の間奏の、一応早弾きっぽい演奏はしているものの上にコーラス乗っかっているところは何となくCheap Trickっぽい。

要するにこのアルバムは、1stアルバムにして「Weezer節」を確立してしまい、己のみならずその後の世界中のギターバンドの物差しのひとつにさえなってしまったバンドが、ここに来てHR/HMのみならず過去の個人的ルーツをぶっ込みまくりの全開にしてみたものの、結局四半世紀以上磨いてきたコアがブレることはありませんでした、というそういうことなのではないかと。
それでもその全開っぷりはとても愛しく、ここ何年かの彼らの中では出色の出来のアルバムになったのではないかと思います。やっぱ何つうか、楽しそうなんだよ。