Billboard Japan HOT100の集計が変わったこと

Billboard Japan HOT100の集計のレギュレーションが、上半期から下半期に入るタイミングで変更になりまして。

これによって、「CDの売上数」のチャート全体にかかるウェイトが更に下がることになります。
毎週算出しているチャート、「世間でヒットしている曲を可視化する」ことを最大の目的とするのであれば、「一部固定層による多数枚購入」はその目的から考えた場合むしろ「ノイズ」である、という判断。ある意味正しいと思います。

一方、3年前にCD売上のみだったところを離れて「合算チャート」を作成し始め、徐々にそちらが優先の方向へと進んでいる感のあるオリコンですが、それでもまだ「CDチャート」は捨て切れていませんし、「合算チャート」におけるCD販売数のウェイトも大きめ。

従って、これくらいの違いが出てきております。

Billboard Japan HOT100(6/7付)
オリコン合算シングルチャート(6/7付)

オリコンはまだネットなど何もなかった時代からチャートの算出を行うことで「世間でヒットしている曲を可視化する」ということを行ってきましたが、その根本的な基礎はネットが普及するまではまさに「いかにレコードの売上(実売数)を詳細にカウントするか」ということでした。
星光堂が己のマーケティングや販促をより精緻化するために開発した、リアルタイム性高く売上を把握するシステムをチャートのカウントにも使用したり、様々な試みを行った結果、数値に基づいた一定の信頼を得られるだけのチャートを導き出すことに成功したわけです。

ただ、1980年代以降、そういう仕組みであることをレーベル側も認識して、少年隊あたりから始まる「同タイトルシングルの複数種リリース」や、おニャン子クラブやそのソロ活動で行った「帯の生番組」という当時最も速報性が高いスタイルのメディアを使用しての「リリース初週の販売数の最大化(=オリコン初登場1位化)」を狙ったプロモーションであるとか、その仕組みのある意味「裏をかく」チート的なアクションが普及し始め、その後当たり前になっていきます。

その他、CDシングル時代になって勃発した「何曲入りまでがシングルやねん」問題や「DVD入っててもシングルと呼んでいいのか」問題等、様々な問題に直面しては、恐らくレーベル側と調整を繰り返してきたオリコン、そんなレーベル側との関係もあってか、「ヒットしている曲を可視化する」=「いかに精緻にレコードの売上(実売数)をカウントするか」であるという思考から逃れられなくなってそのままレガシー化してしまっている状況が内部で発生していて、今もそこからどう変わっていけるのか試行錯誤の真っ最中、という気もします。

ただ、じゃあそういうしがらみの薄いBillboard Japanは安泰かといえば、「サブスクやYouTubeにおける一部固定層による多数回再生」を四六時中続ける行為は「一部固定層によるCD多数枚購入」とどう違うのか問題もありますし、SNSでは「中ヒット」くらいだった曲を既存メディアで大展開することで「大ヒット」っぽく見せる技とかも、最近出てきているように思えます。
ファンもレーベルもこれからもきっといろいろ編み出してくるでしょうから、レコード/CD時代と同様かそれ以上の「闘い」が、この先も続いていくのでしょう。割と地獄。