新星堂が杉並区から消滅すること

新星堂阿佐ヶ谷店がこの8月末で閉店と発表されました。
正式には「音楽のある生活 by SHINSEIDO」という名義で、CD/DVDは店舗床面積の半分以下、残りで雑貨やアクセサリー等を扱っている、正直よくわからない店だったので、正直さもありなんという気はしなくもないのですが。

f:id:wasteofpops:20210627140332j:plain

新星堂は元々高円寺で1949年にオープンした個人店舗が発祥。その後法人化された際には本社を荻窪に置く等、杉並区中央線沿線はいわば本拠地。
1970年代にダイエーやイトーヨーカ堂が大型スーパーを出店する際の専門店テナントとして入り込むことに成功したり、1987年に国鉄がJRに移管した後に立ち上げられたリテール部門にも入り込んで駅ビルや高架下の商業施設に出店することで、爆発的に店舗網を拡大していきます。

ただそれは両刃の剣でもありまして。
駅の商業施設は当然ですが、1970-80年代にできた大型スーパーも、巨大団地のそばとかを除けば割と駅近の立地が多めです。
それが大店法の緩和によってトイザらスと一緒に外資系のCD店もやってきて、都心の一部の店舗を除けば、その支店は大店法の緩和によって日本全国の郊外にぼこぼこでき始めた大型ショッピングモールに入ることになります。

かくして日本全国小売商業のシフト転換が発生し、それまでは駅近辺の商業施設等の「一等地」に出店することで圧倒的なアドバンテージを得ていた新星堂は、そのアドバンテージが故に1990年代以降ずいずいとしんどくなっていくわけです。

それでも人口が多く鉄道利用の割合も大きい大都市近郊では駅近店舗を維持していたのですが、CDが売れなくなった2000年代後半あたりからはそれも徐々に厳しくなっていき、杉並区の店舗も以下の通り閉店していきます。

新星堂 高円寺北口店(-199?)
新星堂 高円寺レコード(-2010)
新星堂 阿佐ヶ谷店(-2021)
新星堂 荻窪タウンセブン店(-?)
新星堂 荻窪店(-?)
新星堂 荻窪ルミネ店(-2012)
新星堂 荻窪天沼店(-2012)
新星堂 西荻窪店(-2010)

荻窪店は本社併設の店舗で、確か荻窪天沼店と営業期間は被っていないはずですが、それでもこれだけあったのが遂に全部消滅です。
というか、新星堂に限らずCD店が多くあったはずの杉並区、西荻窪の高架下にあったゴトウレコードも2019年に閉店、久我山のツツ井サウンドは先日見に行ったら更地になっていたりして、現在阿佐ヶ谷店以外の区内で「新譜CD」を購入できるのは浜田山のTSUTAYAに少し並んでいるのだけっぽくて、杉並中央線沿線民は新宿か吉祥寺まで行く必要があります(高円寺を中心に中古店はまだ結構ありますが)。

ただ、言うても数分おきに来る電車で10-15分行けば潤沢にまだ店舗があるというのは、今の日本では割と恵まれている方、ということになりましょうか。
今の世の中的にはもはや何が恵まれているかもよくわかんねえ、という状況だとしてもだ。