「“東京”の歌」のこと

音楽ナタリーに「“東京”はどのように歌われてきたのか 」というのを書きました。

(前編)現在のJ-POPに至る“ネガな東京”はこのとき誕生した
(後編)東京出身ミュージシャンにとっての東京と、地方出身ミュージシャンにとっての東京

いや、今回は本当にしんどかった。過去と比較にならないくらい。
それは明確に理由があって、「TSUTAYA」にしろ「桜」にしろ、過去に媒体に書いた文章はおよそこのサイト等で触れていたものだったのですが、今回は一切それがないところから着手したので。

過去からの流れをきちんと流れとして捉えるためには、どうしてもある程度まとまった数の「点」を収集してマッピングしていく必要がありますが、そのマッピングまではだいたい完成しているところから文章書くのと、1から点を打ち始めるのと、そりゃ違います。
一応、「東京節」の存在とか、ムード歌謡による「ご当地」化くらいは把握していたのですが、今回調査して自分でもようやく点と点が線で繋がった気がする、というレベルで。

ので、相当な時間をいただいて臨みましたが、それでもキツい。「東京」「TOKYO」がタイトルに付いた曲だけでなく、はっぴいえんど等から連なる、空気感としての「都市」感を持つシティポップ系の系譜も触れるべきとは思ったのですが、前半の全体の流れを作った時点でそこらへんの代表曲ざっと確認して大勢に影響なしと判断してカットしました。

で、多分、前編と後編の感触が随分違うことに気付かれた方も多いと思います。
本当は全編を前編のような時系列に沿った形で進めるつもりで調査を始めたのですが、調査の結果として時系列に沿おうとすれば「J-POP以降は多少ネガが増えてその後減ったこと以外、『多様化』しっぱなし」ということくらいしか言えないことに気付いて頭を抱えた結果、前半は時系列で、後半はもう完全に構成を変えることにした次第です。

後編の選曲については、前編リリースの時点で一部で当てっこみたいな状況が勃発していて、非常にドキドキしたのですが、こういう感じになりました。
特に後半のっけからの5発については、相当に熟慮を重ねた結果ですが、選抜基準は「後の楽曲のひな型として挙げられるか」のみなので、いろいろ自分が好きな楽曲もバサバサ切りました。

椎名林檎の「歌舞伎町の女王」は独特のフィクションとして完成されすぎていて、またチャットモンチーの「東京ハチミツオーケストラ」は、上京の時点で「覚醒」というか「覚悟」というか、後続の楽曲には全くない特異な視点があり、他と比較のしようのない異質な曲だったため、好きですが入れられませんでした。

でもしんどかった分、今まで自分が気付いてなかった視点とかも新たに手に入れられましたので、やってよかったと思っております。
正味、いただける原稿料とかけた時間を考えると全く割に合わないのですが、そこは逆にサラリーマン兼業だからこそできることであり、でも自分みたいのがいるから価格的に専業ライターさんが困るということもあるのかなと思うと、ごめんなさい。
できるだけこういう感じのニッチなところにしか出張らないようにしますので、許してください。

Nizi Projectのこと

現在も週3日は在宅勤務という日々でございます。
在宅勤務が始まってから、比較的朝の時間に余裕が生まれたこともあり、起きたら何となくテレビを付けるようになりまして。
で、いろいろ観ていると自分の中のバランスとしては日テレの「スッキリ!」が一番具合がよく、勤務開始時刻まで何となく眺めているのですが、そこでやっていたのが「Nizi Project」

元々は「hulu」のオリジナルコンテンツとして、TWICEのプロデューサーJ.Y. Park氏が全員日本人のガールズグループを立ち上げるにあたってのオーディションを放映しているものですが、「スッキリ!」でも番組の中で枠を取ってそのダイジェストを放送していまして。

正直、誰が頑張って誰が勝ち上がってみたいなのには全く興味はないのですが、これ、しつらえとしてはいろいろ面白いなあと思いまして。

まず、これはこの「Nizi Project」に限ったことではないのですが、だんだんと日本の既存のテレビ局が動画配信サービス企業の番組の宣伝装置になりつつあることが非常にわかりやすく可視化されているということ。

そしてそれを放送しているのが「スッキリ!」であること。huluの視聴者は老若男女いろいろいらっしゃって、「Nizi Project」の新エピソード公開は金曜日の22時ですから、所謂ゴールデンタイムと言える時間帯にぶつけてきている、かなり広く「推している」番組です。
が、それを地上波では「スッキリ!」で流すということは、そこがメインターゲットであるということです。つまり主婦層。

K-POPのグループの場合、女子グループでも日本のアイドルグループと比較すると圧倒的に女子ファンの割合が高いというのは以前から継続している傾向ですが、今回は敢えて地上波では特に30-40代にぶつけてきたのではないかと思うのです。CD購入が普通である世代であり、かつ地上波テレビ局で「オリコンで〇位に入らなかったら即解散」みたいな企画をリアルタイムで体験している世代に。
10代20代だけではサブスクで終わりますが、30-40代までを巻き込めれば、CD等フィジカルの売上が変わってくるし、物販の投下額も変わってくる。

だから、今の展開、メンバーが決まってNiziUとしてデビューも決まった、その後のマネタイズ効率までを見越してのプランとしての「スッキリ!」での展開ではないかと思うのです。
実際、出社日に30代の同僚女子同士が「マコちゃんが」「リマちゃんが」と、嬉々として話しているのを横目で見つつ、間違ってないのだろうなと思うのです。

ただ、「Niji」じゃなくて「Nizi」なところにはずっと違和感を感じている。

サザンとブクガの配信ライブのこと

立て続けに観た配信ライブがとても心に来たので並べてみます。

6月25日、サザンオールスターズ。
私、初めて自分のお小遣いで購入したLPが「人気者で行こう」なんです。割とガチです。21世紀からこっちの活動については「桑田佳祐の唄」を作って世に問いたいような気持ちもあったりもするのですが、それは別の話。

ただ、もう長年に渡ってエンターテインメントの化け物として君臨しているわけで、そんな彼らがガチで配信ライブをやったらどんなことになるのだろうと、結構本気でワクワクしていたのですよ。
果たしてそれは予想の上を行くものでした。

横浜アリーナを完全なライブモードの形で使用し、かつアリーナ部分にまで椅子を全部並べる。そしてステージも照明のやぐらも全部組み、クレーンカメラも空中ワイヤーカメラも装備。要するに「客がいない」以外は一切マイナスなしの完全なフルライブ。
さらに、出した座席全席に照明を設置したり、全部CGなのか炎だけなのかちょっとわかんなかったですけど、「東京VICTORY」の際にはアリーナのど真ん中に聖火台が登場したり、「勝手にシンドバット」では通常ステージ上にダンサーでわちゃわちゃするところを「密」を避けてアリーナ中でわちゃわちゃしたり、無観客であるのをいいことに追加した演出も大量。

歓声をSEで被せるところとか、タイトルや歌詞表示、それも歌詞を変えて歌ったところまでちゃんとそれで表示するなどは、これまで観てきた無観客配信ライブと比較すると、圧倒的にテレビ的なホスピタリティ。チケット購入18万枚、視聴者50万人という規模であればそれくらい行う必要があったということでしょうが、心底文句のつけようのないすごいライブでした。

かといって、ただのベストヒット曲を並べただけではなく、ライブとしての緩急も意識されたものであり、というか今回のこのセットリストは歌詞を変えたところのメッセージ含めて、いろいろ深読みしたくて仕方がない。
そんな、微に入り細に入り「エンターテインメントの化け物」っぷりを堪能したライブでした。


一方、Maison book girl。
現在活動中のアイドルグループの中では群を抜いてシアトリカルな表現を行っているグループで、生配信を行ったのはサザンの前日24日。私うっかり忘れていたのですが、Twitterのタイムライン上で3名ほど「やべえ」「やべえ」と呻いているのを見まして忘れていたのに気付き、慌てて滑り込みでアーカイブ配信を購入してついさっき観た次第。

感想。「やべえ」。
元々のライブでも透過スクリーンに様々なモチーフを映し出したり、音楽以外のSEを使用したり、様々な試みを行っているのですが、もう今回の配信ライブでは透過スクリーンどころではなくライブ映像に過去のライブ映像と切り替えながら進めたり、水中の映像とVJ的にミックスしたり、ステージサイドに置かれていたカメラが実はスマホで、途中でメンバーがそれを持って歌いながらそれを次々にトスして各メンバーを映しながら進めたり。
挙句の果てには、同一曲を4回連続、でも全く違う演出で歌ってみたり、途中でワザと映像を荒らしてみたり、一瞬通信が止まるようなフェイクを入れてみたり。
もうやりたい放題というか、むしろこれは「ライブの生配信」ではなく「リアルタイムで映像作品を制作するプロセスを見学する会」としか思えない状況で。

たぶんちゃんとしたカメラは3台。あとスマホと各種映像素材、画像素材、音素材を組み合わせての約1時間。限られた予算と制作時間と人員と。
でも結果として、全くベクトルは異なるものの、サザンと同じレベルの満足度でした。

サザンがコストと人員をふんだんにかけた米軍本隊の総攻撃だとすれば、ブクガは言ってみればランボーがちまちまと様々なトラップを作って仕込んで、でも正確な腕で矢を飛ばして起爆させて、みたいなものだと言えるのではないでしょうか。規模も何もかんも違いますが、でも2組とも勝負という意味では、勝ちました。

ブクガは当然サザンのような配信ライブはできないけど、サザンもブクガのようなライブはできない。「一瞬通信が止まるようなフェイク」なんざ入れた時点で5000人くらいからクレーム入って窓口がパンクします。
ファン層の量と質、それぞれがそれぞれをきちんと理解して、きちんと納得できる質のものを届けた、という意味では双方本当にプロの仕事ではあります。

私は両方とても楽しかったです。そして近々で、生で観たいと思いました。サザンはチケット取れればだけどな。

観客を入れたライブが再開していること

2月下旬からバタバタとライブが中止になり始め、一時はバンド・グループ形式だと配信ライブすらままならないような状況にもなりましたが、いろいろ仕組み上の問題はあったりしつつも徐々に配信無観客ライブは有料も含めて増え始め、AKBグループも専用アプリによる「オンライン握手会」という言語的には意味不明ですがやらんとすることはわからんでもない形でもって現状打破を模索。
そして6月19日以降、ガイドラインに沿う形で観客を入れてのライブが再開されています。

金沢では5月24日にアイドルグループ西金沢少女団が180人の箱に10人の観客を入れてライブを開始したり、地方ではいち早く動いている事例もありますが、今回は一旦6月19日の緊急事態宣言の全国解除後の流れで。

口火を切ったのは、こういう時には必ず出張ってくる我らが四谷OUTBREAK!。通常日曜に開催されるこの箱特有の風習「早朝GIG」を、平日の朝から開催。一番乗りを果たします。
ただ、従来通りに詰め込んだら200人以上入る箱に8人。これは再開の口火を切ると共に「困難は続く」ことをつまびらかにするものでもありました。

その日の晩に代官山SPACE ODDでワンマンライブを開催したのはV系兼お笑い系バンドjealkb。
同日、新横浜NEW SIDE BEACH!!ではZIGGYもワンマンライブを行っています。
翌20日には東高円寺U.F.O. CLUB(300)に25人入れたどついたるねんがライブを実施しています。

また、20日21日にはC&Kが会場は参加者のみに通知という形で、ファンクラブ限定野外ドライブインライブという形で開催。こういう形にすると280人まで呼べます。
彼らのライブはコール&レスポンスがキモですので、無観客配信は厳しいということでこの形にしたようです。

これ以降もライブの予定は続きます。他にもあると思いますが、とりあえず気付いたヤツだけ。

06/27:Earthists.(GARRET udagawa)
07/04:四星球(アスティとくしま)
07/04:predia(WILD MAGIC・野外)
07/05:勝井祐二 × U-zhaan(下北沢440)
07/11:HAN-KUN(EX THEATER ROPPONGI)
07/11:真っ白なキャンバス(TSUTAYA O-EAST)
07/12:モーモールルギャバン(京都磔磔)
08/15・16:lynch.(名古屋・日本特殊陶業市民会館フォレストホール)

また、Angeloは7月から8月にかけて東名阪のツアーを行います。
当然、方針に沿う形になりますから、動員数は非常に限られます。したがってチケットは結構な価格になっています。
が、ここにオリジナルデザインのマスク&手袋を配布という、ここでないと入手できないノベルティとセットにすることである程度でも納得度の上がる形になっています。

敢えてその不自由さまで含めて発信した四谷OUTBREAK!から始まり、野外ドライブイン型で開催したC&K、都市野外型で計画しているpredia、地元の大型会場でルールの中での「最大」を模索する四星球やlynch.、そしてノベルティ&有料配信と組み合わせることで「普通」に近づけようというAngeloの試み。

ミュージシャン・運営・ライブハウスが汁が出るほど脳を絞り、自分たちの力でできる範囲で様々なアイデアのライブが再開されています。

明日はサザンオールスターズが自粛以降始まった配信ライブとしては最強のエンターテインメント性を伴ったものを出してくるはずです。
そして生ライブについても、いずれ有名どころが何かすごいアイデアを伴ったえげつないのを発表するのではないでしょうか。

正直いろいろキツいですけど、こうやって各ミュージシャンが出してくる諸々は、「今しか体験できないもの」としてできるだけ面白がることにしようと思います。
厳しいね、辛いね、頑張ろうね、心寄せようね、だけではもうやっていけないのですから。

配信ライブについては各バンド・グループが様々なサービスを使っているせいで、もう自分がどこのサービスに登録してどうなってるのか全然わかんなくなっているのが、自分としては現状最大の問題です。

サブスクのメリットとデメリットのこと

昨日、とある複合書店の閉店セールを覗いてみたんですよ。
壁一面にびっしり詰まったAKBグループ系のCDにいろんな意味でひとつの時代の区切りを感じたり、中島みゆきとB'zのCDは速攻でごっそりやられていることを確認して、やっぱりそういうことになるんだろうなと思ったりしたわけです。
写真、下の段ボール以外全部AKBと坂道。

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だから、関ジャムでいくら鬼龍院翔が中島みゆきの楽曲について力説したところで、視聴者はその後できることは特にありませんから、その場でおよそ終わってしまいます。
一方、この間の金曜、ミュージックステーションで「サブスクで聴くミュージシャン」として、King Gnuが折坂悠太を、加藤ミリヤとLiSAが藤井風に言及した途端、各ストリーミングのリアルタイムチャートで2人が爆上がりしたのですが、こういうの含め様々なきっかけで時には意外な曲が聴かれたりする。これがストリーミングの一番いいところだと思います。

自分が好きなミュージシャンからの繋がりで、その場で新しいミュージシャンを開拓することができる。というか、ダウンロード時代からそうでしたが、データで音楽を購入できるという状態は、要するに自分の手元に24時間営業のショップがあるようなもんですから、本来もっとたくさん聴かれるはずなんです。
日本ではまだ売上ではCD全盛時代を越えられてはいませんが、比較のしようはないもののきっと「聴かれている実数」ではもう今が最高値を更新し続けているのではないかと思うのです。

純粋に「音楽を聴く」という意味では、今はかなり最高の時代になってきたと思うのですが、でも楽曲を提供する側にとってはいろいろとデメリットもありまして。
当然、CDと比べて単価が著しく低いというのがその最たるものです。
で、その目減り分をライブとそれに伴う物販という「興行」の方に振って利益を確保していたら、こんな世の中になっちゃって今やライブもまともな形で開催できない時代になってしまい、一体ポップミュージックの未来はどっちだとも思ったりもします。

しかしそれ以外で、ミュージシャンにとってストリーミングになったことでデメリットになり得るとさっき思ったのが、ミュージシャンごとの「トップソング」「人気曲」表示です。
そのミュージシャンの楽曲の中で、どれがより聴かれているのかがわかる仕組みで、初見のミュージシャンを聴くときなんかは割とそこを見がちなわけですが、時々切なくなるような事例に出くわします。

それをすごく感じたのが、Apple Musicでモーモールルギャバンを検索してみた時。
Apple Musicでは「サイケな恋人」「ユキちゃん」「POP!烏龍ハイ」が上位3曲。つまりメジャーデビュー前のインディーズのアルバムの楽曲で占められています。
彼ら自身どう思っているかはわかりませんが、これってミュージシャンによっては相当キツいと思うのですよ。メジャーに上がってそれなりの予算でもってガッツリ気合いを入れて制作したのに、でもそれがそれ以前の曲より評価されないという状況。
もちろん、ライブでの反響とかでおよその理解はできるのでしょうが、ここではこれ以上ないくらいに可視化されてしまう。順位が付いちゃう。厳しい。

正直な話、モーモールルギャバンについて個人的にはインディーズの「野口、久津川で爆死」のさらに前、ストリーミングには乗ってない、CD-Rでリリースされていた「サイケな恋人」収録の「裸族」のオリジナルヴァージョンが最強だと思っているので、もう救いがない。俺にとって。いや、ライブ観たらいつだって最高なんですけど。でもこればっかりは。
というか、そういう所謂「初期音源」は、ストリーミング弱いのは如何ともし難い。
言うてもそれは「古い」ミュージシャンだけで、若いミュージシャンはハナからストリーミング始まりなので、困るのはおっさんだけ。

YouTubeにそのヴァージョンのMVが残っているので助かる。

レコファンの店舗が全滅すること

レコファン渋谷BEAM店が閉店セールを開始しました。

閉店日はまだ具体的に発表されてはいませんが、恐らく閉店セールの売上と在庫の状況を見ながら判断することになるのでしょう。

ここんところの自粛等による影響で、実際の閉店も多少早まったとは思うのですが、レコファンは2014年に一部の期間限定店舗を除いて横浜西口ダイエー店とのメガショップ2店舗体制にまで縮小していて、その横浜の店舗も2019年1月に閉店、その時点で相当にキツい状況であっただろうと思います。
1981年に下北沢に最初の店舗をオープンしたレコファン。1983年に渋谷進出、以降首都圏に店舗網を拡大していったのですが、2006年以降縮小傾向に転じました。
とりあえず拾える限りの閉店の状況は以下の通り。

2006/04/02 渋谷センター街店 閉店
2006/04/30 橋本サティ店 閉店
2006/06/25 渋谷店 閉店
2007/11/26 三軒茶屋店 閉店
2008/03/30 経堂店 閉店
2009/03/29 秋葉原店 閉店
2009/06/30 高田馬場店 閉店
2009/07/26 吉祥寺店 閉店
2010/11/16 西武新宿ペペ店 閉店
2011/03/21 秦野ジャスコ店 閉店
2011/03/27 川崎ルフロン店 閉店
2012/05/13 LIVIN田無店(期間限定営業)閉店
2012/05/20 大泉LIVIN OZ店(期間限定営業)閉店
2012/06/24 下北沢店 閉店
2012/10/08 池袋店 閉店
2013/02/24 町田東急ツインズ店 閉店
2014/03/31 大森店 閉店
2019/01/31 横浜西口ダイエー店 閉店

中には、2010年5月にオープンして翌年3月に閉店した川崎ルフロン店のような悲惨な事例もあるのですが、流れを追っていくと、2006年に渋谷の店舗を1994年オープンの渋谷BEAM店に集約したところまではまだ理解できるものの、それ以降着実に店の数を減らしていくプロセスで、閉店する店舗について意図的なところが見えず、苦しくなったところから順番に閉じているだけのようにも見えます。

ディスクユニオンが一時期事業を多少整理した際、まず稲田堤と淵野辺のロードサイド型店舗を閉め、完全に都市型のみにした点や、店舗をジャンルごとに細分化したり、店舗まで分けなくても店内のジャンル分けをできるだけ細かくわかりやすくすることで、そのジャンルの固定客を掴んで現状の店舗規模を維持し、大阪にまで出張ることになったのと、レコファン。随分違います。
いや、レコファンのわちゃわちゃした店内好きなんですけど、少なくとも好きなジャンルの定まっている若い層にとってそれはキツいだろうと思います。

というか、1994年か1995年に初めてレコファンに行ってビビったのは輸入盤新譜CDの安さでした。
渋谷のHMVで2,080円、タワレコで1,980円で売ってるCDが、レコファンに行ったらだいたい1,780円で買えました。下手したら1,580円の盤まであったりして、ボランティアか馬鹿かどっちかじゃないだろうかと思ったものです。
それがだんだん価格差が詰まってきて、新譜の価格という点ではレコファンのアドバンテージはなくなっていきます。

恐らくタワーレコードやHMVが国内の店舗数を爆増させたことで販売点数も爆増、仕入れ単価を下げることに成功したからだと思うのですが、それ以降レコファンは中古屋として愛用はしていて、安いものは圧倒的に安いしそれなりに掘り出し物を見つけることはあったものの、「この人のこの盤がほしい」という狙いを付ける場合には、ユニオンやそのジャンルに強い個人店に行く方が確実で。
レコファンは「物」はあってもレコメンド等の店舗としての発信機能は他に比べて弱く、それはぶっきらぼうだった店員がある日突然「いらっしゃいませ!」と挨拶し出した程度で代替できるものでは無かったのだと思います。

店舗はなくなっても通販は続けるようではありますが、現状で自前の販売サイトはただのメールオーダーのカタログで、とても枚数を捌けるようなブツではなく、その他Amazonも使用して販売を行っていますが、渋谷の店舗なくなったら「レコファン」としての実態は限りなく見えにくくなってしまいそうで、これ正直厳しいっす。

今とこれからのジャニーズのこと

King & Princeの新曲「Mazy Night」が6月10日にリリースされました。
元々は4月29日リリース予定だったのが5月27日に変更され、更に再延期されてようやくのリリース。
売上数は2日間で43万を超えるというさすがっぷり。当然のようにサブスクなどなく、CDのみでこれだけ積み上げました。

スペシャ見てたらMVが放映されたんですけど、他のほとんどのジャニーズ勢同様、当然「Short Version」です。YouTubeにも上がっていますが当然それ。
盤を買った人間以外には絶対全部見せたくない、という頑なな意志を感じます。
というか、こんな時代にわざわざ盤を買ってくれる「お客様」に対しての、最低限のホスピタリティとしての線引きをそういうところに置いている、ということかもしれません。

嵐が作年11月にシングル曲、今年2月にアルバム曲をストリーミング解禁した時、さすがにこれからジャニーズもそうなっていくのだろうなと思ったのですが、それ以降続くグループはありません。既に解散したグループの音源を解禁するということもなく。

嵐の「盤」としての商いは、もちろん今後行われるであろうラストコンサートの映像は将来あるでしょうが、音源としてはベストアルバム「5×20 All the BEST!! 1999-2019」の売上が落ち着いた段階でおよそ終わりました。
それを踏まえての解禁と、シングル曲解禁時に同時に配信のみリリースされた「Turning Up」の曲調等を含めて考えると、これ要するに「日本以外でのニーズ」を期待していて、それを最大化するためにはストリーミングに出すしかない、という判断をしたのだと思います。

だから「他のグループが続かない」のではなく「嵐だけが特別」だということで、でもそれはたぶん「今のところ」で、たとえば今後キンプリの誰かがアジアでめっちゃ人気が出たとか、Snow ManかSixTonesのとある楽曲がTikTokで世界的にめっちゃバズった、みたいなことがあれば、またいろいろ世界戦略は変わっていくのだろうと思います。

それでも国内では、現状でSMAPを失い、嵐ももうすぐ失う、ジャニーズのグループも出ているミュージックステーションにDISH//の北村匠海くんが出演できてしまう、相対的にはジャニーズのパワーは正直低下しているわけですが、日本での「CD」優先のビジネスは、「もう若者誰もCDプレーヤー持ってへんよ」「もうどこのメーカーもCDプレーヤー作るのやめたよ」みたいな事態にならない限り続くのではないかと思います。

いや、もし世の中のCDプレーヤーの供給がヤバくなったとしたら、「ジャニーズショップ オンラインストア」でジャニーズ謹製のCDプレーヤーを売り出してしまうのではないかと、半ば本気で想像します。
一時、一部のミュージシャンが「CDで買ってほしい」と訴えたように、やっぱりCDの利益率は他の比ではありません。
ひたすら「盤」を売り、わざわざ盤を買ってくれる「お客様」をひたすら大切にする、利益率の高いビジネスモデル。

世界中が音源の販売から興行に、その売り上げの主軸を移してしまった状況下で発生したコロナ禍。コンサートも以前のようには開催できなくなってしまった今の世の中、実はジャニーズが頑なに守ったこのスタイルこそが、結果として2020年のビジネスとしての最適解になってしまったのではないか、と思うのです。

完全に結果オーライだけど、でも正しい。何かすげえジャニーズ。

Rupert Hineが逝去したこと

6月4日、プロデューサーでミュージシャンでもあったRupert Hineが亡くなりました。
過去にも何人ものミュージシャンの訃報を聞いてきましたが、彼は自分の中ではとても重要な存在でありまして、少し昔話をさせていただきたく。

1982年から1983年にかけて、洋楽を聴き始めました。
1982-1983年はMichael Jacksonが「Thriller」をリリースし、Madonnaがデビューしたあたり。そして1983年にヒットしたアルバムで自分が一番気に入ったのはThe Policeの「Synchronicity」でした。
過去作品からの流れで今改めて考えれば、少々カッチリ作り込みにすぎるとも思えるのですが、当時は「何てかっこいいのだろう」「「Mother」の意味のわからなさは何なのだろう」と、夢中になって聴いていて。

一方、「Synchronicity」が売れまくっていたほぼ同じ頃にヒットチャートに入っていた曲がThe Fixxの「One Thing Leads To Another」。

ヒットチャート番組聴いていた時にけっこう「これ好き」と思ってはいたのですが、その後The Policeの「Synchronicity」に伴うツアーの北米公演の前座がThe Fixxであるという話を聞き、それならということでアルバム丸ごとRupert Hineプロデュースの「Reach The Beach」ごと聴いて一気に惚れ込みます。
ここで自分は初めて「サウンド・プロデューサー」という存在を知ることになります。
この年、Howard Jonesがデビューして、「What Is Love」がまたRupert Hineプロデュース。音的に納得感異常に高く、「プロデューサー聴き」の概念を把握します。

翌1984年、3rdアルバム「Phantoms」もやはりRupert Hineプロデュース、これも気に入ったのですが、この年Rupert HineはTina Turnerの復活作「Private Dancer」にも2曲のプロデュースで参加します。
その1曲「Better Be Good to Me」を聴いてふと気が付いたこと。「この曲のギター、The Fixxと同じ音じゃないか」。

やっぱりギタリストのクレジットはThe FixxのギタリストのJamie West-Oramで、ヴォーカルのCy Curninも参加。ついでにMVでも結構目立つ形で出演したりして。
Jamie West-Oramのあまりエフェクトで歪ませない音が大好きだったのですが、当時好きだったBARBEE BOYSのいまみちともたかのギターとの共通項を感じたりしていて。その流れで初期BUCK-TICKの今井寿の出す音も大好きで。


「Phantoms」以降、The FixxはRupert Hineから離れるわけですが、案の定自分にとっては「コレジャナイ」感ものすごく、ただRupert Hine自身の音楽プロジェクト、Thinkmanについてはえれえ大仰な音だなと思いつつも嫌いになれず、そこから遡る形でRupert Hine名義の過去のソロアルバムを聴いてから考えると、Thinkmanは明らかにTina Turnerプロデュース以降の音になっていることに気付きます。

そして、過去のソロアルバムは、1981年の「Immunity」は国内盤も出ているのであっさり買えたのですが、1982年「Waving Not Drowning」と1983年「The Wildest Wish to Fly」は当時は本当に見つからず、ここが自分が輸入盤屋中古盤屋を巡る発端となります。

そして今も四日市市内で頑張っている、当時は路面ではなく雑居ビルの2階にあったROOK RECORDSや、名古屋の当時は東海銀行ビルの地下にあったBANANA RECORDSとかに通うようになり、BANANA RECORDSで電気グルーヴの前身の人生の7インチを見つけたりしながら、どんどんあっちに進んでいくわけです。

というわけで、Rupert HineとThe Fixxは、自分の今に至るいろいろの発端になっておりまして、逝去の方で何となくセンチメンタルな気持ちになって書いてみた次第。
Apple Musicの日本語表記が「ロバート・ハイン」になっているとしてもだ。

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センチメンタル・バスがサブスク解禁になったこと

SONYの「DISCOVER the 90's」というのはよい企画です。
過去にSONY系レーベルに所属し、馬鹿売れしないままいなくなってしまった方々の音源を、こういう形でストリーミング解禁することで多少なりともニュース・バリューのある形で紹介しようというもので。

恐ろしいほどの存在感で、好きだったけどあんまり売れないんだろうなあ、と思ったら案の定売れなかった松崎ナオ。12cmシングル4連続リリース、どの曲も抜群で、今考えても何で売れなかったのかさっぱりわからないザ・カスタネッツ。ミクスチャーの日本のパイオニアにして世界最高峰のひとつだったSUPER JUNKY MONKEYあたりが思い入れ強いですが、今回遂にセンチバが来た。

全音源CDで既に持っているのですが、嬉しい。
何がすごいってこいつら今のところ「DISCOVER the 90's」で紹介されている中では一番売れているにもかかわらず、一番イビツな音だということ。
たとえば最大のヒット曲「Sunny Day Sunday」。ちゃんとしているようでサビのメロの裏で謎の奇声が確実に入っているわけです。正味だいたいの曲で「ポップソングとして成立させるために不必要な音」が鳴っている。
そして今回素晴らしいのはアルバム2枚だけでなくシングルも全部解禁になっているところ。というのは、センチバのシングルのカップリング曲は両A面の「WEED CROWN/サイクリングビート330」以外、表題曲以外は一切アルバム未収録で、かつ「とてもカップリングらしい曲」だらけ。お遊びだったり実験だったりオマージュだったり、もう何か余計なものがいろいろ爆発しているのです。

自分にとっての理想的なポップソングってこういうのだよなあ、と思いつつ、今アイドルグループに求めているのがそういう音楽なんだなと改めて気付く。メジャーなJ-POPにそういうのがいたら全然応援するんだけどな。

で、YouTube何かあるかと思ったら、ポップスとして一番「普通」な「アヒル」のMVしかない。
確か以前はテレビ出演時の、鈴木秋則はただ狂ったように大太鼓を叩いているだけの素敵な映像があったはずなのですが、何故か削除ではなく「この国ではブロックされています」状態に。
謎だ。

今のAKB系・坂道系のこと

とりあえずこういう世の中で、土曜も無観客ライブをネットで観たりしていました。
で、音楽番組がだいたい総集編になっていく中、ミュージックステーションとか一部の番組はいかに新たなコンテンツを制作して提供していくかいろいろ腐心しているようで、挑戦的な演出や企画も見られ、その創意工夫のプロセスを見るのが楽しかったりもします。

そんな中で、ほとんど見なくなってしまったのがAKB系・坂道系。これまでがやたら出ていた分、その落差がとても激しい。
でも考えてみれば、AKB系・坂道系はその存在からビジネスモデルがおよそ今の状況にアンマッチなわけで。

  • 大所帯が故にステージ上で「密」にならざるを得ない状況のため、グループとしての番組・イベントの出演のハードルが高くなる
  • テレビを筆頭に既存メディアでの露出に相当に依存しているため、番組制作が滞ると出演もてきめんに滞る
  • 最も重要なイベントである握手会等の接触イベントが、現状で以前のように行える目処の立ちようがない

AKB48乃木坂46の公式サイトを見てみると、「乃木坂工事中」はリモート等を使って、その他各メンバーのレギュラー番組は同じくリモートや総集編でこなしているようですが、レギュラー以外でのメディア出演は、AKBなんかSHOWROOMとかYouTubeとか、ほぼ地下アイドル同等のレベルでしか動けていないことがわかります。乃木坂は逆に地下アイドル的な活動を抑制しているようなので、各人のレギュラー以外ほぼない。
雑誌やWEB媒体のインタビューとかはあるので、ただ暇ではないとは思いますが。

それでもメディアとの連携が盤石であれば、ジャニーズのようにミュージックステーションの中で枠を持って各グループを順番に登場させる、なんてこともできるのですが、それもできていない。

これは推測ですが、2020年4月で元々グループとしてはAKSが海外グループの管理に専念することになり、AKB48、HKT48、NGT48がそれぞれDH、Mercury、Floraに運営が譲渡されているが大きいのではないかと考えます。
SKE48は2019年にAKSからゼストに譲渡、NMB48は元々吉本興業の子会社Showtitleの所属、STU48は元々瀬戸内地方の振興を目的とした官民組織の下部企業STUの所属。
2020年4月1日の段階で、国内のAKBグループは全て別企業による運営になっています。

これでグループ一丸となって何とかせえという方が難しいわけで、各グループごとの組織の限られた企画力とコストでもってやるしかない、ということではないでしょうか。

坂道系は、乃木坂46は乃木坂46合同会社、欅坂46と日向坂46はSeed & Flower合同会社、双方SONY MUSIC系列なので、ここは何とかすればできなくはないですが、ただ、こういう関係性もあったりして、要するに秋元康氏がどうこうというレベルではないところでステーク・ホルダーが既に複雑に絡み合っていて、現場の思い付きで何か簡単に立ち上げて実現できるような状況ではない、ということは想像できます。

ただ、じゃあ白石麻衣の卒業コンサートは、当初の予定通りに開催できるまでいつまで待たなければならないのか。いやわかる。彼女の「価値」を最大化するためにスタッフはこの数年本当にいろいろ仕掛けてきて、その集大成が卒業コンサートということですので、ビジネス的にマストだということはわかる。でも、じゃあそれまで彼女はずっと今の中途半端なままなのか。
そもそもAKB/坂道ともに幕張メッセに大行列の握手会というイベントは、今後容易に可能になるのか。当面不可能であると判断するのであれば、新曲をリリースすることにどこまで(ビジネスとしての)意味があるのか。とすると今後どういう活動になるのか。

正直、ビジネスとしては圧倒的に「よくできた」モデルですから、拡大再生産したくなる気持ちはわかる。俺もその立場だったら絶対そうする。
でもそれは結果としてビジネスとしての多様性に乏しい「モノカルチャー」的なところにハマってしまい、そのツケが今一気に来ています。

もう少し落ち着いた時、どう変えるのか。変えないのか。
というか、既存メディアがこの後どう動くかによっては「変わらざるを得ない」状況になるのかもしれませんが。