サブスクのメリットとデメリットのこと

昨日、とある複合書店の閉店セールを覗いてみたんですよ。
壁一面にびっしり詰まったAKBグループ系のCDにいろんな意味でひとつの時代の区切りを感じたり、中島みゆきとB'zのCDは速攻でごっそりやられていることを確認して、やっぱりそういうことになるんだろうなと思ったりしたわけです。
写真、下の段ボール以外全部AKBと坂道。

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だから、関ジャムでいくら鬼龍院翔が中島みゆきの楽曲について力説したところで、視聴者はその後できることは特にありませんから、その場でおよそ終わってしまいます。
一方、この間の金曜、ミュージックステーションで「サブスクで聴くミュージシャン」として、King Gnuが折坂悠太を、加藤ミリヤとLiSAが藤井風に言及した途端、各ストリーミングのリアルタイムチャートで2人が爆上がりしたのですが、こういうの含め様々なきっかけで時には意外な曲が聴かれたりする。これがストリーミングの一番いいところだと思います。

自分が好きなミュージシャンからの繋がりで、その場で新しいミュージシャンを開拓することができる。というか、ダウンロード時代からそうでしたが、データで音楽を購入できるという状態は、要するに自分の手元に24時間営業のショップがあるようなもんですから、本来もっとたくさん聴かれるはずなんです。
日本ではまだ売上ではCD全盛時代を越えられてはいませんが、比較のしようはないもののきっと「聴かれている実数」ではもう今が最高値を更新し続けているのではないかと思うのです。

純粋に「音楽を聴く」という意味では、今はかなり最高の時代になってきたと思うのですが、でも楽曲を提供する側にとってはいろいろとデメリットもありまして。
当然、CDと比べて単価が著しく低いというのがその最たるものです。
で、その目減り分をライブとそれに伴う物販という「興行」の方に振って利益を確保していたら、こんな世の中になっちゃって今やライブもまともな形で開催できない時代になってしまい、一体ポップミュージックの未来はどっちだとも思ったりもします。

しかしそれ以外で、ミュージシャンにとってストリーミングになったことでデメリットになり得るとさっき思ったのが、ミュージシャンごとの「トップソング」「人気曲」表示です。
そのミュージシャンの楽曲の中で、どれがより聴かれているのかがわかる仕組みで、初見のミュージシャンを聴くときなんかは割とそこを見がちなわけですが、時々切なくなるような事例に出くわします。

それをすごく感じたのが、Apple Musicでモーモールルギャバンを検索してみた時。
Apple Musicでは「サイケな恋人」「ユキちゃん」「POP!烏龍ハイ」が上位3曲。つまりメジャーデビュー前のインディーズのアルバムの楽曲で占められています。
彼ら自身どう思っているかはわかりませんが、これってミュージシャンによっては相当キツいと思うのですよ。メジャーに上がってそれなりの予算でもってガッツリ気合いを入れて制作したのに、でもそれがそれ以前の曲より評価されないという状況。
もちろん、ライブでの反響とかでおよその理解はできるのでしょうが、ここではこれ以上ないくらいに可視化されてしまう。順位が付いちゃう。厳しい。

正直な話、モーモールルギャバンについて個人的にはインディーズの「野口、久津川で爆死」のさらに前、ストリーミングには乗ってない、CD-Rでリリースされていた「サイケな恋人」収録の「裸族」のオリジナルヴァージョンが最強だと思っているので、もう救いがない。俺にとって。いや、ライブ観たらいつだって最高なんですけど。でもこればっかりは。
というか、そういう所謂「初期音源」は、ストリーミング弱いのは如何ともし難い。
言うてもそれは「古い」ミュージシャンだけで、若いミュージシャンはハナからストリーミング始まりなので、困るのはおっさんだけ。

YouTubeにそのヴァージョンのMVが残っているので助かる。