サザンとブクガの配信ライブのこと

立て続けに観た配信ライブがとても心に来たので並べてみます。

6月25日、サザンオールスターズ。
私、初めて自分のお小遣いで購入したLPが「人気者で行こう」なんです。割とガチです。21世紀からこっちの活動については「桑田佳祐の唄」を作って世に問いたいような気持ちもあったりもするのですが、それは別の話。

ただ、もう長年に渡ってエンターテインメントの化け物として君臨しているわけで、そんな彼らがガチで配信ライブをやったらどんなことになるのだろうと、結構本気でワクワクしていたのですよ。
果たしてそれは予想の上を行くものでした。

横浜アリーナを完全なライブモードの形で使用し、かつアリーナ部分にまで椅子を全部並べる。そしてステージも照明のやぐらも全部組み、クレーンカメラも空中ワイヤーカメラも装備。要するに「客がいない」以外は一切マイナスなしの完全なフルライブ。
さらに、出した座席全席に照明を設置したり、全部CGなのか炎だけなのかちょっとわかんなかったですけど、「東京VICTORY」の際にはアリーナのど真ん中に聖火台が登場したり、「勝手にシンドバット」では通常ステージ上にダンサーでわちゃわちゃするところを「密」を避けてアリーナ中でわちゃわちゃしたり、無観客であるのをいいことに追加した演出も大量。

歓声をSEで被せるところとか、タイトルや歌詞表示、それも歌詞を変えて歌ったところまでちゃんとそれで表示するなどは、これまで観てきた無観客配信ライブと比較すると、圧倒的にテレビ的なホスピタリティ。チケット購入18万枚、視聴者50万人という規模であればそれくらい行う必要があったということでしょうが、心底文句のつけようのないすごいライブでした。

かといって、ただのベストヒット曲を並べただけではなく、ライブとしての緩急も意識されたものであり、というか今回のこのセットリストは歌詞を変えたところのメッセージ含めて、いろいろ深読みしたくて仕方がない。
そんな、微に入り細に入り「エンターテインメントの化け物」っぷりを堪能したライブでした。


一方、Maison book girl。
現在活動中のアイドルグループの中では群を抜いてシアトリカルな表現を行っているグループで、生配信を行ったのはサザンの前日24日。私うっかり忘れていたのですが、Twitterのタイムライン上で3名ほど「やべえ」「やべえ」と呻いているのを見まして忘れていたのに気付き、慌てて滑り込みでアーカイブ配信を購入してついさっき観た次第。

感想。「やべえ」。
元々のライブでも透過スクリーンに様々なモチーフを映し出したり、音楽以外のSEを使用したり、様々な試みを行っているのですが、もう今回の配信ライブでは透過スクリーンどころではなくライブ映像に過去のライブ映像と切り替えながら進めたり、水中の映像とVJ的にミックスしたり、ステージサイドに置かれていたカメラが実はスマホで、途中でメンバーがそれを持って歌いながらそれを次々にトスして各メンバーを映しながら進めたり。
挙句の果てには、同一曲を4回連続、でも全く違う演出で歌ってみたり、途中でワザと映像を荒らしてみたり、一瞬通信が止まるようなフェイクを入れてみたり。
もうやりたい放題というか、むしろこれは「ライブの生配信」ではなく「リアルタイムで映像作品を制作するプロセスを見学する会」としか思えない状況で。

たぶんちゃんとしたカメラは3台。あとスマホと各種映像素材、画像素材、音素材を組み合わせての約1時間。限られた予算と制作時間と人員と。
でも結果として、全くベクトルは異なるものの、サザンと同じレベルの満足度でした。

サザンがコストと人員をふんだんにかけた米軍本隊の総攻撃だとすれば、ブクガは言ってみればランボーがちまちまと様々なトラップを作って仕込んで、でも正確な腕で矢を飛ばして起爆させて、みたいなものだと言えるのではないでしょうか。規模も何もかんも違いますが、でも2組とも勝負という意味では、勝ちました。

ブクガは当然サザンのような配信ライブはできないけど、サザンもブクガのようなライブはできない。「一瞬通信が止まるようなフェイク」なんざ入れた時点で5000人くらいからクレーム入って窓口がパンクします。
ファン層の量と質、それぞれがそれぞれをきちんと理解して、きちんと納得できる質のものを届けた、という意味では双方本当にプロの仕事ではあります。

私は両方とても楽しかったです。そして近々で、生で観たいと思いました。サザンはチケット取れればだけどな。