2023年にリリースされた80年代バンド関連音源のこと

先日、New Orderの「Substance」4枚組再発盤を購入したのですが、その他の1980年代関連の音源の中から割と興味深いものを紹介したいと思います。

まず、Various Artistsで。
シンセポップ黎明期のバンド・グループの音源を「リリース年」で括ってCD3枚組というボリュームで出しているヤツ。

Musik Music Musique 1980 The Dawn Of Synth Pop
Musik Music Musique 2.0 1981 The Rise Of Synth Pop
Musik Music Musique 3.0 1982 Synth Pop On The Air

2020年に第1弾「1980年」、2021年に「1981年」、そして今年になって「1982年」が登場。
1983年以降はさすがに多様化もハンパなくなってくるので、ここまでじゃないかと思って3組一気買いしました。

最近こういうコンピ盤というか、50年代から80年代にかけての過去音源で、「何でこんなんがリイシューされてるんや」と思うようなのはだいたいCherry Redレーベルです。

「NME」誌が1986年に、当時の若手バンドの音源をまとめて付録に付けた「C86」という、80年代UK好きには伝説的なカセットがありますが、それを改めて単独リリースしたのもCherry Redですし、その売り上げがよかったのか調子こいて「C87」「C88」「C89」という続編的な独自編集盤までリリースするくらい、こういうの大好きなレーベルです。

ただ、ニューロマンティックをテーマにした盤は、さすがにちょっと無理があるのでこれは買っていません。


New Musik / From A To B - The Sony Years
a-haやNaked Eyes、Captain Sensible等のプロデューサーとして活躍したTony Mansfieldが所属していたバンドの、SONYレーベル在籍時の音源をだいたい全部まとめたヤツです。
過去にはオリジナルアルバム3枚がそれぞれ単体のCDとして再発されていて、その際にボーナストラックとして各アルバムにシングルB面曲等が収録されていたのですが、そこにも収録されていなかった楽曲やヴァージョンもこの4枚組には収録されていますので、これは押さえておくのが吉だと思います。

Modern Eon / Fiction Tales (Expanded Edition)
1970年代末から1981年にかけて活動していたバンドのCD。
正味、音だけ聴くと割ともっさりした垢抜けきらない音ですが、この後界隈で少し流行ることになる「ネオサイケ」的な音を、割と早い時期から出していたその流れではパイオニア的な位置に置いてもいいバンドのひとつでもあるため、1990年代ともなるとアナログ中古はまあまあいいお値段でした。

で、今回のこのCDリリース最大のポイントは「公式初CD化」ということ。2023年なのに。
そのせいか、CDがリリースされた後もアナログの値段がそんなに下がっていないような気がします。まあ90年代や00年代前半のCD化とは状況が全く違いますから。

The Bluebells / In The 21st Century
2023年に突如リリースされたオリジナル・アルバム。「Sisters」が1984年、1992年に日本のみでリリースされた「Second」は、解散によってお蔵入りになった音源をVinyl Japanが掘っくり返して世に出したものなので、公式な2ndと呼んでいいかは微妙。という線で考えると、39年ぶりの公式なオリジナル・アルバムと呼んでもいいヤツです。
バンド自体はちょいちょい再結成してはライブは行っていたので、おかしいことではないなあと思うのですが、惜しむらくは日本盤CDリリースもまたあっていいのですが、現在のVinyl Japan、「Second」を出した頃とは比べようがないほどに元気がないので、もう仕方ないのです。

Depeche Mode / Strane/Strange Too
1988年と1990年にリリースされた、ゴリゴリのアントン・コービン映像なMV集2種がまとめて2 in 1でDVD/Blu-Ray化。VHSが廃盤になって以来の再発ということですので、超久しぶりです。
リマスターだけでなく、アウトテイクも収録されているので、これVHS持っていても買いというか、もうVHSあかんくなっているような気がするので、とりあえず買うか。

「TSUTAYA デイズタウンつくば店」がオープンしたこと

10月17日、茨城県つくば市に「TSUTAYA デイズタウンつくば店」という店舗が新規オープンしました。
2022年10月に閉店したララガーデンつくば店の移転という位置付けとしても捉えられなくはないですが、それでも閉店時期に移転のことは言っていなかったこと、1年の間があったことから「新規オープン」と言ってもいいのですが。
というか公式には2023年4月に閉店した水戸市のTSUTAYA見和店の移転という位置づけらしく。それは無理がある。

で、この新店舗のヤバいところは、「CD/DVD販売」「CD/DVDレンタル」実施の店舗だということ。
各地すごい勢いでTSUTAYAが閉店し、幸いにして移転で再オープンしたとしてもだいたいの場合は「TSUTAYA BOOKSTORE」名義の書籍販売オンリーの店になることがほとんどな中、奇跡の店舗と呼んでもいいレベルです。

ちょっとどんなもんか気になったので、つくばエクスプレスに乗って見に行ってみました。

入り口付近は最近よくあるTSUTAYAと似た感じ。
書籍やCDよりも雑貨が目立ち、入り口横には日本各地の名産品・珍味が並ぶ、「ぬるい久世福商店」「ラインナップを絞り込み過ぎたカルディ」的なコーナーもあります。

が、その奥のCD/DVDコーナーは割と絶好調。
たとえば東京世田谷区のTSUTAYA馬事公苑店のレンタルコーナーは本日をもって閉店したのですが、正直全盛期を思えばすさまじく縮小された末での終了で。
それを考えると2023年のオープン店舗でこの充実っぷりは割とすごい。

そして特筆すべき点がこれ。

レンタルレコード復活。馬鹿じゃねえの。でもマジです。
考えてみれば、音楽のレンタルの法的根拠の大枠は1984年のレコードレンタル時代から変わっていないので、やろうと思ったら普通にできる。
それは間違いないんですけど、今現在の「レコード」流行りは「音楽を聴く」ことが第一の目的ではないので、これどこまでいけるのかと不安にはなるものの、品揃えはだいぶ雑だったので「とりあえずやってみて駄目ならいいか」くらいのノリではないかと思います。
どれくらい雑かというと、The Stranglersであったのが「Black And White」だけだったりとか。もしかしたら他のメジャーなアルバムは貸し出し中だったからかもしれませんが。

閉店が続く日本各地のTSUTAYAですが、フランチャイジーによってはまだまだやる気満々の企業もありまして。
この「TSUTAYA デイズタウンつくば店」をオープンさせたのは、茨城県ではおなじみブックエース。TSUTAYAフランチャイジーの中で今に至ってやる気満々の筆頭です。

それでも、茨城県はWonderGOOが割と危険水域で、そっちのTSUTAYAレンタルの方は相当数が既に撤収しているので、トントンです。

New Order「Substance」のこと

高校生だった自分が、初めて買ったCDがこの「Substance」でした。
リリースが発表され、その収録内容を見て、直ちに親に「そろそろCDプレーヤー買ってくれんか」と土下座をし、試験を頑張って何とか買ってもらうことになり、でもまだ実際プレーヤー買わないうちにこのCDだけは購入して待ち構えていたものでした。
これ、どうしてもCDを買わなければいけない理由があったのです。

そこまで「State Of The Nation」と「Bizarre Love Triangle」は12インチシングルで持っていましたが、それ以前も全部収録されて新曲も入っている盤が、LPは2枚組3500円か3800円で過去のシングルのA面曲12曲収録。片やCDは2枚組5000円でA面曲に加えてB面曲も収録されて24曲。
それ、CD買わないという選択肢はないじゃないですか。なので迷わず土下座したわけです。

で、今回CD4枚組で出た再発盤で改めて聴いて、「Substance」がNew Orderの本質にして名盤だと思ったわけです。

「Substance」までのNew Orderは、シングルとアルバムは別物というスタンスが割とはっきりしていて、オリジナルアルバムはそれはそれで愛聴しているものの、「これが名盤」というずば抜けたものは、自分にとっては正直ありませんでした。

片やシングルは、そのタイミングでのバンドの状況であったり手に入れた機材であったり、その時のこのバンドがダイレクトに反映されていて、だからこそそういうシングルを無造作に時系列に並べた「Substance」には、オリジナルアルバムでもないがベストアルバムでもない、独特の存在感があると、そう思えたのです。

このリリースから後、「Touched By The Hand Of God」「World In Motion」はシングルのみとしてのリリースですが、それ以降はアルバムのリードシングルとアルバムからのシングルカットという、他のバンドと同じような形になり、カップリングも別曲はなくてリミックスのみになったり。
だからもしこの後New Orderとしての「Substance」の続編が出たとしても、それは単なる「シングル集」としてしか捉えられないので、だったらもう盤で出さなくてもプレイリストでいいやという気持ちにもなります。

というか「Substance2」はJoy Divisionのコンピとして何か違う感じで既にリリースされていますし、「Substance III」「Substance V」というタイトルのアルバムはZIN-SAY(電気グルーヴの前身)が勝手にリリースしていますので、混乱を避けるためにもシングル集でもいいからNew Orderが次をリリースする際には「Substance IV」でお願いしたいと思います。

ゴダイゴ@ビルボードライブ東京のこと

21日はゴダイゴ@ビルボードライブ東京。
「観ることができるうちに観ておけ」シリーズの一環として。

ゴダイゴは言ってみれば「メディアのタイアップによってスターダムにのし上がったバンド」のはしりと言ってもいいわけで。
それはバンドのブレイク以前から劇伴等も担当していたミッキー吉野がいたバンドだったからですが、今改めて振り返ると、J-POPの直系の先祖と言ってもいい存在です。

自分は当時、何となく知ってはいてもそのタイアップ攻撃に直接ぶつかったことはなく、「西遊記」の曲のイメージも夜ではなく、再放送を見た放課後の友達の家のイメージだったりしますが、聴く人間それぞれがそういう、曲に触れた時のイメージを割と強く持っていることが、現在に至っても圧倒的な強みになっているわけで。

ライブ開始から4曲、1stアルバム「新創世記」と「西遊記」でもドラムのトミー・シュナイダーがヴォーカルを取る曲という、割とゴリゴリのところを攻めてきて「これはヤバい」と思い、全編こういう流れでもそれはそれでアリだな、と思ったのですが、後半はやっぱりヒット曲連発。
「モンキーマジック」「ホーリー&ブライト」「ビューティフル・ネーム」「ガンダーラ」「銀河鉄道999」、畳みかけること。

ライブ後、一緒に観た友人2名が口を揃えて「泣いた」「涙が出た」と言ったのですが、それはやっぱり自分以上にタイアップによって思い出の中に刷り込まれているからだろうな、と思った次第。
実際1990年前後にヒットした「J-POP」黎明期の楽曲が最近割とTV番組でよくかかるようになっていますが、やっぱりそこに思い出がある人達はそれを聴いてグッとくるのでしょう。
是非グッと来たら、ライブやってるかどうか調べて、やっていたら行っていただきたいと思います。生はいいです。

というか、先日観たザ・タイガースの時も思いましたが、メンバーがご存命であることのありがたさ。
ゴダイゴはギターの浅野孝已氏が2020年に亡くなっていますが、それでもオリジナルメンバー全員70歳を越えて普通のライブができてそれを観られる。
聴く限りタケさんのヴォーカルは衰えているのは明らかで、正直かなりギリギリではあるのですが、それでもいい。歌い続けてほしい。

ただこの写真の「さっき撮りました」感だけ何とかできなかったのか。

ロンドンOxford St.のHMVが復活すること

先輩からDMが来て知ったこと。Oxford StreetにあったHMVの旗艦店。2019年2月に閉店した店舗が今年中にも再オープンです

日本のHMVはもう外資ではなく、2010年以降はローソングループの傘下ですので関係ないのですが、本場英国のHMVは2018年12月に2度目の経営破綻となり、カナダのレコードショップチェーン「Sunrise」のグループ企業に買収されましたが、その際に大幅な「減量」を余儀なくされ、その一環として旗艦店だったOxford St.のショップも閉店したわけですが、2022年に企業として単年度黒字を達成したことを受けての再オープン決定とのこと。

アナログに沸いているのは世界的な傾向ですが、「CDを積む」文化がほぼ途絶えた(一度もなかったわけではない)英国でも老舗が復活できるレベルなのは普通に素敵です。

一方日本では、佐賀市の商業施設のモラージュ佐賀で、CDを気持ち程度展開していた宮脇書店が3月に閉店し、それ以来書店もCD店もない状態が続いていたのですが、別の書店が入ると思ったらその前にまさかの新譜CD販売専門店オープン決定。


2023年には相当レアな出来事ですが、オープン告知以降のツイートを見る限り、ボーイズグループ系に徹する姿勢を明確に打ち出しているので、ここらへんの売上をきちんと固めることができれば、日本ではまだCD店は生きていけるということを可視化した、そういう出来事でもありました。

販売店がオープンするにしても相変わらず海外と日本とは違う感じですが、店はあった方がいいのでどっちでもOKです。でも現在渋谷modiにあるHMVは、modi自体があんまり流行っていないこともあって相当しんどそうなので、何とかした方がいいと思います。

第74回紅白歌合戦の出場者のこと

紅白の出場者出ました。
出場者のレーベルと所属事務所が気になったのでざっくり調べてみました。

ここんとこ毎年言っていますが、もうこの世には「老若男女広い層が認知している今年のヒット曲」なんてものは存在していない、ということは前提で。
嗜好が細分化されまくり、所属していると思っているコミュニティ内で情報を探れば自分好みの次の曲を見つけられるので、ヒットチャートに入っているレベルの曲でも興味があるジャンル外の曲は一切聴かずに済む状況。

こうなってしまったら、元々は「その年のヒット曲が一堂に会する場」であった紅白歌合戦が、これまで通りの紅白歌合戦であり続けることは非常に困難です。というかもう無理です。
多くの皆さんが仰るように「もうやめてしまえよ」というのが割と一番の正論ではないかとも思うのですが、それでもあがき続けて何らか「ぽい」ものを提示し続ける姿をウォッチするのが正直面白いのだ、ということで。

で、今年。
ジャニーズ系がゼロであることについてはこれはやむを得ないと思います。正直、番組としては「出すことによるリスク」と「出さないことによるリスク」両方あると思うのですが、天秤にかけた場合そうなるだろうなと。
それで空いたところについて、各人の嗜好によって「アニソン拡充」とも「フェスっぽいメンツ」とも捉えられるところに落とし込んできたのは、知恵を絞りつつ頑張った感がすごくあります。

すとぷりが一部でわいわい言われていますが、ネットに気を使いつつ、減った「男性アイドル(Not ダンス&ヴォーカルグループ)」なところを埋める存在ではあると思います。適任であるかはわかりませんが。
ただ、「ネット発のヒット曲もっとあるだろう」とは思いますが、そもそも既存メディアで放映される番組ですから、そのメイン視聴者を考えても既存メディア発のヒット曲に偏ることはどうしようもないことで。
Adoはもうネット発とか言ってる場合じゃないですし。

K-POP勢については、かつてはBoAも東方神起も女子十二楽坊もジェロもスーザン・ボイルも出場しているわけですから、今更日本人じゃなくてどうこう言うのもどうよ、ということは理解しつつ、SMやYGではなくJYPとHYBEというどちらかといえば新しめの事務所所属で来た点がポイントでしょうか。

事務所については、司会じゃなくなっていなくなったと思った大泉洋が歌手として出場するのを筆頭に、やっぱりアミューズが強い。
ただこの固めっぷりは、これから後出しされる超有名な方々への布石ではないかとも思えますので、これこの先も継続して観察。

一方、細かくは別々ですが、坂道系の合同会社やYOASOBI・緑黄色社会が所属しているSML等、ソニー系列の事務所所属が5組。
ソニーはレーベルとしてもぶっちぎりだろうと思っていたのですが、ソニー系14、ユニバーサル系11と数えてみたらユニバーサル系のレーベル所属も割と多かったです。
というか、3位がビクターの3組ですから、この2社でぶっちぎってました。
一時はかなり言わせていたエイベックスは今年はBE:FIRST1組のみ。世の移ろいを感じさせます。

とりあえずそんな感じで。今回のを見て「しょぼい」とか言っておられる方もいますが、特にここ5-6年はこれからが本番です。
ということで、演歌や後出し分についてはまた追って。

NEX_FEST@幕張メッセ9-11のこと

11月3日はNEX_FEST@幕張メッセ9-11。
Biring Me The Hrizonがキュレーションを担当した単発のフェスです。主催はクリエイティブマン。

10/31に神戸、11/1に名古屋、そして11/4には幕張の同じ場所で「Extra」として4-5組出るショーもあったのですが、11/3のこれが本丸。2ステージ制で計12組が出演する割とガチのフェス形式です。
もうこれは開催が発表され、トリがBMTHは当然として、YOASOBIと花冷え。の出演がコールされた時点で行くの決定。
サマソニの時、YOASOBIのことを気にすることなく一切揺るがずBlurに専念できたのは、既にその時このチケットを押さえていたからです。

2ステージそんな離れてないし、音出しは完全に交互になる形になっているタイプなので、頑張れば全部見られるのですが、もう頑張れない年齢なのでおよそサブステージの方は花冷え。以外無視する方針で臨み、昼御飯も割ときちんととった結果、観たのは以下。

YOASOBI
だいたい全部なじみの曲だし、そもそも「夜に駆ける」始まりで「群青」で歌わせて「アイドル」でアゲるだけアゲて締めた時点でもう完璧なわけです。
生で観て思ったのはやっぱこの2人すげえなということ。
Ikuraさんは決して声量で圧倒するディーバ系の歌い手ではないのですが、音階とピッチ感についてはおよそ完璧な化け物であり、Ayaseさんはあんな滅茶苦茶を完全にポップ&キャッチーに落とし込む化け物である、ということはわかっていたのですが、ライブで全く誤魔化すことなく歌いこなすIkuraさんと、ベーシックなトラックは完全にサポートに任せた結果、太鼓叩いたりヘドバンし続けたりオーディエンスを煽ったり、これはまるでセンチメンタル・バスの鈴木明則氏のようではないかと思わせるAyaseさん。
ポップスとしての面白さを完全に表現したライブでした。すごい。


花冷え。
周りから「観ろ」「すごいぞ」と言われていたバンド。観た。すごい。
雑に言えば、「可愛い女の子が可愛い格好をしてゴリゴリの曲を演るバンド」なわけですが、ポストBABYMETALという感じでもない。
仕掛けた側はそういう意図もあるのかもしれないのですが、メタルと言えるほどの「様式美」的なものはなく、でもデス声も駆使する割と本格的にラウドな音。

MCになると割とふわふわ感のある女子トークになり、でも演奏を開始するとゴリゴリ&デス声というこの感じが素晴らしく素敵。
公式には「ボーカル」なユキナさんと「ギター&ボーカル」のマツリさんですが、ユキナさんはデス声担当多めで、メロディ部は割とマツリさんが弾きながら歌うので、これ一番近い既存のバンドはマキシマム ザ ホルモンだと思いました。
ユキナさんのパート名は是非「キャーキャーうるさい方」にしていただけるとよいかと思った次第。


マキシマム ザ ホルモン
盤石としか言いようがないのですが、こういうタイプのフェスで「メガラバ」を外してきたのは割と意外でした。
ナヲさんのMC「動画撮ってる人がいるけど、目で見た方がいいから! 花火や月とかも目で見た方がキレイだから!」という割とマジなことを言った後、本当に見える範囲からスマホの画面消えたのすごい。


YUNGBLUD
二言目にはファックファック言うナイスガイ。
でも、実際ファックとしか言いようのない世の中で、そういうペルソナでもってそれをエンターテインメントとして展開する、刹那的ではありつつも真摯な表現者でもあり。

そして過去にそういうペルソナでもって活躍していた「ロックスター」と比較すると、圧倒的な敷居の低さ。
正味洗練されていない、ドカドカうるさくてせわしない音楽とパフォーマンスですが、もはやオーバーグラウンドでは割と希少種となってしまった感のあるこういう音楽を支えている大切な人でもあります。
というか、単純に愉快。楽しい。最高。


BABYMETAL
サマソニでも観ているのですが、そこから比べても更に「仕上がっている」感。
新曲「メタり」は既にライブの中核を担う曲として存在感を放ちまくり、MOMOMETALも全くもって違和感ないというか、もうかっこいい。
まあ、世界中をツアーして回るゴリゴリの「ライブバンド」ですので、それも当然か。


Bring Me The Hrizon
初期のゴリゴリのイメージがずっとあって、あんまりきちんと聴いていなかったのですが、最近のfeat.とか共演とかの幅の広さを見て改めて聴きなおしたら非常に面白くて。
ただ、ライブでは音源のレンジの広さをただそのまま演るのではなく、きちんと流れで聴くことのできるアレンジでもって、ゴリゴリと多彩さの間を縫うように進む匠の技。

このフェスはバンド主催のフェスとしては割と正しくて、feat.のミュージシャン、共演したバンドをきちんと連れてきたブレの少ない感じのメンツだったわけですが、feat.曲でYUNGBLUDも登場し、BABYMETALとの「Kingslayer」に至っては、このライブのピークと言っていいレベル。
いや、もう素晴らしかった。
問題があるとすれば、一応ストーリー的な演出のあるライブだったのが、結局そのストーリーの落としどころがどこだったのか、さっぱりわからなかったことくらいです。


ということで、大変すばらしいライブ続きのいいフェスでした。
圧倒的にオーディエンスの反応も良く、百戦錬磨のマキシマム ザ ホルモンが「すげえ」というレベル。
オーディエンスの反応がいいと当然バンド側もアガりますし、それでまたオーディエンスがさらに盛り上がる、正のループが出来上がりまくりの現場でした。
YOASOBIでサークルモッシュが登場し、元メタルコアバンドのAyaseさんがご満悦というのは、これなかなか観られない。

ただ、問題は幕張メッセの9-11だったということ。
幕張メッセ、1-8であればおよそ問題ないのですが、別棟の9-11は周辺の余裕エリアも少なく常設のトイレも少なめ。
女子トイレは臨時の設置があったのですが、男子は置くスペースなく、結果として女子よりも男子のトイレの方の行列が長いという稀有な状況。
フードエリアも狭いところに無理くりいくつか置いてみましたというレベルなので、どれも長蛇の列。
これは無理だと思って昼飯は駅前まで歩いてうどん食いました。

9-11は、ワンマンとかなら何とかなるのですが、フェス系になるとだいたいこういう感じです。
2016年の「VISUAL JAPAN SUMMIT」もこの9-11でした。まあこれの場合それ以外にもいろいろ酷かったので並べてはいけないという説もありますが。

ともあれ、今後「幕張メッセ9-11」でライブ、というアナウンスが入った際には、用心することが肝要です。割とマジで。

Jesus Jones@下北沢Shangri-Laのライブのこと

昨日は下北沢Shangri-LaでJesus Jonesのライブ。

とりあえず観たいじゃないですか。このタイミングならもうベストヒット選曲以外ありえないし、それもキャパ600程度でそのクラスの箱の中でも割と近く見える印象の元GARDENの箱です。
当時は割とアイドル人気的なところも高かったわけですが、果たして今回はおっさんだらけ。8:2くらいでおっさん。Tシャツも1991年のDOUBTツアーの時に買ったのを引っ張り出してきた友人をはじめ、布袋寅泰やM-AGEのTシャツもいて開演前から割と面白状態。

デビューアルバム「Liquidizer」リリース時の日本盤プロモーションの際、「20世紀末のロック界の救世主か、はたまた最後の徒花か」というフレーズが使用され、「Doubt」のプロモーション時には「やっぱり救世主だった!」とはしゃいだものの、人気は長く続かず結果としてやっぱり「徒花」感出てきてしまったバンドですが、でもそれは仕方ないことだとも思います。

所謂「ギターバンド」な音とダンスミュージックの融合、1980年代末頃にはThe Stone RosesやHappy Mondaysのような、どちらかと言えば「本能」に忠実な感じのヤツと、実際インタビューで「順列組み合わせ」という言葉も使っていたJesus Jonesのような「理」を優先して音楽を組み立てていった感じのヤツに分かれていたわけですが、どちらがシーンとして時代を席巻したかと言えばご存じの通り。
まあダンスするにはそりゃ本能に忠実な方がいいだろうと、今なら言えますが、当時は様々な試行錯誤が行われていたわけで。

そして「理」で組み合わせるにしても彼ら以降には、順列とは言えないレベルで複雑になっていったり、組み合わせていじくった結果もうギターバンドでもダンスミュージックでもない独特の音楽が生じたりして、ものすごい勢いで進化を続けました。
Jesus Jonesは正直その進化についていけなくなってしまった感じでドロップアウトしていった、そんなイメージです。

とはいえ、タイムラインとして1990年前後にしか存在できなかったが故にわかりやすい後継があまりいないタイプの音楽であり、だからこそおっさんは思春期まっさかりの頃に心を打ったこの音楽に生で触れて、改めて心を打つ、ということなんです。

かくしてフロアはモッシュが起こりそうになってでもちゃんとしたモッシュになるまで続かないとか、みんなでジャンプを始めてでもすぐ終わるとか、おっさんなりの荒ぶりと限界がそこここで見られる、それはとても愛しい現場になりました。


そしてアンコールで出てきたマイクが「30年来の友人!」と呼びこんだのが布袋寅泰。
去年、布袋のドキュメンタリー映画観に行った際、ミュージシャン仲間の名前を列挙したシーンがあり、その中にJesus Jonesは出てこなかった、ということもあって、開演前に友人と「来たら笑うよなあ」と言っていたのですが、実際出てきたらもう笑えない。
多分これからの自分の人生、10mない位置で布袋がギター弾いてるのを見ることは二度とないと思います。
そしてマイク・エドワーズが長身なので、「布袋がデカく見えない」というのも稀有な体験。

決して凄い演奏秘術とか、素晴らしい歌唱とか、そういうのはハナから期待していない、ただあの当時大好きだった、そしてあの当時以外鳴らなかった音楽を浴びることで、気持ちだけは思春期に戻って嬉しくなる。
もう本当にそれだけでいい、そういうタイプのライブでした。たまにはこういうのもすごくいい。


あと、ワンマンという話だったのに前座のバンドが出てきて、サンプリングやシーケンスは鳴ってはいるものの、少なくともヴォーカルスタイルはJesus Jonesとは相容れないタイプで、これ何なのと思っていたら、ヴォーカルとはえらく歳離れた感のあるギタリストがMCで「自分が呼んだ」ということを話し始めて。
要するに彼は、Jesus Jonesが好きすぎて今回招聘し、ついでに好きすぎてサポートアクトも担当するという、ある意味「ロマン」を実現した男でした。

だからこれからのライブに行く皆様は、tokyo honey trapも応援しよう。

「スクラム」が消滅していたこと

東北を中心に、多い時には10近い店舗網を持っていた、CD/DVD販売及び書籍販売店のチェーン「スクラム」ですが、10月22日に宮城県大崎市の古川店の閉店をもって全店舗閉店、屋号が消滅しておりました。

(大河原店)

1983年に当時の宮城県泉市に出店、以降各地で開店したり閉店したりで以下のような感じ。

泉店(宮城県・1983-2003)
香寺店(ブックバーン)(兵庫県・1988-1991)
大河原店(宮城県・1995-2022)
古川店(宮城県・1999-2023)
東根店(山形県・2002-2016)☆
富谷店(宮城県・2003-2015)☆
札幌桑園店(北海道・2004-2009)☆
元町店(北海道・2004-2007)☆
利府店(宮城県・2005-2016)☆
盛岡南店(岩手県・2006-2009)☆
発寒店(北海道・2006-2008)☆
石巻店(宮城県・2007-2016)☆
仙台中山店(宮城県・2008-2015)☆
大館店(秋田県・2012-2023)☆
鏡石店(福島県・2012-2023)☆
八戸城下店(青森県・2012-2015)

2023年に鏡石店、大館店、古川店と残った店舗が一気に閉店したわけですが、これどうも他のチェーンとは様子が異なっているようで。

スクラムを運営していた企業は「アビリティーズジャスコ」。その名の通りイオングループですが、本業は「障碍者の就労支援」を行う会社です。
要するにスクラムは、その就労訓練を行った人が実際に働く場として設けられた店舗、ということです。
☆を付けている店舗はイオンモール等イオンの中にテナントとして入居していた店舗です。

現在のアビリティーズジャスコのサイトはこちら(http://www.ajscrum.co.jp/)ですが、このドメインから察することができるように、元々は店舗としてのスクラムのサイトで、実際普通のCDショップのように新譜情報やインストアイベントの告知が普通に掲載されているサイトでした。
それが現在のような就労支援企業としてのサイトにリニューアルされたのは2013年。まさに新規店舗の出店が止まったタイミングです。
2016年には再度リニューアルを行って店舗案内すらもほぼなくなるわけですが、これは3店舗をバンダレコードに譲渡したタイミング。

スクラム 石巻店(1/30閉店)→バンダレコード石巻店(2/2開店)
スクラム 利府店(2/9閉店)→バンダレコード利府店(2/13開店)
スクラム 東根店(2/16閉店)→バンダレコード東根店(2/20開店)

営業的には問題なかった店舗を敢えて減らしにかかったということで、これつまり「障害者の雇用の促進等に関する法律」で定められた雇用割合や適用範囲が大きくなっていくに伴って就労支援のニーズが高まり、就労支援のみでビジネスが十分に成り立つようになったということだと思います。

いや、もちろんCD販売がウハウハ言うほど儲かるなら継続もあったでしょうけど、それはさすがになかったということで。
全閉店にここまでかかったのは実際にその店で働いている人の事情とかもあったのだろうな、と想像します。

ということで、ただ窮して消えていくチェーンとは少し違う感じの終焉でした。

ちなみに「アビリティーズジャスコ」は、1989年にジャスコがイオンに名称変更して34年、イオングループの様々な企業の中で唯一今も「ジャスコ」の名を残す企業だということは押さえておきたいポイントです。

ジャニーズ系の所属レーベルのこと

元ジャニーズ事務所の人たちがどのレコード会社に所属していたのか、しているのかということが気になって調べてみました。
1997年以降は自社レーベルも持っている中、それでも自社にすべてを集約するでもなく、割とあちこちのレーベルに振り分けている感があったので。
時代を追って眺めてみるといろいろと趣深いところがありました。

以下表ですが、いろいろ注釈は必要そうです。
ピンクっぽいのが古参レーベル、オレンジっぽいのが新興レーベル、青がジャニーズ事務所の自社レーベルになっています。
古参と新興の区分は便宜上1968年設立の「CBSソニー」以前以後に邦楽部門があったかなかったか、というあたりで切りました。

何せフォーリーブスはCBSソニーの国内ミュージシャンとしては第1号の契約でもあったわけで。
ので、ワーナーの海外ミュージシャンはそれ以前から(東芝から)出ていたけど、ワーナーパイオニアとしては1970年設立なので「新興」、キャニオンも「株式会社ポニー」として童謡とかのカセット出してましたけど、一旦キャニオンレコードの設立が1970年なので「新興」扱いで。
逆にユニバーサルは、「ユニバーサル」という企業はその名前が誕生したのは1999年ですが、元をたどれば1920年代の「ポリドール」にまで遡りますので「古参」扱いという感じです。

また「ジャニーズエンターテイメント」は厳密には2019年を境にしてその前後では厳密には別法人なのですが(2019年5月まではJ Stormと並行して存在した別レーベルで、2019年6月からはJ Storm傘下の「子」レーベル)、そこは分けずに行きます。

あと、レーベルとレーベルの間に隙間があるのは、リリースがない間どっちに所属していたのかしていなかったのかはわからなかったので、リリースをベースにした結果です。
そんな感じで。

まず目につくのは初期の「CBSソニー」所属の多さ。
CBSソニーは1968年3月設立で、その半年後にはフォーリーブスがデビューしているわけですが、CBSソニーは社是として国内契約については一切他レーベルからの転籍で引っ張ってくることをよしとせず、全て「新規デビュー」でして、その第1号がフォーリーブスでした。
当時振興事務所であったジャニーズと、新興レーベルであったCBSソニーとで、相当に馴染んだのであろうと思われます。

以降、割といろんなレーベルと関係作りを行っていますが、それでもソニー系列とその後1970年に立ち上がったフジサンケイ系列のキャニオンと、やはり新興レーベルの多用が目立ちます。古参レーベルにはいろんな条件とかあったのでしょうか。

田原俊彦がキャニオンでの稼ぎ頭でしたが、近藤真彦はRVC(RCAとビクターの合弁)、野村義男はビクターとレーベルを分け、かつ「たのきん全力投球」はフジではなくTBSでの放映と、もうこの時点でいろいろと気配りというか利益配分をベースに様々な配慮がされていることがわかります。

ちなみにこの頃の新興レーベルと言えばフォーライフもそうですが、フォーライフはANKHとひかる一平を短期担当して以降リリースなし。
正味、当時のフォーライフにアイドルを大々的に売り出してブレイクさせるだけのノウハウやコネクションがあったのかといえば、確かに微妙です。

ジャニーズが自社レーベルを立ち上げたのは1997年、KinKi Kidsのデビューに際してですが、1992年に結成し、1994年のデビュー前の段階で武道館単独公演を成功させているくらいの人気をベースにした「何があってもそうそう転ばない」状況でもって、それでも大々的にプロモーションを展開した結果大成功、翌年には既にリリース間隔が空くようになっていた少年隊が移籍します。個々での活動も踏まえたリリース環境を与えるためだったのではないかと思います。

そして2001年には、ポニーキャニオンでは1位を取れたり取れなかったりの状況だった嵐を、自社の新レーベル「J Storm」を設立して移籍させ、その後の爆発的な売り上げに繋げます。

また、関ジャニ∞は、デビュー当初はテイチクの本レーベル、つまり「演歌・歌謡曲」部門としてデビューさせたことで「演歌・歌謡チャート」1位になるものの、その後テイチクのJ-POPレーベルIMPERIALに転籍し、さらにその後J Stormに合流します。

結局そのテイチク/IMPERIAL以降、古参レーベルからのデビューは一旦途絶えます。
正味、今のヒットチャートを考えた場合、ソニーとエイベックスとポニキャン押さえてればいいじゃん、というのは何となく気持ちはわからんでもないです。

その象徴的な存在がSixTONESとSnow Manの同時デビュー。ソニーからSixTONES、エイベックスからSnow Manを、でもデビューシングルは、その異なるレーベルからの2曲をスプリットシングルとしてリリースするという無茶さ加減(ソニー盤はSixTONESが1曲目、エイベックス盤はSnow Manが1曲目)。
これを実現させた、とにかく当時の事務所側の発言力・影響力がハンパなく大きかったということは間違いないことでしょう。

で、そんな中昨年配信でデビューしたTravis Japanはこれまでの流れから一転、古参の中に入るユニヴァーサルからのリリースでしたが、これはデビュー前の海外留学やジャニーズ組としては異色の配信デビューの流れから「世界」を視野に入れ、結果ユニヴァーサル傘下のキャピトルと契約を行ったため。
当時としては滅茶苦茶正しかったと思うのですが、今こんな状況下、「世界」はどうなってしまうのでしょうか。
ここまでリリースした楽曲群はまだ一切フィジカルな盤になっていないのですが、これ原盤権どっちが持っているんでしょうか。CDで出ることはあるのでしょうか。

というか、事務所所属の音源自体、今後どういうことになっていくのか。
いろいろまだこれから気にしなければいけないことはたくさんあります。