演歌のシングルのこと

前回、「現在フィジカルを売りたいのは男女アイドル、K-POP、演歌あたりだけ」と言いました。
アイドルは一部を除いては接触イベントを付加することでCDを売り上げ、残りの一部やK-POPは概ねCDを映像付きやカップリング違いで複数種用意し、熱心なファンが複数枚買うことで売り上げを伸ばしています。この両方の手を取るアイドルもいますね。

演歌の場合もだいたいアイドルと同じです。大手を除けば日本各地のCD店やショッピングモールを回ってはCD・カセットを手売りします。別に握手券は付いてないけど手売りの時に握手はしますから接触です。
キャンペーン情報を仕入れては各地付いて回ったりする「オタ」もいます。たとえば東京でキャンペーンやるとなったら赤羽の美声堂と東十条のダンと亀戸の天盛堂はだいたい回りますから、ガチじゃなくてもそれくらいなら通えるし。

そのドサ回りの場として健康ランドをマークして徐々に名を上げて今年紅白に出場するところまで成り上がったのが純烈だったりするわけですが、ではそんな、演歌の中でも紅白に出るレベルの大手はどのような感じかというと、アイドルを遥かに超えたエクストリームな「複数種」商法が行われています。
以下、今年紅白に出る演歌歌手で複数種リリースしている皆様の、今年リリースのシングル一覧。

■氷川きよし(日本コロムビア)
2018/01/30:勝負の花道【Aタイプ】(CD/MT)4位→180位
2018/01/30:勝負の花道【Bタイプ】(CD/MT)
2018/01/30:勝負の花道【Cタイプ】(CD/MT)
2018/08/21:勝負の花道【Dタイプ】(CD/MT)5位→151位
2018/08/21:勝負の花道【Eタイプ】(CD/MT)
2018/08/21:勝負の花道【Fタイプ】(CD/MT)
2018/11/27:勝負の花道【Gタイプ・Good Night盤】(CD/MT)6位→79位
2018/11/27:勝負の花道【Hタイプ・Holy Night盤】(CD/MT)
2018/11/27:勝負の花道【Iタイプ・I Wish盤】(CD/MT)

■純烈
2018/02/14:プロポーズ【Aタイプ】(CD)8位→34位
2018/02/14:プロポーズ【Bタイプ】(CD)
2018/05/23:プロポーズ【Cタイプ】(CD)11位→59位
2018/05/23:プロポーズ【Dタイプ】(CD)
2018/08/29:プロポーズ【感謝盤 〜紅〜】(CD)11位→70位
2018/08/29:プロポーズ【感謝盤 〜白〜】(CD)

■三山ひろし
2018/01/10:いごっそ魂【タイプA】(CD/MT)12位→139位
2018/01/10:いごっそ魂【タイプB】(CD/MT)
2018/06/06:いごっそ魂【タイプC】(CD/MT)45位→91位
2018/09/05:いごっそ魂【10周年記念盤】(CD/MT)19位→183位

■山内惠介
2018/03/28:さらせ冬の嵐【夢盤】(CD/MT)4位→37位
2018/03/28:さらせ冬の嵐【笑顔盤】(CD/MT)
2018/06/06:さらせ冬の嵐【涙盤】(CD)15位→37位
2018/06/06:さらせ冬の嵐【花盤】(CD)
2018/08/01:さらせ冬の嵐【元気盤】(CD)21位→97位
2018/08/01:さらせ冬の嵐【恋盤】(CD)

■丘みどり
2018/03/07:鳰の湖 / 伊那のふる里(CD)
2018/07/04:鳰の湖 / 伊那のふる里【DVD付き】(CD/DVD)
2018/07/04:鳰の湖 / 伊那のふる里【4曲入り感謝盤】(CD)

■水森かおり
2018/03/20:水に咲く花・支笏湖へ【タイプA】(CD/MT)
2018/03/20:水に咲く花・支笏湖へ【タイプB】(CD/MT)
2018/07/25:水に咲く花・支笏湖へ【タイプC】(CD/MT)
2018/07/25:水に咲く花・支笏湖へ【タイプD】(CD/MT)
2018/07/25:水に咲く花・支笏湖へ【タイプE】(CD/MT)

氷川きよしはひとつのシングルを、カップリング曲とジャケットデザインを変えながら3回のタイミングに分けて3種ずつ、全種CDとカセットで出していますので細かく言えば18種リリースということになります。
他の皆様もタイミングが2回とか、ひとつのタイミングで出すのが1枚か2枚かという相違はありますが、概ね方針としては同じです。

カップリング・ジャケット違いでも表題曲が同じであれば同じシングルとして扱うというルールは、私が知り得る限りでは少年隊のデビュー曲「仮面舞踏会」で初めて取られた戦法で、この時からひとつのシングルとして集計されています。恐らく事前にオリコン側に確認はあったことでしょう。

タイミングずらして出すのはそれどうなのと、初めてこの件を知ったとき私も少し思いましたが、よく考えてみたら、古今東西問わず昔レコードで出ていた楽曲が年を追ってCDで再発されても売上枚数は通算でカウントされていますから、こっちの方がむしろカップリング違い以上に筋が通っていると言えないこともない。
実際、タイミングをずらすことで、180位まで落ちたものが2度目のリリースでまた5位まで盛り返すわけですから、これはもうやめられない。やめられるわけがない。

買う方も、演歌歌手はおよそアルバムは重視せず、出てもシングル表題曲と過去のヒット曲とカバー曲という感じですし、「カップリング集」みたいなブツはほぼありませんから、したがってここを逃すと聴けないかもしれないこともあり得るわけで、そりゃ熱心なファンなら必死です。

そして氷川きよしはこれだけやって合計14万枚弱という売り上げ枚数。他の方も7万枚とか10万枚とかというあたり。若干寂しいですが、こういう形でリリースして、付いたガチファンから太くお金を出していただく形で支えられ、今日も彼らは歌うのです。

でも、演歌系の番組は激減したわけでもなく、配信にだばだば回ってしまうような世代でもなく、実際どの歌手も別にサブスクにガンガン曲出しているわけでもないのに、それでもこれだけ売り上げが減っているのは何故だろうと考えてみたのですが、単純な話として新規ファンの流入よりもファンをやめたり死んだり寝たきりになってる数の方が多いというのはあるにしても、それ以上に、市街のレコード屋が消え、ショッピングモールのCDショップも潰れていく今、購入するための接点がどんどん失われているという理由も相当あるのではないか、と何となく思いました。

ということで、今日は「氷川きよしが今もCDの売り上げを維持できているのは少年隊のおかげ」ということを覚えていただければ満足です。

紅白出場者とヒットチャートのこと

紅白、サザンの出演は大トリの後ということで、さすがにこれは昨年安室&桑田の後に大トリを配置した結果、石川さゆりとゆずがG1の後の第12レースみたいになってしまったことへの反省が踏まえられていると思います。
これがテレビでの初歌唱となる米津玄師くんの出演も決まり、今年もなかなかに「スタッフやりきった」感のある顔ぶれが揃いました。

このやりきった度を何と比較すればいいかを考えた場合、少なくとも今やオリコンの年間チャートではないことは明確で。
あれはもうCDの売上枚数をカウントするだけのものであり、どうしてもフィジカルを売りたいミュージシャンとそうでないミュージシャンとの間でここまで温度差が生じてしまった今現在、男女アイドルグループ、K-POP、演歌あたりの「フィジカルを売りたい村」の中での背比べの結果でしかなくなっています。

先日言ったようにようやくオリコンも「合算ランキング」を先週から発表し始めましたが、その算出方法を見てみると「合算」の名の通り、CDとダウンロードとストリーミングサービスの値を足し算したもの、原則有料サービスでの売上・再生数の合計です。
しかもストリーミングの換算はCDの価格をベースにストリーミングの売り上げ単価との比較で計算されるため、300回の再生でようやくCD1枚分のポイント。
さらに、YouTubeでの再生やラジオプレイ等のマス露出はこの数値には加算されないので、日本でもしChance The Rapperみたいな人が出てきても、このランキング的にはだいたい「いない人」状態になります。
「コンフィデンス」誌とか、オリコンはBtoB向けの顔もありますので、そっち気にしてたら売り上げが基準になるのは仕方ないとも思うのですが、世間の流れとはまた微妙に違ってきそう。あんまり期待しないでおこう。

やっぱ世相としてのヒットを見るにはビルボード・ジャパンのHOT100の年間チャートの方が何となくフィット感があります。
こっちで紅白出場者眺めてみると、上の10組の中で出場しないのは菅田将暉くんだけですし、DAOKOは昨年リリースでこの位置だし、米津玄師くんはTOP40内に単独名義で6曲ぶち込んでいる完全な今年の優勝者ですので、連れてこれた紅白は本当に粘り勝ちです。お疲れ様です。

ということで、若者にはそこらへん、中年にはサザンとユーミン、老人には紅白の正規出場が途絶えてもう死んじゃうんじゃないかと思ったらキタサンブラックのおかげで生気が一段と上がった感のあるサブちゃんと、各世代に目玉を揃えた紅白になりました。というか、ここ2年ここまで全力で来てしまうとこれ来年しんどいぞ本当に。

で、菅田将暉くんが何で紅白出ないか考えてみたのですが、民放の裏番組にトヨタかアサヒビールかauかが主要スポンサーとして付いているのでCM出演者として動けないか、もしくはうっかり先に「笑ってはいけない」のオファーを受けてしまったかどっちか。

第69回紅白の歌唱曲のこと

紅白歌合戦、歌唱曲が出ましたので今年も「歌唱曲がいつリリースされたのか、売れた曲なのか、過去紅白で何回歌ったのか」の一覧。
曲名の後のカッコ内の数値が過去に歌った回数。数字無しは初披露、「※」付きは「他人名義の曲ですが歌います」パターン。

歌手名 曲名 発売年
(売上)
  歌手名 曲名 発売年
(売上)
aiko カブトムシ 1999
(241,600)
  メドレー ---
---
あいみょん マリーゴールド 2018
(10,100)
  五木ひろし VIVA・LA・VIDA!〜生きてるっていいね!〜 2018
(8,800)
いきものがかり じょいふる 2009
(141,400)
  EXILE メドレー ---
---
石川さゆり 天城越え(11) 1986
(48,500)
  関ジャニ∞ ここに 2018
(277,800)
AKB48 恋するフォーチュンクッキー 2013
(1,549,300)
  King & Prince シンデレラガール 2018
(689,200)
丘みどり 鳰の湖 2018
(42,600)
  郷ひろみ GOLDFINGER'99(2) 1999
(459,900)
欅坂46 ガラスを割れ! 2018
(42,600)
  Suchmos VOLT-AGE 2018
(配信)
坂本冬美 夜桜お七 1994
(148,700)
  三代目J Soul Brothers R.Y.U.S.E.I.(2) 2014
(246,300)
島津亜矢 時代※ 1975
(164,000)
  純烈 プロポーズ 2018
(85,500)
Superfly Gifts 2018
(18,600)
  SEKAI NO OWARI サザンカ 2018
(36,600)
DAOKO 打上花火 2017
(32,300)
  Sexy Zone カラクリだらけのテンダネス 2018
(177,600)
天童よしみ ソーラン祭り節(2) 2012
(8,600)
  DA PUMP U.S.A. 2018
(116,400)
TWICE メドレー ---
---
  氷川きよし 勝負の花道 2018
(133,400)
西野カナ トリセツ(2) 2015
(73,700)
  福山雅治 メドレー ---
---
乃木坂46 帰り道は遠回りしたくなる 2018
(1,171,400)
  Hey! Say! JUMP Ultra Music Power 2007
(360,500)
Perfume Future Pop 2018
(アルバム)
  星野源 アイデア 2018
(配信)
松田聖子 メドレー ---
---
  三浦大知 Be Myself 2018
(14,800)
松任谷由実 メドレー ---
---
  三山ひろし いごっそ魂 2018
(48,500)
MISIA アイノカタチ 2018
(27,800)
  山内惠介 さらせ冬の嵐 2018
(97,400)
水森かおり 水に咲く花・支笏湖へ 2018
(73,800)
  ゆず うたエール 2018
(配信)
Little Glee Monster 世界はあなたに笑いかけている 2018
(48,000)
  YOSHIKI feat. HYDE Red Swan 2018
(31,300)

何か全体的に明るい曲が多め、そして比較問題ではありますが曲が新しめ。オリジナル曲を歌わせてもらえないのも島津亜矢のみ。
古い曲を歌うのも訳ありのパターン多め。aikoは紅白初出場が2000年なので「カブトムシ」は歌ったことないし、いきものがかりも「じょいふる」初めて。何でこの曲当時やらなかったんだと思ったらこのシングル両A面のカップリングが、NHK全国学校音楽コンクールの課題曲だったためそっち優先されてました。

ただ、AKB48、三代目、西野カナあたりは遂に今年の曲を歌わせてもらえなくなりました。話題という意味では確かに歌唱曲リリース当時と比べると。しかし西野カナはちょうどベスト盤出したところなのでむしろ都合いいです。

天童よしみは北海道の地震からの曲抜擢、熊本の方は三山ひろし担当。西日本のあたりも何か応援してよと思うのですが、あのあたりを題材にした有名曲もないし有名な名所も少なめだし、なかなか厳しいところ。でもNHKですからどこかでフォローを入れます、きっと。

五木ひろしは無事今年は大御所作家の訃報もなく、今年のリリース曲を歌えます。が、遂にシングル曲売上1万枚割り込んできまして相当辛い。頑張ってほしいのですが、ここんとこ今年の曲歌える年に限ってポップス調の軽い曲リリースしてるんですよ。ついてねえ。

演歌はまだ枚数の意味はあると思うのですが、そこ以外はどんどんフィジカルの意味がなくなってきています。たとえばDA PUMPなんてDL数では50万あたりまで行ってるのにCDだと10万枚ちょっと。あいみょんやDAOKOなんぞフィジカルの成績見てたら絶対わからないところにいるわけですし。

で、思い出した。オリコンこの秋から始めると言っていた総合指数っての、あれどうなったの。と思って見てみたら、ちょうど今週から「合算ランキング」始めてました。が、従来のランキングと置き換えるのではなく、並行してフィジカルのランキングは続けるということですね。「連続記録」を狙っている当たりの方々とかとのいろいろな関係性の都合ということでしょう。つうか合算シングルランキング、いきなりわけがわからないことになっています。これは俺ちょっとヤバいぞ。

コンテンポラリーな生活 「You'll dig it the most.」のこと

コンテンポラリーな生活 / You'll dig it the most. (Album)

名前はかなり前から聞いたことはあったのだけど、音は聴いたことがなかったので今回のこのベスト盤を購入。
ヴォーカル&ギターとベースの2人組、朝日くんと藤田さん。で、ライブにサポートで入るドラマーは概ねカズマ・タケイであり、要するにこのバンドはネクライトーキーからもっさちゃんをマイナスしたものと言っていい感じで。

歌詞は間違いないし、メロディも相当良い。普通に聴けば「結構好きだなあ」と思えるレベルなのですが、そういう事実を知ってしまうとやはり大変に物足りなく感じるのも事実であり。もっとフックが欲しいと思うことしきり。
逆に考えればネクライトーキーとして構えた際の、もっさちゃんの「ポップアイコン」としてのプレゼンスと「突き抜けるための装置」としての性能がとてつもないということでもあります。

とはいえ、ここまで2バンドで書き分けられる朝日くんの性能もこれハンパなく、もしかしたらこの才能は川谷絵音くんに通じるレベルなのではないかとも。面構えに絵音くんほどの「才気迸り」感がないところも個人的には好材料。

とりあえずネクライトーキー、3月のWWWでのワンマンの先行は落ちました。一般で取れる気も全くなく、本当に「見つかり」つつある感じです。
公式サイトを引っ越したのもお金を出す人が付いたということであり、遅くとも来年の夏フェスあたりで決めてくる感。
今のうちにツーマンとか企画でも観とけるうちに観ておけ。割と本気で。

CD界隈の2018年10大ニュースのこと

CD/レコード小売・レンタル界隈の2018年10大ニュース。

01.星光堂がCD/DVD卸をやめる

今年に入ってすぐに入ってきた件。当時大騒ぎしていましたが、直接的な影響は直後の数店舗だけのようにも見えますが、特に個人店舗に対してはボディブローのように効いてくる件でもありまして。
個人店舗の中には、新譜をきちんと揃えるのは相当にしんどくなっているところも増えていまして、もう演歌と相当な有名どころの一部以外新譜置いてないよ、という店舗も珍しくない。
そういう状況は店の主人が老いてきてもう新しいのさっぱりわからなくなってるからというのもありますが、本来店主の知識の弱いところを補う役割でもあった卸企業の提案力が弱くなっているというのもあるんじゃないかと思ったり。


02.WonderGOO・新星堂がRIZAP傘下に入り、いきなりいらない子扱いに

これはつい最近騒いでた件ですが、前回以降さらに新星堂2店舗位の閉店決定、WonderGOOも1店舗追加で閉店の噂あり、本当だとすると来年1月だけで新星堂・WonderGOO合わせて8店舗を閉じることに。
どうやらRIZAP、改めて売却する方針のようで、そのために少しでも赤字幅をスリム化しようということかもしれませんが、いったいこんなんどこの会社が買うのか。そして「こんなん」と言わなければいけない悲しさ。


03.TSUTAYA、更に本気でレンタルをぶった切る

去年のこの記事以降、執筆依頼が来たりラジオ出演依頼が来たり、自分の中で「TSUTAYAバブル」と呼んだ時期があったのですが、実は今年は去年に輪をかけて閉店しています。2017年が70店舗規模だったのが今年は既に90店舗以上逝ってます。
何店舗か新規開店もありましたが、相当数がCD/DVDを販売もレンタルも扱わない「TSUTAYA BOOKSTORE」名義の純粋な書店だったりします。
東京近郊の住宅地域の店舗や途中駅の駅前の店舗が閉じるのであれば、「都会のでかい店行けや」というサインと捉えることもできましたし、実際昨年はそういう風に読んでいたのですが、今年は新宿店が全く別の業態として再開したり、梅田堂山店が閉店したり、都会ど真ん中の店が消えていますので、「不採算店の整理」という側面だけでは語れないレベルの動きになっています。


04.ジャニス閉店

神保町の変態レンタル店が遂に召されました。ビルから路面に移転した時点でやべえと思っていたのですが、やべえと思ってから閉まるまでがあんまり早くて正直驚きました。
この店が無くなったことは、単に有名レンタル店の閉店という意味だけでなく、国内最大級のアーカイブの散逸という意味で大変な損失ではないかと思っています。それでも、閉店セールで散逸に私も手を貸したわけですが。


05.新宿ディスクユニオンの大再編

昨今の音楽関連の小売業で唯一まだ「攻め」を感じるのがユニオン。新宿東口のROCK INNが入っていた建物を一棟借り上げで、ダンスミュージックとジャズ関連を各1フロアにまとめ、最近の状況に合わせてアナログ中心の総合ジャンルショップを路面に持ってきました。
正味、特にダンスミュージックとジャズについては、1フロアにまとめた分品揃えがよろしくなくなった部分もあり、あんまりいい評判聞こえてこないことは事実なのですが、それでもまだまだやるぜという気合は十分に感じます。


06.BOOKOFF 渋谷店閉店

7月、渋谷CLUB QUATTROの下の3フロアを占めていたBOOKOFFがなくなってしまいました。そもそも様々な硬派めの店が入っていたQUATTRO by PARCOからBOOKOFFになった時にも非常に時代を感じたのですが、これはこれで時代がもう一回りした気持ちに。
12月時点でまだ新たにテナントが入居する気配ないですが、既にこれだけの床面積を埋められるチェーン系の店は渋谷の他のどこかに入っていますし、正味これだけの規模にフィットする業態、なかなかないんじゃないかとおも思います。
それでも、CLUB QUATTROに行くとき、エレベーターと階段しかないのダルいので、何とかしてほしい。


07.ヴィレッジヴァンガード、路面店粛清へ

かつてはイケイケだったヴィレヴァンもここ数年あまり具合よくなく、開店よりも圧倒的に閉店の方が多い感じになってはいたのですが、今年の後半あたりから、東海地方を中心として残っている路面店が狙ったように閉店していっています。

08/31 高知中央
09/17 刈谷
10/21 松阪
10/28 安城
1月予定:名古屋中央
2月予定:高蔵寺
3月予定:瀬戸店

あからさまに何らかの意図がある感じですが、要するにショッピングモールのテナントの方が合理的ってことでしょうか。まあそうですわね。


08.HMV、本気で本屋になりに行く

HMVはここ数年あまり閉店もないですが、単なる「HMV」名義のCD/DVDメインの新規出店もなく、アナログ中心の「HMV record shop」か、書店とのハイブリッド型「HMV&BOOKS」、そしてほぼ書店の「hmv BOOK store」という名義での出店になっています。
国分寺の「hmv BOOK store」に至っては、CD/DVDは小さい棚に売れ線をしょんぼり並べているだけで、本当に普通の書店。
要するに純粋な書店形態の店舗を増やしているTSUTAYAに近い路線を歩もうとしているのではないかと思うのですが、本当にそれが正しいのかはまだわからない。


09.新宿レコード、下北沢へ

西新宿界隈、あれだけあったレコード店も随分減りまして寂しい限りですが、1970年開店の老舗中の老舗、新宿レコードも西新宿の地を去りました。そしてたどり着いた新天地下北沢で、新宿レコードの屋号のまま営業再開。
本多劇場の建物の中の、正味あんまり人通りの多くないところなのですが、現在再開発中の下北沢駅の新しくできる東口改札からのアクセスは死ぬほど抜群なので、ここでもう一花。レコードの値段ちびっとお高めだけどね。


10.ポパイ、関東から完全消滅

最大で数十店舗あったはずのレンタルチェーンのポパイ。かつては業転してネットカフェになったところもありますが、ここ最近はただ閉店するばかりで。

2017/07/09 飯能店(埼玉県)
2017/07/09 川崎店(神奈川県)
2017/08/20 海老名店(神奈川県)
2018/01/19 一之江店(東京都)
2018/04/21 妙典店(千葉県)
2018/05/14 芝山店(千葉県)

芝山店をもって関東からは完全撤収。2017年には福岡地区からも撤収、残るは広島地区の4店舗のみ。静岡地区のレンタルGOROも近々で全店閉店するという話ですし、TSUTAYAやGEOがしんどい今、中小が楽なはずもなく。


以上、ポジティブなのももっと入れたいと思ったんだけど、ないわ、この界隈。言うても「開店閉店」のブログだって言ってみれば「看取る」つもりで立ち上げたのだから、俺何も言えねえ。

2018年ブックオフオンライン年間ランキングのこと

2018年ブックオフオンライン 年間ランキング

日本一随分な年間ランキング、今年も出ていたので昨年分に追記しました。
要するにCD全盛期のスター達の盤がおよそ10年から20年、買われて売られてのサイクルを繰り返しているだけの地獄のランキングです。
でも、去年の安室ちゃんが概ね上の方に来たのと同様の、今年ならではの事情も含まれているランキングで、そこだけ何となく面白い。

2013年は洋楽が別ランキングだったので「F」が付いてるのがあり、2014年はジャニーズが別ランキングだったので「J」が付いてるのがあります。

アルバム 名前 発売年 2013 2014 2015 2016 2017 2018
RECYCLE Greatest Hits of SPITZ スピッツ 1999 10 3 4 8 5 1
ALL SINGLES BEST コブクロ 2006 13 4 3 4 9 2
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1 宇多田ヒカル 2004 11 1 1 1 1 3
Mr.Children 1992-1995 Mr.Children 2001 3 7 5 2 2 4
Mr.Children 1996-2000 Mr.Children 2001 5   8 6 7 5
海のYeah!! サザンオールスターズ 1998 1 15 11 3 8 6
無罪モラトリアム 椎名林檎 1999   8 9 18 14 7
自己ベスト 小田和正 2002 8   13 10 15 8
Impressions 竹内まりや 1994   6 6 11 13 9
青春の輝き〜ベスト・オブ・カーペンターズ カーペンターズ 1995 F4 14 14 13   10
SMILING. THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA 槇原敬之 1997   12 19 19   11
DRIVE〜GLAY complete BEST GLAY 2000 30         12
TOP OF THE POPS 桑田佳祐 2002           13
GOLDEN BEST 井上陽水 1999 12         14
ジュエルズ クイーン 2004           15
ZARD BEST The Single Collection〜軌跡〜 ZARD 1999   9 21 12 19 16
BEST FICTION 安室奈美恵 2008 18   17   18 17
B'z The Best“Pleasure” B'z 1998           18
181920 安室奈美恵 1998     26     19
いきものばかり いきものがかり 2010 6         20
Fantome 宇多田ヒカル 2016         3  
MESSAGE MONGOL800 2001 4 2 2 5 4  
First Love 宇多田ヒカル 1999     28 17 6  
GREATEST HITS “THE SOUL” Dreams Come True 2000 15 5 7 7 10  
Distance 宇多田ヒカル 2001         11  
ザ・ビートルズ1 ザ・ビートルズ 2000 F1 11 10 20 12  
All the BEST!1999-2009 2009 2 J1     16  
DEEP RIVER 宇多田ヒカル 2002         17  
DISCOVERY Mr.Children 1999         20  
Smap Vest SMAP 2001 20 J2 16 9    
ハチミツ スピッツ 1995     15 14    
ULTRA BLUE 宇多田ヒカル 2006       15    
CRUISE RECORD 1995-2000 globe 1999     22 16    
BEST OF DREAMS COME TRUE Dreams Come True 1997     12      
I LOVE U Mr.Children 2005     18      
BEST 中島美嘉 2005 21 13 20      
It's a wonderful world Mr.Children 2002     23      
LIFE 小沢健二 1994     24      
深海 Mr.Children 1996     25      
歌バカ 平井堅 2005     27      
グレイテスト・ヒッツ スキマスイッチ 2007     29      
BOLERO Mr.Children 1997     30      
B'z The Best“ULTRA Pleasure” B'z 2008 27 10        
OPUS〜ALL TIME BEST 1975-2012〜 山下達郎 2012 7          
GAME Perfume 2008 9          
日本の恋と、ユーミンと。 松任谷由実 2012 14          
jupiter BUMP OF CHICKEN 2002 16          
沿志奏逢 Bank Band 2004 17          
ユグドラシル BUMP OF CHICKEN 2004 22          
THE HISTORY OF SHOGO HAMADA“SINCE 1975” 浜田省吾 2000 23          
Expressions 竹内まりや 2008 24          
8UPPERS 関ジャニ∞ 2010 25          
Singles 2000 中島みゆき 2002 26          
THE BLUE HEARTS SUPER BEST THE BLUE HEARTS 1995 28          
Home [1997〜2000] ゆず 2005 29          

クイーンといきものがかりは映画の公開と活動再開きっかけでしょうから、それこそすごい勢いで11月以降にまくってこの順位でしょう。
クイーンは数あるベスト盤から何故「ジュエルズ」かというとそりゃ一番潤沢に在庫があったのがこれと言うしかなく。当時日本で馬鹿売れしましたから。私は「I Was Born To Love You」がクイーンの曲と言われるといまだに違和感を覚えるお年頃ですし、そもそもリリース時はこれCCCDでしたので持っていません。
CCCDのPC再生用の音源データサーバはとっくの昔に死んでいますので、結果としてうっかり購入して聴けない、なんていうババ引いた人もいるんじゃないでしょうか。気になります。

去年は「今年は安室ちゃんのベストが上の方に来るんだろうな」と思ったのですが、来なかった。そりゃ今年に入ってからも新品で60万枚以上売れていて、このまま行けばアルバムチャート2年連続1位になる勢いなので、中古には回ってきません。

上位の方々は相変わらずなのですが、どうも見る限りサブスクで配信されたから大きく順位が落ちた、というのもあんまりないようです。宇多田やミスチルも現状では主要なサブスクでは聴けますし。それでも毎年1位だった宇多田のベストが3位に落ちたというのはそのせいかもしれません。スピッツは一部のサービスでは出ていますが、Apple Musicとかはまだなので。
2位のコブクロも今月に入ってサブスク解禁されましたから、来年以降そういう要因で更に微妙に順位変動があるかもしれません。

あと、今年のクイーンやいきものがかりのように話題で購買意欲が上がることはあるというか、上位はほとんど今も現役で活動しているからこそ、その活動のニュースを見たなどがここでも購入のきっかけになっていることは間違いないと思うのですが、そんな中亡くなって10年以上経つのに毎年健闘しているZARDはとんでもねえとしか言いようがない。

RIZAPが新星堂を閉店させていること

RIZAPが期末の業績予想の大幅な下方修正を発表したのが先月14日。
その大きな要因として名指しで晒されたのが、3月に買収されたワンダー・コーポレーションとその傘下の新星堂ですが、その発表以降既に合わせて5店舗の閉店が発表されています。

2019/01/06 WonderGOO 江戸川台店
2019/01/06 新星堂 アピタ千代田橋店
2019/01/14 WonderGOO 波崎店
2019/01/20 新星堂 ベニバナウォーク桶川店
2019/01/27 新星堂 日立店

2018年1年間の閉店数はWonderGOOが4店舗、新星堂も4店舗。で、来年1月だけでこれですから、この先を考えると目も当てられません。

買収した理由として挙げられた「場のシナジー」、つまりWonderGOOの店舗の一部をRIZAPの本業のスタジオにして、両サービス間の相互乗り入れを目論んだということですが、大型店舗しかそういうことはできませんから大きくないと効果は期待できず、新星堂なんてもはや路面店もなくショッピングモール内の小規模テナントばかりですから、正味役立たず。

実際、原則建物大きめのWonderGOOのの中で江戸川台店は最小クラス、ちょっとしたTSUTAYA以下の図体ですからもうこれ使えない。そもそもWonderGOOは茨城県の各市に1店舗は必ずあるんじゃないかと思うくらいたくさんありますので、波崎店は「間引き」と考えるとちょうどいい。

新星堂の日立店は、市内にWonderGOOが2店舗ありますので、別の意味で「間引き」と考えれば合点がいきますし、残りの新星堂2店舗はユニー系モールからの撤退なので、まとめて話したんだろうなと思います。
桶川の新星堂は演歌に特に力を入れていた埼玉県の新星堂の中でも、異常なくらいインストアを企画して頑張っていたのですが、無理なものは無理でした。

この程度で落ち着くとも思えませんから、期末に計上する特損を見極めながら行けるところまで潰しにかかるのではないかとドキドキしています。
ちなみに新星堂はこの1月の3店舗閉鎖で全国100店舗を割り込みます。最盛期には180越えていたはずですのですが随分減りました。それでも「こんな世の中にしては粘ってるじゃないか」とも思ってしまう平成の終わり。CDの時代と平成ってだいたい被るね。

HONDALADY/ROTH BART BARONのライブのこと

土日ともライブ。
8日はHONDALADY@高円寺HIGH。
2003年の「東京vinyl」を何かのはずみで買って聴いて「電子音楽なのにこんなに暑苦しいの何なん」と面白くなって愛聴して以来、出る音源はだいたい買い、行けるライブにはできる限り通っていたのですが、今回のライブで遂に活動休止。
ざっくり言うと「やることはやり切ったので」という清々しい理由で活動休止っていうのはなかなかないし、更にそれを誤解のないように丁寧に説明したインタビューを掲載したZINEをライブ後に全員に配布する律義さ。
40過ぎたおっさんなのにライブもぎっちり3時間近く動き倒し、活動休止ライブなのに一切湿っぽさはなくひたすら楽しくアガる。20年以上どこまでも誠実に馬鹿をやり続け、本当にそのまんまのライブを残して去って行きました。
またいつか会いましょう。

9日はROTH BART BARON@渋谷WWW。
バンドには「身の丈に合ったキャパ」があると思っています。たとえば下北沢シェルターで観たら死ぬほどかっこよかったけどそれ以上のサイズの箱で演ってるイメージが全く湧かないバンドがいて、案の定しばらくして解散したり、無理に大箱でライブをやったアイドルグループを観に行ったら、満員になってないのは当然ながら、そもそもパフォーマンス自体がその大箱の空気を支配するレベルに達していなくて微妙に寒々しい空気が常に漂っていたりとか。

ROTH BART BARONは、そういう意味ではもうWWWには収まりきらないレベルの音出してるんですよ。このまんまこの演奏を日比谷野音やアリーナクラスに持っていっても成立するんじゃないかと思うくらいに。VIVA LA ROCKで野外で演った時観たんですけどそれはそれは素晴らしくて。それくらいのスケールの音。
そういう音が400人そこそこの箱でぶちかまされているのですから、もう圧巻でしかなく。会場中をいろんな圧が充満し張り詰め、時折爆発する。完全に心持っていかれる。

だから、こんな場所でやってる場合じゃないんですよ。「アルバムに3年かかっちゃった」じゃないんですよ。前のツアーファイナルがLIQUID ROOMだったのがキャパ半分じゃないですか。
自分たちの音楽を他のJ-POPとは異なる、もっと高尚なものに捉えているのだとは思うのですが、1回2回でいい。下衆なところまで降りてきてほしい。そして馬鹿みたいにポップな曲出して受けて動員増やして、でかい箱で大人数のバンドで思う存分今回みたいなライブやればいい。受けた曲はアンコールの頭あたりでちゃっと片づければいい。そうじゃなきゃ本当のポテンシャル、真骨頂は見られない気がするんだ。

具体例としては夏フェスの際の森山直太朗。
出てきていきなり義務のように「さくら」。その後は好き放題エグい曲をやり倒し、最後に辻褄合わせのように「夏の終わり」を歌って終了。最高じゃないですか。で、ヒット曲で得た知名度でフェスに呼んでもらえるし、ヒット曲で掴んでエグい曲出しても離れなかったお客さんで全国ツアー回れるだけの地力は保っている。これでいいんですよ。
とにかく、でかい会場で観たいんだ。お願いします。

amiinA 「Discovery」のこと

amiinA / Discovery (Album)

アイドルグループをより知るためには、バンド以上に「線」で活動を把握する必要があるため、可処分時間的に、自ずと「やたら気にするグループ」と「そうでないグループ」の差は大きくなります。
なので、「好きなバンドって何?」と聞かれると非常に困るところを、アイドルグループの場合は比較的容易に挙げることができます。現在の四天王は、amiinA、sora tob sakana、フィロソフィーのダンス、代代代。
馬鹿みたいに楽曲派糞野郎的なグループばかりですが、並べてみて別の共通項として「運営がきちんと声を出していて」「メンバーとの関係性が見えやすい」グループばかりだと思いました。好きだからそういうところまで見てるんだろうよ、というのはあるにしても。

amiinAはこの中ではそっちの意味では最強だと思っています。プロデューサーさんのTwitterアカウントを見ていると、メンバー2人を猛烈に愛し、リスペクトしていることが本当に伝わってくるので。そしてメンバー同士も互いを「親友」と呼べるレベルの関係性。
こういう人間関係をベースにした環境から悪いものが出てくるわけがないのです。かくして2ndアルバムも素晴らしい作品になりました。

前作は今のようなコンセプトが積み上げられる前のものを含む既発表楽曲をベースに紡ぐように新曲が配置され、ひとつのアルバムの世界観を作り出していましたが、今作はゼロからコンセプトべったりですから、もうアルバムとしての統一感は完璧。
THE CHERRY COKE$楽曲単体で聴いた時は「浮くか?」と思いましたが、何てことはない、完全にアルバムの流れにハマっている。他にもSerphとかあらかじめ決められた恋人たちへとか、そこを制作にまで引っ張ってくるかという人選もありますが、ここに落とし込みたいというプロデューサーさんの意識にいささかもブレがないため、アルバムを通しての世界観も全くブレない。

楽曲派として当然楽曲単体でもいい悪い思ったりしますが、アルバムトータルをひとつの作品として捉えれば、本当に日本のアイドル界のトップランナーだと思うのですよ。
そしてライブの作り込みもヤバいことは前回観てわかっているので、Blitzも楽しみにしています。非常に。

しかし、バンドにしてもアイドルにしても、糞みたいな関係性の糞みたいな環境の中からとんでもなく美しいものが生まれることがある、というのもたまに、でも確実にあるのですが、あれ何だろうね。

ネクライトーキー「ONE!」のこと

ネクライトーキー / ONE! (Album)

今年5月下旬、下北沢で開催されるサーキットイベント、サウンドクルージングを前にして、出演者リストを眺めながら知らないバンドのYouTubeを適当に検索して見ていたら「オシャレ大作戦」のMVにぶち当たり、そのままその時間はこのバンドの他のMVを全部見る大会に変更、サウクルでも彼らを観ることがファーストプライオリティとなり、当初の予定もろもろ変更。
そのライブでも思っていた以上に屈強かつ奔放なライブバンドっぷりを見せつけられ、いきなり自分内ネクストブレイクランキング初登場1位に君臨したまま半年、遂に初の全国流通盤にして1stフルアルバムなわけですが、こいつら想定以上に化け物だった。

とにかくポップネス、時折ギラギラするエッジ感、収まり切らないトゥーマッチ感、そしてどこまでも愛嬌。自分がバンドに求めたい要素が全部100%以上にぶち込まれた音が頭から終わりまで鳴り続ける至福。
アルバム以前の楽曲群では、好みはあれども「オシャレ大作戦」のファーストインパクトは凄まじく、その時以来「この曲レベルの楽曲をもう何曲かでも生み出せることができるかどうかがこのバンドのハードルだな」とか思っていたら、蓋を開けたら何てことない、新曲のほとんどがそれレベル。化け物やないか。

作詞作曲は2曲を除いてリードギタリストの朝日くん。1曲は朝日くんの曲をフロントのもっさちゃんが改作したもの。もっさちゃん単独でも1曲だけ書いていますが、自作曲よりも圧倒的に朝日くんの曲の方がもっさちゃんの声質に寄り添っているのが面白い。
インタビュー読んでみたら、このコンポーザーとシンガーの相思相愛っぷりが愛おしく、だからこそこういうバンドマジックが生まれているのだなと納得もしたり。
で、もっさちゃん単独作詞作曲の1曲はその曲だけ恐ろしく普通にJ-POP。でもそれはそれでアルバム内ではサザンオールスターズのアルバムの原坊歌唱曲的な佇まい。

ここまで隙のないファーストアルバムってなかなかないんだけど、でも「出来上がった」感は一切なく、これからどんな無茶なことになるのかひたすら楽しみで、とりあえず既にバンド名が地道にバズり始めていますし、このクラスの作品を作れるのであれば正味あとは「見つかる」だけなので、数年の後、「俺下北沢のキャパ250の箱でライブ観たぜ」と同僚に自慢できるくらいに。