amiinA@赤坂BLITZのライブのこと

2月1日はamiinAの2回目のワンマンライブ@赤坂BLITZ。絶対マイナビって言わない。
前回ワンマンからキャパは倍増、果たしてギリギリまで様々なアイドルグループに動画に出てもらったり各所で宣伝を行ったものの、会場入りしたら後ろの方の一段高くなっているところは全部関係者ゾーン化されている状態。1000人ちょいくらいでしょうか。

残念ではあるのですが、それでもライブは一切手抜きなし、というか前回に続いて途轍もなく作り込まれたセット。本棚の一角を模した白いセットにプロジェクションマッピングで様々な映像を映し出す形。前回はオケ全部再録音ということでビビりましたが、今回は後ろが大きめのスクリーン状態ですので、ほぼ全編映像撮り下ろし状態。それはそれでとんでもない。

で、前回は完全にステージ上を2人だけの世界にしていたので、今回はその揺り戻し来るだろうなと思っていたら案の定。楽曲を提供しているNetworks、Serph、THE CHERRY COKE$が登場し、まず自らの楽曲を披露し、そして提供曲をバックで演奏するという流れ。スクリーンがステージ後方を隠す役割も担っていて、閉じている間にセット転換し、半分開いたらそこに次の生披露用のセットが出てくるというなかなか凝った感じで。
さらに以前コラボした校庭カメラガールドライが出て来たり、amiちゃんはSerphさんのDJプレイに一緒に出てきてエフェクトのつまみをいじり倒したり、miyuちゃんはピアノの弾き語りをしたり、まあいろいろてんこ盛りで。

楽曲は間違いないし、2人のパフォーマンスも間違いないのですが、そういう状況のため多少流れが悪かったのと、SerphさんのDJプレイというのが、この日会場で先行発売されたリミックスアルバムの楽曲を披露する場という形になったですが、正味それがすごく冗長。プロモーション的に聴かせたい気持ちはわかるのですが、本編にそういうCM入れちゃダメ。

そういう難点ありつつも、でもやっぱり楽曲の力とパフォーマンスの力は素晴らしく、今のアイドル界隈で自分にとって最も愛すべきグループであることについては微塵も揺らぐ気配ないわけであります。

で、今回特典付きのチケット取って届いてみたら整理番号1ケタの激良番でありまして、それでも最前を目指すほど元気ではないので、入場後速攻で特典受け取り、会場先行発売のCDを買い、ドリンクチケット交換し、それからフロアに入場してそれでも自分的には抜群のポジションを押さえ、やっぱ並ばずに済むって最高だな。
ただ、仕事していたら呼び出しの時間に遅れそうなので、この日は半休を取ってガチで万難を排して開場時間には赤坂に着くようにしました。立派なオタクになれたと思います。

音楽・映像の「所有」と「使用」のこと

新井浩文容疑者の逮捕に業界パニック 映画2本お蔵入りも

大変なことになっていますが、今のところAmazon Primeやhulu、Netflix等で過去の彼の出演作品まで止まったということはないようです。事件の内容的に「愛の渦」とかヤバいっちゃヤバいんですが、このせいでこの作品の門脇麦さんが観られなくなるとなったらそれはやるせない。
ただ、これ各社がそう判断すればいつでも視聴停止することができるという点が、過去のメディアとの最大の差だと思うわけです。

DVDを購入した場合、その後どんなことがあって販売中止になろうとも、今所有している盤を誰かが取り返しに来るようなことはありません。自分は、DVDは廃版以外の理由で入手できなくなったものは所有していませんが、CDでは、コーランを無断使用してイスラム団体から怒られて修正になった曲が入っているBUCK-TICKのアルバム「Six/Nine」初回盤とか、中島みゆきのパクりの件で販売停止になって以来、その該当曲以外のアルバム収録曲も、のちにリリースされたベストアルバムに一部が収録された以外封印されてしまったHighway61のアルバムが今も家にあったりします。
怒られたヴァージョンもパクった曲も今も聴き放題です。

が、サブスクで聴きがちな昨今、制作者や配給者が何らかの意図でもって公開を停止すれば、それはもう未来永劫聴くことができなくなってしまいます。
私も随分サブスクに流れるようになりましたが、「これぞ」と思う盤は確実にCDで入手しようと思うのは、そういうところが引っかかるからでもあります。

そもそもCDやDVDは「所有」するものではありますが、レコード会社・映画会社としてはCDやDVDは「使用権」を売っているだけで、その音楽や映画の所有権を移転するものではない、という体です。
だから購入した個人が勝手に複製して配布したり公衆に向けてアップロードすると容赦なく捕まりますが、それ未満の個人的な複製等は、家庭にステレオ・カセットデッキが普及して以降激増したものの、さすがに取り締まられることもなく、グレーゾーンとして黙認されてきたわけです。
レコード会社の方が「買ったCDを車で聴きたいのであればコピーするのではなく車用にもう1枚CDを買うのが筋」みたいなことを書いていたのを読んだ時には、さすがにそれはどうなの、と思いましたが、その立場としては厳密に言えばそういうことだったわけです。

それが、サブスクリプションがメインになり、有形のメディアを介さなくなり、かつデータとしてローカルに保存することもなくなったことで、ようやく「体」ではなく実際に所有と使用との間のブレがなくなり、純粋に「『使用権』を売っているだけ」の状態が実現したのが今、ということになります。
だから本当は今の状況って制作・配給側からすれば願ったり叶ったりの状態なはずなのに、特に音楽側の人はあんまりいい顔していなくて、いまだにサブスク解禁しないミュージシャンも多数いるのはどうしたことだ、という話です。

いや、わかってるんですけど。そもそも欧米から来てしまったスタイルに抗いきれなくなったことが流れとしてはありますが、「聴き放題」型ではなく1曲1曲にストリーミングを課金によって許可するような形では、YouTubeやテレビ・ラジオで流されるのと同等のブツを有料にするということになりますので、恐らくそれやったら商売になってなかったと思います。

こういう世の中になった結果、受け手側は定額で聴き放題観放題というメリットを得た代わりに「視聴できなくなるかもしれない」リスクを負い、送り手側は制作した著作物の権利を思い通りにコントロールできるようになった代わりに盤のような率の高い利益を得られなくなったということですね、という、書きたいこと適当に書いた後に取って付けたようなまとめをして終わり。

2018年の音楽ソフト生産金額が増えたこと

2018年音楽ソフト生産金額104%、3年ぶりプラスに転じる

これ、音楽産業全体の金額ではないです。音楽ソフト、つまりパッケージだけの話です。
今の世の中で何がどうなったらこんなことが起こりえるのか、ちょっとわからなかったんですけど、CDは普通に減っていて映像の方が「激増」していることで理解しました。
これざっくり言えば「安室特需」ですね。

2017年は前年比で減少したものの、CDが97%と微減レベルで済んでいたのは「Finally」があったためなのは間違いないのですが、今年は映像の方でプラスにまで押し上げたということで。

ここ数年、音楽系DVDは年間トップでも50万枚越えることはなくなっていたのですが、昨年は「Finally」のライブDVDが100万枚近く売れまして、しかも通常のそういうDVDよりも単価高めでそれでしたので、結果として数量115%増、金額142%増ということになりました。
もちろん前年の数字にそれ足しただけではこの伸び率にはならないんですけど、その購入のための店舗への吸引力が他に与えた効果もあったでしょう。

DVDの年間チャートは20位までしか出ず、それも20位になると5万枚くらいになっちゃうんですけど、その20位の下に安室ちゃんの過去のDVDが何作品も一昨年前まで以上に動いていることは間違いないでしょうし、久しぶりに来たCDショップで何かうっかり他にも買った、みたいな人もたくさんいると思います。
そういうことの総量としてのこの数値、だと思っています。

でもこれで確変は終わり、今年からガッツリ減っていきまっせという締めにしようと思っていたところに嵐の活動休止の件。新たなビッグビジネスの発生決定です。
エンディングに向かってどういうビジネスを仕込んでくるかはこれからですが、通常状態で活動終了発表前の安室ちゃんをはるかに上回る売上をキープしていて、そこに更に上乗せしていくわけですし、SMAPがとてもお祭りにできるような空気ではない中での活動終了でしたっていうか、過去のジャニーズのグループはだいたいシオシオになって解散するばかりでしたので、ここは大変に力を込めたジャニーズらしい仕込み方をしてくるのではないかと思います。

ということで日本は、下手すると2020年までCD/DVDのパッケージ売上があんまり下がらないという、他の世界の国々の動向と恐ろしいくらい乖離した謎の国になるのかもしれません。
つうかタワーレコード3月に普通の新店舗復活オープンしますし。恐ろしい。でも悪くない。

あとは、BOOKOFFとかその他中古盤屋に行って見ると本当に面白いくらいQUEENが品薄になっているので、映画きっかけで洋楽に入って来たり戻って来たりした人が、できるだけ離れないでいてほしいなあと思います。
書店でデアゴスティーニ買ってる場合じゃないんですよ。でも、自分はもうすぐ出る「Innuendo」2枚組は買います。1991年リリースのため世に出ているアナログ盤の数が相当少なく、えれえ高いので。そういうの欲しくなるのはよくない癖だ。わかってるんだけど、そうやってもう何十年も生きてきてしまった。

Superorganism×CHAIのライブのこと

昨日はSuperorganism×CHAI@渋谷O-EAST。
Superorganismはフジロックのストリーミングで観てたんだけど、フロントの日本人Oronoさん何か異様に荒ぶっていて「Fuck Fuck」言いまくっていて、何じゃこれバンドの音のカラーと全然違うやんけと思って気になっていたのと、CHAIは2年前にぐるぐるTOIRO行った時に一瞬観たのだけど、結局裏のぱいぱいでか美をチョイスしてしまったので今回改めて。

先攻CHAI。
ライブ映像は相当観ていたので、間違いないことはわかっていたのですが、やっぱり間違いなかった。いろいろ音的に仕込みつつも、アウトプットとしては楽しいかわいいのところにきっちり落とし込んでくる。
ただ、フロントの双子がいろいろすっ飛んだことやってもOKなのは、リズム隊2人の屈強っぷりがあるからだよなあと、改めて。

後攻Superorganism。
この日はOronoさん荒ぶっていないし、MCでぶっ殺すとか言いつつも割合楽しそうでよかった。つうか気持ち的には洋楽観に来てMCところどころ普通に日本語っていうのはなかなか新鮮な気持ち。
で、やっぱこの人たち本当に独特な世界観持ってて面白い。ぶっちゃけ技術的にはCHAIの方が圧倒的に上。映像もそんな緻密に作り込んでいるわけでもなくコーラス隊のダンスもそんな詰めて振り付けしてるわけでもない、というか全体的に概ねだいぶ雑。
でも、そういう雑なのがわっと集まって、どかっとこちらにぶん投げられるように発信された結果、何とも言えない良い感じの空気が生まれる。楽しいのかそうじゃないのかもわからないのだけど、何か「ここにいられてよかったな」という気持ちにはやたらなる。
いや、不思議なバンドです。

いつまでもこういう感じのままではいられないと思うので、今後どのように身を振っているのかというのもかなり気になります。
とはいえ、たぶんメンバー全員すごく「強い」とは思うので、今後に心配はしない感じで。
あと、コーラス隊の一番下手側にいた女の子のおっぱいが大きかった。



タワーレコード渋谷店の変遷のこと

タワレコ渋谷リニューアル 洋楽フロア縮小、K-POPやアイドル拡張 「ネットで埋もれる」アーティスト紹介も

タワーレコード渋谷店と言えば、現状どう考えても世界一の床面積を誇る音楽販売店ということになるわけですが、今回1995年の移転オープン以降2度目のメジャーリニューアルです。
初めてのメジャーリニューアルは2012年。要するに1995年から2010年代初頭まではほぼ「販売」に専念していれば商売になっていたのが、さすがにその頃になると立ち行かなくなり、店内イベント等を多数行って「体験」とともに音楽を売るスタイルに方針を定めたわけですが、そこから6年で更なる方針の変更を余儀なくされたということで。

そこで、その最初のメジャーリニューアル以前からのフロアの変遷を追ってみようと思ったのですが、2012年のリニューアル以前のフロアガイドがどう探してもまとまったものがネットに落ちていなかったので、地道にTwitter検索しながらわかった範囲で丸めてみました。

・-2012(2011頃)

7TOWER BOOKS
6CLASSICAL, ELECTRONICA
5K-POP, JAZZ, WORLD, NEW AGE, HEALING, 落語, イベントスペース
4SOUL, R&B, CLUB, HIPHOP, アニメ, 映像, SOUNDTRACK
3ROCK/POP
2J-POP, アイドル, J-HIPHOP
1NEW RELEASE, RECOMMENDS
BSTAGE ONE

大幅リニューアル前は、これ恐らく仕入れ担当の組織の関係上のこともあったのではないかと思うのですが、日本は日本、欧米は欧米、それ以外はそれ以外、というのが当たり前という前提で縦割りになっている、あまり工夫のないフロア構成です。
それが初めてのリニューアル後、以下のようになります。

・2012-2019(2014頃)

7CLASSICAL, 落語
6JAZZ/FUSION, EASY LISTENING, SOUNDTRACK, NEW AGE/RELAXATION/AMBIENT/ELECTRONICA/AVANT-GARAGE, 映画/TV/その他映像/お笑い, キッズ/実用
5ROCK/POP, OLDIES, BLUES, COUNTRY
4SOUL/R&B, J-HIPHOP/HIPHOP, J-CLUB/CLUB, J-REGGAE/REGGAE, WORLD MUSIC, 純邦楽, K-POP
3J-POP, J-INDIES, J-PUNK, ヴィジュアル, アニメ
2TOWER BOOK TOWER RECORD CAFE
1NEW RELEASE, RECOMMENDS
BCUTUP STUDIO

このリニューアルの一番のポイントは「イベントをしやすくする」というところで、このフロア構成ではあまり見えないのですが、店内で複数のイベントを同時開催できるようにしたところが非常に大きな意味を持っていました。

フロア構成の変更部分で一番大きいと思われるポイントは、それまでは「ワールドミュージックの一部」であったK-POPの完全独立と、HIPHOP、CLUB、レゲエあたりのジャンルを洋邦まとめにかかったところ。リニューアル以前の縦割り状態からの脱却を図っています。
そして2012年から2019年の間を確認していると、その間微妙にフロア構成をいじり続けています。今回のリニューアル直前には以下のようなフロア構成になっていました。

・2012-2019(2018頃)

7CLASSICAL, HEALING(Relaxation), 落語
6JAZZ, SOUL, R&B, J-HIPHOP, HIPHOP, J-REGGAE, REGGAE, WORLD, BLUES, COUNTRY
5ROCK/POP, NEW AGE, J-CLUB, CLUB
4K-POP, 映像, アニメ, ヴィジュアルロック, SOUNDTRACK, イベントスペース
3J-POP, J-INDIES
2TOWER BOOK, TOWER RECORD CAFE
1NEW RELEASE, RECOMMENDS
BCUTUP STUDIO

2012年以降しばらくあった「NEW AGE/RELAXATION/AMBIENT/ELECTRONICA/AVANT-GARAGE」という枠が消えてしまったのは、ここらへんの音楽がPOPのジャンルも含めてクロスオーバーしすぎてしまい、ジャンル分けが困難になり収拾がつかなくなったものと思われます。
また、「GROOVE」というテーマで括られていた4階から「J-CLUB, CLUB」が3階に来ているのは、ここもテクノ・ハウス系とポップス系とのクロスオーバーが激しすぎたせいだと思われます。

そして今回の大リニューアル後。

・2019-

7CLASSICAL, HEALING, JAZZ, BLUES/COUNTRY, WORLD, NEW AGE, 落語
6ROCK/POP, HR/HM, SOUL, R&B, HIPHOP, REGGAE/J-RAGGAE, CLUB/J-CLUB, VINYL
5K-POP, イベントスペース
4アニメ, ジャニーズ, アイドル, ボーイズポップ, 映画/その他映像, SOUNDTRACK
3J-POP, J-PUNK, J-HIPHOP, ヴィジュアル・ロック
2TOWER BOOK TOWER RECORDS CAFE
1NEW RELEASE, RECOMMENDS
BCUTUP STUDIO

今回のキモは5階に大きなイベントスペースを取ったことなのは間違いないのですが、フロア構成的なところで考えれば、およそ「パッケージが売れるジャンル」とそうでないジャンルがはっきりしてきた今、売れるジャンルをより一層ケアしていきましょう、という体制になったことではないかと思います。

洋楽は正味売れていませんし、一部のメジャーなタイトルを除いてはもはや発売日の金曜日に店頭に並ぶことすらなくなりました。ごく一部で話題になっている人とか、昔はそれなりだったけど今は地味になってでもまだ続けている人とかのクラスになると、普通に現地でリリースされてからの運搬になったのか、だいたい1週間くらい後にならないと店頭に並ばなくなったりしています。
で、待っていたら結局最後まで入荷しなかったりなんてことも。

その洋楽のフロアを削った分を他に振り分けた形ですが、構成として大きいのは、K-POPとアニメ系という「パッケージが売れる」2大ジャンルと、やはり大物ともなればそれなりに馬鹿売れはするJ-POPの3ジャンルを完全別フロアにしたという点。
こういうご時世ではありますが、メジャーなタイトルのリリース日が重なると、フラゲ日には相当にレジの行列ができて大変にうんざりすることがありまして。それを少しでも解消し、ストレスなく購入してもらおうという配慮なのではないかと思います。

ちなみに女子アイドル系も「パッケージが売れる」ジャンルではありますが、48や坂道の場合、劇場盤とか「個握」とか普通に店頭で買うCDでない盤が相当に含まれますので、実際の販売数ほどの行列にはなりませんし、それ以外では行列になるほど売れるアイドルも現状ではほとんどいませんので、アニメやジャニと被っても大丈夫、なのではないかと。

正味、もはやどのCD販売チェーンも安穏としていられない状況であることは間違いなく、そしてこういうリニューアルはそれをするにもコストがかかります。まだ攻められるだけの体力があるうちにやれることをやっておく、という感じもしなくはないですが、それでもできるだけあの馬鹿みたいな巨大店舗が少しでも長く残っていただきたい、とは思います。
言うても自分、普段は新宿店なんですけど。

TSUTAYAのこれからとかのこと

今のところTSUTAYAの1月の閉店確定11店舗、2月の閉店確定10店舗。確認するたびに増えている。もう年明け早々からぶっ飛ばしています。
いつも言うてます通り、不採算店を渋々切っているだけならこんな数にはならない。フランチャイジーのことは最低限気にしつつも基本路線はTSUTAYA事業の将来的な収束か、少なくとも縮小路線であることは間違いなく。

一方、CCCが新しい都市に手を出すたびにだいたい何かでも揉めているヤツ、行政と組んでの図書館事業ですが、高島屋が撤退した後の南海電鉄和歌山市駅の駅ビルにCCC主導で図書館を入れる話が、これもまた非常に揉めています。
しかし、裏を返せばこれだけ無理くりな手を使ってでもCCCはねじ込みたいわけです。ここから推測できるのは、CCCは企業としてのメイン事業をBtoCからBtoBに振り替えていきたいのではないかということ。

図書館の他にもTカードで得られた履歴情報をビッグデータ化してその解析を売るとか、その解析をベースにしたコンサルティングとか、企業団体相手にやれるビジネスは山ほどあります。
代官山やら枚方のT-SITE事業は言うてみたら、イオンモールと同様の「箱貸し」としてのBtoBビジネスとしての側面も大きいわけですし。

ここまで考えると、このタイミングでTSUTAYA事業をシュリンクさせてもいいと判断した理由もおよそ想像することができます。
Tカード事業を始めた頃は、とにかく枚数の発行と提携先の拡大が急務。ということで、そのスタートとしてレンタル会員券をTカードに置き換えることで一気に爆発的な普及を図り、その数を餌にして提携先をガシガシ増やしていきました。
「どこでも共通のポイントがたまる」利便性・お得感で更に会員を増やし、その結果相当な数の人の買い物履歴を把握し、個人特定情報は削除するにしてもビッグデータとしては申し分ないだけのものが入手できるようになりました。

Tカード事業開始以降に限って言えば、CCCにとって一番重要なTSUTAYAの役割はレンタルや販売を行って利益を上げることではなく、Tカード発行と利用の最前線としての拠点であることでしたので、総人口の過半数にあたる枚数を発行し、コンビニやドラッグストア等の生活拠点になりうるチェーンが提携先企業になり、そこでも独自のTカードを発行できるようにしたあたりで、TSUTAYAの役割はおよそ終わったということになります。
だとすれば、たとえ今はトータルで赤字ではなくても、この先大きな増益が見込めず、壁が待っていることが容易に想像できる業態をいつまでも続ける意味はない。

いつか来る完全な収束までを見通したうえで、フランチャイジーと話をしながら店舗を閉じていく。昨年まではそういう大きな方針のもと、地域ごとに店舗を間引いていって、お客の動向を見ている段階なのかなと思いました。
1店舗閉じることで近隣の他の店の売上が上がるのか、さして上がらない、つまりその店舗で借りていた層は他の店舗には回遊せず店舗での購入・レンタルを諦めてネットに移行するのか、そのあたりを見極めているのではと考えていたのですが、恵比寿ガーデンプレイス店や梅田堂山店のような大都市で拠点となっていた店まで閉め始め、新宿TSUTAYAが改装後レンタルとは何の関係もない書店+コワーキングスペースとしてリニューアルしたあたりで、もうその段階は越えているのかもしれんなあ、と。
さっき言ったところの「さして上がらない」方が全体的に正解だと既にジャッジはされていて、渋谷や戎橋や熊本三年坂店等各地域の直営系蔦屋書店のように、地域に発信する機能まで持ち得る大型店舗を除いては、もはや店舗存続を保証する何のプロテクトもかかっていないのではないかと思うのです。
正味そんな渋谷でもCDレンタルは徐々に縮小傾向だったりしますが。

ということで、この状況は他の何に近いかと考えた場合、1986年から1988年頃、レコードよりもCDの方が販売が多くなってきた時代の状況に近い。
徐々にCDでしか出ないタイトルも増えてきて、まだCDプレイヤー持っていない人のためにレコードも出すよというのが徐々に減っていって、1990年頃には新譜としてレコードを出すミュージシャンがほぼ絶滅したような。

それに例えると今は、レコードをいずれ出さなくすることは既定路線としてあって、需要を見ながらレコードも出すタイトルを決めているあたり。だから、たぶんTSUTAYAが今のような感じでいるのはあと数年。そしてレコードのように将来文化として店舗レンタルが再評価されて、また店舗数が増えたりすることは、ないな。

ネクライトーキーとDr.DOWNERのライブのこと

昨晩は下北沢BASEMENT BARでネクライトーキーとDr.DOWNERのツーマン。

先攻のDr.DOWNERは未聴だったのですが、これすごくいい。いやもう絶対お前らNUMBER GIRL大好きだろって感じの音なんですが、メロディや歌詞はきっちり自分たちならではのところに落とし込んでいて、かつライブも滅茶苦茶熱い。クドいくらいだけどむしろそれくらいがいい。
見た目羽田圭介と江頭2:50を足して割ったような感じののフロント男子が、向井秀徳のように吠えるのです。ギターの小さくて可愛らしい女子がひたすらに弦を引っかき回すのです。うん、やっぱりNUMBER GIRL大好きだろ。

で、ネクライトーキー。
音源では恐らくポップネスや愛嬌を優先した結果のああいうバランスの音だと思うのですが、ライブでは手足に付けた重りを全部外した超人みたいになる。キレキレのドカドカのブリブリです。もう笑えてくるレベルで。
アルバムにも収録されている「許せ!服部」は前回観たとき音源からは想像もつかないようなぶっ飛んだアレンジになっていてたまげたのですが、今回観たらぶっ飛び度さらに5割増し。
こんな始まった途端に夢中になって気が付いたら終わっていたライブは久しぶり。だいたいいつもライブ観るときは何書くか、みたいなことを薄らぼんやり考えてたりするのですが、今回そんな余裕なかったので気の利いたことがまるで言えません。

昔から読んでいただいている方であれば私が無類の童顔女子好きであることはご存知かと思いますが、だったらフロントのもっさちゃん大好きだろうよ、という想像も付くかと思います。
はい、大好きなのですが、実はそれ以上にサポートキーボードのナカムラさんの佇まいが大好きなので、基本は下手の方を向いています。そういうことです。

本当、みんなにもお勧めして「絶対観ろよ」と言いたいところなのですが、今回のツーマンツアー8か所全部既にソールドアウト、次の東京は3月のワンマンなのですが先行は落選しまして、正味一般でも取れる気がしないという、現段階で地獄。
多分今年はフェス出まくると思うので、是非そっちで。



岡崎体育「SAITAMA」のこと

岡崎体育 / SAITAMA (Album)

Lil PeepとかXXXTENTACIONあたり、簡単な言葉ではあってもひたすら虚無を綴るリリックでアメリカの若者に人気だったヒップホップの人たち、この2人はもう亡くなってしまったけれど、他にもたくさんいるそういう感じのリリックの人たちが受けているの、これはアメリカの若者の今の「気分」なんだろうか、ということを考えました。
でも30年弱前にNirvanaに熱狂した人たちだって多分あまり違わないと思うし、今の日本にだってそういう音楽を希求している人はきっといるんです。

今の日本でそういう層を一番支えているのは米津玄師くんだと思っています。どうしても日本人の場合「感傷」も多分に含んじゃいますけど、彼の歌詞に「虚無」はある。あとはamazarashiあたりか、と考えていたのですが。

今回の岡崎体育くんのアルバムを聴いて「彼もそういうとこあるんじゃねえの」と思ったのですよ。
彼は非常にストイックで、タイアップ曲は別のコンピにまとめて、オリジナルアルバムは完全に「自分のやりたいこと」で固める主義でやってきて、それでも受け狙いの一発ネタ的な曲は多分にあったわけですが、というかそういうのを積み重ねてここまでメジャーになったわけですが、今回は遂にそういうのもなし、「音楽として純粋にやりたいこと」しかやっていないアルバムになっています。
するとネタ的な言葉回しの中のそこかしこに、虚無と感傷がないまぜになったようなフレーズがわんさか出てくるわけですよ。「弱者」なんかもうそれ以外何もない。

いや、確かにこういう側面は過去の彼にもあった。「鴨川等間隔」とか。でも、ここまでネタを削ぎ落して剥き出しにしてくるとは思わなかったんです。

だから、彼が若い人に受けているのには、そういう側面もあるのではないかと思ったのですよ。少なくともネタ一発で終わらずにファン層を拡大している理由のひとつとしては。
自分の中にもある虚無を重ねられる存在を希求し、そういう歌い手に引き付けられる。

でもそこにはまたふたつの属性があって。そういうことをストレートに歌う曲を素直に受け入れられる人と、受け入れられない人。
受け入れられる人は米津くんやamazarashiに、受け入れられない人は岡崎体育くんや、2016年の「わかってんだよ」以降剥き出しになった感のあるキュウソネコカミあたりに向かうのではないかと思っています。
どちらも今の日本の「気分」。

私はもうおっさんなので、そういう曲はあんまり必要ないのですが、もし今若かったら確実に後者。米津くんを人前でカラオケで歌うなんて絶対できない派。

で、ここで出したミュージシャンは虚無だけでなくきちんと希望も歌ってくれています。だから聴いて死にたくならない。アメリカのヒップホップの人たちのようにオーバードーズで死んだり、店出たところを強盗に撃ち殺されたりしにくい環境に生きている分だけ、それを歌えるのかもしれませんし、聴き手も受け入れられるのかもしれません。
そこも含めて今の日本の「気分」。



2019年の閉店のこと

1月もまだ10日にならない段階で、1月内のみで以下の閉店が確定です。

新星堂:6店舗閉店
レコファン:1店舗閉店
TSUTAYA:11店舗閉店
GEO:3店舗閉店
BOOKOFF:1店舗閉店
ヴィレッジヴァンガード:3店舗閉店
WonderGOO:3店舗閉店
文真堂タイムクリップ:1店舗閉店
エンターキング:1店舗閉店
古本市場:1店舗閉店

正味、ここまで記録してきて、1か月の数としては過去最多規模。かつ恐らく下旬になる頃にはもう少し閉店の情報増えそうな気もします。
2月ももうTSUTAYA4店舗とヴィレヴァン3店舗、古本市場1店舗が確定。

新星堂・WonderGOOはRIZAPの例のアレですので、他に売れるかどうかもわかりませんし、売れるにしてももう少し格好付けてからということであれば、もっと店舗を整理してからということも考えられます。
TSUTAYAは2017年に70店舗以上、2018年には90店舗以上を閉店していますが、この閉店はただの不採算店整理ではない規模ですので、そういう方針が継続されるとすれば今年もそのレベル以下にはならないと思います。

CD店はこれまでも正直たくさん閉店してはいますけど、流れで観ればまだ「漸減」と言ってもいいのかなくらいの勢いではありましたが、イノベーター理論で言えば、サブスクリプションがレイトマジョリティーにまでかかりつつあるような様子も見えますし、正直2019年の実店舗はこれまで以上にヤバいと思います。後から振り返って「ここで決定的になったね」みたいな年になりそうな。ならないといいけど、いや。

第69回紅白歌合戦を見返したこと

今日は紅白歌合戦を見返していました。
今回の紅白は「音楽ショー」として見た場合、少なくとも過去10年では最強だったのではないかと思います。とにかく楽しく視聴できました。
ぼけっと見ながら、何でそう見えたのか3点ほどその理由を思いついてみました。

1)「バズり」の応用
今現在、NHKはSNSでのバズりを最もうまくコントロールできている企業体のひとつであることは間違いないと思います。企業って呼んじゃいけないけど。
「チコちゃん」は土曜の朝ドラの次に再放送だったからという編成上の理由はあるにしても、その位置は狙ったようにしか思えませんし、筋肉体操なんかあれは完全に「ネットでバズらせるため」だけの番組と言っても過言ではありません。

そしてバズったそれらをきちんきちんと要所に配置し、利用し、紅白としてのバズに繋げていく。天童よしみの時の「ダンサー+大漁旗+筋肉体操+サックス+カーリング娘」のカオスは、番組内でも「コンセプトの渋滞」と評されましたが、当然そうなることを想定してあの場を設定したわけで、結果「何かわかんねえけど盛り上がる」空気感を作り上げることになったのではないかと思います。


2)「フェス」感の創出
今回は番組通しての「お祭り」感がハンパなかったわけですが、その方針は歌唱曲意発表の時点でアッパーな曲が他の年以上に多く並んでいたことからも想像できました。
が、実際見てみるとそれ以上の高揚感で、それは今回の制作陣が「番組としてかっちり作り込むことよりとにかく会場を盛り上げる」ことに腐心したからではないかと思いました。

いきものがかりの「立って!」、ユーミンの「歌ってください」+会場への歌詞表示、ゆずのオフマイク歌唱、サザンの執拗なコール&レスポンス。およそ従前のテレビ番組制作的には当てはまらない、まず会場を盛り上げようという動き。しかしそれで得られたライブ感はやたらとテレビのこっち側にも伝わってくる。
「フェス」のような空気を会場に作り出し、その空気感を放送しようとしたのではないか、と思いました。そしてそれは相当に成功したのではないかと。
前半の、ウッチャンのやたらと演者に絡んでいくスタイルはAP BANKフェスの桜井さんのようだった、というのは言い過ぎ。


3)歌への回帰
これは2)の前提になるものかもしれませんが、今回は出場歌手の数は史上最少規模、なのに、歌以外に多くの時間を取った所謂「企画」はありませんでした。
キッズコーナーは歌をつなぎ続け、「チコちゃん」はあくまでも幕間の余興レベル、「おげんさん」は結局歌でしたし、曲前に流されるドキュメント的な映像も過去よりは相当減りました。
その分出場歌手一人当たりの時間は相当に長くなり、個々の歌手のパーソナルをできるだけ印象付けられたのではないか、そして音楽ショーとしての「うねり」のようなものを生めたと思います。少なくとも過去の「ヒット曲がベルトコンベアに乗ってただ次々運び出されてくる」ような演出は皆無で。

これはすべて2)の空気感を出すため、「音楽のお祭り」感を出すには必須の構造だったのではないかと思います。MISIAが事前には公表されていなかった「包み込むように」を披露した時がその象徴とも言えます。


最後の桑田さん+ユーミン+サブちゃんの絡みは、腰の動きに上層部からクレームが付かない限り、紅白きっての名シーンとして語り継がれるでしょうし、バンドで演奏される際にはクレジットまで食い入るように見てしまい、結果日本ポップスの歴史のようなメンバーが続々と出演していることがわかってビビるわけです。
鍵盤弾きなんて、日本ポップス史上最も重要な3人と言ってもいい、笹路、武部、松任谷が揃っているわけで。本当に「いいものを見た」と思える瞬間が多くありました。


ただ、課題もあります。
広瀬すずが正直隙がありすぎなのと、スイッチャーさんが時々やらかして、誰もいない場をけっこう何回も映していたこと。
氷川きよしと西野カナの演出は毎年割と雑なので、そろそろ怒っていいと思いますが、水森かおりの格下げ感が今回は目につきました。でもあれはつまるところ小林幸子以来の大掛かりなせり上がり型衣装から紅白が遂に卒業したということでもあるので、来年また同じような扱いを受けた時にキれましょう。

そして一番気になったのは、例えば冒頭の3曲は今年のヒット曲ではなく「平成のヒット曲」的な有名曲を立て続けに投下したり、「平成の総括」感はそれなりに出ていたのですが、最終的には「昭和の大勝利じゃねえか」みたいな感じになったことでした。しかし止むを得ない。