タワレコ渋谷リニューアル 洋楽フロア縮小、K-POPやアイドル拡張 「ネットで埋もれる」アーティスト紹介も
タワーレコード渋谷店と言えば、現状どう考えても世界一の床面積を誇る音楽販売店ということになるわけですが、今回1995年の移転オープン以降2度目のメジャーリニューアルです。
初めてのメジャーリニューアルは2012年。要するに1995年から2010年代初頭まではほぼ「販売」に専念していれば商売になっていたのが、さすがにその頃になると立ち行かなくなり、店内イベント等を多数行って「体験」とともに音楽を売るスタイルに方針を定めたわけですが、そこから6年で更なる方針の変更を余儀なくされたということで。
そこで、その最初のメジャーリニューアル以前からのフロアの変遷を追ってみようと思ったのですが、2012年のリニューアル以前のフロアガイドがどう探してもまとまったものがネットに落ちていなかったので、地道にTwitter検索しながらわかった範囲で丸めてみました。
・-2012(2011頃)
7 | TOWER BOOKS |
6 | CLASSICAL, ELECTRONICA |
5 | K-POP, JAZZ, WORLD, NEW AGE, HEALING, 落語, イベントスペース |
4 | SOUL, R&B, CLUB, HIPHOP, アニメ, 映像, SOUNDTRACK |
3 | ROCK/POP |
2 | J-POP, アイドル, J-HIPHOP |
1 | NEW RELEASE, RECOMMENDS |
B | STAGE ONE |
大幅リニューアル前は、これ恐らく仕入れ担当の組織の関係上のこともあったのではないかと思うのですが、日本は日本、欧米は欧米、それ以外はそれ以外、というのが当たり前という前提で縦割りになっている、あまり工夫のないフロア構成です。
それが初めてのリニューアル後、以下のようになります。
・2012-2019(2014頃)
7 | CLASSICAL, 落語 |
6 | JAZZ/FUSION, EASY LISTENING, SOUNDTRACK, NEW AGE/RELAXATION/AMBIENT/ELECTRONICA/AVANT-GARAGE, 映画/TV/その他映像/お笑い, キッズ/実用 |
5 | ROCK/POP, OLDIES, BLUES, COUNTRY |
4 | SOUL/R&B, J-HIPHOP/HIPHOP, J-CLUB/CLUB, J-REGGAE/REGGAE, WORLD MUSIC, 純邦楽, K-POP |
3 | J-POP, J-INDIES, J-PUNK, ヴィジュアル, アニメ |
2 | TOWER BOOK TOWER RECORD CAFE |
1 | NEW RELEASE, RECOMMENDS |
B | CUTUP STUDIO |
このリニューアルの一番のポイントは「イベントをしやすくする」というところで、このフロア構成ではあまり見えないのですが、店内で複数のイベントを同時開催できるようにしたところが非常に大きな意味を持っていました。
フロア構成の変更部分で一番大きいと思われるポイントは、それまでは「ワールドミュージックの一部」であったK-POPの完全独立と、HIPHOP、CLUB、レゲエあたりのジャンルを洋邦まとめにかかったところ。リニューアル以前の縦割り状態からの脱却を図っています。
そして2012年から2019年の間を確認していると、その間微妙にフロア構成をいじり続けています。今回のリニューアル直前には以下のようなフロア構成になっていました。
・2012-2019(2018頃)
7 | CLASSICAL, HEALING(Relaxation), 落語 |
6 | JAZZ, SOUL, R&B, J-HIPHOP, HIPHOP, J-REGGAE, REGGAE, WORLD, BLUES, COUNTRY |
5 | ROCK/POP, NEW AGE, J-CLUB, CLUB |
4 | K-POP, 映像, アニメ, ヴィジュアルロック, SOUNDTRACK, イベントスペース |
3 | J-POP, J-INDIES |
2 | TOWER BOOK, TOWER RECORD CAFE |
1 | NEW RELEASE, RECOMMENDS |
B | CUTUP STUDIO |
2012年以降しばらくあった「NEW AGE/RELAXATION/AMBIENT/ELECTRONICA/AVANT-GARAGE」という枠が消えてしまったのは、ここらへんの音楽がPOPのジャンルも含めてクロスオーバーしすぎてしまい、ジャンル分けが困難になり収拾がつかなくなったものと思われます。
また、「GROOVE」というテーマで括られていた4階から「J-CLUB, CLUB」が3階に来ているのは、ここもテクノ・ハウス系とポップス系とのクロスオーバーが激しすぎたせいだと思われます。
そして今回の大リニューアル後。
・2019-
7 | CLASSICAL, HEALING, JAZZ, BLUES/COUNTRY, WORLD, NEW AGE, 落語 |
6 | ROCK/POP, HR/HM, SOUL, R&B, HIPHOP, REGGAE/J-RAGGAE, CLUB/J-CLUB, VINYL |
5 | K-POP, イベントスペース |
4 | アニメ, ジャニーズ, アイドル, ボーイズポップ, 映画/その他映像, SOUNDTRACK |
3 | J-POP, J-PUNK, J-HIPHOP, ヴィジュアル・ロック |
2 | TOWER BOOK TOWER RECORDS CAFE |
1 | NEW RELEASE, RECOMMENDS |
B | CUTUP STUDIO |
今回のキモは5階に大きなイベントスペースを取ったことなのは間違いないのですが、フロア構成的なところで考えれば、およそ「パッケージが売れるジャンル」とそうでないジャンルがはっきりしてきた今、売れるジャンルをより一層ケアしていきましょう、という体制になったことではないかと思います。
洋楽は正味売れていませんし、一部のメジャーなタイトルを除いてはもはや発売日の金曜日に店頭に並ぶことすらなくなりました。ごく一部で話題になっている人とか、昔はそれなりだったけど今は地味になってでもまだ続けている人とかのクラスになると、普通に現地でリリースされてからの運搬になったのか、だいたい1週間くらい後にならないと店頭に並ばなくなったりしています。
で、待っていたら結局最後まで入荷しなかったりなんてことも。
その洋楽のフロアを削った分を他に振り分けた形ですが、構成として大きいのは、K-POPとアニメ系という「パッケージが売れる」2大ジャンルと、やはり大物ともなればそれなりに馬鹿売れはするJ-POPの3ジャンルを完全別フロアにしたという点。
こういうご時世ではありますが、メジャーなタイトルのリリース日が重なると、フラゲ日には相当にレジの行列ができて大変にうんざりすることがありまして。それを少しでも解消し、ストレスなく購入してもらおうという配慮なのではないかと思います。
ちなみに女子アイドル系も「パッケージが売れる」ジャンルではありますが、48や坂道の場合、劇場盤とか「個握」とか普通に店頭で買うCDでない盤が相当に含まれますので、実際の販売数ほどの行列にはなりませんし、それ以外では行列になるほど売れるアイドルも現状ではほとんどいませんので、アニメやジャニと被っても大丈夫、なのではないかと。
正味、もはやどのCD販売チェーンも安穏としていられない状況であることは間違いなく、そしてこういうリニューアルはそれをするにもコストがかかります。まだ攻められるだけの体力があるうちにやれることをやっておく、という感じもしなくはないですが、それでもできるだけあの馬鹿みたいな巨大店舗が少しでも長く残っていただきたい、とは思います。
言うても自分、普段は新宿店なんですけど。