何で日本以外ではCD売れなくなったのか考えたこと(続き)

前回、米津玄師のニューアルバムのCD売上がミリオン入ったこときっかけでこういうことを書いたのですが、やっぱ続きを考えるわけですよ。

2年ほど前に書いた記事。
アメリカと日本の閉店のこと

現在、アメリカ国内にあるCD販売ショップチェーンはFYEのみ。それもアパレルやら雑貨やらとの兼売。そして2年前は250弱と書いていますが、今数えたら200切っていましたので、まあそういうことで。
全米を網羅する家電量販店チェーンBest Buyは2018年にCD販売から撤収しましたが、WalmartとTargetあたりの巨大ショッピングセンターはまだ売っています。
ただ、ここらへんは最初からきめ細やかな品揃えとかはしていなくて、売れ線の数百タイトルをすごい勢いで並べるだけですので、現状で大規模チェーンのCD販売が素晴らしく機能しているとは思えません。

UKにはまだHMVが健在ですが、2年前に経営破綻してカナダ最大の小売チェーンSunrise Recordsが買収した際に、ロンドンはOxford St.の旗艦店を含む27店舗を閉鎖して、現在国内100弱の店舗網となっています。

ということで、たとえばWalmartのCD販売ページはこんな感じ。
日本や韓国と同様に特殊パッケージを限定販売する手法を世界中で行っているBTSの他は、往年のスターバンドのベスト盤かアナログ盤ばかりが目につきます。

一方ミュージシャン側にも、特にヒップホップ系の若手はアプリのGarageBandで全部音を作って、リリック乗せて完成、それをSNSに流して注目されて一気に若手注目株になって、それからエージェントに所属してツアーを組んで、という流れで売れる人が非常に多くなっています。
そこにはもう物理的な流通というものは一切存在しておらず、当然CDショップが介在する余地などありません。
そりゃWalmartが売るのもそういう感じのブツになるよな、とも思います。

あと、こういう記事。
全世界の音楽産業が、5年連続プラス成長。200億ドルを久々突破、日本市場の成長は?

新興国の伸びがすごいということなんですけど、これ要するにストリーミングサービスが「オフィシャルで、かつ安価に音楽に触れる手段」として受け入れられたから、ということが推測されます。
ストリーミングの登場によって「初めてお金を出してオフィシャルな音源に触れる」ことになったという人が、恐らく日本よりも多かったということです。

日本もすごい勢いでストリーミングに流れてはいるものの、売上としては相変わらず減少しています。でもこれは「非公式に聴いていた人」の相対的な少なさもありますが、「再販制」の存在がとてつもなく大きいです。

世界中CDは自由に価格が付けられていた商品で、アメリカで言えばアルバムCDを戦略的に10ドルを切る価格で販売されていたりもしたもの。しかし日本だけはCD価格が再販制によって高いところで固定された価格で販売されていました。それが一気に数年で世界レベルと同一レベルのサブスクリプションの価格に一気に移行してしまったのですから、以前を上回りようがありません。

もちろんBAD HOP等の台頭など大きな動きはありますが、日本では海外ほどヒップホップが大きなうねりになってはいません。
また、諭吉佳作/menのようにGarageBandを駆使するミュージシャンも登場してはいますが、こちらもそれで爆発的に売れるというような事象は今のところ起きてはいません。
これは単に日本人の性格や嗜好性によるものなのか、レーベルと音楽出版社たるテレビ局との関係性もあって、既存メディアからの盛んな発信がなされた結果、「既存の音楽」的なものがまだ受けがちなのか。

とりあえず、日本と欧米にはCDが売れるとかヒップホップが流行るとか結果の差異以外にもいろんな差異があって、どこかには「意図」もあって、総合的な理由でもってこういうことになってるんだよね、という箸にも棒にもかからないまとめしか今はできない。
というか、業界の中から眺めればもう少し見通しも変わってくるのかと思いながら、でも外から適当に想像して面白がっている方がきっと楽しい。