何で日本以外ではCD売れなくなったのか考えたこと

米津玄師の「STRAY SHEEP」がアホみたいに売れています。
このアルバムのリリースと同時にこの最新アルバムや「ハチ」名義の頃の音源もストリーミングサービスに解禁されているのですが、それでも売れるCD。ミリオンは確実ということで。
デイリーの売上を見ていくと、約2週間たってもさして売り上げが下がらないまま推移しているのがわかります。

8/04(火):375,300
8/05(水):142,800
8/06(木):137,200
8/07(金):75,300
8/08(土):70,600
8/09(日):75,600
8/10(月):42,600
8/11(火):34,500
8/12(水):38,500
8/13(木):27,100
8/14(金):30,200
8/15(土):35,000
8/16(日):43,600
8/17(月):23,400

別の例だと一回り売上枚数は劣りますが、Official髭男dismの「Traveller」、ストリーミングでも聴けるし、CDもリリースから10か月以上たっているのですが、売上40万枚を越えていまだCDアルバムチャートの20位以下に落ちることなく順位をキープしています。今週14位。
これってどういう動きなのかと考えていまして。

サブスクのストリーミングの音楽配信サービスって、自分のようにあっちゃこっちゃ適当に聴く人間としては非常に有用なサービスなんですが、たとえばあるミュージシャンの大ファンだけど他の人の音楽はさして聴かんよ、という人の場合、月に980円×12か月って高いと思うのです。
たとえば米津玄師の大ファンが、この1年間でリリースした音源を購入した場合、リリースされたフィジカルはシングル「馬と鹿」とアルバム「STRAY SHEEP」、あと先行でダウンロード販売された1曲を加えても、それだけ。すごく熱心なファンでシングル、アルバムの限定盤2種を両方購入していたとしても15,000円程度で、でも限定盤のDVDも見られるし、アートブックも手に入るわけです。
どう考えてもストリーミングに入るより、CDの方がお得です。
CD購入者の結構な割合がそういうタイプの人であり、というか「音楽を聴く」人のそれなりの割合がそういう、誰かの熱心なファンとしてその音楽を聴くというタイプの人だと思います。

ヒゲダンや今回の米津玄師のCD売上の動きも、様々なメディア露出やプロモーションの結果、これまでライトユーザーであった層を「ファン」として取り込むことに成功したと考えるのが妥当と思いますし、、そういうファンが「CDの売上」を支え続けていると捉えるのが普通です。

だとするとだ。
そういう「ファン」の動きは日本に限らず洋の東西問わずあると思うのですが、じゃあ何で日本以外のだいたいの国でCDの売上があそこまで先細っているのか。という疑問が。
「なぜ日本だけがCD売れ続けているのか」ではなく、「なぜ日本以外の国でそこまでCD売れなくなっちゃったのか」の方が、日本人という立場ではむしろ疑問の方向としてはふさわしいのではないかと思ったのです。

欧米では既にCDはリリースなし、フィジカルはアナログだけというパターンも増え、アナログ盤が日本にとってのファンアイテム=初回限定盤的な位置付けにもなっていますし、ミュージシャンによってはCDを出すのは初回限定盤だけ、それも凝った仕様のためすげえ高価だけど通常盤CDはなしという事例もあったりするのですが、正直自分としては何でCD出さないんだろうという気持ちも。
だって過去からずっとCD買っているミュージシャンならそのまま新譜もCD棚に並べたいじゃん。
どうやら少しだけCDもリリースされているみたいなんだけど、もうタワレコにも入荷されなかったりとか。

てめえの頭で考えた限りでその答えの候補を挙げてみると。

  • 現在の欧米では2007年にMaddonaがワーナーとの契約終了後組んだのがLive Nationであったという点に象徴されるように、既に興行中心のビジネスが主流になっていて、レーベル側の利益最大化を考慮する必要がない
  • Chance The Rapperのようなレーベル契約を伴わないままスターになる存在が現われ、熱心なファンであってもフィジカルの購入を行うことのないタイプのミュージシャンが増加している。
  • Lil系のヒップホップ勢など、YoutTubeやSNSを主戦場にするミュージシャンが増加し、そもそもそのその活動の多くをネット上に収斂させている事例も増えている。

要するに、「レーベルの力が相対的に弱くなったから」というあたりに収斂されてしまいますが、果たして本当にそれだけでしょうか。
確かに日本はまだ全然海外と比較して「レーベルが強い」というのは間違いないですし、若いミュージシャンの多くもメジャーとの契約を夢見て活動しているような節もあるわけですが。
でも本当にそれだけか。

たとえば「レンタルCD」という業態が存在するのは日本だけなのですが、それによって確かにCDの売上は減ったかもしれませんが、でもユーザーにとって「CDへの親和性」はむしろ上がっているのではないかとか、大都市圏の「鉄道中心文化」、つまり拠点となる都市に存在する店舗へのアクセス性にも要因があるのではないかとか、いろいろ考えるのですが、でも結論なんぞ出ねえわ。

でも何となく心のここらへんに、そういう疑問は置いておきます。
もしかしたらすごい気付きが今後あるかもしれない。決して誰も得しない、俺がちょっと嬉しいだけの気付きですが。