フィロソフィーのダンス「エクセルシオール」のこと

4月5日、3月22日から延期になっていたフィロのスの3rdアルバム「エクセルシオール」ようやく発売。

何となくアイドル界隈を継続して眺めていると、今は全体的な空気感としては停滞気味で、中堅どころのアイドルグループはバタバタ潰れていくし、当初は「目標は日本武道館!」と言って1000-2000人くらいの動員までは持っていけていたグループの次のワンマンは600人の箱だったり、そんな感じではあるのですが、そういう中にも明らかに伸びているグループもありまして。
BiSHやGANG PARADEのWACK界隈はまあそうですが、実力のアップに伴い人気も確実に上がっている感じがするのが、Maison book girlとフィロソフィーのダンスの2組です。

Maison book girlはアルバム「yume」が全体的な構成としてエラいことになっていて、ライブも前回のワンマンは観られなかったもののあちこちで絶賛されていたので、14日の人見記念講堂に確認しに行ってきます。
フィロソフィーのダンスの方は、ちょいちょいライブは行っていて、そのライブの間違いなさは知っていますし、結構な頻度で投下される新曲も総じて良曲で。ここらへんの楽曲が次のアルバムでまとまるのなら、相当なことになるだろうなあと思っていたら、想像以上に相当なことになりました。

以前は曲調等に「実験」的なところもありましたが、今作はある程度下敷きになっている曲調は60年代から最近まで幅はあるもののソウル・ファンクからモダンR&Bの中に収めてきていて、全体的な音楽的な一貫性は完璧。そして、あれだけ名曲たくさん入ってると思った前作を軽く凌駕してきますから、各曲の出来もおよそ完璧。

ライブでは何度か観ていたものの、配信買ってなくて今回音源で初めて聴いた「バイタル・テンプテージョン」の感想は「あれ、こんなにトラック音薄かったっけ…」。ステージ上で4人の声とか、そのパフォーマンスとかでいろいろ気持ち的にアガるものがあったのだろうか。
そういうのも、ここそこにあり、要するに名曲揃いですが、生で聴くともっとすげえということです。

年齢非公表ですが、佇まいからも他のアイドルグループより相当にお姉さんであることは間違いなく、大人のアイドルとして、エンターテイナーとして生きていく覚悟が四者四様にあるグループなので、ステージにぶち込まれる技術も熱量も、正直他の若いグループとは比較になりません。

たとえば「今までアイドルのライブって観たことないんだけど、初めて観るならどれがいい?」と問われれば、今は100%フィロのス推せます。
実際、初めて彼女たちを観た周囲の人間、それなりにいろんな音楽聴いている人が総じて転んでいるので、まあそういうことなんですよ。

でも、もっと広い世間的に「あ、何か人気出てきたっぽい」が体感できたのは確実にこのハロウィンイベント以降。
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こういうことをここまできちんとできるのは本当に強いと思う。

こういうサービス精神ですから、特典会の接触イベントも四者四様の神対応らしいのですが、そっちは自分は行かないので。
周りのリアクションでは間違いないと思うんだけど、私は以前から申し上げている通り、接触イベントでハマると恐らく全財産ぶち込む勢いになる性格ですので、行きません。ダメ、絶対。

集団行動「SUPER MUSIC」のこと

集団行動の3rdアルバム「SUPER MUSIC」がリリースされたので聴いてみました。

初めて相対性理論を聴いた時の衝撃は、いろんな音楽聴いてきた中でも相当に上の方でした。フックだらけのメロディーにフックだらけではあるけれど何の意味もない歌詞。「何なんこれ」という言葉しか出てこない、極めて言語化しにくいのに音楽としてひたすらポップでひたすらユニークな。
ただ、メンバーのインタビューではメンバー全員で作詞作曲しているという声はあるものの、真部&西浦脱退後の相対性理論は少なくとも自分の中では以前ほど面白くなくなったのは間違いなくて。

その真部&西浦が集団行動としてデビュー音源出してきた時は、大変にクオリティー高いことはわかるし、相対性理論と同じことやってても仕方ないしなあという気持ちはあっても、何かどっか「もうちょっとこう、どうにかならんもんか」と思う部分もあり。

それが今回、アルバムから先行でYouTubeにリリックビデオが公開された「ザ・クレーター」を見た時、ようやく「これこれ、そういうの」と思える音が出てきたと、それはそれは嬉しかったものですが、アルバムを通して聴いてみると、また全体的なトーンはその感覚とは異なっていて、でも今度はむしろいい方に。

「テレビジョン」は80年代の日本のテクノポップとか、「皇居ランナー」はハードロックとか、今回の収録曲の相当には「テーマ」的なものを設定して作られているような気がするんですけど、そういうところが見えつつも、でも結局はどんどんそこから逸脱していってしまう、その様が途轍もなく面白い。
で、そういう作りなのでアルバム全体がこれまでになく音楽として豊かで、でもただ「バラエティに富んだ」だけならアルバムとしてどうよ、ということになるのですが、彼らの場合はこのメロディーと歌詞があれば何をどうやっても一貫性は出てきてしまうので問題なし。
齋藤さんのヴォーカルもどんどん「入れる」ところと「抜く」ところの勘所がシャープになってきてすごくいい。こんな歌詞ですからすごい歌唱力でエモーショナルに歌い上げるとただの馬鹿にしかならないわけですが、それでも曲毎の表情の差異であるとか、メロディのフックに寄り添うような感じとか、なかなか気持ちのよい感じになっていて。

去年の5月にライブ観たときは、正直「これなら音源聴いてりゃいいかな(齋藤さんのご尊顔を拝めること以外)」と思ったのですが、これ是非またライブ観たくなってきました。

Pet Shop Boys@日本武道館のライブのこと

4月1日はPet Shop Boys来日公演@日本武道館。
お前何でそんな新年度初日にライブぶち込んでくるねんと思いつつ、サマソニで観たきり、単独来日は19年ぶりですから、相当無理してでも行く。

というか、日本武道館の4月上旬はだいたい大学の入学式に占拠されるのに、何で興行で押さえられたのか正直意味がわかりません。

04/01:Pet Shop Boysライブ
04/02:東京電機大学入学式
04/03:法政大学入学式
04/04:帝京大学入学式
04/05:専修大学入学式
04/06:東洋大学入学式
04/07:明治大学入学式
04/08:日本大学入学式
04/09:東京理科大学入学式
04/10:John Mayerライブ
04/11:John Mayerライブ
04/12:東京大学入学式
04/13:Eric Claptonライブ
04/14:
04/15:Eric Claptonライブ
04/16:
04/17:Eric Claptonライブ
04/18:Eric Claptonライブ
04/19:浜田麻里ライブ
04/20:Eric Claptonライブ

ライブの主催は全部ウドー。無理しっぱなしです。と思ったら2016年にも4月1日にTedeschi Trucks Band、入学式ラッシュの後はクラプトンという、ほぼ同じことをしていました。
でも今年、入学式よりもおかしな位置にいるのが浜田麻里だと思います。


で、Pet Shop Boys。
一応最新作「SUPER」のワールドツアーの一環ということなのですが、それ2016年のアルバムであってワールドツアーとしても一旦2017年には落ち着いたはずで、正味今回何かよくわからん位置付けではあるのですが、シンガポール・香港・東京・大阪のアジアツアーとして。

で、一応最初は「SUPER」の曲から始まるのですが、2曲目でいきなり「Oppotunities」が来たことでおよその構成が想像できました。
だいたいその想像通り、新しめの曲をやっては過去のヒット曲やって、みたいな感じで進み、結果としては先にリリースされたライブアルバム「Inner Sanctum」に近い構成でした。まあ、そのツアーの一環ですから。相当に映像や演出は凝っていましたので、あんまり差し替えることもできんでしょうし。

それでも35年のキャリアで彼らが我々に見せてきた、歌えるPet Shop Boys、踊れるPet Shop Boys、聴かせるPet Shop Boys、泣けるPet Shop Boys、考えさせられるPet Shop Boys、様々な側面を1時間半強の中にここまで凝縮してくるわけですから、やっぱ生半可なショーじゃありません。円熟や枯れた味わいなどクソほどもないパッキパキの現役感。圧倒的にやられたうえで終わりました。
「Go West」の「もうこれで本編終わるわ」感がハンパないこと、そしてアンコール最終曲としてその「アげ」力が「Go West」に匹敵するのは「Always On My Mind」だな、ということもよくわかりました。

終演後、仲間7人でもって中華屋でギューギューに詰めて行われた勝手反省会ではやはり当然のように「Suburbia」やってねえ、「Rent」聴きたかった、「It's Alright」はどうした、みたいな話になり、そのキャリアのエゲツなさを改めて思い知った次第です。

でも死ぬまでに彼らにもう一度演ってほしいのは、そしてそれを聴きたいのは、1994年のワールドツアーのうち5会場でのみプレイしたBlurの「Girls And Boys」のカバーです。
1995年にリリースされたシングル「Paninaro '95」のカップリングと、B面集「Alternative」の日本盤ボーナストラックとしてそのライブ音源がリリースされているのですが、それはそれは頭がおかしく素敵なヴァージョンです。
というか、Pet Shop Boysは誰かの曲をカバーする際には、まあ実際「Go West」も「Always On My Mind」もそうですし、だいたい親の仇のように扱っていてどれも大変に楽しいのでお勧めです。

こういうのも。

この春の「失敗フェス」のこと

この週末、スペシャ主催のLIVEHOLIC EXTRA、TSUTAYAのツタロックという2つのフェスがほぼ並行して幕張で開催されていたのですが、どっちが勝ったとかではなく両方とも動員としては辛いことになっていたという報が入ってまいりました。

LIVEHOLIC EXTRA
ツタロック

それぞれ、かなり「強い」メンツは引っ張ってきてるとは思うんですよ。
ただ、強いバンドってそれなりに数は限られているので、どうしても集めるとなると集合体としては似た印象になりますし、似ているのであればゴールデンウイークにはこれまでの開催で実績のあるVIVA LA ROCKもJAPAN JAMもあるわけで、そりゃそっちの方に行きます。
で、それらの実績あるフェスですら現状即完でチケットが捌けるような状況でもなく、かなりのプロモーションを行ったうえで何とかそれなりの動員を上げているというところで。

現状この世で開催されているフェス。既に長い歴史と実績のあるもの、新しくはあるものの主催がミュージシャンと深い繋がりがあるが故に信頼性を持ちえたもの、そしてミュージシャン自身が主催となっているもの。
特に首都圏はそれらの「信頼ある」フェスだけでも相当な数になります。正直既に「供給過多」レベルで。そこに何で「よさげなの集めました」程度の、何の信頼性のないのが入り込んできて大盛況にできると思ったのか。

そもそも「フェス属性」のある人間の数自体限られています。その属性がある人にも可処分所得の上限があります。という単純なことを今回このフェスをやろうと考えた人は気付いていなかったんかと思います。
私は衣食住の基本以外のほぼ全ての可処分所得を音楽にぶち込んでいますが、今回の2フェスのメンツ見て少しでも心動いたのは「さや姉生で観られるの悪くないなあ」くらいですし、そのために1万円近い金額と丸1日を供するほどお金持ちでもないし時間に余裕があるわけでもありません。5月にVIVA LA ROCKに行くので、そっちに何万円もかけるのに、似たようなメンツを3月に観ようとはさすがに思えない。
出演するバンドもメンツとしては屈強ではありますが差別化ポイントは見えず、「ああ、これならビバラでいいわ」と思うわけです。

で、出演するそれぞれ各バンドの大ファンの人もフェス全通するほどの人は相当に限られますし、大半はワンマンの方に物販含めて可処分所得をかけますし。
バンドの質とか運営のホスピタリティとかではなく、そもそもそれ以前の企画のところでいろいろクリアできていなかったということではないかなあと。

ただ、かつてLIVE STANDとかGO FES!とか第1回JAPAN JAM等に参加してきた身として言いたいのは、失敗フェスというのは観客にとっては相当に素晴らしい環境であるいうことです。
入場並ばない。ご飯やお酒買うの並ばない。トイレ並ばない。物販並ばない。座りたいときすぐに席が取れる。ギリギリにステージに行ってもいい位置で観られる。最高なんですよ。
なので、窮屈は嫌だ、でもフェスには行ってみたいという方は、これからもうっかり開催されるでありましょう実績無さげな新フェスに敢えてぶっ込んでみるのも手だと思います。
ただ、あんまりすぎて開演前に中止が決まって払い戻し超面倒、みたいなこともたまにありますので要注意だ。

<補足>
ツタロックは言うほど悲惨でもなかったという報が新たに。ただ、パンク・ラウド系目当ての人が多すぎて、それ以外のバンドがやや辛げだったという話も。
「どういう層の顧客を呼ぶか」というのはなかなかバランス難しいのですが、でも結局パンク・ラウド系は確実に動員見込めるのでそこ頼みになってしまうきらいはあり、そうなるとますます他の層にとっては「差別化できてない」ように見えてしまうという蛸壺感。

DOMMUNEとバイキングのこと

今日の「バイキング」のDOMMUNEの件もそうだし、その他のワイドショー系の番組で、ああいう「知らないことを当然のこととしてその知らないことを批判的に語る」の、やっぱり見ていて大変にしんどいのですが、そもそも考えてみれば、ワイドショーのコメンテーターのだいたいは何の専門家でもないタレントで、それが犯罪心理だの社会問題だのをその時の印象のみで語ってるわけで、今のああいう番組の形が出来上がってからこっち、およそ全てにおいてそういう感じだったんだな。それしんどいわ。

でもここ何年かで池上彰とか林修のようにいろんなことを「知ってる」体の人が表に出てくるようになってから、それ以外のテレビ出演者が「知らないのが当然」で振る舞う風潮はより顕著になってきているような気がします。


今回の電気5時間に際してのDOMMUNEの文章。

回収反対派の動きにもレーベル側の判断・回収やむなし派にも等しく敬意を払いつつ、でもどちらの壁の中にも入らない状態でできることがこれだった。
自分はだいたいこういう場合どっちにも付けずにいる派なので、この落としどころが素晴らしく愛おしく頼もしく感じられて。


絶対に「知っている」方が「知らない」よりいいに決まっています。役に立つことも、立たないことも。
回収反対で回収撤回に向けての動きをされている方も、コンプライアンスや対応コストを考えて回収やむなしと考える方も、電気グルーヴのこと、DOMMUNEのこと、それぞれの立場でのその他のこと、「知っている」ことがあるから、そのように考えられたり動けたりするとのだと思います。
どちらにせよ「知らない」よりずっといい。なので回収反対派と回収やむなし派は、お互いの意識を全否定はしないでいただきたいと思います。
さらに外に「無知」という共通の大敵がいるのに、中の狭いところで壁を作って対立するのって何か、違うじゃないですか。だから、何とか、何とか。


とりあえず、坂上忍は「I Was Born To Love You」5時間リピートの刑。

最近のHMVのこと

最近タワーレコードか新星堂の話しかしないのでたまにはHMVの話もしようと思いました。

まずは国分寺の店の閉店

HMV単独名義での新店舗は、既に閉店してしまったHMV広島本通(2014年開店、2017年閉店)のオープン以降なく、HMV&BOOKSという複合書店形式かHMV record shopというアナログ特化型だったのですが、国分寺のこの店舗はhmv BOOKS store名義、完全に書店に寄せた業態であり、行ってみたらCD/DVDの取り扱いはレジ近くの小さな棚ひとつ分だけという、なかなか割り切った感じでビビりました。それがオープンからものの1年で閉店と相成ったわけですが。
ただ、この閉店の場合は「そういう業態がダメなんだよ!」と一掃できない事情があります。これ。

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1年でこれだけテナント入れ替わっているわけです。見に行った時にはさらにもう1店閉店セール中。要するにこのミーツ国分寺という施設そのものの集客力に問題があるということで。
ミーツ国分寺は国分寺駅北口の再開発でオープンしたのですが、元々南口には9階丸ごと商業施設の駅ビルがあってそっちでだいたい揃うのに、何で後からさして店の数も多くない4階分の商業施設出してきたのか、そもそもわからないのですが。


HMV新宿は、元々新宿駅の駅ビル内に大きな床面積で展開していましたが徐々に床面積が削られ、先日までは6階の片隅でコンビニ以下の床面積でひっそりと営業していました。それがいきなりB1の地下道の途中に垂直移転、こちらはHMV&BOOKS SPOTという名義で3月7日に営業を始めました。

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「HMV SPOT」という名義では、表参道にコンビニとの合同店舗を出したり実験をしていたのですが、結局今も生き残っているのは大阪・あべのキューズモールの店舗のみ。
笑うくらい小さな店舗ですが、駅と地下街直通という場所ではありますので、明確に好きなミュージシャンがいて予約して購入するような方であれば、ビルの上の方に行かなくてもピックアップできるため、それなりの利便性で今も生き残っているのではないでしょうか。
今回の新宿の店もその知見を踏まえて、正味6階にあったとき以下の床面積ですが、そういう利便性でもって生き残りを図ろうとしているのではないかと思います。


去年の3月にできたHMV & BOOKS HIBIYA COTTAGE。HMV&BOOKS業態の中でも「女性向け」を謳った店舗です。
日比谷・有楽町界隈の書店は、有楽町駅前に三省堂、霞ヶ関寄りにジュンク堂、銀座の方には銀座 蔦屋書店。何とかして特徴をアピールしないことには生きていけない地域です。
で、書店として完全にそっちに寄せた結果、店舗全体の床面積の1割程度にしかならんCD/DVDエリアも、場所柄演劇や映画系厚め、あとは売れ線と子供向けと特集の棚で小規模にシティポップスを展開する程度という感じで。
HMVと聞いて総合ショップを期待して行くと大幅に肩透かしを食らいますが、生き残るためには仕方がない。
ただ、日比谷・有楽町界隈で新譜CDを購入できる店は実はここだけで、銀座にも今や山野楽器本店しかありません。銀座 蔦屋書店は、日本刀は売っていてもCDは売っていません
要するにこの日本有数のハイソ地域にはもうほとんどCD/DVDの需要はないということです。外国人客も非常に多いですし、わからんでもない。


「今CDが売れるジャンル」に絞って注力し始めたタワーレコード、RIZAPに買われて少しずつ店舗数が削られていく新星堂、BtoCからBtoBに舵を切ろうとしているTSUTAYA、総合リサイクルの大規模店舗に活路を見出そうとしているGEO。

HMVはそれらに比べると大きな動きというのはないのですが、アナログに寄せ、書店に寄せ、かつその書店としても地域性に合わせ、利便性を上げ、と、細かいチューニングによって当面のところを乗り越えようとしている感じがします。ただ、その先に何があるのかというと、今のところは「延命」でしかないのはタワーレコードと同じ。

一方、ここ数年CD/DVD販売についてはほとんど動きのない山野楽器は、楽器や教室が堅調なんだろうと思いますが、やっぱ屈強な「コト消費」持ってると強いわ。

タワーレコード新宿店の変遷のこと

タワーレコードは1月に渋谷店を大幅リニューアルして「今音源が売れるジャンル」に大幅に寄せたフロア構成にし、3月16日には店舗ごとそのジャンルに寄せた錦糸町パルコ店をオープン、そして21日には新宿店をリニューアル。「リニューアル」と言ってリニューアルしたのは新宿店はこれが2度目、前回は2012年でした。
というわけで、1月に渋谷店でやったように、リニューアルごとのフロア構成を追ってみます。

-2012

10階 SOUNDTRACK, MOVIE DVD, ANIME, MAGAZINE, BOOK
9階 JAZZ, BLUES, COUNTRY, WORLD, CLASSICAL, NEW AGE
8階 POP/ROCK, SOUL/R&B, HIPHOP, REGGAE, CLUB
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, J-POP

2012

10階 CLASSICAL, CLASSIC DVD
9階 POP/ROCK, SOUL/HIPHOP, CLUB,JAZZ, WORLD, BLUES/COUNTRY
8階 J-POP, K-POP, MOVIE DVD, SOUNDTRACK
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, アイドル, アニメ,ヴィジュアル, MAGAZINE, BOOK

2014(マイナーチェンジ)

10階 CLASSICAL,CLASSIC DVD
9階 POP/ROCK, SOUL/HIPHOP, CLUB, JAZZ, WORLD, BLUES/COUNTRY, 映画
8階 J-POP,アイドル,K-POP
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, ジャニーズ, アニメ, ヴィジュアル, MAGAZINE,BOOK

2019

10階 TOWER VINYL
9階 POP/ROCK, SOUL, HIPHOP, JAZZ, WORLD, BLUES/COUNTRY, CLASSICAL, NEW AGE, 映画
8階 J-POP,アイドル,K-POP
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, ジャニーズ, アニメ, ヴィジュアル, MAGAZINE, BOOK

渋谷店の1月のリニューアルの一番エグかったところは、床面積の半分以上を完全にイベントスペース化するという恐ろしい割り切りの5階の存在。在庫管理等のコストを考えれば、もう売れないジャンルを細かく揃えて並べておくより、イベントで「売れるジャンル」の数を捌きまくれれば、イベントないときはもう空き地にしておいた方がなんぼかマシである、という現実を見せつけてくれました。

そして今回の新宿店は10階ワンフロアを完全にアナログ盤専用のショップ・イン・ショップにしてしまうという渋谷とは別方向の、でもやはり「売れるジャンル」への割り切り。
その分潤沢な品揃えだったクラシック売り場を9階に移動、広い意味での「洋楽新譜」を完全に全部9階の1フロアに押し込みました。
2012年のリニューアル以前まで遡れば全フロア何らかの形で「洋楽新譜」が含まれていたのに比べると、もう大変な状況です。

でももう既に新譜が速攻サブスクで聴ける状況が当たり前の洋楽、そもそもパッケージを普通に世にリリースするミュージシャンが減りつつありますし、かつリリースしてもものごっつ世に出る数が限られているために日本にまで届かないものもあったりします。
そして届いたとしても、相当に海外からの入荷の量や回数も絞られるようになったのか、リリース日に店頭に並ぶのは相当に限られた有名ミュージシャンまたはタワーとして推したいミュージシャンくらいで、そこに入らなかった人の新譜は、リリースから2週間後にようやく棚に並んでるのを発見した、なんてこともあったりして。
要するに洋楽は売れないだけでなく、配給するにあたっての環境もすごい勢いで悪くなっているため如何ともし難いわけです。

4フロアざっと眺めてみたのですが、特に以前と比べて縮小著しいと感じたのは、テクノやハウス等の非ブラック系クラブ・ミュージック。でもそこらへんは確かにデータかアナログかになり、今一番CDリリースされていないジャンルだと思いますので、納得せざるを得ないのでして。

というわけで、10階のTOWER VINYL。

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悪くないです。新譜としてリリースされるアナログは相当に網羅し、中古盤も潤沢ですし価格的にもHMV record shopよりは割安感もあります。
まあ高い奴はアホみたいに高くて、Guns n'Rosesの1stのオリジナルレイプジャケが60,000円とか笑っちゃう値付けのもありますが、今はそういうレア盤はどこも似たような感じではありますから。

そしてもう一点特筆すべきは、店内のこんな地図。

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少なくとも表向きは新宿の他レコード店と喧嘩するつもりはなく、仲良くアナログ文化を発展させていきましょう的なノリで。表向きは。
アナログがこのまま改めて残っていくのか、一時的なブームで去っていくのか、まだわからん感じではあるのですが、それでもそこに賭けるという判断をしたタワーレコード。正味どんだけ後ろがないねん、という気持ちはありますが、本当にそうしないと生き残れないという危機感だけはバリバリに伝わってきます。できるだけ買いに行きます。

ただ、これは強く言いたいのですが、こういう世の中になった結果、「レア・グルーヴ」という概念は今や「アナログにもデータにもなっていない」CDだけでしか存在していない音源の中にあると思っています。だからどっかきちんと世界中の中古CDを回す市場っていうのは、残しておいてほしいと思う次第です。実際相当そっちもヤバそうですが。

謎のメンバーがいるバンド・グループのこと(2)

先日「謎のメンバーがいるバンド・グループ」のネタをやったら予想をはるかに超えて見ていただけて、いろいろと「この人も」というレスをいただきまして、随時追記していったのですが、せっかくなので映像探してきてがっつり再度。

グループ魂
港カヲル(永遠の46歳)、バイト君(大道具)の2名。そもそも港カヲルという存在自体、ジェームス小野田のオマージュ的なところがありますので、もうこれは入れるしかないと思いましたが、正味コントグループでもありますので、なかなか位置付けとしては難しいかもしれません。

Galliano
昨日あんまり面白かったので追記で動画まで貼ったのですが改めて。
元Style CouncilのMick Talbotも参加したアシッドジャズ系のバンドですが、パート名「The Vibe Controller」のメンバーMichael Snaithが、口上で呼び出されて飛び出てきて、でも結局概ねうろうろするだけという、「歌いもしないジェームス小野田」状態で最高です。

Frankie Goes To Hollywood
彼らの2ndアルバムのジャケットにメンバーの各担当パートがアイコン化されていて、例えばメインヴォーカルのHolly Johnsonの場合はマイク柄なのですが、彼と同じくパートとしては「Vocals」とされているPaul Rutherfordのアイコンは足跡。

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つまりダンス要員ぽい感じで記されているのですが、実際見てみても特に踊るのが達者には見えません。
彼らの場合、楽器隊もがっつり弾けているかは甚だ怪しくというか、この映像観る限りまともに弾いちゃいないので、これどこまでが「謎メンバー」なのかの線引き難しい。

Secret Goldfish
90年代に一部の層に熱狂的に受けていた大阪出身のバンド。当時UKで受けていたマンチェスター的なところとシューゲイザー的なところのいいとこ取りをしたような感じの音でしたが、メンバーの一人、近藤進太郎のパート名は「Dance」、でも彼も特に踊るのが達者な感じではなく、というかそういうUKノリでしたので、Bezみたいなメンバーということでいたのではないかと思います。
が、1992年に本拠地を東京に移す際に脱退しました。

Have a Nice Day!
パフォーマーの内藤さん。完全にBezというか、実際現在唯一のオリジナル・メンバー浅見北斗も「Bezのような存在」と公言していたのですが、けっこう壮絶な対立もあったらしく、2016年脱退。

野獣のリリアン
音源一般流通してないバンドですけど、何回かライブは観ているので。ただでさえメインヴォーカルが3人、ギターが3人いる渋滞状態にもかかわらず、歌っている時間より座っている時間の方が長い飯田和敏さんと、着ぐるみのため空間の容積を占拠するさゆキャンディもいて、もう全体的にトゥーマッチでいろいろおかしいバンド。

ぴんから兄弟
はてブのコメントに「ぴんから兄弟の宮五郎」という文字列見たとき爆笑しました。そうだ。そうだけどそこ触っていいのだろうか。でも映像見てその絶妙な「弾いてなさ」はこれやっぱり見ていただいた方がいいだろうと思いました。TM NETWORKの木根さんを越える弾いてなさと存在感。実際ベースは弾けてもギターは弾けないそうです。じゃあ何でそれ持ってそこに立っているんだ。最高だ。

2回やってみた結論としては「意外にいるな」ということと、「謎っぷりも人それぞれだな」ということ。ポピュラーミュージックに決まりなんてないんですから。みんな違ってみんないい。

謎のメンバーがいるバンド・グループのこと

瀧のことについては書き始めるとただ感情に委ねてしまうことになるのでここでは書かないでおこうと思うのですが、電気グルーヴでの彼のパートは「瀧」であり、インスト曲も多く持つユニットなのに楽器は一切触らない、でも確固として正式メンバーであるという謎の存在なわけですが、古今東西探してみたらいくつかそういう「謎のメンバー」がいたので、そういうのを並べてお茶を濁そうと思います。

Happy Mondays/Black Grape
Bezという世界で一番有名な謎のメンバーを擁するバンド。パート名は「Vibes」または「Bez」。完全に東の瀧、西のBez状態ですが、西の方は東以上にドラッグまみれなことが世間に知られているにも関わらず作品の回収もなければ逮捕すらないので、やっぱり国っていろいろだなと思います。

Flowered Up
マンチェスター・ムーブメントに乗って一瞬ですがそこそこヒットした、歌ってるんだか呻いているだけなんだかよくわからんヴォーカルが特徴的なUKのバンド。正式メンバーではなく準メンバー扱いですが、フラワーロック的に花びらっぽい被り物を施されたうえで、踊ったりもしくはただステージ上を徘徊するだけのメンバーがいました。

米米クラブ
日本で瀧と双璧を成す存在といえばジェームス小野田。パートは「ボーカル」ですし、実際歌えば素晴らしいのですが、私が観たときの小野田さんはだいたい自転車乗っていたような気がします。

Hermann H.&The Pacemakers
このMVのような感じで、一応コーラスは入れますが他はだいたい暴れているだけの正式メンバー若井悠樹、担当パートは「ウルフ」。一度何かで観たことがありますが、その時はステージ上で竹刀を振り回していたと思います。現在再結成してぼちぼち活動中。再結成メンバーにはもちろんウルフもいます。

レシーバーズポンポンヘッド
先日紹介しましたが、ステージ下手側でひたすら踊っているというか煽っている正式メンバー、「長州 力(ちから)」という方で一応パートとしてはサンプラーなのですが、キュー出しをしたらあとはだいたいこんな感じだったようです。

人生
電気グルーヴの前身なわけであり、基本的に生演奏するバンド形態でもないので、ステージに立っている人間の多くが瀧状態だったこともあるのですが、それ以上に、ライブをやる時にはほぼ必ずステージ上に「木」がいました。木のコスプレをしてライブの最初から最後までただそこに立っているだけのパート。しかも初代「木」が脱退した後、二代目「木」が加入しましたので、彼ら的には大切なパートだったようです。多分。

絶対直球女子!プレイボールズ
ライブを「試合」、脱退を「退団」、研修生が正式メンバーになることを「育成選手を支配下登録する」と言う、大変に面倒臭い野球縛りの女子アイドルグループですが、メジャーデビューまでは「ボールボーイ」と呼ばれる男子2名が、当然正式メンバーではないのですが常にステージ上に帯同していました。歌うわけではないのですがとにかく煽って煽って場を作る。メジャーデビューに際して一旦はクビになったのですが、限定的に復活したりしているようです。

で、こういう謎のメンバー的な存在のはしりって誰だよって調べてみたのですが、確認できた限りそういう存在に一番近いのはザ・スパイダーズの井上順じゃないかと思うのです。
一応堺正章とのツイン・ヴォーカルではあるのですが、後から加入したメンバーの割には楽器を演奏するわけでもなく、堺正章がメインヴォーカルを取るバラード的な楽曲の時は素晴らしく棒立ち。
自身も自虐的に自分のパートを「セカンド・タンバリン」と言っていましたし。
いや、でも世界に他にいないよ、唯一無二だよ、セカンド・タンバリン。

あと、亡くなったけどスカパラのギムラとか、脱退したけどGacharic Spinのダンサー勢とかもこの枠に入れていいでしょうか。考えてみればパートは普通に割り当てられていても、ロクに弾かずに暴れていたシド・ヴィシャスだってこの枠かもしれません。
うん、まあこんな感じで。何か有名なの忘れているような気もしますが、いいや。

自分が一番最初に電気グルーヴを観たのは1991年の梅田アム・ホール。TMNとのカップリング・シングルのレコ発でした。フックアップしてくれた恩人のはずのTMNを、それはそれは凄い勢いでディスっていまして、心底「こいつら最低で最高だな」と思ったことを覚えています。
次に戻ってきたとしたらまたそういう「最低で最高」ができると思うので、是非それをお願いしたいと思っています。心の底から。

<追記>

  • Arrested Developmentのおじいちゃん
  • ファンキーモンキーベイビーズのDJケミカル
  • SOIL & "PIMP" SESSIONSの社長
  • 渋さ知らズやモダンチョキチョキズ、海外だとThe Polyphonic Spreeあたりは「メンバー」の概念そのものが他のバンド・グループと違いますね。

<再追記>

  • The Stone Rosesのスタッフだけどステージで踊っていたCressa
  • Frankie Goes To HollywoodのPaul Rutherford
  • Secret Goldfishの近藤進太郎
  • Have a Nice Day!の内藤さん
  • POLYSICSのPOLY-2

気志團の早乙女光もそれっぽいけど、入れるとまた解釈が拡大しそうな気がする。どういう解釈やって言われたら言葉で説明しにくいですけど。

<再々追記>

  • 猛毒の東野A心。パート名は悪徳マネージャー

元Style CouncilのMick Talbotも参加したアシッドジャズ系のバンドGallianoのMichael Snaichが、口上で呼び出されて結局うろうろするだけという、「歌いもしないジェームス小野田」状態で最高です。

いやあ、知見が集まると楽しいですね。これ集めたところで何の役にも立たないところ含めて。

<再々々追記>
(2)も作りました。

タワーレコード錦糸町パルコ店のこと

正直、CD販売チェーンが普通に新店舗を出すとは思っていなかったのでびっくりしましたが、昨日3月16日にグランドオープンした東京の錦糸町パルコ内にタワーレコードがオープンしました。

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元々錦糸町には駅から徒歩5分くらいのところにあるオリナスモールにタワーレコードが入っていたのですが、2018年2月に閉店。既にその時にはパルコ全体のオープンは決まっていたので、オリナスモールとの契約更新のタイミングで一旦店を畳んでパルコのオープンを待っていた臭い感じもしなくはないですが、実際のところはよくわかりません。

で、その前の店の時からアイドル系イベントをよく実施していた店舗ではあったのですが、今回自ら「アイドルの聖地」を掲げてオープンした店舗はまさにその言葉に偽りなしの、なかなかエグい店舗でした。

まず予想以上に床面積が広い。フロアマップ見たらそのなかなかなサイズ感わかっていただけるでしょうか。現秋葉原店よりは大きいです。入口を入って右に女性アイドル、左に男性アイドルの棚が相当に大きく取られ、かつ店の奥には相当大きなイベントスペース。
J-POPについてはそこそこ揃えてはいるものの、洋楽全般については棚1列程度に収められていて、男女アイドルの棚を足したらそっちが軽く凌駕するレベルの著しく偏った品揃え。
先日の渋谷店のリニューアルも相当でしたが、錦糸町のこの店は店舗丸ごと所謂接触イベントの効果も込みで「今CDが売れるジャンル」に寄せまくっている印象。

よくぞここまで振り切ったという気持ちもありますが、既存の中型店舗をこういう形でここまでリニューアルすることは既存顧客を大きく切り落とすことにもなりますので、まだ顧客が付いていない「グランドオープン」の形で仕掛ける必要があったのだろうという想像もできます。

が、そういうふうに「CDが売れる」ジャンルに寄せまくっている状況を見るにつけ、確かにそれは正しい選択ではあると思うのだけど、もうそこにしか生き残るための術がないからそこに行かざるを得ないとも言えますし、バランスの良いオールジャンルのスタイルをある意味「捨てた」ことは「撤退戦」の趣きすらあります。
しかも、そういう戦術でイベントがない時の売上がどこまでいくのか。結局お祭りの時の縁日みたいなことになってしまうのではないかという不安も。
21日に行われる新宿店のリニューアルも近しい方針のようで、この本土決戦でタワーレコードは生き残るのか、玉砕するのか。

で、そこまでドラスティックに方針を変更していく余裕すらなさげな他のチェーンはどうなるのか。

とりあえず、タワーレコードがそういう偏った品揃えになったことで、錦糸町駅前に唯一残った「街のレコード屋」であるセキネ楽器店は、もはや演歌専門店状態なのでカブり一切なくて安心です。
アルカキットにある新星堂がどうなるのかはよくわかりません。

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