「MUSIC SHOP BIG」が消滅したこと

2025年1月31日、「MUSIC SHOP BIG」「MEDIA STATION BIG」の屋号で全国展開していたCD店チェーンが最後の2店舗を閉め、消滅しました。

戦後からバブル期に至る時期に各地にオープンした百貨店と連携を強める形で店舗網を確立したのが山野楽器。
1970年代以降各地にオープンした大型スーパーマーケットのテナントとして入り込むことで日本一のチェーンになったのが新星堂。
大店立地法を受けて各地に建てられた大型ショッピングモールに乗っかって全国チェーン化したのがタワーレコードとHMV。

全国に店舗網を持つCDショップチェーンは、およそ拡大のきっかけがあるものですが、そんな中いつの間にか最盛期には全国40店以上の店舗網を誇っていたチェーンが「BIG」。
経営企業は「株式会社音光」。広島市に本社を置く、現在の本業はCD/DVDやAV家電やスマホアクセサリー等の卸です。


かつて、地方都市の駅近に大型スーパーであるところのダイエーやイトーヨーカドーがオープンする際、ことレコード店については、新星堂が入り込むことも多くありましたが、元々駅前商店街等地元にあったレコ―ド店がスーパーの専門店街にも支店の形で店を出すというパターンがけっこうありました。
そしてその後商店街の方の店を閉め、スーパー内の店舗に絞る事例も割と。

それがイオン等の巨大ショッピングモールが各地郊外にできるようになると、駅前大型スーパーは営業的にシオシオになっていくところが増えていきます。
当然専門店街に入っているレコードCD店の環境も厳しくなっていき、退店を余儀なくされる店も出てきます。

レコードCDの小売り店が徐々に減るということは、卸にとっては「少しずつ死んでいく」にも等しい事態なわけで、できる限りそういう状況は避けたい。
そこで、退店した店舗の中で「まだ行けるんちゃうん」と判断した店の跡にほぼ居抜きの形で、できる限りコストをかけずに出店し、その後行けるところまで行く、という方針でもって店舗展開していたのが「MUSIC SHOP BIG」または「MEDIA STATION BIG」ということです。

なので短命に終わる店も多く、2008年頃に営業していた店舗数が約40だった割に「閉店したBIG店舗の総数」は現在までカウントすると約100という、CD店としてはあんまり見ない感じの塩梅になっております。

その後2010年代に入って立地とか関係なくCD自体の需要が目減りしてくると、そういう個人経営や中小のCD店舗だけでなく、大型ショッピングモールに出店していた新星堂が退去した跡に出店したり、新規オープンする大型ショッピングモールにいきなり出店するといったパターンも現れ始めますが、当然その頃には需要自体がジリ貧ですのでどの店舗も長続きはしません。

それでも他で閉店したCD店にまた居抜きで入れば店舗数は保たれるのですが、10年前頃から「そもそも閉店するCD店(=そこまでは営業していたCD店)」自体が少なくなっていったり、大型ショッピングモールがオープンしても最初からCD店がなかったり、BIGが店舗網を保つだけの供給が失われていきます。

かくして徐々に店舗は減っていき、昨年末にはイオンモール甲府昭和内の店舗とイオンモール津南内の店舗の2店舗に。
そして1月31日、その2店舗が同時閉店し、「BIG」の屋号は消えました。

運営企業の(株)音光は、2020年4月にCD/DVDセルショップ運営事業を、直営から(株)BIGの運営に切り離していましたが、もうこの頃には近々で消滅することを想定していたものと思われます。

ただ気になることが一点。
「卸主導で他店舗が退居した跡に出店する」タイプのCD店にはBIGの他にもうひとつ「サウンドコミュニケーションWe's」というチェーンが存在しています。

BIGが最大40店舗まで増やして死んだのとは対照的に、2000年代から10店舗前後の店舗網を保ち続け、名古屋市内のボロいショッピングセンター内の店舗は近所の新しいショッピングモールに移転したり、新潟県長岡市郊外の大型ショッピングモールから追い出されたと思ったら数km離れたイオン内に復活したり、佐賀市のショッピングモールには2023年になって新規店舗をオープンするなど、恐ろしく器用に立ち回っている感があります。

この差は何なのか。
というか「サウンドコミュニケーションWe's」、運営企業のことが正直よくわからないのです。お前ら何者。

<追記>
We'sがCD/DVD等の卸企業「音の岩泉」関連ということを教えていただきました。
We'sが店によっては韓国グッズ店併設だったり、玉光堂が韓国推しだったこととか、いろいろ繋がって納得度高いです。