忘れらんねえよ@ZEPP SHINJUKUのライブのこと

今年の初ライブは忘れらんねえよ@ZEPP SHINJUKU。


彼らのライブを観たのは過去に2回。
元々3ピースだったのが、ドラムが抜けベースが抜け、今はフロントマン柴田の1人プロジェクト状態ですが、3人時代と2人時代に一度ずつ。

チャットモンチーの「ハナノユメ」の動画を見たことで会社員をやめてバンドを始めた柴田が、15年かけて橋本えっちゃんと共演を果たし、そのチャットモンチーとの出会いも歌ったデビュー曲「CからはじまるABC」を一緒に演った音源が収録されると聞いて久々にCDで購入し、ああこれは素晴らしいなと思っていたところに、ライブで共演した際のとんでもなくエモいMVを見てしまい泣きそうになったというか本当に少し泣いて、その直後にチケットを取りました。
いや、柴田だし「忘れらんねえよのすべて」というツアータイトルから考えてもライブにはゲストは呼ばないだろうなとは思いながら、でもちょっとこれは観なければ駄目だと思い。

ZEPP SHINJUKUは最新だけあって、やろうと思えば後方のスクリーンはもちろん側面もLEDをビカビカさせることもできる箱なのですが、そんなもん彼が使うはずもなく結果として中に入ってしまえば単に少し大きめのライブハウス。
でもそれでいい。

暗転し爆音で流れたのは果たしてチャットモンチーの「ハナノユメ」。出てきて一節歌う柴田。もうこれでOKだ。
忘れらんねえよの楽曲は、歌詞の解像度が異常に高いものが多いため音源を聴く限りでは曲によって刺さったり刺さらなかったりするのですが、この日はもうすごい声と熱量でもって力ずくでぶっ刺しに来る。

俺が前に観たのはこんなんじゃなかったよなと思い出しながら観ていて、MCの時に思い当たったのは「確か以前はメンバー弄って笑いを取ってたなあ」ということ。
正式メンバーが自分以外居なくなり、サポートともそれなりにコミュニケーションは取れているけれど弄るようなことはなく、歌もMCもただこちらと常に対峙して発せられている。
1人になってむしろよかったのではないか、ただでさえ歌詞は剥き出し気味なのに、1人になってパフォーマンスまで剥き出し気味になっていないか。

逃げる場所がなくなって止むなくなのか腹を括ったのか、それはよくわからないのだけど、以前と比べると異常に風通しがいいというか、どストレートにぶん投げているというか、とにかく当たりが強い。
ライブにおいて演者の当たりが強いということはそれ即ち最高です。

完全に柴田の気持ちに飲まれ、転がされ、MCで「最高にキモいなこいつ」と思ったり「最高にかっこいいなこいつ」と思ったり、ほぼ何の演出もないのに完全に持っていかれた2時間でした。
いいものを観た。

ライブ中、あちこちから「柴田!」「しーばーたー!」と声が飛ぶのですが、誰ひとり「さん」付けしていないのが、ある意味このバンドの本質であり最高です。
「忘れらんねえよさん」とか「柴田さん」と呼ぶ人がいるとすれば、それはこのバンドを理解していない人です。

もう少し有名になって、何でもかんでも「さん付け」する文化に風穴をあけて欲しい気持ちも多少あるのですが、そんな世間一般に影響力を持ってしまった時点でそれは柴田ではないので我慢します。