ミュージック・テイト(帝都無線)が破産したこと

8月23日に(株)ミュージック・テイトが破産の手続きを開始しました。

ミュージック・テイトは元々存在していたレコード屋チェーンの「帝都無線」の流れを汲むお店。恐らくもっとも有名な店舗は、紀伊國屋書店新宿本店の2階の書籍売り場に島のように存在していたあの店だと思います。

2011年に紀伊國屋を撤退後、西新宿7丁目の中古輸入レコード屋密集地帯に移転、紀伊國屋にいた時から売りにしていた「演芸」に完全に絞り、専門店化して生き延びていました。

また、それ以前から西新宿7丁目にあったV系専門店の自主盤倶楽部もミュージック・テイトによる運営でした。

移転したその店舗もコロナで疲弊、2022年9月に引き払い、それ以降は自主盤倶楽部の店舗を間借りというか、平日の昼間はミュージック・テイトがメイン、夕方以降と日曜は自主盤倶楽部メイン、みたいな住み分けで営業していたものの、その組み合わせにはだいぶ無理があったこともあってか、8月20日に両店揃って閉店。
その3日後に破産という形でした。

そもそも元々の帝都無線は、新宿を拠点に都内中心に展開していた新譜レコード屋のチェーン。
私が確認することのできる最古の1986年の資料を見てみると、新宿界隈で新譜レコードを販売していた「レコード店」は16店舗あり、そのうち6店舗が帝都無線という、今考えるとかなりエグい状況。GoogleMapに貼ってみるとこんな感じ。

当時新宿地域にあった新星堂・山野楽器は各2店舗ですから、およそ新宿のヌシと呼んで差し支えないレベルです。まあ、新譜屋だけで16店舗というのが今の頭で考えると猛烈にエグいわけですが。

ただ、山野楽器は戦後間もなくから都内の各デパートにテナントとして出店を開始してバブル期まで店舗網を拡大、一方新星堂は1970年代以降ダイエーやジャスコの新興スーパーと組んで大量出店。
そのベースがあったからこそ1990年代を生き抜き、現在両チェーンとも新宿地区からは完全撤退してはいるものの、チェーンとしては一応生き残っているわけですが、そういう「次の手」を打ち損ねた帝都無線は、ヴァージン・タワー・HMVの外資系超大型店舗には太刀打ちできるはずもなく、「CDバブル」の恩恵を受けることなく1990年代後半には紀伊國屋書店の店舗しか残っていませんでした。

今は2020年代、生き残ったはずのチェーンも縮小の一途をたどっているわけで、それでも正直、2020年代にここまでCD店がもっているとは正直思っていなかった。よくやった。