書店チェーンのCD販売用の店名のこと

書店チェーンの中にはCDも売っているところが割とありますが、CD売り場に別の屋号を掲げたり、CD販売も行っている店舗には別の店名を付けたりすることがままあります。
たとえば紀伊國屋書店、それなり以上の大きな店舗にはCD売り場がショップインショップの形で展開されていて、囲われたそのエリアの入口には「Forest」という独自屋号が付いておりました。

が、ここ最近の紀伊國屋書店で「Forest」を見ることがめっきりなくなりました。まだCD売り場の面積がそこそこ大きな店舗はありますので、残っているところもあるのかもしれませんが、ここ最近自分が行った数店舗ではもう名無しの単なる「CD売り場」になっていました。
そういう独自の屋号でCD売り場を展開しているところ、概ね風前の灯火状態のような気がしたのでざっくり調べてみました。


Pax(成田本店)
青森市を代表する書店チェーンの成田本店はCD売り場を「Pax」という屋号で運営していました。青森駅近くのしんまち店の場合は地階がPaxとして営業していましたが、2014年の改装時に撤収。
しんまち店から割と近くの再開発施設アウガにも成田本店とその中にPaxエリアがありましたが、そっちは書籍販売ごと2009年には撤収しています。

タイムクリップ(文真堂書店)
徐々に徐々にしかし確実に店舗網が削られていて、今後が少し心配な群馬県拠点のチェーン、文真堂書店。割とCD販売取扱店は多く、その大部分が「タイムクリップ」という屋号を併用、またタイムクリップ単独名義の店舗もかつて数店舗ですが展開していました。
現状ではCD取扱店はまだまだあるものの、タイムクリップ名義で営業している店舗は1店舗のみ。

KaBoS(勝木書店)
福井県本拠地で関東にも店舗展開している書店ですが、うちCDやゲームなど書籍雑誌以外の扱いもある店舗についてはKaBoS/SuperKaBoSの店舗名で展開しています。
とはいえ、元々勝木書店グループだった店舗で現在営業しているのはほとんどがKaBoS/SuperKaBoS名義の店舗。
が、いろいろ取扱商品が変更された結果か、書籍・雑誌しか扱っていないのにKaBoS名義の店舗があったり、若干ややこしいことになっています。

MEDISITE(三洋堂書店)
東海地方を中心に展開している三洋堂書店のうち郊外の大きめな店舗の多くはCDやゲーム販売・レンタル等も含めて総合書店として営業し、店頭に「MEDISITE」の看板を掲げて営業していました。
しかし、恐らく2015年頃以降の新規店舗・移転店舗や改装を行った店舗では、扱う商品がそのままであってもその看板を外しているようです。

STUDIO WONDER(今井書店)
鳥取県・島根県を中心に店舗展開している今井書店、大型店舗やショッピングモールに入った店舗の一部ではCD売り場を「STUDIO WONDER」という屋号で運営していました。
が、現状ではSTUDIO WONDER名義は消滅、CD取扱店舗は「メディア館」または「サウンドスタジアム」という名称で営業しています。

フィルモアレコード(黒木書店)
福岡県を拠点に営業していた黒木書店は、ほぼ各店舗に割と大きなCD販売エリアを持っていて、「黒木書店」と同じくらいのデカさで「フィルモアレコード」という看板を出す店舗もあったのですが、2016年に運営企業が特別清算。それ以降は大部分の店舗が宮脇書店傘下となって営業を継続しています。
ほとんどの店舗は看板も掛け変えずに「黒木書店」の体で営業しているため、「フィルモアレコード」の看板もそのままの店舗もあるのですが、実際現在その屋号が企業内で生きているかどうかはわかりません。

サウンドファースト(ブックファースト)
神戸三宮等、一部サウンドファースト単体の店舗もありましたが、多くはブックファーストのショップインショップの形で展開していました。
2011年に一気にサウンドファーストの看板を外しましたが、それは元々阪急電鉄傘下の企業だったブックファーストが2012年に経営をトーハンに移行するにあたっての措置だったんじゃないかと思います。

TSUTAYA RECORDS(TSUTAYA)
ちょっと他の「書店」とは毛色が異なりますが。TSUTAYAの看板の一部が黄色地になっていて「TSUTAYA RECORDS」の文字が入っている店舗がまだ多少残っていますが、これは自分の知る限りではTSUTAYA店舗の中でも「CD販売」を行っている店舗の表示だったはずで。
それが店内のいろんな改装やら業態の調整やらで現状必ずしもそうはなっていないようですし、そもそもTSUTAYAがヤバい。

およそこんな感じで、看板を外したり縮小したりしているところがほとんどです。
そんな中、小規模ではありますが2019年から新たにCD売り場に独立した屋号を掲げて営業し始めるという、逆張りを開始したのが富山県拠点の中堅チェーンBOOKSなかだ。

富山市郊外のショッピングセンター・ファボーレの店舗に元々あった名無しのCD売り場に、2019年にトオン・ミュージックという屋号を付けて営業を開始します。
その後も2021年に魚津店、2022年にイオンかほく店でも同様に名無しのCD売り場がトオン・ミュージック名義に改装されています。

富山県とかほく市は石川県ですが、双方とも新譜販売店はほとんどありません。
富山県内の大手は高岡市にHMVがあるだけで、富山市内では総曲輪の商業施設の紀伊國屋書店のCD売り場が言うほど大きくなくても県内最大。
石川県内では大手は金沢のタワーレコード、白山市松任の新星堂。そして双方とも個人経営の店舗はほとんど残っていません。


元々富山県を拠点に営業している書店チェーンは文苑堂書店と明文堂書店が二大巨頭。そして双方がTSUTAYAのフランチャイジーでもあります。
ただ、文苑堂書店はCD/DVDレンタルやCD販売を近年すごい勢いで縮小、TSUTAYA名義店舗もBOOKSTOREへの改装を行って、今はCD販売やレンタルはあってもいつでもその取り扱いを切り離せる体制になっています。
明文堂書店はTSUTAYAとの繋がりは現在も強そうですが、そもそも明文堂書店そのものが今年に入って3店舗閉店しているという割としょんぼりした状況。
要するにますます県内から新譜販売店が減っているわけです。


一方、CD売上は間違いなく減っていますが、そんな中で単価は上がっております。
例の米津玄師の映画主題歌CDシングルは、初回限定版が4,800円、通常版が2,200円。
ジャニーズ系等では単価はそれほどではなくても、3種リリースのシングルを「3種セット」で一発予約・購入できるようになっていたり。

また、女子アイドルのCD売上が目に見えて減っている一方で、男子アイドル/ダンス&ヴォーカルグループが戦国時代の様相を呈しておりまして、かつそれらのグループは総じて女子アイドルグループと同様に「CDを積んでもらう」戦略でもってプロモーションを行っています。
このファン層をきちんと押さえることができる店舗であれば、もう少し「CD販売」は生きていけるのではないかと思います。

ということで、BOOKSなかだは県内のCD販売店舗が減っていく中でそこに勝機を見出し、「CDを販売している」ことの周知の強化を行ったのではないか、と思っています。
本当に勝てるかどうかはわかりません。