DEAD OR ALIVEの初期音源集のこと

7月26日にDead Or Aliveの「Let Them Drag My Soul Away - Singls, Demos, Sessions and Live Recordings 1979-1982」がリリースされたのでとっとと買ってきました。

CD3枚組、1枚目には前身バンドNightmares In WaxがリースしたEPの3曲と再リリースされた際の別MIX2曲の5曲、Dead Or AliveがEpicと契約する前にリリースしたシングル4枚の10曲。
2枚目には未発表曲を含んだデモが13トラック、3枚目にはPeel Sessionのスタジオライブ音源8曲とライブ音源2曲。
もう現存するメジャー前の音源を全部詰め込んだような編集盤です。

Pete Burnsは2016年に亡くなっていますが、生前にメジャー前の音源が改めてリリースされたことはほぼなく。
あったのは今回のDisc1に収録されているNightmare In Waxの「別MIX2曲」、これは「You Spin Me Round」がヒットしてからのリリースですが、実際これだけで、それ以外含めてまとめてリリースされることはここまで本当に一度もありませんでした。

その理由としては、マスターを紛失していてできなかった説とか、ピートがこの時期を黒歴史化していた説とか、他人が権利を握っていて頑として動かなかった説とか諸説ありまして、自分はずっと「マスター失くした説」を提唱していました。
ピートは晩年酷く困窮していたようで、様々な権利を売り払ったりしていたのですが、そんなならこの時期の音源を何とかしてリリースすれば、自分みたいなヤツがウホウホ買うので出せばいいのに出さなかったのは、結局「元」がないからだろう、という想像のもと。

今回CDに収録された音源は非常にクリアですが、今の世の中であればレコード音源でもPC取り込んで加工すればこれくらいにはなるかもしれないし、やっぱり何で今になってリリースされたのかはよくわかりません。

Dead Or Aliveにはこれまで「元々ゴスな音を出していたバンドがいきなりメジャーでダンスミュージックにイメチェンして大ヒット」というイメージを思っていましたが、今回改めてこの過去音源からメジャーの1st、そして大ヒットした2ndアルバム「Youthquake」までを通して聴いて、そのイメージが全くの誤りだったことがわかりました。
初期シングルは割とエグい値段で中古屋の壁に貼ってあったりした時期もあり、ほとんど聴いたことがなかったのですが、金出してでも聴いておけばよかった。

メジャー前、初期のNightmares In Waxの音源の時点でもうKilling Jokeっぽい「ダンスミュージック的なリズムへの能動的な意識」を聴くことができますし、「It's Been Hours Now」の別Ver.「It's Been Hours Now 2」は、元曲からメロディ楽器をほぼ剥がした結果ほとんどダブのような聴き心地。
2枚目にはその後のメジャーからの1stに収録されシングルにもなった「Misty Circle」や「What I Want」のデモ音源も収録されていて、それらのトラックは概ね打ち込みのみで制作されていたり。

既にバンド活動の最初期から打ち込みやドラムマシーンを導入していたKilling JokeやSisters Of Mercyの活動に触れ、もしかしたら「Isolation」に象徴されるようにエレクトロ路線に舵を切りつつあった1980年前後のJoy Divisionにも触れていたかもしれません。
MIDI規格とかデジタルシンセサイザーとか、楽器環境が激変する中で、それは極めて自然な流れだと思いますし、何よりもDead Or AliveにはPete Burnsという「華」がありました。

それ故にメジャーに迎えられ、1stではFashionやJohn Foxxを手がけていた新進気鋭のプロデューサーZeus B. Heldを迎えて完全にダンスミュージック方面に舵を切り、2ndではこちらも当時新進気鋭のプロデューサーチームStock Aitken Watermanによって大ヒットに導かれるわけです。

果たしてこれがPete Burnsにとってベストな流れであり彼の人生であったのかどうかということは、その後を考えると正直よくわかりません。
当時の同年代のリバプールのミュージシャンのようにそこそこ売れつつ細く長く音楽を続けていった方がよかったのではないかとも思うのですが、でもやっぱり本人じゃないのでよくわからない。