小田和正@有明アリーナのライブのこと

6月3日は小田和正@有明アリーナ。

最近、ベテランミュージシャンはいつ引退しちゃうかわからないのでできるだけ観るようにしています。
引退宣言した吉田拓郎も、なし崩しに隠居状態に突入した井上陽水もその方針のおかげで観ることができたのですが、小田和正については、ある朝起きて声が出ないと思ったら即やめそうな気がするので、是非とも早いところ観たいと思っていてようやく。

これが、他のミュージシャンとは全く違う、少なくともアリーナクラスでは経験したことがないタイプのコンサートでした。

ライブに行くときは多少なりとも「何これ!?」的なものを期待していくことが、自分にとっては普通になっています。
衝撃とか、圧倒とか、混沌とか、そういうタイプのヤツ。
たとえば同じ「歌うまい」カテゴリに入れられがちな玉置浩二とかは、ライブで観たらもう殴りかかってくるような圧倒的な「歌」だったんですが。

でも小田和正ライブは、それが一切ありませんでした。
当然歌は抜群にうまい。バンドの演奏も抜群。でもそれが何の引っかかりもなくすっと入ってくる。
圧倒的に曲はいいわけですが、それはもう音源で知ってるからライブ時の驚きにはならない。

場も自分が知っているよくあるライブのそれではない。盛り上がっていないわけではない。みんな楽しそうだし。
でも、自分が他のライブでよく知っている会場を飲み込む熱狂的な空気は皆無。温かくもすごくふわっとした空気感が会場全体を包んでいる。

だからそういうことなんだと、はたと気が付きます。
自分の方がここでは異端なのだと。
ここに集っている人たちは、音楽コンサートに、衝撃とか、圧倒とか、混沌とか、そういうものを期待して来ているわけではないのだと。
普段の生活と地続きの、でも少し違う彩りの体験としてのコンサート。

そういう体験として、彼の書く美しいメロディと、最近の割と抽象的な歌詞は凄まじくマッチします。
アホみたいにいろんな音楽にガツガツしている自分のような人間ではない人たちにとってこれはベストマッチなのかもしれない、実際アリーナクラスがすごい勢いでソールドアウトするわけですから、そういう需要はとてつもなくあるのだと。

彼の楽曲で最もレンジの広い「YES-YES-YES」は、もしかしたらもう「連れてゆくよ」のハイトーンの極みはもう出ないのかもしれない、実際今回の彼自身、低い方の音をなぞって、主旋律はオーディエンスに任せていたし。
でも、そういう「すごい」ではなくとも、場として「こういうのが聴きたい」は完璧に全うするというスタイル。

これはこれで「アリ」なのだと、理解した次第。
だから、生で観なきゃわかんないことがまだいっぱいあるんですよ。いや本当に観てよかった。


あとは、さだまさしと浜田省吾。チケット取れる気がしない。