橋幸夫と夢グループのこと

橋幸夫が5月1日にラストコンサートを開催し、明日3日の80歳の誕生日をもって歌手活動を引退します。

デビュー曲「潮来笠」こそ演歌っぽいというか、今に至る演歌の「股旅もの」と呼ばれるジャンルの代表曲ですが、吉永小百合とのデュエット曲「いつでも夢を」やヴェンチャーズ+サーフ的な「恋をするなら」等のヒットを持つ、当時の「歌謡曲」のど真ん中にいた人です。

1980年代末頃「J-POP」の概念が生まれ、フォーク・ニューミュージック的な音楽まではその範疇に何となく含まれるようになっていった中で、明確にその範疇に入れてもらえなかった「歌謡曲」的な存在がその後何となく大雑把に「演歌」的なところにまとめられてしまいました。
その「演歌」には狭義の演歌だけではなく、唱歌的なものであったり、ムード歌謡的なものも含まれることになってしまい、そういう意味で橋幸夫は大変に「演歌」ということになってしまい、アウトオブデートな感じの扱いになってしまったわけですが。

彼のここ何年かの所属事務所は夢グループ。
夢グループ、現在一般的に最も知られているのはフジテレビの夕方のニュースを見ていると流れる、ジャパネットやタレントが出演しては褒めちぎるタイプのテンション高めのテレビ通販に慣れてしまった身には異様としか思えない、独特過ぎる空気感を放つ謎の通販企業としての姿だと思います。

一方芸能系の活動としては、兄弟デュオ狩人のマネージメントをするために「有限会社あずさ2号」といういかす名前の会社を立ち上げ、でも狩人以外のマネージメントもすることになって「夢グループ」に改称して今に至るわけですが、興行としては「同窓会コンサート」がテレビ通販と並ぶ事業になっています。たぶん。

「同窓会コンサート」は、かつて名を馳せた歌謡曲の歌手の方を多数集めてひとつの公演を行う、お年寄り向けフェスのような形態のコンサートですが、お客さんにとってはいろいろ観られてお得感ありますし、一方演者の皆さんにとっては、歌い続けたいがお年を召して一人で長丁場のコンサートはもう無理という立場からすると非常にありがたい存在のようで、まさにWin-Winの企画。
割とビジネス的にも正解ですし、あのテレビ通販の空気もそれくらいのお年寄り以外相手にしていないからああなると考えると割と合点が行きます。

そしてこれ。
“二代目”橋幸夫がファンに初お披露目 ユニット名は「yH2」に

元々2021年10月の段階で引退を発表、その後「二代目橋幸夫オーディション」の開催を発表、その二代目には「はしゆきお」と読める別の漢字を当てる芸名にすることを発表等、ごく一部にですが割と刺さる感じの告知を出し続け、そしてこの5月1日の最終公演日。
4人組「yH2」が二代目としてデビューすることを発表するに至りました。何で二代目で人数増えるねんと、ちょっと思いましたが、でもこれアリだなと思い直しました。「はしゆきお」の別漢字を当てる案は撤回されましたが、そんな撤回も何となく今っぽい。

橋幸夫の後を継ぐのも大変だとは思いますが、J-POPの範疇外に置かれた「歌謡曲」がこの後生き残っていくのは正直それ以上に難しいと思います。
それを実現するためには、恐らく現在最も「大衆的な歌謡曲」をキープして発信し続けている純烈がロールモデルになることは間違いないわけで、こういうグループの形になることも必然じゃないかと思うのです。
1960年代の全盛期、橋幸夫は間違いなく「アイドル」でもあったわけで、それも含めて引き継ぐのだということで。

だから夢グループの石田社長、割と経営理念はすごくシャープじゃないかと思いました。
通販のCM見てて「何だこいつ」と一瞬思っていました。ごめんなさい。