クマリデパート@日本武道館のライブのこと

3/30はクマリデパート@日本武道館。

昨今、一時期より随分と勢いが弱っている女子アイドルグループ界隈。コロナ禍も相まって「ライブアイドル」と呼ばれるグループの活動もかなり制限されたこともあり、なかなかしんどい状況が続いています。

東京都で「声出しなしであれば定員の100%収容してもいいよ」令が施行されたのが2022年の4月下旬、それ以降「初めての武道館公演」を開催したアイドルグループは、2022年9月14日開催の「26時のマスカレイド」と2023年3月15日開催の「ぜんぶ君のせいだ。」の2組ですが、その双方ともが解散ライブ。
ということで、「順調に知名度を上げて動員を上げて辿り着きました!」という健全なタイプの初武道館は、コロナ禍の制限以降では彼女たちが女性アイドルグループとしては初めてということで。

ただ、直前まで各メンバーが「来てね!」というツイートをガンガンに行っている状況を見るにつけ、やっぱりしんどいのかと思いつつ、九段下駅の2番出口から外に出ると、山盛りの人だかり。
「やったじゃん!」と思ったのも束の間、そこにいた人の大半は千鳥ヶ淵の桜を見物に来ていた人たちで、田安門をくぐると割といつも以下。
私は1階スタンド席だったんですけど、1つ席を空けてオーディエンスを配置する、コロナ期によく見た光景。もうそれしなくていいんですけどそうしてるということは、まあそういうことです。
そしてアリーナにはセンターステージ。武道館のアリーナの客席に充てるべき面積を相当に潰してそれを設置するということは、まあそういうことです。
正直なところ、4000人いるかいないかというところ。相当に厳しい。

でも、ライブはすごくよかった。本当によかった。

ここまで「埋まってない日本武道館でのライブ」を割と観てきている方だと思っていますが、だいたいそういう時はみんなMCで「力及ばず」とか「悔しいけど」って言うんですよ。で、それが確実に会場全体の空気感にも影響を与えてしまっている訳ですが。
でも彼女たちは違いました。ネガなフレーズ一切なし。「うれしい!」「楽しい!」「こんな広いところでできるなんて!」「チケットが今までで一番売れた!」という超ポジティブ発言の連発。

実際、彼女たちにも悔しさはあると思うんです。でも我々が彼女たちに期待しているのはそんなMCではなく、いつも無闇にポジティブでハッピーな空気であり、彼女たちも当然それをわかっているからこそのそういう言葉なんだろうと思います。
そういうアイドルとしての矜持が生み出すステージが悪かろうはずもなく、発するそれはもう「多幸感」と呼んでいいほどのそれになり、何回か観たことのある彼女たちのステージの中でも圧倒的なパフォーマンス。

で、観察していて思ったのは、当然6人とも素晴らしいのですが、特にオリジナルメンバーの早桜ニコ&優雨ナコ2名のプレゼンスがこういう場だからこそ強力に見えて。
私は時折言うように「アイドルとは女の子本体を指すのではなく、女の子のそうあろうとする意志を指す言葉である」と本気で思っていますが、オリメン2名のその意志の強さは過去から見てきてわかっているつもりです。
そして後から加入したフウカ&アヤネ、マナ&メイにその意志は確実に引き継がれ、今6人でこんな驚くほどの空気を日本武道館に充満させている。本当にプロの仕事ですよこれ。

病んでる感じとか、サブカル的に少し斜に構えた感じとか、アイドルグループにもいろいろあります。
クマリもサクライケンタ氏のサウンドプロデュースですから、元々王道ではないところからのスタートだったはずですが、今や王道中の王道を突っ走っていて、だからこそこの動員は、今のこの界隈の限界がこれなのかと残念ではあるのですが、でも結構たくさん観ていたはずの他のアイドルグループのメンバーにも何がしかの印象は与えているはずで、それがこれからのアイドル界隈にとっていい影響になればいいなと、本気で思いました。

残念なところを敢えて挙げるとすれば、「幸せハッシン!フロムキッチン 」の際、もしかしたらこういう場だし平野レミ氏生登場もあるかと思っていたところ、スクリーン映像にものすごく雑な画像を重ねた処理で終わったことぐらいです。

あと思ったのは、公式のライブ後のツイートで披露された写真における、空席の存在をここまでうまく処理するカメラマンさんの腕の確かさに感動しました。これも間違いなくプロの仕事です。

もう一点、武道館ライブの応援コメント特設ページに掲載された吉田豪氏のコメントと、これの掲載をOKした運営の両方ともすげえと思いました。