プロレスラーと大相撲力士とプロ野球選手が歌うCD/レコードのこと

中古レコード屋を巡る方は、国内の7インチを掘っているとだいたい落合博満とか増位山のレコードにぶち当たると思いますし、店によっては「相撲」「野球」という仕切り板に遭遇することもあるかと思います。
仕切り板はある意味店のアイデンティティでもありますので、「相撲」「野球」「プロレス」「お笑い」「外国人」とかの仕切り板があるレコ屋は、それだけで自分にとってその店はリスペクトの対象になります。

で、そういう仕切り板が必要なタイプの音源って最近出ていないと思いまして。
この手のレコードはだいたい「テレビを見ていたら出てくる人」に歌わせることで、知っている人は多い分ヒットまでは行かなくとも最低限のアガリは期待できるということが条件かと思いますので、テレビが相対的に地盤沈下した今では望むべくもなく、ということだと思います。

また、その手の門外漢の方が歌うのは割と演歌・歌謡曲系か、そっちでなければフォーク的なところが多かったので、そもそも「J-POP」時代以降に馴染まなかったし、歌い手側が「演歌・歌謡曲系になじんでいない」というもあったのではないかと思います。

Jリーグの選手は企画でコーラスっぽく歌う程度で、選手単独名義で歌うCDがほとんど見つからないのは多分そういうことではないかなあ、と想像します。でも、そういうのがあってもいいじゃないか。


プロレスは、ことレコード売り上げに関しては女子プロレスが強く、ビューティ・ペア、クラッシュ・ギャルズという2大売上巨頭を誇っている一方、男子の方はレスラー名を冠したLPレコード自体は数多くあっても、実況の録音や入場テーマ曲関連が多く、レスラー本人が歌唱したシングルで一番著名なのは藤波辰爾の「マッチョ・ドラゴン」ではないかという状態。

ただ、現在も恐らく団体によっては今も物販の一環として選手単位でのリリースもあるんじゃないかと思って確認したところ、実際キングレコードがそこらへんの業務を受けている様子。
とはいえ、数としては非常に少なく、ビューティ・ペアやクラッシュ・ギャルズが言わせまくっていた時代を考えるとやはり寂しいものがあります。


大相撲力士はやはり演歌が似合いますし、実際増位山関や琴風関などはかなりヒットしたのですが、現状さすがに力士であっても今の20-30代が演歌を好んで聴くということは多くないと思いますし、タニマチ衆のお年寄りに喜んでもらうためにカラオケくらいはするかもしれませんが、テレビで力士が歌うこともなくなりました。
一時は「部屋別対抗歌合戦」等が正月特番として放送される程度にはニーズがあったものですが、現状で力士が人前で歌う機会は福祉相撲の余興程度ではないでしょうか。

とはいえ確認できた限りで、力士が歌のCDをリリースしたのは2016年2月、白鵬関がKaeさんとのデュエットでリリースした「アサガオ」
テレビ番組の企画として震災のチャリティー楽曲として制作された楽曲がCD化されたもののようで、過去の力士勢のレコードとはノリも異なりますが、一応これが今のところ最新のようです。
3か月後の2016年5月には、旭天鵬関も島津悦子さんとのデュエットでCDをリリースしていますが、ジャケットがスーツである通り2015年に引退した後のリリースなので今回ノーカウント。


プロ野球の方もかつては割と小林繁投手や中畑清選手とか割とリリースされていて、あと落合博満選手は奥様とのデュエット曲をリリースする等の俺流をこちらでも発揮しています。
また「12球団対抗歌合戦」が正月特番として放映され、日ハムの岩本投手が「あの鐘を鳴らすのはあなた」を絶唱して界隈の話題をさらうくらいには需要があったのですが、いつの間にか歌う人はいなくなっていました。
確認できた限りもっとも最近の現役選手のリリースは2000年、メジャー移籍直前の佐々木主浩投手がリリースした「break new ground」。小室哲哉プロデュース。
その前は誰だろうと思ったら、案の定というか、1994年の新庄剛志選手でした。

昔は売れたらレコード出すのが当たり前だと思われていた俳優さんですらあんまり音源リリースすることがなくなってしまった今、ここらへん界隈で風穴を開けてくれるスターが出現することを私たちは待っています。
新譜屋の棚でも「プロレス」「相撲」「野球」の仕切り板が見たいんだ。