The Divine Comedy「Charmed Life-The Best Of The Divine Comedy」のこと

私がNeil Hannon=The Divine Comedyを知ったのは1994年。
渋谷HMV3階、レジの前を通って棚が並んでいるフロアの左から3つめの試聴機。それから閉店に至るまでの間、東京中で私が最も信頼を置いていた試聴機での最初の「発見」が彼の2ndアルバム「Promenade」でした。

学生時代、演劇部の先輩の勧めもあって、単館系の映画をちょくちょく観ていたのですが、その流れでPeter Greenawayの映画の劇伴担当だったMichael Nymanにハマりまして。
クラシック的な構成ながらも非常にポップでキャッチ―な旋律に心惹かれ、4部作のサントラが1セットに収まったCDもその先輩から借りたか、三宮の「オヤユビピアノ」でレンタルしたかでカセットにダブって何度となく聴いたものでした。

それから数年後、渋谷HMV3階の試聴機で私が聴いたのは果たして「流麗な歌メロが乗っているMichael Nyman楽曲」にしか聴こえないポップソングの数々。パクりかパクりでないかとかどうでもよくて、だってそれはまさしく「自分がとても聴きたかった音楽」そのものでしたから。
試聴機下のCDを引っ掴み、バンド名を確認して「D」の棚に直行したところ、もう1枚あったのでそれも引っ掴んでレジに直行した次第。

その約2年後、1996年の3月に友人とロンドンに3泊5日で旅行に行きました。
観光地はビッグベンすら見ることなく、レコ屋を巡ってパブでビールを入れてライブハウスに行ってライブ終演後はクラブで踊り倒して朝方帰ってきて昼まで寝る、というサイクルを3回続けただけの酷い旅でしたが、到着したヒースロー空港のロビーで入手したフリーペーパー「TIME OUT」のライブスケジュールをホテルで熟読していて見つけた「The Divine Comedy」の文字。何という奇跡。
電話で予約入れられる自信はなかったので、レコ屋巡りの合間にKing's Cross駅近くのライブハウスまでチケット買いに走り、翌日ドキドキしながら改めて向かうわけです。

古い劇場を改装したようなライブハウス。300人程度入るくらいに半分くらいの入りか。
それでもNeil Hannonは「ロンドンでの初めてのワンマンショーなんだ」とか「いい新曲ができたんだよ」とか言いながら終始機嫌よく、4名の小所帯ながら素敵な演奏を聴かせてくれました。
終演後は物販で日本では見たことのない彼のレコードを場にある全種購入して帰途につきました。
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そしてその半年後、ライブで聴いた「いい新曲」だった「Something for the Weekend」がUKチャートの上位に躍り出て、心底ビビることになるのですが。

そういう奇跡的な出会いもありつつ、でも何よりも彼がずっと作品を発表し続けてくれたおかげで、彼の音楽をずっと聴き続けてこれました。
で、今回のオールタイムベスト

こういうオールタイムベストの場合、洋邦問わずリリース順に並べるのが常ですが、Neilはそんなことしない。
ひたすら彼の美意識に従って選ばれ並べられた結果、さすがにヒットした曲は網羅されているものの、シングル曲が全部入っているわけでもなく、代わりにアルバム内の小曲的な楽曲が収録されていたり。
結果として2枚組24曲が、2枚のオリジナルアルバムのような美しい流れで披露される形。ベストのための新曲も出色の美メロ。
そして大好きな「Promenade」収録曲の中でも名曲、もし自分が「生涯のベスト10曲を挙げろ」という拷問を受けた際には、苦悶しつつも確実にその1曲には入れるであろう「Tonight We Fly」がラストを締める。
最高じゃないですか。

前にThey Might Be Giantsの新譜のことを書いたとき「少なくともUSでは」という語を敢えて入れたのは、UKにThe Divine Comedyがいたからです。あとPet Shop Boysな。