2011-2013年、イオンでのタワレコ VS HMVのこと

2021年秋、100均のキャンドゥがイオンの傘下に入って、先日には新規出店強化を打ち出しました。
一方100均業界トップのダイソーは気が付くとPB商品をセブンイレブンで展開を開始していました。確認してみると2020年から一部店舗で始めていたものを大々的な展開を開始した様子で。

現状ダイソーはイオングループの約400店舗に入店しているのですが、それらの既存店舗を追い出すことはしない旨、イオン&キャンドゥ側は言っているようです。
実際あからさまに追い出すようなことがあれば、凄い勢いで独禁法に抵触しますのでできないのですが、でもこの「イオン vs セブン&アイ」の構図、既視感があります。
約10年程前にタワーレコードとHMVの間で起きていた事象を何となく思い出しまして。


タワーレコードは1980年、HMVは1990年に日本上陸し、当初は大都市圏の駅近の商業ビル内に出店を行いながら店舗網を拡大していったのですが、2000年の大店法廃止→大店立地法施行によって日本中の郊外に大規模ショッピングモールが次々オープンする流れに乗っかって、爆発的に店舗網を拡大していくことになります。
都市型商業ビル系を除くとこんな感じ。

■タワーレコードのイオン系列への出店
1999/09:イオン倉敷SC
2000/09:イオン岡崎SC
2000/12:イオン高知SC
2001/06:イオン新居浜SC
2001/07:イオン東浦SC
2001/12:イオン大和SC
2002/06:イオン鈴鹿SCベルシティ
2002/09:イオン高岡SC
2002/10:イオン若松SC
2003/03:イオン下田SC
2003/07:イオン熱田SC
2003/08:イオン盛岡SC
2003/10:イオン津田沼SC
2003/11:イオン香椎浜SC
2004/04:イオン旭川西SC
2004/08:イオン上田SC
2004/10:ダイヤモンドシティ・プラウ(堺北花田)
2004/11:イオン北戸田SC
2004/11:イオン八代SC
2005/04:イオン八千代緑が丘SC
2005/04:イオン直方SC
2005/04:イオン新発田SC(2010/01閉店)
2005/04:イオン苫小牧SC
2005/05:イオン宮崎SC
2005/05:イオン千種SC
2005/06:イオン浜松市野SC
2005/11:イオン水戸内原SC
2007/02:イオン八代SC
2007/10:イオン新潟南SC
2008/10:イオンレイクタウン(越谷)
2009/09:イオン鹿児島SC

■HMVのイオン系列への出店
2003/08:イオン扶桑SC
2003/10:イオン柏SC(青森)
2003/12:イオン太田SC
2004/08:イオン浜松志都呂SC(2010/08閉店)
2004/12:イオン姫路大津SC(2010/09閉店)
2004/12:イオン与野SC
2006/03:イオンナゴヤドーム前SC
2006/04:イオン千葉ニュータウンSC
2006/04:イオン浦和美園SC
2006/10:イオン高崎SC
2006/11:ダイヤモンドシティ・ミュー(武蔵村山)
2007/02:ダイヤモンドシティ・エアリ(名取)(2010/09閉店)
2007/07:イオン各務原SC
2008/03:イオン大高SC
2008/04:イオン仙台泉大沢SC(2010/09閉店)
2008/08:イオン上里SC(2010/08閉店)
2008/11:イオンモール草津(2010/07閉店)
2009/05:イオン土浦SC(2010/09閉店)
2011/07:イオンモール伊丹テラス
2011/07:イオンモール木曽川キリオ
2011/08:イオンモール成田(WAVEから転換)
2011/08:イオンモール秋田(WAVEから転換)
2011/08:イオンモール川口キャラ(WAVEから転換)
2011/09:イオンモール羽生(WAVEから転換)
2011/10:イオン浜松市野SC
2011/11:イオン八千代緑が丘SC
2012/04:イオンモール直方
2012/04:イオンモール船橋
2012/04:イオンモール福津
2012/10:イオンモール岡崎
2012/11:イオンモール高岡
2012/12:イオンモール水戸内原
2013/03:イオンモール春日部
2013/03:イオンモール高知
2013/04:イオンモール熱田
2014/12:イオンモール岡山

こんな感じで両チェーンとも2000年代以降、イオンモールをはじめとした大型モールへの出店によって店舗網を拡大していくことになります。

その間にタワーレコードは、

2002/10:アメリカ本社から離脱
2005/11:NTTドコモが筆頭株主に
2011/03:セブン&アイが筆頭株主に
2012/07:NTTドコモが再度筆頭株主に

HMVは、
2007/08:英国本社から離脱
2010/10:ローソンの完全子会社に

こういうふうに外資系ではなくなって、資本関係が変わっていきます。

HMVはローソンの子会社になる前の2010年頃に非常に経営状況が悪くなっておりまして、続々と店舗を閉じておりました。旗艦店だった渋谷店の閉店も2010年8月です。
しかし、ローソンの子会社になることで後ろ盾を得て再度積極展開に転じ、とりあえず減った店舗を取り返すべくちょうどその時期に経営破綻したWAVEの店舗の相当数を引き取ります。
それでもまだまだ2010年までに閉店した数を補うまでには至りません。

ここまでは前提、ここからが本題。
キーになる出来事は2011年3月、タワーレコードの筆頭株主がセブン&アイになったことで、「セブン&アイグループのチェーン店舗がイオンの中にある」状態になります。
ローソンはかつてはダイエーの子会社でしたが2001年以降は三菱商事グループ。それでもミニストップと提携したりと比較的「親イオン」的な立ち位置。

現在のダイソー vs キャンドゥの場合は「イオングループの競合チェーンがイオンの中にある」状態で、ダイソーは2020年以降セブンイレブンと提携を結んでいますので、正味かなり近い状況であったわけです。

セブン&アイ側が、自社グループのチェーンがイオン内にあることを嫌ったのか、イオン側がセブン&アイグループの店舗が自社内にあることを嫌ったのか、どちらかはわからないのですが、セブン&アイが筆頭株主になって以降、結構な数のタワーレコードがHMVに置き換えられていくという事態が発生します。

2011/08:イオン浜松市野SC、タワレコ→HMVに転換
2011/09:イオン八千代緑が丘SC、タワレコ→HMVに転換
2012/03:イオンモール直方、タワレコ→HMVに転換
2012/09:イオンモール岡崎、タワレコ→HMVに転換
2012/09:イオンモール水戸内原、タワレコ→HMVに転換
2012/10:イオンモール高岡、タワレコ→HMVに転換
2013/02:イオンモール熱田、タワレコ→HMVに転換
2013/02:イオンモール高知、タワレコ→HMVに転換

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同時期、数は多くないですが、セブン&アイグループの商業モールであるアリオに入っていたHMVがタワーに置き換えられる事例も発生します。

2012/02:アリオ川口、HMV→タワレコに転換
2013/02:アリオ八尾、HMV→タワレコに転換

ただ、2013年2月あたりでこれらの動きは止まります。
恐らくですが、2012年7月にNTTドコモが再度筆頭株主になったことで、直接的な対立の構図が薄まったことが背景にあるのかと思います。
この時期に既にテナント契約を継続しないことが決まっていたであろう店舗は閉店したものの、2013年3月以降にこのような転換は一切なくなっています。
イオンモール盛岡では、一旦は2012年8月20日に閉店が決まって7月に発表したものの、8月2日に閉店の撤回を発表して営業を継続したという事例もありました。

2013年3月以降、転換がなくなると同時にイオンモールへのタワーレコードの出店もなくなります。
2015年1月にダイエーが完全子会社化されたことでイオングループとなったオーパに、2015年10月にタワーレコード藤沢店、2017年10月にタワーレコード高崎店がオープンしたりと、完全にイオンと切れているわけではないのですが、以前とは比べ物にならない状態に。

セブン&アイグループのアリオ系のモールには出店していたのですが、2016年にアリオは新規の開発を中止、この報道の後、2017年にオープンしたプライムツリー赤池には結局出店せず。
そして現在はイオンだのセブンだのタワーだのHMVだの言っていられない状況。

正味、以上の流れから察するにこの「タワー/セブン VS HMV/イオン」は、どちらかといえばセブン側からのアクション強めではなかったかと思っていますし、ダイソーが凄い勢いでキャンドゥに置き換えられるとは考えにくいですが、それでも久々に「セブン VS イオン」のグループ対決っぽい構図になっておりますので、10年程前のことを思い出してまとめてみました。

つうかセブンは既に本体が相当追い詰められているので、そっちの方が気になるっちゃ気になる。