They Might Be Giants「Book」のこと

洋楽を聴き始めてからいろいろありました。
パンクの全盛期に遅れたことに少し劣等感もあったりしたのですが、ちょうど多感な時期にハウスやらテクノやらマンチェスターやらシューゲイザーやらグランジやらメロコアとかがどかどかと出てきて、そりゃ面白かったわけです。

が、じゃあ誰が好きなんだと問われたら、少なくともUSではそういう新たなシーンが勃興する前からいて、様々なブームを経てなお根本的なところは何も変わっていないThey Might Be Giantsが結局ずっと一番好きなんじゃないかと、思うのです。

眼鏡のジョンと歯茎のジョンの2人組。
1982年結成、ソノシートを電柱にぶら下げたり、留守電に曲を吹き込んで新聞広告に電話番号を掲出したり、インターネット前からインターネットみたいなことをしながらずっと活動し続けている人たち。

自分が彼らを知ったのは、深夜の音楽番組「ポッパーズMTV」でかかった「Don't Let's Start」のMV。いたく衝撃を受けまして、それ以降所謂オリジナル・アルバムは全部追っているつもりですが、「子供向け」作品も多く作っていたりとにかく多作な人たちなので、揃っている自信はありません。
というか彼らが長い活動期間で得たグラミーは唯一「子供向け音楽アルバム」部門のみなので、アメリカの世間的にはむしろそっちの人なんじゃないかとも思ったりもします。

で、今作「Book」。子供向け作品を含めれば、1986年の1stアルバム以降3年空いたのは初めてです。正味その時点でどうかしてるのですが。

アルバムとしてはいつもそうではあるのですが、普段以上に「できた曲を並べた」感がハンパない。
シングルやリード曲を狙った「メロディにフック効きまくり」の曲も、敢えてミニマムな構成にした曲もなく、若干真面目な歌詞が多めなくらい。逆に言えば「彼ら史上最強に自然体に近い」アルバムと言えるのかもしれません。
恐らくこれもコロナ禍による作用だとは思うのですが、かといって悲壮な空気感は一切ない、そこは普段通りの彼ら。
さすがに40年近くやってきたこと、何があってもブレることはなかったようです。

ので、「最高!」という感じではないのですが、アルバムとして通して聴くには割といいアルバムなんじゃないかと思っています。
というか、いきなり枯れた音になったりしない限り、ずっと好きです。枯れた音になったらそれはそれでいいかもしれないけど。