五木ひろしのこと

はい、来たるべき時が遂に来ました。

紅白連続出場50回の大ベテラン、ここで卒業ということになりました。
言うても昨年の登場の際、クドいくらい「区切り」「区切り」と強調され、歌唱中には過去出場の映像が総集編のようにインサートされ、逆にあれで終わりでなかったら何なのレベルの状況ではあったわけですが。

それでも彼は、過去に出場しなくなった演歌勢のベテランとは明らかに異なる存在ではありました。
まず、彼は長野五輪の際に「千曲川」を選んだり、その年亡くなった作家の先生の楽曲を追悼として選んだことはありましたが、そういう特別な理由がない限り本当に「その年発表した楽曲」を歌い続けた人でした。
50回出場して41曲歌っているという被ってなさっぷり。

元々最初のヒット「よこはま・たそがれ」は作詞:山口洋子、作曲:平尾昌晃という、当時としては所謂「演歌」とは異なるフィールドの作家陣による、演歌と呼ぶよりは「歌謡曲」と呼んだ方が近しい楽曲。
というかロカビリーのシーンからデビューして、その後も「カナダからの手紙」等ポップスシンガーでもあった平尾昌晃が初めて演歌的な楽曲を手掛けたのがこの曲だったということもありまして。

以降、楽曲提供した方の名前を見ていくと、猪俣公章・遠藤実・岡千秋・古賀政男・船村徹・星野哲郎といった演歌の大家から、秋元康・阿久悠・芹澤廣明・筒美京平・都倉俊一・松本隆といったポップス系をメインフィールドにしている作家、宇崎竜童・岡林信康・小椋佳・玉置浩二・つんく・永井龍雲・南こうせつといったフォーク・ニューミュージック・J-POP系の自作自演の方と、凄まじい幅。
こんだけの幅の楽曲歌った人は、彼以外に果たしているのでしょうか。

楽曲のタイプとしても歌謡曲的な空気感の曲が割と多く、他にはボサノバ系やラテン系等、海外の音楽に寄せた感じのものもあって、実は「ド演歌」的な楽曲はそんなに多くなかったりとか。

更にコンサートになると、自曲の幅広さに輪をかけて、サザンから安室奈美恵からPuffyから「ピクミンの歌」までをカバーして歌い倒す怪物っぷり。

彼のモノマネをする人はだいたい右手のこぶしを握ってリズムを取るあのポーズをするわけですが、あれも完全に狙った結果「代名詞」と言える存在にまでなったもので、これは雑に言えば最近のK-POPとかの人たちの「〇〇ダンス」のはしりのようなものと言ってもいいかもしれないのです。雑に言えば。

要するに彼は「演歌歌手」であること以上に「流行歌を歌う人」であることにこだわり続けた人であり、だからこそ元々は「その年に流行った曲の歌手が一堂に会する」場であった紅白歌合戦で「その年の曲」を歌うことに執着し続けたのであろうと思うのです。

そして、様々に嗜好が細分化して「老若男女みんな知ってる流行歌」が極限まで減ってしまったこの時期に、いわば「最後の流行歌歌手」が紅白から去るというのは、ある意味非常に象徴的でもあります。

というか、そういう人が完全にいなくなって、果たして紅白歌合戦が今後どういう形になっていくのか。まあ現状半ば「みんなが好きな懐メロ大会」ではあるのですが、五木ひろしがいなくなることで完全に「元々の意義」が消失するわけで。
今後新しいキーを見つけ出すのか、よくわからないグダグダなまま、ただ続いていくのか。後者の可能性が非常に高いというか現状でほぼそうなっているのですが、それでもそういうグダグダが嫌いではないので、毎年観ているのです。
ただ、実家でもだんだんキツくなってきているので、そろそろ録画したのを後から見ることも考えなくてはいけません。割と本気で。