最近出たカバーアルバム2種。
ケラ「まるで世界」はアナログで購入。色がとてもきれいなカラーヴァイナル仕様。要するに「モノ」としてとても欲しかったんです。
有頂天の「心の旅」「アローン・アゲイン」、LONG VACATIONの「エノラ・ゲイの悲劇」「シェリーに口づけ」、ナイロン100℃「1979」のサントラの各曲等々、過去から数多のカバー曲を送り出してきたケラ氏ですが、カバー曲に対する姿勢は実に一貫しています。
「絶対元曲っぽくやらない」という頑なな姿勢。勝手に訳詞をつけ、勝手に譜割を変え、すさまじくオリジナリティ溢れる、でも完膚なきまでに破壊するところまではいかず、きちんと「この曲だ」とわかる塩梅に落とし込むその手腕。
元曲へのリスペクトだかなんだか知りませんが、ほとんどコピーみたいなクソつまらないのを「カバー」と呼ぶくらいならむしろやらない方がマシだと思っている自分にとって、彼のその姿勢・手腕は正直理想的であります。
そして今作、そういう自分にとって実にいい塩梅の音源が並ぶ中、今回はその選曲までが絶妙。どメジャーな曲は「中央フリーウェイ」と「時間よ止まれ」くらいですが、「みんなのうた」から4曲、他は五つの赤い風船やじゃがたら、ルースターズ等、80年代インディーズその他をそこそこ聴いていたという自分レベル、要するに今彼の音源を手にするくらいの人間であればほとんど「聴いたことはある」というあたりの曲ばかり。
非常に楽しく気持ちよく聴けます。
ただ、今回はアナログで購入したのですが、アナログのみ収録のSIDE-D楽曲の、突然段ボールとあぶらだこはわからなかった。実は私、この2バンドはきちんと通っていません。
そういう、不勉強なところまで洗い出されてしまうのはなかなかに怖い。って、突然段ボールの方はファーストシングルのB面の曲とか、それは無理だ。
一方、「風街に連れてって!」は、既にちょいちょい出ている松本隆トリビュートアルバムの中でも、その参加陣の豪華さから非常に本命的な盤です。
全体的なサウンドプロデュースは亀田誠治氏。
彼は人によっては無茶な音作りもしますが、基本的にはバランス型のプロデューサーですので、あんまりサウンド面の期待はしていなかったのですが、全体を通して実際無茶なアレンジは皆無なものの、作詞家のトリビュートアルバムとして、その歌詞というか「歌」を最大限に重視した結果こういうアウトプットになったと考えると、非常に納得度の高い出来。
特にほぼピアノのみのアレンジに三浦大知の声が乗る「キャンディ」とか、ブラスを前面に出した普段の彼らしいアレンジで歌われる横山剣の「ルビーの指環」あたりは抜群。
逆に宮本浩次の「September」あたりは、悪くはないものの何故彼なのかその必然性がいまいち理解できなかったり。
でもやっぱりベストトラックはB'zの「セクシャル・バイオレットNo.1」。馬鹿かっこいいのこれ。
この曲はVo.稲葉、G.松本なのは当然として、B.亀田誠治、Dr.玉田豊夢という編成なのがとてもレアで、それだけで何かいいもの聴いた気持ち。
全体通して「うわーすげえ!」というタイプの音ではないものの、純粋に歌ものアルバムとして聴くと、悪くない感じです。