最近のJ-POPのタイトルや歌詞のこと

所謂「なろう系」小説のタイトルが長いという話。
それを知った時、最初は「最近の若い読者は読む前に内容ができるだけわかった方がいいのかな」くらいに思っていたのですが、実際に「小説家になろう」サイトに掲載するにあたって、できるだけ多くの人の目に留まるには、「検索での「当たり」判定を可能な限り大きくする」=「多くのワードが検索対象になるように設定する」=「タイトルに検索されそうなワードをできるだけ多くぶち込む」という、非常に実利的な理由があることを知って大変に合点がいきました。
最近のアダルトビデオのタイトルがやたら長いのが多いのも、FANZA等での検索対策としてのそれである、ということもそこから容易に推測できまして、非常に勉強になりました。

ということは、サブスク時代の今、J-POPのタイトルもそうなっていくのではないか、と一瞬想像したのですが、考えてみれば検索されるのは着うたの頃から当たり前のようにありまして、そこに明確にアジャストした結果と判断できるのは「さくらソング」の数々くらいで、あとはダニエル・パウターの2005年のヒット曲「Bad Day」の邦題「バッド・デイ~ついてない日の応援歌」しか思い付かない。

で、それ以降そういう感じのある意味エゲツないタイトルの楽曲は目立って多くなる気配はなく、歌詞の内容についても、着うたが流行った時期に大量に現れた、「恋愛あるある」的な、内容が具体的な割には全体の感触としてはふわっとしたラブソングは、現在もまだあるにしてもそんなマジョリティでもなくなっています。

そういう歌詞は要するに、マスに乗ることを前提にして最大公約数的なところをターゲットにしたが故のそういう構成であり、もう2020年代にはそれだけではしっくりこなくなっていて、歌詞でゲインを得ようとすれば、ずば抜けてキャッチーなフレーズを持っているか、一聴して尖っているが故に刺さりやすくなっているかしないと難しく、結局音楽はタイトルや歌詞のみではなく、メロディやアレンジも併せて認識されるものであるな、とは思うのですが、とはいえ、いつまでもそうでもないような気もします。

例えば様々な楽曲を解析して「最も今刺さりやすいワーディング調査」みたいなことはどこかで既に成されているような気もしますし、もしかしたら最近バズっている曲のどれかはその成果なのかもしれません。
今後も技術は進んでいきますし、歌詞以外も含めて「マスに乗ることを前提にして最大公約数的なところ」ではなく、「最近バズった言葉とメロディとアレンジを解析した結果の最大公約数的なところ」は今後現れることになるのであろうとは思っています。

そうでなくても、YOASOBIの事例はSONY運営の小説投稿サイト「monogatary.com」に投稿された小説で直接マネタイズするのではなく、そこからひと捻り加えた結果音楽を売るためのビジネスモデルとして成立しましたし、サブスク解禁を渋っていた頃にはまったくもって時代に遅れているように見えていたメジャーレーベルも、ようよういろいろ今に合わせてきているので、今後「すげえ!」と思うのとか「それはないだろ…」と思うのとか、出てくることになるのです。

とりあえず、SONYを筆頭にしてワーナーとかもそういう今の状況を把握している感はありますが、90年代に頭角をあらわしてきた時は最先端だったはずのavexが現状全くそこらへんにアジャストできていないので、頑張れ。