GEO SPEEDが閉店のSPEEDもなかなかだったこと

CD/DVDレンタル店がいよいよ厳しくなってるという話は以前から無闇にしているわけですが、各企業ぼんやりしているわけではありません。
TSUTAYAはもうそろそろレンタル業には見切り付けそうな勢いで、とはいえ9割がフランチャイズなのでそこらへん話しながらだと思いますが、店舗網を徐々に縮小の方向に持って行っているようです。
GEOはCD/DVDとゲームという範疇から、総合リユース業の方に転換し、小規模な「GEO」名義店舗から比較的規模の大きい「セカンドストリート」名義への置き換えを進めています。

とはいえゲオ・コーポレーションは、現状で社が持っているリソースから言って、BtoBに力を入れているCCCのような方向には行きようがありませんので、レンタル業についても生き残りの模索を行っています。

その一環として生まれたのが「GEO SPEED」という業態。
GEOからの説明はこちらを見ていただくとして、雑に説明すると、スマホアプリで観たいDVDを注文して指定の店舗を訪れて専用ロッカーを開けると、そこには注文したDVDが入ってるよ、という店舗。

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客側からすれば、店員を介するとちょっと恥ずかしいDVDとかも気にせず借りられる、通常のGEOと料金体系が異なっているため普通に取り回せば多少料金が安くなりがちで延滞金もあまり気にしなくていい、というメリットがあります。
一方店舗側からは「人件費を削減できる」という圧倒的なメリットがあります。2人オペで充分、時間帯によってはワンオペも可能というスタイルです。

先んじて東京都に2店舗、2019年10月24日に調布市仙川に、同年11月27日に世田谷区祖師ヶ谷大蔵に出店し、これからどう展開していくのだろうと思っていたのですが、まさかの展開。

GEO SPEED 仙川店、2020年3月22日に最終貸出、31日に完全閉店。

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最近で「オープンしてすぐ閉める」店舗といえば、駅から比較的遠い場所にあったTSUTAYAの綾瀬店が駅前のBOOKOFF内にTSUTAYA綾瀬駅前店として2019年7月1日に移転オープンしたものの、この3月に閉店するというのもありますが、CD/DVDの販売・レンタル含めて、オープンから閉店まで半年を切ったのを見たのは記憶のうえでは初めてです。
この期間で我慢もせずに見切って閉店を決定するって、正直どんだけ客が入ってなかったんだって話ですよ。

先ほど客側のメリットを紹介しましたが、後出しならどんどん言えるデメリット。
「店で探す楽しみがない」とか「クレジットカード登録しないといけない」とかもありますが、恐らく最大の理由は「スマホがないと利用できない=お年寄りの切り捨て」だったのではないかと思います。
「ある一定層より上の年齢の方をヘビーユーザーとして取り込む」ことは今後の店舗型ビジネスにとっては必須に近い生き残り条件だと思うのですが、仕組みの時点でその年齢層とミスマッチが起こっていたのではないかと。

TSUTAYAが恵比寿やら豊洲やら武蔵小杉の店舗をここ数年でバサバサ閉じていますが、それは「その地域に住んでいる人間の多くはライフスタイル的にネットでストリーミングに向かいがち」であることを認識した結果だと思っているのですが、そういう意味でも祖師ヶ谷大蔵・仙川という地域のチョイスはどうだっただろうか、という気もしなくはないですが。

というわけで、アプリ開発が伴う業態っていうのは店舗数が増えれば増えるほどスケールメリットが享受できるのですが、これどうしましょうか。アプリの開発費くらいは回収できたのでしょうか。
祖師ヶ谷大蔵の場合は、2019年1月にTSUTAYAが閉店し、11月には首都圏ローカルチェーンのドラマも閉店、わずかな間に「レンタル」を完全に失った地域になってしまった直後にGEO SPEEDがオープンしましたので、仙川よりはまだ需要は残っているかもしれません。

が、アプリ周りの保守運用考えると、1店舗で満足のいく利益が出るというのは考えにくいので、さてどうなるか。
今一生懸命3店舗目以降に見合う土地を探しているのか、祖師ヶ谷大蔵の命運を検討しているのか。
どっちにしろ、あんまり素敵な未来は見えないっす。