BAROQUE@ハーモニーホール座間のライブのこと

1月10日はBAROQUEのライブ@ハーモニーホール座間。
昨夏のアルバム「PUER ET PUELLA」が大変に素晴らしく、ライブ行かなあかんと思って日程見て、ツアーファイナルがホールだったので、ここだと思いまして。
でも座間だけど。正直初めて日程見た時「は?座間?」と声が出た。

座間だったのはギターの圭くんの故郷ということもあったのでしょうが、それ以前に「絶対にホールでライブをやる」ことが意図としてあったのだろうと思います。そう思うそういうライブ。
ハーモニーホール座間は1300人強の箱ですが、同じサイズのライブハウスではステージ領域が小さすぎてできない演出をそこここにぶっこんでくる、という意味で。

ライブ本編はおよそ三部構成のような作り。
頭はほぼ前作までの楽曲で構成された形で、でも場としてそのライブの色を作っていく。
そして透過スクリーンが降りてきて映像と共にガッツリ作り込んだ世界観でもってぐいぐい見せ場を作り込んでいく。そして一番いいところでステージ後方にこちらに向けていた白熱電球のサスライト、50近く吊り込んであったんじゃないでしょうか、それが一斉に、光以外何も見えなくなるレベルで発光するというえげつない演出。舞台上の演者の皆さんにはたまったもんじゃない温度でしょうが、でもLEDの温度だったらここまで心に来ない。光とそして熱もガンガン来る。そこで鳴っている壮大な音。ここまで本当に「やりたい音楽をその音楽以上に『届く』形で見せる」ことに成功していて、正直ビビる。
ただライブで演るだけでも間違いない楽曲群を、ここまで伝えにかかってくる「本気」。

それ以降は、緩めのMCを挟んで明るめの曲を中心に。おっさんは作り込んだまま最後まで行ってほしいなあという気持ちはありましたが、きちんとかっこよくてきちんと盛り上がれる場は外さない、ということだと思います。ここは「ビジュアル系の矜持」なのでしょう。

そしてアンコールの最後にようやく、今回のアルバムのリード曲「PUER ET PUELLA」が来て、改めて場を締めて大団円。
自分たちがミュージシャンとしてやりたいこと、ファンから求められている自分たち、その双方に対して誠実に落とし前を付けた「優れた楽曲を多数持つビジュアル系バンド」としての、極めて優れた表現でした。

そして、弦や様々なシーケンスは乗っかってはいるものの、このバンドは全くもって「ギターバンド」である、ということがライブを観て非常によくわかりました。
刻むギター、歪むギター、泣くギター、ギタリストが好んでプレイするスタイルはありますが、圭くんのギターは曲毎どころか1曲の中でも刻み、歪み、泣く。そして「泣く」でも70年代ロックからBon Iverの「Perth」のようなところまで、その間をつなぐような泣き方をするのです。
これはこのバンドが、決まった音楽性でもってずっと続けているのではなく、その時々で自分が好きな音楽があって、その音楽性を吸収しながら進んできたからで。自由で、そういう意志のあるバンドです。もうそれだけでもOKじゃないですか。

だから、これ困ったなと思うのは、このJ-POP全領域込みで考えても相当に高い音楽性と技術を持つこのバンドが、こんな1000人そこそこの動員でもってやってるのってどうなの、ということなんですよ。

アルバムのことを話した時に「ヴィジュアル系の外にアピールするには」みたいなことを言っていたのですが、でもこれ違うぞ、と帰り道に考えていました。
まずアピールすべきは、BAROQUE推しじゃないバンギャだ。

バンギャパワーはゴールデンボンバーがお茶の間のスターになる前段を首尾よく整えたり、同じくお茶の間のスターとなったGACKT先生を長期にわたって音楽面を支え続けたりと、本気になるとなかなかエグいものがありますし、当然ライブをいろいろ観てますので、その審美眼も高いはずです。であれば、BAROQUEの今回のライブのレベルであれば少なくとも「エゲツないことやってる」ということは伝わるはずだと思うのですよ。

ただ、彼らが所属するフリーウィルは、ストリーミングも解禁していないし、V系が多数出演するフェス的なところにもこれまでは出ていかない方針、という点が正直厳しくはあります。
何とかして「伝わる」ところに行ってほしいと、心から思います。