川本真琴「新しい友達」のこと

川本真琴のニューアルバム「新しい友達」を買ってきました。

ソニーというレーベルは、きちんと売ってくれることが多いのですが、売るために無茶することが他のレーベルより多めです。
元々自作曲を歌っていた人に無理くり他人曲をあてがってみたり、バンドに全然無関係の人間をメンバーに突っ込んでみたり、メンバーを強制的に入れ替えたり。

そしてソニーの得意技が渡辺美里のヒットで掴んだ「アイドル界隈でも行けるルックスの女性をアーティストとして売る」戦法。
それはうまくいくと大変に人気者になってよいですのが、中にはそういう売られ方に馴染まない方もいらっしゃいます。yuiさんとかもそうですが、まさに川本真琴さんもその事例。しかも前述の「元々自作曲を歌っていた人に無理くり他人曲をあてがって」デビューするパターンで。それでも誰に書いてもらうかは自分で選ぶことができたようで、結果として岡村靖幸楽曲でのデビューになったようですが。

しかし諸問題発生し、ソニーに約6年所属してシングル8枚、アルバムに至っては2枚で契約終了。それ以降は独立して神出鬼没的に様々な名義でもって、主にインディーズで活動を継続することになるわけですが、今回のアルバムは「川本真琴」の純粋な単独名義としてはソニーの2ndアルバム以来、実に18年ぶりということになります。

その18年の活動やインストVer.の盤が標準で付属していることからも、自身を「シンガー」ではなく「音楽の作り手」として捉えていて、そういう意識で、でも「川本真琴」の名義でリリースする音源。
まさにそういう音です。
峯田和伸、七尾旅人、野村陽一郎、林正樹、豊田道倫、山本精一、マヒトゥ・ザ・ピーポー等、多岐に渡りつつも一癖あるメンツを集め、日向坂46のシングル表題曲の作編曲をした野村陽一郎アレンジの楽曲から豊田道倫がギター担当で峯田も歌うバンド然とした曲へ、以降ポストロックみたいな音像の曲だったりボサノバっぽかったり昭和歌謡っぽかったり、様々なジャンル的な音にぶっこんでるというか、正直滅茶苦茶なんですけど、表現として面白いくらいに筋が通っているので全くブレがない。

ソニーでの迷いとかしんどい思いは彼女の人生にとってよかったのか悪かったのか正直わからないんですけど、少なくともそれを経てここまで来て、今こういう音を出しているということであれば、少なくとも私にとってはマイナスではない。勝手にそう思っています。

で、錚々たるメンツが参加しているアルバム、曽我部恵一さんはアルバムのクレジットには名前はありませんが、何故かMVで走っています。