最近ふと思ったのが、最近日本はガールズバンドやメンバーに女性が混じっているバンドが非常に多いのに、海外それほどでもねえな、ということ。
特に最近の日本には「女性メンバーはいるけどフロントじゃない」バンドがすごく増えている気がするのですが、そういうバンドは最近の欧米には少なく感じます。
Talking Heads、Thompson Twins、The Dream Academy、New Order、Sonic Youth、Pixies、Smashing Pumpkins(初期)、My Bloody Valentine、Suede(デビュー前)、Ash(中期)、The White Stripesと、80-90年代あたりには有名バンドにもそういうスタイルそこそこ見かけたのですが、21世紀に入ると最近は本当にいない気がする。The Zutons、Johnny Foreigner、Grouplove、Los Campesinos!、ALVVAYS。さくっと思い出せるのこれくらいでしょうか。いいバンドはたくさんいますが、メジャー度で言うと全然違う。
ここら周りをよく知るために、3つのパターンで「女性がバンドにかかわる最古」をできる限り調べてみました。昨日Twitterにこの件投げてみたら貴重なご意見いただけました。ありがとうございます。
<欧米>
最古の「フロントじゃない女性メンバーがいる」バンド:Velvet Underground(Maureen Tucker)(1967)
「世界初のオルタナティブ・バンド」と言ってもいいVUですが、こういうところも独特、と言っていいのでしょうか。しかもバスドラが上向いていたり立って叩いていたり、ドラムセッティングもオルタナティブ。
【3/7追記】
1962年にイギリスで結成されたThe Applejacksのベーシストが女性という情報をいただきました。
同時期のブリティッシュ・ビート系のバンドには他にも女性メンバーのいるバンドがいそうです。ここらへんちゃんと聴かなきゃ駄目だな。
最古の「フロントが女性の」バンド:Ike & Tina Turner Review(1960)
これは本当に確認できた限りで。元々Tina Turnerも前にいたヴォーカルからメンバーチェンジの形で入ったという話ですし。ただこの頃は「ソロ歌手とバックバンド」という形がまだ一般的でもあり、このような形でヴォーカルと楽器の人間が併記されるバンド名というのは正味あまり多くないとは思います。
「ロックバンド」的なところを探ってみると、Jefferson Airplaneが相当に早そう。Starship時代まで在籍したGrace Slickが女性フロントとして有名ですが、彼女の前に在籍していたSigne Toly Andersonという女性が今のところ確認できた最古。
最古の「全員が女子の」バンド=Goldie & The Gingerbreads(1962)
これはWikipediaにも「メジャーレーベルと契約した最初の全員女性のバンド」と書いてあるので信憑性高い。思ったよりいい感じの演奏、ベースがオルガンのフットペダルなのがいかす。
ただ、こういうパーマネントの形式でなければ1940年代にInternational Sweethearts of Rhythmという全員女性のビッグバンドもいたということで。ただどうも戦場の慰問バンドの色が強そうなのと、モーニング娘。方式でメンバーがじゃかじゃか入れ替わる形で継続しているバンドなので、除外。
実はこれは調べてるさなか「もしかしてこれThe Shaggsってことになるんじゃないのか…」と少しドキドキしていたので、真っ当なバンドがいてよかったです。
<日本>
最古の「フロントじゃない女性メンバーがいる」バンド:サザンオールスターズ(1978)
これ、もっと昔に遡ってもいそうな気がするのですが、見つからなかった。フォークグループには時々メインヴォーカルではない女性もいらっしゃるようですが、ここでは除外します。つうか下の麻生レミのような状況もあり得るからなかなか難しい。
【3/7追記】
「シュガー・ベイブは?」というお声をいただきました。そうでした。1973年結成、大貫妙子さんがヴォーカルを取る曲もありますが基本はキーボード&コーラスですね。
最古の「フロントが女性の」バンド:麻生京子とブルー・ファイア(1965)
内田裕也さんとの関わりも深い麻生レミが麻生京子名義時代に一時的に結成したこのバンドが、多分最初の女性フロントバンド、じゃないかと思います。その後は内田裕也とザ・フラワーズに参加して、内田裕也ヴォーカルの時はサイド・ギター弾いていたので、その時は最古の「フロントじゃない女性メンバーがいる」バンドとしてもいいんじゃないかという気もしますが、ここらへんなかなか微妙。
最古の「全員が女子の」バンド=ピンキー・チックス(1967頃)
プリンセスプリンセスが「ガールズバンドの元祖」みたいな紹介のされ方をされると、ZELDAやタンゴ・ヨーロッパ忘れんなよと思うのですが、その前には後にジューシィ・フルーツに参加するイリヤもメンバーだったガールズがいます。
これが最古かと思ったら、グループ・サウンズ全盛期に「女性だけのバンド」として結成されたバンドがありました。
とはいえ、ピンキー・チックスもガールズも、非常に企画色の強いバンドではありますので、やっぱZELDAでええんちゃうの。
意外に欧米と日本とで時期に思ったより差がないし、女性ばかりのバンドや女性フロントのバンドについての流れもあんまり差がない。
ただやっぱり「フロントじゃない女性メンバーがいる」バンドについては、今の日本が特異値を叩き出している感があって。
で、何でこんな違うんだろうと考えたのですが。
- 大学の軽音部という、男女がごっちゃになる場が、日本の方が多いのではないか
- 欧米は昔のR&Bの時からの、ごっつ上手い女ヴォーカルを男バンドが支える的な意識がまだあるのではないか
- 欧米はポリティカル・コレクトネスが意識されすぎて「男が前で女が後ろ」的なスタイルが逆にキツいのではないか
とか考えるのですが、結論出ず。
ただ、日本では女声がフロントと言えるのか言えないのか微妙な、しかしツインヴォーカルバンドとしては世界的に見ても唯一と言っていいスタイルを持つBarbee Boysや、圧倒的に「意志を持つ女性ヴォーカル」のオリジンとしてNokkoが君臨したレベッカや、全ての女の子にバンドの門を開放した感のあるチャットモンチーという、歴史上のエポック的なバンドの存在によって女の子が自由にバンドに参加する時代が作られていったわけで、結局そういう歴史の違いかも、とも思ったり。
とりあえず、今の時代の日本は、私が音楽を聴き始めてから一番自由な感じがしていて、すごくいいです。
【3/7追記】
はてなのコメントでもいろいろいただいています。Arcade Fire、忘れてました。ベルセバ、「最近」と言うにはベテランすぎると思って外しました。Dirty Projectors、初期のソロユニットの頃から情報がアップデートできてませんでした。
「脱バンド化」的なところは確かにそうだなあ、と。日本は今もバンド的な形で音楽活動をすることが多いですが、欧米はヒップホップやソロが多いということを抜きにしても、もっと緩い結び付きでやってるのとか、体としてはソロでも実際の活動上では固定的なメンバーでやるとか、「バンド」等の従来の枠にこだわらずにやってる人、確かに多いです。こうやって知見が深まっていく。素晴らしい。