Beirut「Gallipoli」のこと

Beirut / Gallipoli (Album)

強くなって戻ってきた音楽。
BeirutはZach Condon氏のソロ・プロジェクトですが、2005年の活動開始以降、インディーズ的な音楽にワールド・ミュージックを組み合わせるという方法論でもって音楽を制作してきたわけです。
2006年の1stアルバムは、その発想は面白いし意志も感じさせる良盤ではあったのですが、ワールド・ミュージックの色が濃すぎて両手を挙げて大喜びするレベルにまでは至っていませんでした。
そして、そこから彼の試行錯誤が始まります。時には1枚はごっつい民族音楽に寄せ、1枚はごっつい電子音楽に寄せた2枚組のEP集をリリースしたり、様々な手法を試した結果、2011年のアルバム「The Rip Tide」で、民族的な要素を多分に含んだポップミュージックというあたりに居場所を定めて、それはそれは素晴らしい完成度の世界を示すに至ります。
2015年にはさらにポップスに寄せた「No No No」をリリース、絶対にただのエイトビートにはしないぞという強い意志は感じるのですが、もう少しそっち方向先に行ってしまうと、「少し変わってるけど普通のポップス」というところまで来ていました。

そういう状況下でさらに4年たっての今作。
多分音の塩梅、バランスとしては近作よりはむしろ1stアルバムに近い。ワールド・ミュージック感バリバリです。ただ、近作でポップミュージック的なところを鍛えまくってからの帰還ですので、もう音の強度は全然違う。
ポップスとしてのベースをがっちり押さえているからすごく聴きやすい、でも聴いた感触としては「僕が考えた最新の世界民謡集」みたいな謎の趣き。正味ものすごく面白い。

2012年の来日公演は、本当に祝祭のような素晴らしいライブだったので、また来てくれると嬉しい。
ただ、あのライブは異様に外国人比率が高く、その結果フロアの平均身長も著しく高くなり、あんまりステージを直接見られなかったので、小さい外国人の人がたくさんファンになってくれると嬉しいです。