女性ソロ2作品まとめて。
内田万里 / POM-Pi-DOU (Mini Album)
元ふくろうずのVo,Keyでメインコンポーザーだった彼女のソロ初作品。
ふくろうずは、昨年12月24日、普通にライブやった翌日にしれっと解散告知出していなくなるという、美意識はあるんだろうにしても本当に一時でもメジャーにいたとは思えない、ビジネスにしないにもほどがある終わり方をしたわけですが、あんまり間を開けずにソロが出てきました。
確かにバンド時代より音の自由度は上がっているけれど、全く違うかと言えば相当に地続き。明るい曲でもどこか陰のある、不思議なポップネスはまったくブレずに健在。解散したのは音楽性の相違と言うよりは、バンドとしての将来の見えなさが主要因じゃないかと思わせる感じです。
問題はこの盤の流通。全国流通なし、配信なし、買えるのは枚方の蔦屋書店かその通販のみ。仕方がないので通販で発注したら、しばらく待って来たのは「パッケージの作業は全部内田本人がやっていて発注分が捌き切れていないので、発送が遅れます」というすごいメール。
そしてようやく届いても、「うわあすごい手作り感!」という感慨は特にない、普通に紙ジャケのCD。何だそれ。
世間的なビジネスの流れに翻弄されまい、メジャーで懲りました、という気持ちは非常に伝わってくるのですが、それにしても限度ってものがある。そしてふくろうずの解散の主要因は内田さんのそういうところなんじゃないかと推測ができてしまう。
MVも全く作ってないし、何かもう筋が通りすぎていて、もう内田さん最高です。
佐藤千亜紀 / SickSickSickSick (Mini Album)
きのこ帝国のフロントの彼女。こちらはバンドも絶賛継続中ですが、何故かこのタイミングでソロを出してきた。
音を聴いてみたらもうこれはきのこ帝国ではありえない、打ち込みバリバリだったりR&Bぽかったりの「え?何これ?」の嵐のような作品。正直聴いてもこの作品の必然性がまったくわからない。
ただ、彼女がきのこ帝国を結成して活動するまでのプロセスに何となくヒントはあるんじゃないかと思って。
佐藤さん、大変な美人さんではありますが、芸能界デビューはホリプロタレントスカウトキャラバン。2004年、16歳でのグランプリです。要するに本人がノリノリであったなら今頃深田恭子とか石原さとみとかのようになっていたかもしれない人です。
が、彼女は全く所謂コテコテの芸能界にはまったくソリが合わなかったのでしょう、2007年にはきのこ帝国を結成し、ホリプロのタレント・女優としての活動も2010年の末頃には完全に収束します。
きのこ帝国としての出始めの頃の芸名というか呼称は「佐藤」。日本で一番匿名性が高い苗字をただ名乗るだけでした。
何となくこの状況で、ホリプロにいて「可愛い女の子」として消費されてしまうことを恐れた結果としてのバンド結成であり、性すらもわからないようなその名乗りを敢えてしたのではないかと思っていたのですが、きのこ帝国の認知度が上がってきた頃にようやくフルネームで名乗るようになりまして。
やっとアイデンティティが安定したのだな、よかったよかったと思ってそこから数年、遂に本名名義の、本人の顔がジャケットになったCDがリリースされたわけです。
だからこれは、音楽的にどうこうというよりも、ホリプロでこねくり回されて失いかけた自分のアイデンティティ奪還の総仕上げと捉えるのが吉なのかと思うのです。
そしてきのこ帝国のニューアルバムはもう9月に出ます。そういうプロセスを経て最強に極まった佐藤さんの楽曲が聴けると思うので、かなり楽しみにしています。