オリコンチャートの変化とCD卸店のこと

オリコンがランキング改革 CD売り上げでは流行追えず

例えばアメリカのビルボードHOT100は、2005年にダウンロード実績を追加し、2007年にはストリーミング実績も追加したチャートになっていますので、オリコンあんまり遅すぎると言われれば間違いなくそうなんですけど、このタイミングで発表というのはなかなかに感慨深いと思うわけでして。
というのはこの件、これまでに2回(1/101/21)ここで言及してきた、星光堂の卸業務のハピネットへの譲渡の件と繋がっているのではないかと。

オリコンのヒットチャート集計の歴史は、売り上げデータの精緻化の歴史でもあります。これには当然小売店の売り上げ実績をどのように正確に吸い上げるかという点が重要になるわけですが、その仕組みを昔からずっと提供し続けてきたのが音楽卸企業最大手だった星光堂ということでありまして。
星光堂のサイトには現在のその仕組みの概要があります。

見ればわかるように、これはオリコンのための仕組みではなく、各店の売り上げ実績や傾向をいち早く察知して各店の状況に沿った商品提供を行うとともに、全体としてメーカーからの仕入れを調整したりという、取引先である各店舗の業務支援及び自社業務の効率化最適化のためのものですが、そこで得られる数値は相当に正確な売り上げデータでもあるため、オリコンがそれをチャートデータの精緻化に活用していたりもしたわけです。

その後外資系のCDチェーンが入ってきて商品流通の形が多様化したり、インターネットの普及で売上情報のやりとりの仕様が大きく変更されたり、状況はいろいろと変わっては来たでしょうが、それでも小さなお店からのデータも含んだ正確なチャートを作成できた背景には星光堂の存在があったことは間違いなく。
一時独自でヒットチャートを発表していたプラネットという企業の本業はシステム屋で、星光堂のシステム開発を請け負っていたのがそのプラネットだったという話もあったりしまして。
その仕組みの音楽業界への影響はそれなりに大きかったのだろうと思います。


ダウンロードやストリーミングもチャートに加味すべきという話は恐らく相当前からオリコンの内部にもあったと思います。それでも、重要でかつ功労者でもある取引先のことを考えたのか、もしくは過去からの「しがらみ」的なものもあったのかもしれません。とにかくメインチャートはパッケージのみで、という路線から動かすことができない理由があった。
それが、遂に星光堂がその卸業務からすっぽり離れることになったため、これまでの様々な考慮配慮が不要になり、その結果このタイミングでこういう発表になりましたという線。
上記概ね状況からの私の推測にすぎませんが。


あとこれ絡みでもう1点。
ハピネット以外にメジャーを扱うCD卸はないというような感じで言ってましたが、すみません言い過ぎでした。中小でまだいくつかそれらの業務を行う企業はあります。

音の岩泉
札幌拠点。北海道内を縄張りにして卸の業務を行っています。

音光
広島拠点。謎のCD店チェーンBIGの運営元でもありますが、会社としてのメインは卸業務。

ムジカインドウ
福岡拠点。天神のCD店のむしろこっちが本体。全国の生協系中心に書籍まで含めて卸しています。

ただ、たとえば他の小売店がこれらの企業を頼ろうとしても、今からこの業態で、営業所を新しく作ったり人新しく雇ったりしてガンガン業務拡大するべ、という判断はとてもできんでしょうから、じゃあどんどんこっちの企業に乗り換えればいいじゃん、みたいな話にはなりにくく、やっぱり業界大変そうなことには変わりありません。

とりあえず、今は見える範囲での動きは既報のバンダレコード2店舗のみですが、新会社との契約は3月1日からのスタートですので、来月何か出てくるのか出てこないのか。大変にイヤなドキドキ感。