Simple Minds「Walk Between Worlds」のこと

Simple Minds / Walk Between Worlds (Album)

もう何かここんとこCDの感想か星光堂のことしか書いてないけど気にしない。

80年代から90年代にかけてのUKバンドは、ふとしたきっかけで世界的にメジャーな存在になったりなりそうになった、その次のアルバムで、アメリカを商圏に狙ったような、もしくはスタジアムクラスでのライブを前提にしたようなスケール感満載の音にしてしまっては、元々のファンが困惑したり結局身の丈に合ってなくて長続きせずに人気がシュリンクしてしまったりという事例が散見されるわけです。
ものすごく具体的に代表例を挙げるとSimple MindsとJamesですね。ただ、Simple Minds以降James以前に、スケール感満載の音でアメリカに打って出てそれ以降完全に勝ち切ったU2という事例もあるため、何が正しいのかを判断するのはなかなかに難しいのですが。

そのSimple Minds、彼らは1986年の「Once Upon A Time」、1989年の「Street Fighting Years」あたりをスケール感と人気のピークにして、しかしそれ以降徐々にまた身の丈に合わせてスケール感地獄からの転身を図り、しかし売り上げのスケールもそれに比例して下降、それでも数年に1度アルバムを出せばチャートの20位までには入るくらいという位置取りをキープしながらここまで来ました。
一時メカメカしい音メインに戻りつつも、ここ数作はアレンジの具合が全盛期並みに大きな感じになり、でもメロと歌がいまいちだったり、たまにスケール感のあるメロディが出てきたと思ったらその曲に限ってアレンジが割と地味だったりとか、何かいまいち噛み合ってなくて微妙に残念な音続きだったのですが。

今回ここに来て21世紀では最高傑作登場、まずリードトラックの「Magic」が最高。ようやくメロとアレンジのスケール感が噛み合い、今の身の丈で出せる最高のバランスの佳曲。それ以降も無理しない程度に気持ちよくアガる音あり、メカメカしい曲あり、ハードロックのようなリフの曲あり、「俺たちなりの集大成」感あふれる1枚になっています。
昔からおっさんぽいのか童顔なのかよくわからなかったジム・カーも、ただのリアルおっさんになりましたが、なった甲斐もあったってもんです。

で、結局何が言いたいかというと、世界的にメジャーな存在になりそうなところでそれまでと何も微塵も変えないままアメリカに打って出て、スタジアムのライブでもそれまでと全く同じ音を出して、それでも世界相手に圧勝したDepeche Modeが最強ということです。