最近TSUTAYAのことばっかりのような気がするので、タワーレコードの話をします。
これまでに言うてきたことを改めてまとめる感じにもなるのですが。
10月末現在、全国75店舗、客観的なデータはないのですが、店舗数とその床面積を併せて考えた場合、日本最大のCD/DVD店チェーンであることは間違いなく。
ただ、先日3630億円の赤字決算を献上して正直現状でいい感じではないのですが、ここに至るまでにタワーレコードには2度ほど大きなピンチが訪れています。
<ピンチその1:セブン&アイ筆頭株主期>
アメリカの店舗は2006年に全店閉鎖したものの、日本の店舗網の運営会社はそれ以前2002年に全株式を日本の投資会社が引き受けていて、その時点で完全に国内資本になったため連鎖的に閉鎖することもなく今に至るわけですが、その後その株式のせいで一時ヤバい状況になりかかります。
2005年、投資会社持ちの株式のうち42%をNTTドコモが取得して筆頭株主になったのですが、その後2010年に持ち分法適用会社となっていたセブン&アイ・ホールディングスが翌2011年に44.6%にまで買い増した結果、代わって筆頭株主になったために。
それで何が起こったかというと、当時タワーレコードは店舗数の相当をイオンモール内のテナントに依存していたわけですが、その店舗が恐らくテナント契約が切れた順にHMVに置き換わっていくという状況。まあわかります。ガチンコのライバル企業の施設内に子会社がいるというのは確かにおかしい。
かといって「じゃあ直ちに全店閉鎖!」とか言ってしまうと、コツコツとオープンしてきた店舗網のうち3割を失うという規模。というかテナントの契約もある。ということで、恐らくテナントの契約が切れたタイミングでしょう、2011年からイオン内に出店していたタワーが次々に閉店してはHMVに置き換わるという事態となったわけです。
(閉店した直後にHMVがCD・DVD店としてオープンしたイオン内の店舗)
- 2011/08:浜松市野店
- 2011/09:八千代緑が丘店
- 2012/03:直方店
- 2012/09:岡崎店
- 2012/09:水戸内原店
- 2012/10:高岡店
- 2013/02:熱田店
- 2013/02:高知店
これがこの先も続くと店舗網として本当にヤバいことになるのでは、と当時は思っていたのですが、もうひとつの大株主であるNTTドコモもそう思ったのでしょう、翌年には株式をさらに買い増しし、セブン&アイを越えさらに過半数を越える52%取得して絶対的筆頭株主に君臨します。
かくしてそれ以降、その時点で撤収が決まっていなかったイオン内店舗のHMV置き換えの連鎖は終わりを告げました。
それでもこれ以降イオングループの施設にタワーレコードが出店することは激減し、ではセブン&アイはどうかというと、そもそも大型ショッピングモールのこれ以上の建設自体を行わないことを発表していますし、その発表前に着工していてこの11月にオープンするプライムツリー赤池にはタワーレコードは出店していません。
大型ショッピングモールにテナントとしてCD/DVD店を入居させる旨みはもうない、ということですね。
<ピンチその2:都市型商業施設の大量閉店期>
日本の地方都市、百貨店の業態が行き詰まりバブル期以降にはいわゆるマルイ的な「自社運営売り場を置かず、全館を店貸しする」スタイルの商業施設が増加します。タワーレコードは1990年代半ば以降その重要なテナントとして各地に入店することになるのですが、近年地方都市ではそれすら経営的に厳しくなったり、百貨店を業転した建物の場合、築40年を超え耐震基準も満たせなくなってきて、ここ数年各地で次々と全館閉店することになり、タワーレコードもそれに巻き込まれる形で閉店を余儀なくされているわけで。
(商業施設全体の閉店に伴って閉店した店舗)
- 2014/09:岡山店(岡山オーパ)
- 2016/01:姫路店(姫路フォーラス)
- 2016/08:小田原店(小田原アプリ)
- 2016/11:千葉店(千葉パルコ)
- 2017/02:秋田店(秋田フォーラス)
- 2017/02:大分店(大分フォーラス)
- 2017/08:大津店(大津パルコ)
- 2017/09:TOWERmini アリオ松本店(アリオ松本)
タワーレコード、郊外のみならず都市部の店舗も厳しくなってまいりまして、それでも以前であればどこか新しい商業施設ができると古い施設から移転するという形でその地域の店舗を継続してきたはずなのですが、たとえば千葉市。パルコが2016年11月に閉店したことに伴ってタワーレコードも閉店したのですが、翌年9月に千葉駅ビルペリエのグランドオープンがありまして、過去の例であれば当然のようにそこに入居しているはずなのですが、入らなかった。
これは2014年に横浜駅前のモアーズに入店していたタワーレコードが退去して代わりに東急ハンズが入った事例に顕著ですが、1990年代半ばから2000年代半ばまでの10年ちょっとは三顧の礼でもってテナントとして迎え入れられていたはずのCD/DVD店が、契約切れに伴ってむしろ追い出される感じにもなりまして。
都市部の商業施設にもCD/DVD店を入居させる旨みはもうない、ということですね。
つまりもう八方塞がりやないか、という感じですが、そして実際もう否定しようもないのですが、それでもこの10月、タワーレコードは一気に3店舗を新たにオープンさせます。
柏店のアリオへの実質上の移転によるオープンを除けば、2015年10月にオープンしたららぽーとに入店した立川立飛店以来2年ぶりの新規オープンです。
高崎オーパ店。(10/13)
元々あったビブレを解体して建て直してオーパになった建物に入店。ビブレ時代にも一時タワーレコードは入店していたのですが、別建物に移転してその後2014年に閉店。ビブレには一時HMVも入店したのですがそちらもビブレ存命時の2009年には退去、駅前でCD買えるのはヤマダ電機だけという状況からの復活。
秋田オーパ店。(10/28)
2月に閉店したフォーラスに耐震工事を施し、ブランドチェンジしてオープンしたオーパの地下1階。フォーラス時代とほぼ同じ場所。ここはもとより一時閉店だったため、契約が生きていたということでしょうか。
TOWERmini もりのみやキューズモール店。(10/27)
12坪というどこの駄菓子屋やねん的スペース。売れ線と期間限定の催事販売のみという、言ってみればタワーカフェでのコラボ企画的な切り口を本業の方でもやってしまえ的展開。場所的に考えても多分に実験的な意味合いが大きそうです。
正味今後CD/DVD店が大きく躍進することはありません。それでもこうやって必死になって生き残るための模索を続けるタワーレコードをみんなも応援しよう。
ていうか、渋谷店なんかもう世界でダントツで一番大きなCD/DVD店なわけですから、インバウンドにもっと広く紹介して観光地化させてしまうのが吉だと思うのですが、どうでしょうか。
我がホームの新宿店の店内も、地上にいる外国人の割合に比べると著しく少ないと思うんですよ。試聴機占拠されない限り、何も問題はありません。