リリカルネッサンス「The Cut」のこと

リリカルネッサンス / The Cut (Single)

連続でアイドル音源の件。
以前より「ビートルズのカバーに傑作なし」と申し上げていますが、要するに好きな曲を過度に大事にカバーしたようなパターンは音楽として面白い物にはなりにくいのが世の常ということで。
カバー曲はある程度の距離を保って突き放すか、逆に完全に消化して徹頭徹尾自分のものにしてしまうかくらいの塩梅がいいと思っています。前者の日本代表は今なら間違いなくUNCHAIN。後者には矢野顕子というモンスターがいらっしゃいます。
矢野顕子はカバーの技量では世界クラスだと思うのですが、海外で言えば彼女に一番近い資質はTori Amosでしょうか。「Smells Like Teen Spirit」をピアノの弾き語りでやっているのですが、もう元曲の臓物を見ているような気持ちになります。

で、アイドルネッサンス。当然ですが本人たちがさして元曲に思い入れがあるはずもなく、かつ非アイドル楽曲を女の子たちがユニゾンでかました時点でさっきで言うところの前者の状況がおのずと発生するわけでありまして、初めて聴いた時「これはある種の発明だな」と思ったりして、正直かなり好きだったりするのですが。

そして今回のリリスクとのコラボ。このリリースのニュースを目にした時点で「この曲やるんか」という驚きもあり、かつ出来上がりは元曲のキレは残しつつも何か全く違う空気も纏っていて、またもうひとつ別の発明を目撃したような気持ちになり。こういう音源との出会いはカバー聴きの醍醐味でございます。
ただMV。すごくいいのに後半ボロボロになるのは、何かトラブル発生してうまく映像回せなくなり、かつ当初のプランのままリテイクする余裕もなかったということでしょうか。ここまで「パッチ当ててやり過ごしました」という映像、初めて見ました。

それでも、大阪☆春夏秋冬といい、リリカルネッサンスといい、9月のZEPP公演の損益分岐点をやたら気にしている里咲りさ社長といい、今年もアイドルシーンは面白いです。