チケット転売防止を求める共同声明のこと

チケット転売防止を求める共同声明の件。

およそのところに異論はなく、とりあえず一覧を眺める。
事務所的には大きなところでスターダスト、マーヴェリックあたりがいない。AKB関連もいない。レコード会社ではキングレコード所属がいない、ユニバーサル所属は相当いるけど旧EMI組はほとんどいない。フェスはクリエイティブマン主催のものは入ってない。

多分にマキシマム ザ ホルモンの亮くんが言っている「団体への所属」のところが大きいとは思いますが(矢沢永ちゃんがいないのも多分この理由)、スターダストやマーヴェリックはFMPJの正会員だし、クリエイティブマンもACPCの正会員。
ラルクはいないけどVAMPSはいるとか、従前から転売対策に相当力を入れてきたミュージシャンの中でもB'zとコブクロはいるけどももクロはいないとか、いろいろな理由で業界一枚岩でないということは何となく透けて見えます。


チケットの転売問題はざっくり言うと目指すところは「適正な価格で取引できて安全性の高いリセール流通の整備を行う」ということになるのでしょう。
細かい問題もいろいろありますが、問題点大きくは「安全性の問題」と「価格高騰の問題」の2つに分けられるかと思います。

声明を読む限り、そして団体側の方のこういう発信等読む限りでは、日本の団体は比較的「価格高騰の問題」の方に重きを置いているように見受けられます。
転売チケットを購入したファンがライブ当日に入場できないのは、日本の今の状況では偽装とかもそりゃありますが、転売チケットを嫌がる主催者側が転売判明したチケットを持った人を排除する形で行われるものも多いわけですし。

もちろんそこ大事です。転売の結果チケットの金額が相当な額になった場合でもその代金高騰分は主催者側には一切入らず、そしてその分観客の財布は削られますので本来なら物販等に回るはずの金銭は減少します。
実際、チケット代だけでは赤になるところを物販込みでライブの収支合わせているミュージシャンもたくさんいますので、冗談抜きで死活問題。


一方、リセールのシステムが比較的整備されているアメリカでメジャーな仕組みで、日本の「チケットストリート」とも提携している「StubHub」の仕様を見てみると、これはもう「安全性の問題」の方に絞り込んだ仕組み。ライブやイベントの主催の公認を受け、座席の位置を詳細に登録する形で出品する仕組みであり、偽装や詐欺、金銭の不授受等の問題点を徹底的に排除しています。

が、「価格高騰の問題」に関して言えば、ほぼ売り手側の思惑で値付けができます。もちろん他に善意の転売希望者が多ければ当然一部だけ高い値段は付けにくくなり価格差は開きにくくはなるでしょうが、メジャーなミュージシャンやアメフト等そもそもの購入希望者が多いと見込まれるものの中には相当な値付けでもって販売されているものも少なくありません。ADELEの事例のように、転売目的の大量購入に対して何らかの策を打とうとする動きもありますが、少なくともシステム側で根本的な策が実施されているわけではなく。


日本における「チケットキャンプ」等の現存リセールサービスはアメリカで主流のそういう考え方をおよそそのまま日本に持ってきたものと言えるかと思います。ぶっちゃけアホみたいな値段のものもありますが、安全性は確保できる仕組み。
それ以前の、mixi等のファンコミュニティで細々と探すか、冷や冷やしながら出品者の履歴や評価を確認してはオークションで売買するしかなかった状況とは雲泥の差であることは間違いなく、高い(ことがある)からシステムそのものが悪、みたいな決め付けはできるものではありません。

それでもそれらは、今回声明を出した方々にとっては恐らく納得しにくい仕様として捉えられるのではないかと思います。一番重視したいところを放置しているわけですので。
前述の一枚岩ではないというところはこのあたりから来ているのかと思っています。

チケットキャンプは昨年のサマーソニックには「協賛」という関係でもって絡んでいましたし、今回この声明にクリエイティブマンが入ってないのはそのあたりもあるのではないかと想像できます。ただ今年のサマソニ協賛にはチケットキャンプ入っておらず、現状での関係性はわかりません。それでも他にもいろんな資本や人脈、企業間の仁義等の関係性ありますし、中の人の考え方もありますし、状況も刻々と変わりますので、一概にどっちがいいの悪いのというものでもなさげ。


とはいえ、声明出したからと言ってそのお題目を唱えていれば自然によくなっていくはずもなく、少なくとも「安全性の問題」の方では仕組みが既にある以上、「価格高騰の問題」を重視するあまり安全性の方を下げにかかるような仕組みを新たに作ったとしても世に受け入れられるはずもないわけで、ここから先はいかに迅速に「適正な価格で取引できて安全性の高いリセール流通の整備」を実現できるのか、という一点のみであります。
で、もしそれがうまくいった場合今度は「高く売りたい」側は間違いなくアンダーグラウンドの方に回りますので、そこにどう歯止めをかけるのか。
と考えただけでいたちごっこ感満載ですけれど、それでも現状のリスクやデメリットができるだけ小さくなっていく方に進むのであればウェルカムです。

日本の音楽業界、CD等の音源についてはいろんなテクノロジーやサービスが出てきてから慌ててその流れに反する形で締め付けきつくして結局かえって自分らの首絞めての今こんな状況ですが、興行についても業界の想定を超えたテクノロジーやサービス出てくるところまではもう当然というか現在進行形ですので、あとはいかにCDの時のアホみたいなことせんと、うまくそのテクノロジーやサービスに乗っかりながら最小限必要なコントロールを行う形で行っていただきたく。お願いしたいと思います。本当に。


なので、今後の実行計画の手綱を握るレベルの方の中に、ある程度以上WEB系/アプリ系のサービスに明るい人を入れなければならないと思うのですが、とりあえず声明サイトのタイトル部分の表示が「チケット転売問題」だけっていうか、多分制作時の仮タイトルのままうっかり放置してるところから修正した方がいいと思います。何卒よろしくお願いいたします。

<8/27追記>
ラルクが一覧に入ってきました。それでもマーヴェリックの他の、シド、ムック、凛として時雨あたり、この一覧に入ってもよさげなレベルの方たちの名前はなし。全てSONY系レーベルですが。シドはスタダと提携してるあたり何かあるか。