VIVA LA ROCKの感想、今日は全体を通して。
今回すごく気になったのはフロア側、ミュージシャン側それぞれの「分化」と呼んでいいような状況。

フロア側では去年随分目立っていた「一旦フロアを丸く開けてから曲がブレイクしたタイミングでその輪の中に走り込んでいくやつ」の発生頻度がやや下がりました。「踊らせる」タイプのバンドでは健在ですが、ただそれが多少でも減った分「別にバンド側がやらせているわけでもないのにみんなが同じタイミングで同じ振りをする」という、オーディエンスのアクションの定型化がより一層目立つ形になっています。アイドルとかV系のライブで見られる傾向がこっちにも流れ込んでいる感。
昨年感想を書いた後に補足していただいた「ライブのスポーツ化」「体育会系女子中心」という状況がより見えやすくなってきました。

また「踊らせる」のではなく「暴れさせる」バンドの方では「サークルモッシュ(輪になって走り回る方の)」がまた主流になり、プラスして去年はほとんど見られなかった「肩車してもらってブレイクのタイミングでクラウド上に倒れ込む形でサーフする」という、これまでの他のアクション以上にリスキーな奴が大流行りしておりまして、ROTTENGRAFFTYのときの中央前の方なんか、春のタケノコのように湧いて出ておりました。本当にこれはちょっと危険じゃないかと思うレベルで。


そして、ミュージシャンの方では、そういうオーディエンスの状況を是とするか、「非」とまではいかなくてもあんまり積極的な肯定もしないか、というところで「分化」しているように見受けられました。
お揃いのアクションや「暴れ」を煽るような発言をするバンドもいる一方で、SCOOBIE DO10-FEET、Shiggy Jr.あたりは明確にMCで「自分の好きなようにやればいい」という発信を繰り返ししていました。

特に10-FEETですごく気になったのは、「暴れるのなら暴れればいいし、暴れないのなら暴れなくていい、叫ぶのなら叫べばいいし、叫ばないのなら叫ばなくていい」「足当たったりぶつかられたりしてイラッとすることもあるやろうけど、俺に免じて許してくれ」というMCや、その後何度も繰り返される「仲良くやれや!」「笑って帰りや!」という言葉。

これは穿ち過ぎなのかもしれないけど、モッシュ・ダイブありありの本編の後、アンコールでやった2曲、「goes on」はひたすらジャンプする曲、「CHERRY BLOSSOM」はタオルを投げる曲。つまり、そういう別のアクションがあるおかげで、彼らの曲の中では盛り上がる割に激しいモッシュやダイブという方に行きにくい2曲です。「イラッとしてた」人も最後は「仲良く」「笑って」帰れるような曲をあえてアンコールに選んだのではないか、とも思ってしまうのです。

the telephonesは今度の武道館、販売時の告知を確認してみましたが「全席指定」とありました。4月にACIDMANがやった時は「席種:アリーナ立見・スタンド指定」という表記。つまりthe telephones、武道館はそれが通常設定ではあるのですが、これアリーナにパイプ椅子並べるつもりではないかと。

the telephonesは言ってみれば踊れるバンドサウンドを高速化し、それに伴うオーディエンスのリアクションの変化を促し、今のライブシーン全般に至る状況の先鞭を付けたパイオニア的存在ですが、今回のライブの「BPMを落としに来ている」という自分の感覚が間違いなければ、彼ら自身がそれを抑制する方向に動いているということだし、5/21の日本武道館では、モッシュもダイブも何も、物理的にできない状態で最終ライブを行うということになります。これは、自分たちが作った流れに対して少なくともできる範囲で自分たちで引導を渡そうという意志だとすれば。

何か、バンド側の「危機感」と呼べるレベルの何かを感じてしまうのです。


3日間いて感じたことは他にもあって。
夜の本気ダンス観に行ったら、もう少し遅かったら入場規制かかるくらいパンパンに入ってたわけです。いくら一番小さいステージとはいえ、知名度的にありえないと思ったのですが、あとで5/5のタイムテーブル見て納得しました。この時間帯前後「踊れる」バンドが彼らだけだったんです。
そしてライブが終わったらさっきまで死ぬほど踊ってた子たちの相当数がまさに潮が引くように、バンドがステージから捌けるよりも早いくらいの勢いでフロアを後にして出て行ってしまう。要するにバンドがその「機能」のみでもって評価され、バンドのパーソナル等々含めてその「機能」以外のものは何も求められていないという状況です。

盛り上がるライブはとてつもなく盛り上がり、それはそれで大変に素晴らしいことなのだけど、でもその代わりに何かいろいろ落っことしているものもあって、少なくとも2年連続でここに来て去年より今年の方が、その落っことしているものが顕在化してきているような気がします。このまま行くところまで行ってしまったとしたらちょっとマズいのではないかなあ、と。
その空気を察知したバンドが「好きにやればいい」「仲良くな」と言わなければいけない状況もそこから繋がっていて、それで10-FEETthe telephonesが自分たちができる範囲で動いていると考えると、自分の中ではすごく合点がいくのです。

この先バンドの人たちがどのように考えどんな発信をしていくのか。オーディエンス側はそれをどう捉えてどう動くのか。現在のところ見た目上隆盛を誇っている感のあるライブシーンがそれによってどう変わっていくのか。変わらないのか。やっぱいろいろ気になるので、また来年も行くことになるのです。

来年は、さいたまスーパーアリーナが改修工事のため、5/28-29の2日間開催ですよ。
でもまだ言い足りないので次回も感想続くよ。