今年もVIVA LA ROCK行ってきました。3日間。
観たことないバンドを一気に観られるショーケースとしての役割、若者率が異様に高いため現在のライブシーンを把握するための役割、そして単純にフェスとして気に入ったため。ただし3日間片道1時間以上かけてさいたま往復してみっちり観倒すのはかなりハードで、3日目の帰りはもうぐったりです。おっさん無理したらあかん。
今日は以下3日間観たやつの感想。

■1日目■

KANA-BOON
高速系バンドの代表格みたいな感じになっていますが、もうそっち方面で完全に安定した音を出せている。貫録すら感じさせる。
が、そういう音で安定しちゃって、あとは小手先のアイデアでマイナーチェンジしながら進んでいくだけってなったら、果たしてそれは本当に正しい未来なのか。近々で何かやらかしてほしいと切に願います。

Hello Sleepwalkers
初見。激しめでかっこいいんだけど、シーケンスをベースにしているバンドの罠というか、シーケンス以上にすっ飛ばせない壊れられないというあたりが何かいろいろ邪魔をしている感。もっと重たくてもっとぐしゃぐしゃでもええんでないのかな。


ドラマチックアラスカ
初見。フレデリックとツーマンとかやってるだけあって近めの音楽性ですが、フレデリックよりニューウェイブの匂いやサブカル臭が薄い、純粋なギターバンド感。だから俺フレデリックの方が好きなんかなあとも思うのですが、でも決して重くならず軽快にすっ飛ばす軽のスポーツカーみたいなこの感覚はかなり好きなんですよ。


HAPPY
初見。洋楽テイストと英詞とインタビューのビッグマウスは知ってる。
正味悪いわけがないんですよ。ただ、そこまでやってそこまで吠えるのであれば何でロンドンとかに渡らないのだろうと思うのです。英詞でガチガチの洋楽的な音、ビッグになろうにも日本には市場無いですもの。さすがにその世の中ごと変えられるような衝撃的な音でもなく、だったら根性決めて海外渡った方がマジで可能性としては高いと思うのですよ。


VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
このフェス独自企画で、ペトロールズの長岡君と赤い公園の津野ちゃんがギター、亀田誠治さんがベースでピエール中野がドラムというバンドをバックに、過去の名曲をヴォーカル入れ替わり方式で披露する、という形。
RCとかモップスとかやるんかいなと一瞬思いましたが、若者の多いフェスです。そこまでは遡りませんでした。こういう感じ
セイヤ意外にうまいじゃないかという点、大森靖子が普通に可愛かった点、KREVAがやっぱりKREVAだった点等、いろいろありますが、あとから気が付いて戦慄したのは、バンドの津野ちゃんの方が大森靖子より4つも年下だということです。


Awesome City Club
初見。器用だけど貧乏じゃない、多彩な音楽性と、フロント女子のPorinちゃんがリードヴォーカルを取るともう別バンドのように色が変わるそのプレゼンスと。本当に素晴らしいポップバンド。
ただ、確かにPorinちゃんすげえ可愛いんだけど、MV見た時点で薄々感づいてはいて、今回生でその造作や所作見て確信しました。彼女の可愛さは徹底的に「同性受けしない」タイプのそれです。一見さんにとっては厳しい。実際、出口への通路入口そばで観ていたのですが、女2人組とかが相当にマジな顔と勢いで去っていくのをけっこうな数見ました。
これからどんどん売れてほしいんだけど、ファン層を広げていくにあたってはかなり深刻な問題だと思うのですよ、割と本気で。


トロール
初見。音源から想像してたよりも相当にストイック。ミニマルな感じでひたすらグルーヴを回して徐々に徐々にアゲていく。ああ、もうかっこいい。が、こういう即効性じゃないかっこよさは若い子には伝わりにくいことも知っている。他のステージに比べて異常に観てる人たちの年寄り率が高かったです。わかる。


スピッツ
実は初見。1stアルバムの頃から本当に好きだったんだけどその頃は貧乏学生、会社に入って1年目はとても平日にライブ行けるような状況でなく、ようやく行けそうになった頃には既にブレイク済みでチケット取れねえというそんな感じで。
どういうライブをしているかというのは知っているので、そういう意味での驚きはなかったんだけど、聞いた通りベースの田村さん暴れっぱなしで感動した。
とりあえず有名な曲は中盤までに片付けて、「野生のポルカ」「恋する凡人」「8823」と、一般的には有名じゃないけど彼らの楽曲の中でもエッジの立った奴をダーッと並べて、きちんとアゲて帰っていったのはさすがです。


[Alexandros]
去年は、CDだけ聴いてある意味偏見を持っていたのを一気に取り去ってくれたライブで、今年はもっと彼らに対するリスペクトというか、ライブバンドとしての底力を改めて堪能いたしました。
誰にしろ音源聴いてからライブ行って、CD以下だったらがっかりするじゃないですか。さすがにライブから叩き上げのバンドでそういうのあんまりいないんですけど、宅録でやってた人が生で演りますみたいな場合たまにあるんです、心底がっかりするライブ。家でCD聴いてた方がマシだよ時間返せよ、みたいのが。
そういうことで、いろんなライブ観るときの共通の評価軸のひとつに「音源からどれくらいよくなってるか」っていうのがあるわけなんですけど、[Alexandros]は彼らの世代のバンドの中では図抜けて「音源から上への飛躍」の距離が大きいんです。化け物レベルで。音源では「ふーん、まあまあいい曲だね」くらいの曲が、ライブではとんでもない名曲として響いてくるのです。だからもうライブは名曲ばっかですよ。いちいち感動するレベルで。
本当、観たことない人は一度観た方がいいと思う。観ないのもったいない。それとバンドはあともう少しでいいから、このとんでもねえライブ感をもっと音源に閉じ込められるよう頑張ってほしいと思います。


■2日目■

ACIDMAN
しばらく観てなくて随分久しぶり。今まで観てきたのは音像を積み重ねてサウンドスケープを作るタイプの演奏が多かったんだけど、いきなり初期の楽曲を立て続けにやったり、かなりストレートな楽曲を中心に選曲したガシガシめのセットリスト。これはこれでいいなあ。それでもMCがいろいろスピリチュアルな方に行ったまんまになっているのは相変わらずで、ちょっと引く。でもこの日はまだ抑えめだったというのはアラバキ行ってた人から聞きました。


SCOOBIE DO
恐縮ながら初見。ライブの場としては3日間で最強でした。そりゃひたすらオーディエンスを踊らせ続けて20年のバンドです、悪いはずがないんですが。リハと称して時間前に「Ride On Time」のカバーを完全フル演奏し(本編では演らず)、本編も代表曲かましまくりのMCは基本「好きにやればいい」&オーディエンスの信頼を語る。いや、こんなに楽しくて自由な感じ、他にないよ。あのスピード感で繰り出される「TIGHTEN UP」のカバーとかもう悶絶しそうなくらい楽しい。
そばで「横ノリ」のニュアンスを体得していない高校生くらいの女の子が反復横跳びみたいにジャンプしながら、それでもニコニコ心底楽しそうに踊ってるのもグッと来る。いろいろ超えてくる音楽。
あまりに心に来たので、10月の20周年記念ワンマン@日比谷野音行こうと思います。


ピエール中野
ソロ初見。この間のソロアルバムがまあ滅茶苦茶な構成だったので、どういう形で演るのかと思ったらステージにドラムセット置いてあるっきり。マジかと思ったら本当に叩くだけ叩いて喋るだけ喋って帰って行った。「ぐるぐるどっかーん!」「どんぐりころころ」の音源に合わせて超絶ソロぶっ込むとか馬鹿すぎて最高。


大森靖子
弾き語りスタイルは以前2度ほど観ていますがバンドスタイルでは初見。ライブ直後にご懐妊のニュースを知って唖然とするわけですが、そんな様子は当然ですが微塵もなく。
彼女も便宜上「メンヘル系女子歌手」に属するものとして考え、それは更に戸川純Cocco属する「天然派」と椎名林檎属する「演出派」の2派に分けられるとした場合、彼女はどちらかというのが今まで結論出ていなかったのですが、今回のライブで後者という結論に至りました。俺内では。


ゲスの極み乙女。
どちらかといえばシリアス目の曲を前半5曲まとめてきて「おや路線変更か」と思わせておいてからの、ちゃんMARIの「コポゥ!」と課長の変態ラブコールが始まったので安心した。


ROTTENGRAFFTY
初見。仲間夫婦の長女(高1)が好きで好きで、この日も最前方面にすっ飛んでいったということで、お母様と後方で観察。私もお母様も、この日は女バンド版ドレスコーズ見たさに家族を置いて幕張の海の方に行ってしまったお父様も、十代の頃には最前方面にすっ飛びがちな類の人間でしたので、長女には誰も何も言えません。

で、ライブ観てこのバンドの特異性をようやく理解しました。時折シーケンスも交えてのヘビーなビート、荒々しいギター、高揚感のあるメロディー、チンピラがかった煽りMC。それらが完全に完成されていてそこに一切の叙情の入る隙がない。たとえばテクノが「踊る」ことに特化された機能的な音楽だとすれば、ロットンは「暴れる」に特化された極めて機能的な高性能ミュージック。それに不要なものは全くもって一切入っていない純度の高さ。

こういう音楽が今まで、少なくとも目立つ場所になかったのはバンドの音楽もこれまでは「メディアに乗る」必要性が前提にあったからだと思うのですが、メディアの価値が弱まり現場の価値が相対的に上がった結果、遂にテクノに肩を並べるレベルで徹頭徹尾現場にアジャストしたこういうバンドサウンドが出来上がってきたわけです。長女は、僕らが大学生の頃にクラブで体験した何かと同質のものを今まさに体験してるんだな、と。何か感動した。


Dragon Ash
「Fantasista」始まりという爆弾のような展開。こんなアンセム初っ端からぶち込んでおいて、その後も一切ダレずにアッパーな展開。こんだけ長いことやってるのに「安定」という感じ一切しないのがすごいっす。


10-FEET
自分はGreen Dayとか洋楽のメロコアシーン観ている間にハイスタにも乗れずじまいで、それ以降日本のパンクシーンには正直思い入れないんですけど、でも10-FEETだけは大好きで。それもフェスでライブ観てタクマくんに一目惚れしたクチ。今回の感想も、毎度同じですが「タクマくんになら抱かれてもいい」でした。茶番のようなコントや様々気遣いを感じさせるMCを交えながら、ものすごい演奏でとんでもないところまでアゲていく。もうすごいよこの人たちは。
この日の名言は「お風呂上りみたいになって帰れよ!」でした。


■3日目■

Shiggy Jr.
初見。アー写とかほとんど観ないで臨んだら、Voの智子ちゃんが予想以上に素朴可愛い感じのお顔立ちで何か嬉しくなる。あと彼女はあんなヴォーカルなのに喋る時の声もほとんど歌と変わらない。何かすげえ。
正直CD聴いた時は「この手の女の子Voのグループの中ではいまいちパンチ弱くないか」と思っていたのですが、誤解してました。他がギミック搭載しすぎなんです。ライブ観て彼女たちが「王道のポップス」なのだとわかりました。これでいいんです。


キュウソネコカミ
氣志團との戦いを目の当たりにし、さてどうなってるかと思ったら、あの時より明らかにイキイキしてて笑った。もう本当に不器用で、でもそれなりに何とかやってこの世界で生きていこうという意志は嫌というほど伝わってくるので、嫌いになれるはずがないのですよ、このバンド。


ORAL CIGARETTES
初見。いろいろメロディとか工夫している形跡はあっても、基本はどうしようもなく王道のギターバンドで、一瞬「これでこの先ずっと生きていけるのかな」と思ってしまったのですが、でもいろんな音楽があり過ぎになった結果こういうバンドが著しく減ってしまっている現在、今むしろ必要なんだと思い直した次第。実際こういう「普通にかっこいい」って難しいもんですよ。


夜の本気ダンス
初見。音源聴いているときには気付かなかったんだけど、けっこう濃い目のニューウェイヴの匂いがした。何に一番近いかと考えたら、The RaptureとかがいたDFAレーベル界隈。あれをひたすらドメスティックに磨いたらこういう音になる。
予想以上に人が集まり盛り上がり、危うく輪モッシュに巻き込まれそうになりました。俺おっさんだからあかんから。それに入ったら死ぬから。


ROTH BART BARON
今回一番観たかったステージ。
彼らはこれまでのワンマン、一番でかい箱でも400人級の渋谷WWWで、それが今回数千人収容可能な野外ステージでというのは正直大抜擢というか無茶もいいところなんです。でも、僕は心底これを待っていたんです。
以前の彼らのワンマンライブの感想でこう書きました。この人たちの音は小さなライブハウスに収めちゃいけない、もっと大きなところでこそ映える、そういうところでこそ鳴らされるべき音だと思っていました。

驕ってるかもしれないけど、でも主宰の鹿野さんもきっと同じこと考えてたと思うんですよ。アリーナ内の大きなステージの集客は無理でも、中の一番小さな、ライブハウスみたいなステージではなく、野外のこの場所でと。そして彼らはその通りに、こういう場所にとてつもなくマッチした「大きな」音楽を鳴らしてみせてくれました。俺これが聴きたかったんだよ。

若い子にわかりやすく訴求できる音楽性ではないし、知名度もまだまだで、結局数百人レベルの動員でしたが、最後の方じんわり場が高まっていることはわかりました。そして少しでも今まで触れたことのない人に彼らの音楽が届いたということだけでも、本当に意味があるステージだと思いました。鹿野さんありがとう。

今年は、福岡のCircleやら、北海道のRising Sunにも出ます。もしよければ観てください。


BIGMAMA
初見。彼らもまた他のバンドよりは「大きな」音楽を鳴らすバンドで、かつ若いオーディエンスにもアジャストする激しさも持ち合わせていて、でも全然「器用ですね」みたいな感じがしない。こういうレンジの音楽性をきっちり血肉化しているバンドっていうのはすごく貴重だと思った次第。


レキシ
このフェスに参加する目的として、本来であればフレデリック観に行くべきなんですが、だって親方様が心配なんだもの。またいらんこと延々喋り、いらん歌途中で口ずさんで結局40分で2曲みたいなことにならんかと(むしろそっちの状況を期待して)。
が、杞憂に終わりました。バンド側が1曲終わったらMC入れる隙を与えず次の曲を始めるという形で無駄を完全ブロック、結果、曰く「昨日(JAPAN JAM)より1曲多くできた」そうでございます。それでも5曲だけど。曲の途中の思い付きでSMAP歌ったりマイケル・ジャクソン歌ったり相変わらずですが、その思い付きに完全に付いていくバンドのプレイヤビリティーの無駄な高さにも改めて感服いたします。
しかし「狩りから稲作へ」が10分以内に終わったの観たの初めてかもしれない。最長は30分以上。


電気グルーヴ
友人が4日の晩に渋谷のAIRでDJしてたのですが、その日の目玉が卓球の出演で、何でもAM3時頃から開始してアンコールとかもあってAM8時頃まで回していたという超ロングプレイの後にこのステージ。卓球超働いている。
開始からずっと最近の彼らの基本であるBPM120レベルでやっていたのが、「ガリガリ君」あたりからおかしくなっていって、「Shangri-La」「あすなろサンシャイン」あたりで完全にぶち上がる。やっぱ気持ちいいな。


the telephones
当然武道館まで行く人を除けば、これで少なくとも当面は見納めだということはみんなわかってて、だから彼らも一切そういうことは口にせず、いつも通りの感じ、と言いたかったのですが多少違う感じがした。たとえば「Urban Disco」とか「Monkey Discoooooooo」とかのライブではド定番の大盛り上がり曲、音源以上にBPMを上げてフロアを爆発させていくのがライブでの通常運転なのですが、今回は比較的音源に近いBPMでやってる感じがしました。もしかしたら3日間彼ら以上に早いの多めに聴いた結果の気のせいかもしれないんですけど、でもフロアも盛り上がっていないわけではないにしても、去年観た凄まじいモッシュクラウドサーフほどの状況ではなかったとも思います。やっぱ意図するところがあるんすかね。


10-FEETの「気遣い」の部分であるとかthe telephonesの今年の状況であるとかのミュージシャン側や、今回もフロア側含めてニラニラ観察した結果、また思うところいろいろありました。次回改めてそっちを。