この週末はサマソニ。
大阪は1日めに大変なことになったようでお疲れ様でした。何かその流れでPerfumeがまた天使度をアップさせていたようですが、東京は両日とも途中でにわか雨的なのがあった以外はおよそ問題なく。
1日目。
間に合えばきゃりーぱみゅぱみゅを観ようと思っていましたが、2日間リストバンドはスタジアムの方でのみ受付で、時間も押してきたのでもうメッセに急いで行くの面倒臭くなってスタジアムでビール飲んで唐揚げ食ってダラダラしながら。
■Grouplove
予想通りの素晴らしいライブ。バンドの基礎体力が異常に高そうな感じ。紅一点ハンナ嬢は綺麗な白いロングのワンピースで出てきたものの、ものすごい勢いで大暴れ。楽しい。もう少し小さい箱でガッツリ観たいなこれ。
■The Vaccines
すごくタイトでクールな音を予想していたら、意外にもっさりしていて笑った。下手したら1分半で1曲終わる潔さはライブでも映えていました。
■Passion Pit
何て言うか、実は非常にオーセンティックなバンドじゃないかと。ライブでバンド形式の演奏になるとエレクトロニカである以前に非常にAOR的な空気がプンプンしてくる。悪くはないけど、「新世代」的な扱いはすべきではないのかな、と。
■Death Cab For Cutie
安定感のある素晴らしさ。安心して見ていられるクオリティの高いステージ。でももう「新しい挑戦」的な部分もあんまりアルバムに感じられなくなってきたし、彼らもキャリア後半のR.E.M.みたいになっていっちゃうのかな、という一抹の寂しさも。
■The Hiatus
彼らも安定の素晴らしさ。ただいつも彼らを観るとき思うのは、細美くんはこのメンバーのこの演奏に慣れたらもう絶対エルレには戻れないだろうという気持ち。他のメンバーもきっと頑張ってはいるんだろうけど。それでもこのバンドはいつ「やめた!」つって解散するかもわからないし、その性質上解散全国ツアーとかやるようなバンドでもないと思うので、観ておける時には観ておこうと思います。
■Sigur Ros
Jonsiすげえなすげえなと2年前にずっと言ってたわけですが、実のところSigur Ros本体は生で観たことがなく、今回初体験。もう期待でミッチミチになっていたのですが、1曲めの時点でもう「期待を超えた」とかいうレベルではなく「していた期待と次元が違う」ところにまで持っていかれて困惑する。何じゃこりゃ。こんな音聴いたことない。
彼らの音源のレビューに「天使が降りて来るような」みたいな例えがありましたが、ライブはもう全然違う音。天使ではあるんですがそれが3000人くらいいて全速力であらゆる物を蹴散らしながら突進してくるかのような凄まじい風情。
メンバー4人+サポート1名、管3名・弦3名の11人体制、確かに多いですが、出ていた音は11人ではないレベルの凄まじいダイナミズム。消えてなくなりそうな「静」から怒涛のような「動」まで一気に駆け上がっていくときにはもう信じられないほどの鳥肌が立つ。音楽でまだこんなに驚けるんだという気付き、喜び。何かすごく嬉しくなる。
いや本当にあいつら何食ったらこんなことになるんでしょうか。つうかもうJonsiは人間じゃなくて、北の国からやってきた不思議な生き物ということにする。人間技じゃないものこれ。
2日目。
早く起きれたら観たことない[Champagne]から観ようと思っていましたが案の定起きられずに昼過ぎ到着。
■Spector
知らんかったバンド。正味イギリスにはよくいるそれなりに良いメロをそれなりにタイトな演奏で聴かせる系。何か図抜けていないとこの手のは生き延びられないような気がする。今のままではヤバい。
■加藤ミリヤ
絶対こういう時じゃないと見ないので見てみた。思っていた以上に声も出るし必死さは垣間見えるもののきっちりダンスもこなす。ただ、「安全圏内でGAGAっぽい衣装」とか、一見さんを気にするあまり、工藤静香のカバーとかブルーハーツや安室をサンプリングした曲をガチガチに固めてきたり、何かいろいろと不自由そうな気もした。まだミュージシャンとしては独り立ちできてはいないんかね。
■Other Lives
Cast前に数曲チラ見でしたが非常に面白かった。基本「一人で何種類も楽器を担当する『働き者』の居るバンドにハズレなし」というのが持論ですが、自分がこれまで観たそういう人の中の新記録「1曲で4つの楽器」を達成しました。鉄琴叩いてからバイオリン弾いてバイオリン肩に挟んだまま右手だけで時々ラッパを吹き、そのうちギターに持ち替えているという過剰に献身的な働き。いろんな意味で素敵。全体としてはBeirutっぽくて好きな世界観。CD買ってみよう。
■Cast
悪いはずはないんですが、これといった驚きもない感じ。ただ音源ではいまいちかなと思っていた新曲が普通に過去楽曲に馴染んでいたのはよかった。あと、John Powerが童顔のまま老けていっていることがすごくわかって少し悲しかった。
■Foster The People
素晴らしい。音源じゃ絶対想像もつかないようなダイナミズム溢れる演奏。最近この手の音を出すバンドが結構いる中で彼らが頭ひとつ抜けたのはこういうライブができるからなんだなあと非常に納得度高かった。あと、アレンジの意匠に気を取られていたけれど、メロは非常に正統派というか、何となく「TOTOっぽいな」と思う瞬間もあったり。そういういい意味で保守的な部分が残っているところも世間に広くアピールできた要因なのかなと思った次第。
■Polysics
カヨちゃん抜けてから観てなかったので見学。完全スリーピースで、シンセ系の音源は基本的に全部シーケンスで出してました。前もシーケンスは多用していたけれど、でも何か今回見ていて若干窮屈そうな感じがしなくもない。いや、基本的に相変わらずすぎるくらい相変わらずではあったのですが。
■Tears For Fears
全部見てからNew Orderを途中からか、彼らを途中で抜けてNew Order最初からか、悩んだ末に後者に決定。"Seeds Of Love""Mad World""Change"が聴けたのでまあ良し。ローランドは相変わらずテカテカだったのですが、カートが何か萎びていてちょっと気になりました。結局全米1位の爆弾の2曲は聞けずじまいでNew Order開始10分前で移動開始。同じこと考えていた方が山ほどいてすごい勢いでオーディエンスが減っていくのに少し心が痛みました。ごめん。でも恨むならサマソニの運営を恨んでくれ。
■New Order
"Elegia"始まり。スクリーンに投影される映像が「もうそれお前ピーター・サヴィルだろ」的な感じでいきなり心に来る。演奏にはあまり期待してなかったけどえらくうまい。でもよく考えてみれば昔は4人のうち2人が下手くそだったのが、今は5人のうち下手くそなのは1人だけなのでそりゃ全体の演奏力は上がっている。間違いない。
始まる前にネタのつもりで「やったら笑うな」と言っていた"Krafty(日本語)"もマジで演奏、ごっちんはどこかできっとむせび泣いている。バーニーもステージ上る前に一杯引っ掛けたのでしょうか、何かえらくご機嫌でアニマル浜口のような不思議な踊りまで披露。アレンジも曲ごとにきっちりかっちり今にアジャストしてきていて「現在進行形のバンド」として問題なく成立していてめちゃめちゃかっこいい。"True Faith"なんかメロ以外ほぼ別の曲状態にアップデート完了。
それでも仁王像のようにほぼ不動のまま手だけ動かしているジリアンが、「80年代New Wave」バンドであることをその存在感で錨のように示している。何かステージ上のいろいろが素晴らしく噛み合っている。
そのままもう何かできすぎた状態でバーニーが「これはみんな知ってるよね?」的な前振りで"Bizarre Love Triangle"を演奏し始めた時、それまでのアゲ曲が全部90年代以降の曲だと気が付く。まだこいつらここからが本気中の本気だ。3曲目で"Regret"が来た時「もうここでそれやるんかいな」と思ったんだけど、彼らはそんなに浅くなかった。"Bizarre Love Triangle"の後は"586"→"The Perfect Kiss"→"True Faith"→"Blue Monday"→"Temptation"。怒涛のようなアゲ攻勢。死ぬかと思った。
そこで本編終了。アンコールの手拍子を打ちつつ、でもこれで次どうするの、"Technique"の頃の曲はやってないからそこらへんかなあ、と思っていたら程なく出てきて聞き覚えのあるベースライン。Joy Divisionの"Transmission"ですがな。本編で"Isolation"も演ったは演ったもののそっちは先述のようにアップデートされていたのですが、今回は音が厚いことは厚いもののほぼ原曲どおり。ひとしきり盛り上がって次の曲。スクリーンに「LOVE WILL TEAR US APART」の文字がスクロールしてくる。まあその流れではそれしかないんだけど、もう悲鳴のような盛り上がりよう。でもそれでただ演奏して終わりじゃなかった。
曲中、スクリーンにシングルのカタログ番号「FAC 23」ドーン。イアン・カーティスの遺影がドーン。そして"FOREVER JOY DIVISION"の馬鹿デカい文字がドーン。
もうあんた、それでアガらなきゃ嘘でしょ的展開。「FOREVER」ってそんな言葉こういうところで平気で使えるのお前らかX JAPANくらいじゃないか。もうこれ明らかに「こうすりゃ盛り上がるんだろ」的な打算と、Peter Hookへのイヤミという、およそ真っ黒な動機以外に何もない演出。あざとすぎるにも程が有るのですが、でも、わかってても盛り上がっちゃうんです。こいつら心底酷い奴らだなあとゲラゲラ笑いながら、でも涙が出てきそうになるんです。ものすごい反則だけど、ショーとしてはあまりにも素晴らしい。
結局終わってみてからの感覚としては「Joy Divisionのライブの前座にNew Orderやりました」的な印象。いいのか悪いのかわからない。でもライブ全体としては間違いなく最強。素晴らしかった。
そんな感じで。ももクロは行かなかった。一瞬迷ったけれどそれでもTears For Fearsを取っちゃうのが14年こういうサイトをやっている人間の性でございます。「ももクロ観たことないから一度観たい!」と言っていた同行女子に家に余っていたサイリウムを渡して送り出し、後からセットリストを聞いて正直なところ「そりゃ随分だな」と思ったものの、「楽しかった!」という感想をくれた彼女に「よかったでしょ?」と返すのが大人のマナー。
しかし、2日めはフル装備のモノノフとリアーナ目当ての衣服の表面面積が通常より明らかに少ない女子がすれ違うカオスな場も見られた今年のサマソニ、各日のトリのお陰でものすごく充実感高かったです。行ってよかった。